レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

35 / 54
ネオ・ブラックゴート編
ターン35 帰還


 

 

私はまた戻ってきた。

このふざけた世界に。

 

「よし、しっかり戻ってる」

 

手をグーパーしたり、腕を曲げたり伸ばしたりして、身体の感覚を思い出す。

あの世界だと何も動かなくても良かったからねー、実体があるのは久しぶりだ。

 

「さて、まずはーー」

(ちょっと()()()! これどういう事なんですか!!!???)

「あれ?」

 

頭の中で()()の声が響く。

 

「消えてなかったの?」

(いや、どういうことですかこれ! なんで私が零さんの中に!?)

「そりゃ私の身体なんだし、2()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

(なっ……!)

 

そう、私は水野風花じゃない。

彼女の10年後『氷田零』の方だ。

 

バトルの後、風花がこの世界に戻る時に私も一緒に戻ってきた。

 

ずっとあの白い世界にいて帰り道も分からなくて困ってたけど、風花の精神を経由することで私もこの身体に戻ることができた。

 

そして2つの精神の内、よりこの身体に近い存在なのはもちろん私。

 

(騙したんですか!)

「騙してないよー。私もどうなるか知らなかったし。まあ正直、この時点で風花の精神が私に取り込まれると思ってたから、今私の中に風花がいるのがちょっと予想外っていうか」

(それ以外は予想通りだったってことですよね!?)

 

私は元々、風花はあの(真っ白な)世界で私と出会った時点でどうやっても消えるしかないと思っていた。

 

元の世界に戻るにしても、私の10年前の精神である風花はその身体に馴染まない。

私と風花の2つの精神が同じ所にある以上、どうやっても風花は消える。

 

だから「後で風花の思いを踏みにじることになっても」なんて言ってたんだけどね。

 

「だから遺言として、風花の意思を尊重したかったんだけど……なんでまだいるの?」

(酷くないですか!? ……ああもう、私だけど死ねばいいのに)

「むしろ私なのに私を信用するのがおかしいと思う」

(自分で言いますか!)

 

とにかく、私は完全に風花の要素を取り込むまではまだこの世界にいることになるのかな。

それならカッコつけずに無理やり元の世界に戻るんだった。

後悔後悔。

 

「まあ安心してよ風花」

(……この状況の何を安心しろと? 未来の自分がこんなのなんて、不安しかないんですけど)

「うわー酷い言い様。じゃなくて、ちゃんと風花の意思は受け取ったから」

(というと?)

 

決まってるじゃん。

さっき風花が言ってた、あのカッコいい台詞を復唱する。

 

「ネオ・ブラックゴートをぶっ潰す!」

(やめて! 思い出しても恥ずかしいからホントやめて!)

 

 

◇◆◇◆

 

 

(ホント私って、性格悪いですよね)

「もう治らないから諦めた方がいいよ。それよりもこれだよこれ」

 

時間も時間だったので家に帰ろうとした私は、その道中もずっと風花から嫌味を言われていた。

でも本気で怒っている口調じゃないし、本気だったとしても何も出来ないから特に問題はない。

 

そんなことよりも、私が取り出した1枚のカード。

これは私の知る限り最も多くのデッキに採用され、最も多くのバトスピカードバトラーに使われたカードだ。

 

(『絶甲氷盾』……バースト?)

「忘れてても、何となくで覚えてるでしょ」

 

遂にこの世界にもバーストが登場した。

つまりヤマトとセイリュービの時代である。

 

「家に帰る前にショップ寄ってカードは揃えとこうか。どうせ世界大会での賞金が有り余ってるし」

(Gとか最初何言ってるのって思ったもん……あのカサカサしてる奴かと思った)

「ゲーム内通貨だから、アレは」

 

まあ逆にゲーム内通貨だからありがたいってのはある。

リアルマネーだったら、中学生の私にはそんなに多くのカードは買えない。

 

(……私はまだ、この世界がゲームだなんて信じられませんけどね)

「バトスピ周り以外は普通だからねー。マドカ達だって、バトスピが関わってなかったら普通の中学生だもん」

 

千樺町に戻り、駅前のショップでタワーを回す。

明らかにタワーの物理的上限を超えてカードが出てくるけど、これもゲームの名残だ。

 

「ホント物理法則超えるのだけはやめてほしい」

(この世界に来てる時点でそれを言うのはちょっと……)

「そうだった」

 

持っているGの殆どを使い、覇王編のカードを回収する。

まあ正直構築済みデッキのカードが強すぎて、それがデッキの大半を占めそうな気はするけど。

 

「とりあえず一旦家に帰ってーーあっ」

(? どうかしました?)

