レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン37 文化祭

 

 

「『焔竜魔皇マ・グー』でアタック」

「ライフで受ける……」

「はい私の勝ち」

 

普段なら授業の時間にも関わらず、私は学校の教室でバトスピをしていた。

 

そう、今日は千樺中学の文化祭だ。

教室をバトスピのデュエルスペースにしている私達のクラスは私とレツ、ヒメ様への対戦依頼が多くてその対応に追われていた。

 

「お疲れ様。思ったより人が多いけど頑張ってね」

「客寄せパンダになったからには頑張りますよっと。あ、お茶ありがと」

 

私達のことを知っていたけど声をかけられなかった下級生や文化祭を楽しみに来た親御さん、果てには教師までこの機会にと並んでいる。

 

……大丈夫かこの世界の教育界。

 

(ここまで10人抜きですね。これ、文化祭中に100人とかいけるんじゃないですか? かなり早いペースで戦ってますし)

「(人が多いから1戦あたりの時間短くしようと頑張ってるんだよ。100戦とか無理)」

 

赤白デッキだと相手がバーストを踏んでくれないと大型スピリットを召喚できないから、今はマグーや蜂さんデッキを使って積極的にライフを減らしに行っている。

 

とにかく今は数をこなすのが先だ。

 

「では対戦よろしくお願いします」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「あー……疲れた」

(午前だけで25戦ですか。結構やりましたね)

 

昼になり、私はようやく休憩がもらえた。

まだ4時間くらいしかバトスピしていないのにハイペースで回したせいで凄い疲れた。

このペースだとマジで100戦いくぞ。

 

「とりあえず他のクラスの出し物もテキトーに見て回ろうか」

(それならブレイドラーメンってのが気になってます!)

「いいね、行こうか」

 

学生の作るラーメンなんて期待はできないけど、名前が気になるから行ってみようという気持ちになる。

ブレイドラの可愛いラーメンかな? と思ったけど、スパイス大量にぶち込みましたみたいなことがパンフに書いてあったから多分激辛ラーメンなんだろう。

 

「あ、すいません」

「いえいえこちらこそ」

 

目的のクラスへ移動中に、何度も外部の方とぶつかった。人が多いから仕方ないけど、目的地までの道が封鎖気味になっているのは困る。

 

「なんとか入れた……」

(お昼時ですからね……すごい混み具合でした)

 

なんやかんやして、ようやく席につくことができた。

注文はブレイドラーメンしかない。

激辛と言われてあまり食べられる自信はないので、小盛にしてもらった。

 

(……やばくないですかこれ)

「まぁ文化祭で出すようなものだし、味はマトモなはず……ゴホッ!ゲホッゴホッゴホッ...」

 

届いたラーメンは紙皿の白に対してスープの赤さがより際立って見える。

とりあえず1口、とスープを口に運ぶが、口を開けた時点で喉の奥に刺激を感じてむせてしまった。

 

「これ予想よりはるかにやばい」

(バラエティーで芸人が食べるレベルじゃないですかやだー)

 

やばいと分かっても、お金を払った以上食べるしかない。

1口食べては水を飲み、1口食べては……と何とか完食した。

麺がまだマトモなのが救いだった。

 

「なんか休憩しに来たのに余計疲れた気がする……」

(途中から泣いてましたよ)

 

知ってるよ。

辛さで口の中が死んでるもん。

購買で買ったポカリがもう無いもん。

 

「もう1本買ってこよ……」

(てか未来の私ってポカリ派なんですね。アクエリの方が飲んでた気がしますけど)

「色々ねー」

 

2本目のポカリの蓋を開ける。

あー甘い。

 

「何がふざけてるって、これで休憩が終わってる事だよ」

(もう時間ですか。戻らないといけませんね)

 

こっからまた4~5時間くらいバトルするのか……もういっそ100戦目指してやろうか。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「ん、何かあったのかな」

 

私が昼休憩を終えて教室に戻ると、中から騒がしい声が聞こえてくる。

クレーマーでも来たかな?

