「ご迷惑おかけしました」
私がこの世界に戻ってからかなり忙しかった。
まずはヒメ様の家にお礼を言って退散、続けてレツ達へ報告。
そして最後に学校に事情を説明してとかなり面倒だった。
「何があったのは今度詳しく教えてね。まあ世の中には摩訶不思議なことばっかりだから、レイさんにも分からないと思うけど……」
「ありがとうございます」
嬉しかったのは校長や担任からそこまで深く追求がなかったことだ。
転生者云々とか隠したいことがある私にとって、それだけで終わらせてくれたことは感謝しかない。
あまり騙るとボロが出るからね。
そして学校では文化祭準備のために午後の授業が休講になる。
文化祭でバトスピできるなんて、いい時代になったもんだね。
いや、よく考えたら過去か。
じゃあやっぱりこの世界はバトスピが絡むと頭おかしい。
いっそバトスピ部でも作ってみる? と思ったけど私はネオ・ブラックゴートを潰したら元の世界に戻るし、別にいいか。
(ホントそういう約束は守るんですね)
「風花の遺言だからね」
(まだ生きてます!)
しかし元の世界に戻れるかは微妙なところ。
『千と千尋の神隠し』基準だと、名を取り戻して境を越えれば元の世界に戻れるはずなんだけど、よく考えたら基準が創作物だった。
ネオ・ブラックゴートに殺されそうになった時の保険として元の世界への帰還を考えてたけど、それを実験できないのは素直に怖い。
職員室から教室に戻り、文化祭の準備を手伝う。
喫茶店をやるにしても出すものは市販だし、そこまで用意に手間はかからない。
でも中学生にしてはしっかりとやってるね。
元の世界の文化祭なんてただのお遊びだったのに。
「あ、レイちゃん。暇ならちょっと手伝ってくれない?」
「いや何してるの」
手伝ってくれと言ったマドカは働いてるみんなの邪魔にならないよう端でカードを広げていた。
何遊んでるんだ。
「ちゃんと文化祭の活動だよ。ほら、私達の出し物って一応バトルスペースも兼ねてる訳でしょ? だからバトスピの方もそれなりじゃないといけないのよ」
「それで?」
「バトスピの大会をやるでしょ? そこで発案者の私が1回戦で負けましたー、とかにならないようにね?」
やっぱり遊んでるだけじゃん。
チラリとマドカのデッキを見る。
『龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード』『焔竜魔皇マ・グー』……
「大丈夫、普通に戦ったら優勝できる」
「もー、ふざけてないで本気で考えてよ〜」
(……零さん、マドカさんに対する扱い酷くないですか?)
いや、普通に強いんだって。
「古竜」中心に組んでブレイヴやマ・グーでシンボルを増やして、4点5点パンチすることで最小限しかライフ減少時バーストを踏まずに勝つデッキだ。
私は構築済みデッキを中心に組んだ速攻寄りのデッキだけど、こっちは高コストの強力なカードを出して殴るパワーデッキ。
まだ色々残念な所はあるけどそこを組み替えれば一気に強くなる。
「あれは? ジーク・メテオヴルムとかは?」
「ごめん、持ってないかな」
「そっか。残念」
プロモカードだし、この世界では手に入りにくいもんね。
仕方ない。
スサノヲは入ってるし、条件は厳しいけどそれで代用できるかな?
(ジーク・スサノ・フリードの効果でシンボルが+1、
「(最初から古竜のダブルシンボルを用意した方が早いけどね。とにかくそういうデッキだよ)」
さすが怪獣大決戦なマドカだ。
ゴジラコラボとかが来たらもうそれしか使わなそう。
「うーん、悩んでも仕方ないや! レイちゃん、ちょっと付き合ってくれる?」
「私? いいけど」
文化祭の準備はいいのかなぁ。
まあ私が手伝うことはなさそうだしいいや。
私もサーボろっと。
◇◆◇◆
「先攻どうぞー」
「私のターン、バーストをセット! ターンエンドよ」
さすがにみんなが働いている教室内でやる気は起きなかったから、私とマドカは空き教室に来てバトルを始めた。
「メインステップ。『ドス・モンキ』を召喚。バーストをセットして、アタックステップ。『ドス・モンキ』でアタック」
『ドス・モンキ』は自分がバーストをセットしている時、
そして私は何故かドス・モンキはハジメ君よりも
「ライフで受けるわ! そしてバースト発動、『龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード』!」
……ねぇマドカ、それは確かにライフ減少時のバーストだけど、今発動しても無意味なんだよ。
『龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード』はライフ減少時のバーストで、
でも今のマドカのライフは4、その効果は発揮しない。
「ターンエンド」
確かにこれまでにもCPUが意味のない時にカードを使うことはあった。
でもそれをバーストで、ヤマトでやってほしくはなかったなー。
「メインステップ、『リュザード』『カグツチドラグーン』を召喚。ターンエンド」
NPCのシステム的に、マドカにアタックさせるにはあと1体スピリットが必要。
それも私のスピリットのBPを相手のスピリットより低くして。
……うん、普通に殴った方が早いね。
「『ワン・ケンゴー』を召喚。『ワン・ケンゴー』の効果で自分がバーストをセットしている間、最高レベルとして扱う。『ドス・モンキ』をLv2にして、アタックステップ」
『ドス・モンキ』の効果で私のスピリット全てのBPが上がる。
「『ワン・ケンゴー』でアタック。アタック時効果【激突】」
「『リュザード』でブロック」
「BPの高い『ワン・ケンゴー』の勝ちだね」
3コストの維持コア1でBP6000の【激突】って最強では?