「そういえば風花、ヒメ様の家で寝泊まりしてたよね。まだ挨拶してなかったや」

(……行きましょうか)

 

ヒメ様達はまだ私が戻ったことを知らない。

このまま私が自宅に帰ったら、心配したヒメ様が何をするか分からない。

 

「……というか、どうせ誰もいないんだから好きに使えばよかったのに」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「すいません。ヒメ様ってどちらにいらっしゃいます?」

「お嬢様なら自室にいらっしゃるかと」

「ありがとうございます」

 

三葉葵邸に来た私は事情を説明するためにヒメ様の所へ向かう。

まあ事情を説明すると言っても、殆ど口からでまかせで誤魔化すんだけど。

 

部屋の扉を叩き、声をかける。

 

「ヒメ様ー、ちょっといい?」

「なんじゃ。妾は新しいデッキの調整に忙しいのじゃが」

 

ヒメ様は扉を開けて迎え入れてくれた。

今は覇王編に入ってすぐ出し、環境が大きく変わるからねー。

そりゃあ調整に時間もかかりますわ。

 

……さて、なんて切り出そうか。

 

「ただいま()()()

「む? どうしたいきなりーー待て、まさかお主」

 

さすがヒメ様、理解が早い。

 

「レイ! 戻ったのか!」

「戻りましたよっと。……ごめんね、時間かかって」

(私は姫子ちゃんって呼んでたからね。というかなんでヒメ様呼び?)

 

私のことに気がついたヒメ様は涙で飛びついてきた。

身長差のせいでヒメ様が私の胸に顔を埋める格好になってる。

私も抱き返そうと思ったけど、このままだとヒメ様が窒息することになるな……まあいいか。

 

ヒメ様呼びの理由?

悪ふざけで呼んでたら定着した。

ゲームでもレイはヒメ様呼びだったし。

 

「一体いつから戻っておったのじゃ?」

「IBSAでみんなと別れてから。色々あって知らせるの遅れちゃったけど、ごめんね」

「……よい。お主が戻ってきてくれたのじゃからな」

(最新弾のカード買ってたことを、色々で誤魔化すのはどうかと思いますよ。普通それより先に知らせるでしょ)

 

はい風花は黙ってて。

せっかくのいい感じになりそうなんだから。

 

「お主がこれまで何をしておったかは敢えて聞かん。それで、風花はどうした。あ奴は元の世界に帰ったのか?」

「私が戻ってきただけで、風花はまだ私の中にいるよ。自分の中にもう1つ意識があるって大変だけど」

(あ、それは正直に言うんですね)

 

別にこれは誤魔化す必要ないし。

嘘をつくなら幾らか本当のことを混ぜないと。

 

(やばいこの人、嘘つき慣れてる)

「(まだ嘘なんて1個もついてないでしょーが)」

 

今の自分が過去の自分に誇れる自信なんてないけど、それでもその言い様は酷くない?

 

「……レイよ。戻ってきてすぐで悪いが、妾とバトルをしてほしい。あの後、妾がどれだけ成長したのかを確かめたいのじゃ」

 

あの後……多分世界大会のことかな。

確かあの時何か相談を受けた気がする。

なんて答えたか忘れたけど。

 

「いいよ。やろーか」

 

バーストが追加されて、相手(CPU)がどう動くのかも確認しておきたいし、そうじゃなくても私がこのカード達と戦いたい。

かつての戦友とまた会えるのはやっぱり嬉しい。

 

(未来の私も、相変わらずなんですね)

「(知ってたでしょ。私はバトスピが好きなんだよ)」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「うーん、先攻かな。スタートステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ。ネクサス『英雄皇の神剣』を配置。そしてバーストをセット。ネクサスの効果でドローしてターンエンド」

 

『英雄皇の神剣』はターンに1回、自分がバーストをセットした時にデッキから1枚ドローできる。

重複はしないけど、バーストをセットするだけでドローできるのは強い。

 

「レイもバーストを使うか。ならば妾のターン、『ランマー・ゴレム』『ツンドッグ・ゴレム』を召喚する。『ツンドッグ・ゴレム』の召喚時効果により、このターン【粉砕】か【大粉砕】を持つ妾のスピリットがBPを比べ破壊された時、疲労状態でフィールドに残る」

「あ、召喚時効果発揮でバースト発動。『双翼乱舞』、デッキから2枚ドロー」

「……いきなりじゃな。『ツンドッグ・ゴレム』をLv2にしてターンエンドじゃ」

 

正直このバースト環境で召喚時効果を使うなんて思っていなかった。

『英雄皇の神剣』のドロー目的、破棄前提で貼ったバーストだったんだけどな。

さすがCPU。

 

「メインステップ。バーストをセット、ネクサスの効果で1枚ドロー。『キジ・トリア』をLv2で召喚、そのままアタック」

「ライフで受けよう」

「ターンエンド」

 

『キジ・トリア』は相手のターンに自分がバーストをセットしていたら合体(ブレイヴ)していない自分のスピリット全てをBP+2000できる。

バーストをセットしている今『キジ・トリア』はBP7000の優秀な壁になるんだけど、ブロックできない疲労状態なのであまり関係ない。

 

「『リペアリング・セーラス』を召喚し、Lv2に上げる。そして妾もバーストをセットじゃ。アタックステップ、『ランマー・ゴレム』でアタック」

「ライフで受ける。そしてバースト発動、『サンク・シャイン』を召喚して、このターンスピリット全てをBP+3000する」

「ターンエンドじゃ」

 

うん、大体分かった。

CPUはバーストの有無に関わらず、いつもの動きをするみたいだね。

 

(あの、姫子ちゃんをCPUに見る言い方やめてくれませんか?)