しかも今はドス・モンキの効果でBP9000まで上がっている。
「『ドス・モンキ』でアタック」
「ライフで受ける」
「ターンエンド」
前のターン、マドカがバーストを発動していなければジーク・ヤマト・フリードを召喚出来てた。
うーん、これはひどい。
「私のターン、『焔竜魔皇マ・グー』を召喚するわ。アタックステップ、『焔竜魔皇マ・グー』の効果でトラッシュのコア全てをこのスピリットに置く。ターンエンド」
「スタートステップ、コアステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ」
コアを回収してLv3になったマ・グーのBPは10000。
私のワン・ケンゴーだとまだ足りない。
「マジック『双翼乱舞』。デッキから2枚ドロー」
『獣装甲メガバイソン』……【装甲:赤】を持つブレイヴが来てくれたのはいいけど、
「もう1枚『双翼乱舞』。デッキから2枚ドロー。ターンエンド」
「私のターン、『カグツチドラグーン』にコアを1個追加してターンエンド」
マ・グーのコアを取り外さない、安定のNPCプレイですね。
カードパワーが強くても、プレイヤーが残念なせいでどうにもならない。
「メインステップ。『キジ・トリア』を召喚。さらに『ドス・モンキ』2体目を召喚。アタックステップ」
2体のドス・モンキの効果で合わせてBP+6000。
これでワン・ケンゴーは相手のマ・グーのBPを超える。
「『ワン・ケンゴー』でアタック」
「『カグツチドラグーン』でブロック。そのまま破壊される」
「『キジ・トリア』でアタック。BP9000」
「『焔竜魔皇マ・グー』でブロック」
「『キジ・トリア』は破壊。『ドス・モンキ』でアタック」
「ライフで受ける」
「もう1体もアタック」
「ライフで受けるしかないよー」
「ターンエンド」
これでマドカのライフは残り1。
そして私のフィールドにはスピリットが3体。
CPUのマドカはマ・グーに乗っているコアは使わないから、使うコアの数は5。
召喚は多くて2体と見た。
「『リュザード』『カグツチドラグーン』を召喚。そしてバーストをセット。アタックステップにトラッシュのコアを『焔竜魔皇マ・グー』に置いて、ターンエンド」
ホント、なんでスピリット上のコアは使わないプログラムを書いたんだろう。
コストやマナを使うゲームなんだから、そこは手を抜かないでほしかった。
「メインステップ。『アルマジトカゲ』をLv2で召喚。2体の『ドス・モンキ』をLv2に上げてアタックステップ。『ワン・ケンゴー』でアタック。【激突】」
「『リュザード』でブロック」
「『ドス・モンキ』でアタック」
「『カグツチドラグーン』でブロック」
「『ドス・モンキ』2体目アタック」
「『焔竜魔皇マ・グー』でブロック!」
2体の『ドス・モンキ』による圧倒的なBP上昇で相手のスピリットは全て破壊した。
結局マドカのバーストは召喚時かライフ減少時か。
「『アルマジトカゲ』でアタック」
「フラッシュタイミング、マジック『天翔龍神覇』! BP6000以下のスピリットを破壊できる! でも……」
「『ドス・モンキ』の効果があるから対象がいないよ。あ、私はフラッシュないよ」
「私もない。ライフで受ける」
「はい私の勝ち」
マドカはバーストを開ける。
『天剣の覇王ジーク・スサノ・フリード』ライフ減少時のバーストだ。
残りライフ1でそれは……
そして私のバーストは『龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード』
ライフ3以下どころか1つも減らされていない。
ほんとに『ドス・モンキ』や『ワン・ケンゴー』のためだけに張ったバーストだった。
「BP+6000もするのは強すぎるって」
「BP+3000してシンボル1つ追加するマ・グーの方が強いって。まぁ2ターン目にバースト発動したのが全てだね」
あれがなかったらどうなってたかな。
ヤマトとマ・グーに轢き殺される?
いや多分それでも負けなかったと思う。
そう、結局この世界ではーー
「……さっさとネオ・ブラックゴートを潰さないとね」
それは風花との約束だ。
私はあの集団を潰すか死ぬまでは帰らない。
でも、こんな世界に長くいたらきっとまたーー
(その時はまた、私が助けてあげますよ)
「(……そんなこと言うくらいなら、あの時さっさと元の世界に戻って欲しかったなー……なんて)」