「(気に触れたなら謝るよ。でも本当なんだから仕方ない)メインステップ、バーストをセットして1枚ドロー。『獣装甲メガバイソン』を召喚。『サンク・シャイン』に合体(ブレイヴ)。そしてLv3に上げる」

 

『獣装甲メガバイソン』は【装甲:赤/緑/白】を持つブレイヴ。

この環境なら、かなり多くのカードの効果を防いでくれる。

 

「アタックステップ、合体(ブレイヴ)スピリットでアタック」

「相手のアタックによりバースト発動。『コジロンド・ゴレム』。妾のフィールドに【粉砕】を持つ『ツンドッグ・ゴレム』がいるので召喚する」

 

で、相手もバーストを発動すると。

しかし『コジロンド・ゴレム』か。

てことはあのカードも入ってるよね……。

 

「アタックはライフで受ける」

「ターンエンド」

 

ヒメ様のライフは残り2つ。

追い詰めたけど、相手も使えるコアが増えた。

 

さて、ヒメ様はどうするかな?

 

「メインステップ。まずはバーストをセットじゃ。そして『グレネード・ゴレム』を召喚する。『ツンドッグ・ゴレム』と『コジロンド・ゴレム』はLv2じゃ。アタックステップ、『ランマー・ゴレム』でアタックじゃ」

「疲労状態の『サンク・シャイン』でブロック」

 

『サンク・シャイン』は効果で自身のコスト以下のスピリットを疲労状態でブロックできる。

合体(ブレイヴ)している『サンク・シャイン』はコスト11。

今のヒメ様のスピリットなら、全部疲労状態でブロックできる。

 

「『サンク・シャイン』のブロック時効果。ボイドからコアを1個、このスピリットに置く」

「『ランマー・ゴレム』は破壊じゃ。ターンエンド」

 

単純に回復状態のスピリットの数だけを考えると、ヒメ様はこのターンで私のライフを0に出来た。

でもそれはスピリットの効果やバーストを無視した単純な思考。

 

「(ねぇ、もし風花がヒメ様だったら、ここはどう動いた?)」

(どう、と言われても……他にどんなカードを持ってるのか知りませんし。ただ、どう頑張っても逆転するのは難しいと思います)

「(そっか)」

 

私の予想だと、あのバーストはヒメ様のキースピリット。

もしその予想が当たっているのなら、ヒメ様には逆転の手があった。

 

「メインステップ、『キジ・トリア』をLv2にアップ。アタックステップ、『サンク・シャイン』でアタック」

「『リペアリング・セーラス』でブロックじゃ」

 

バーストは『コジロンド・ゴレム』じゃない。

てことは本当に予想が当たってたかも。

 

「フラッシュタイミング、マジック『爆覇炎神剣』を使用。このターン、系統:「覇皇」を持つ『サンク・シャイン』がBPを比べ相手のスピリットだけを破壊した時、そのシンボルの数だけ相手のライフのコアをリザーブに置く」

 

つまり「覇皇」版の『メテオストーム』だね。

『サンク・シャイン』は合体(ブレイヴ)していてダブルシンボル。

『爆覇炎神剣』によりライフを2つ減らす。

 

「『リペアリング・セーラス』は破壊じゃ」

「『爆覇炎神剣』の効果でヒメ様のライフを2つリザーブに置く。はい私の勝ち、バーストは『絶甲氷盾』だったよ」

 

ヒメ様のライフは0になり、ゲームエンド。

私はバーストをオープンする。

 

「妾は『鉄の覇王サイゴード・ゴレム』じゃ。召喚出来ず終いじゃったの」

 

やっぱり予想通りだった。

『鉄の覇王サイゴード・ゴレム』をセットせずに召喚していたら、【大粉砕】の効果で『サンク・シャイン』を破壊出来ていたかもしれない。

私のデッキは特にバーストが多いから、5枚破棄しただけでも1枚くらいは落ちそうだ。

 

まあバースト召喚したい気持ちも分かるけどね。

私のデッキには召喚効果を持つスピリットはいないけど。

 

「やはり、妾はまだレイには追いつけぬか」

「追いつけるものなら追いついてみなよ」

「言うではないか。よかろう、いつか妾はお主に追いつくぞ」

「ははは……」

 

その日、私はヒメ様の家に泊まることになった。

夜も遅いし、ネオ・ブラックゴートのこともあるからだろう。

日にちを跨ぐまで、私とヒメ様は久しぶりの出会いに花を咲かせた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。