 

「おーいイツキ。何かあったの?」

「あ、ちょうど良かった。さっき来た客がチャンピオンを出せー、てうるさいのよ。レツ君もやけにその客に突っかかっちゃって」

 

あー、それで騒ぎになってたのね。

でも私がいなかったからって騒ぐなよ……非常識だな。

 

「はーい戻りましたよー。で、誰がクレーマー?」

「レイ!」

 

教室内ではレツとフードを被った客が対面していた。

多分あの人達かな。

 

「お前が氷田零か!」

「はい私がレイですよ。それで何用?」

「お前がコレクターさんを殺したんだな!!!」

 

……はい?

 

「ごめんちょっと何言ってるか分からない」

「ふざけるな! お前のせいでコレクターさんは!!!」

「レイ、こいつはネオ・ブラックゴートの仲間だ!」

 

ネオ・ブラックゴート……ああなるほど。

 

「(私に殺されたコレクターの敵討ちってことかな?)」

(でも、殺したのはアゲハって呼ばれてた人です! 私達は関係ありませんよ!)

 

私がコレクターに勝った後、ネオ・アゲハによってコレクターは殺された。

私はバトルしただけ、しかも賭けの条件にはコレクターの命は賭けられていなかった。

 

アゲハとやらが勝手に負けたコレクターを殺しただけで私は悪くない。

 

んー、風花の言い分にも一理ある。

けどそんなの彼らが知ったこっちゃない。

 

短絡的で前が見えてない人ってのは、理屈で説得出来ないんだよ。

 

「で、どーしたいの?」

「なに!?」

(ちょ、大丈夫ですか!?)

 

相手が殺人集団のネオ何とかと言っても結局はその下っ端。

相手が直接暴力に訴える手段は素手しかないはず。

相手が手を出てきたらこの場の人間で止められる。

 

安全が確保されてるなら強気に出るのは、現実もゲームも同じだよね。

 

(うわぁ、かっこいいのかかっこ悪いのかよく分からない思考してる)

「(ちょっと黙ってて)私がコレクターを殺して? それであなたは何しにきたの? 警察に突き出す? 出来ないよね、それはあなた達の組織にも不利益だし」

「てめぇ……!」

 

おっと、そろそろやばい。

殺されはしないとはいえ殴られるのは痛いから嫌。

 

「だから、バトスピをしよう」

「はぁ?」

「ネオなんちゃらのルールに則って、賭けで決める。私が勝ったら帰って。あなたが勝ったら、()()()()()()()()()()()()()()

「……ほぉ、言ったな?」

 

ただし、と条件を付け加える。

 

「賭けの賞品に差がありすぎる。だから好きな方でいい。ハンデなしで戦うか、ハンデ有であなたもリスクを背負うか」

 

私は負けたら命の危機、それに対して相手は負けても何もない。

その上ハンデなんて付けられたら私だけが不利なバトルだ。

 

相手だけ安全なところでバトルなんてさせない。

ハンデを付けて勝率を五分五分にしたいのなら、それに見合う対価が必要だ。

 

「リスク……だと?」

「そう。ハンデなしなら私は100%勝てる。でもハンデ有なら分からない。景品に明らかな差がある以上、あなたにも同等のリスクを追ってもらう」

(要するに難題ふっかけてハンデなしで安全にバトルしたいってことですよね? バーストがある今なら事故しても致命傷にならないから)

「(言い方ァ)」

 

世の中結局自分の命が大切だからね。

それを賭けられる人なんて福本漫画にしか出てこない。

 

「(とにかく、この提案に相手が悩んでいる時点で、相手は本気で私達をどうこうする気はないね)」

(……前も思ったんですけど、私ってこんな口だけ達者な人間でしたっけ? さすがに性格悪くなりすぎてません?)

「(いや元々こんなんだよ)」

 

それにこの提案だって相手を陥れるためにしてるんじゃない。

私が安全でいるためにしてるんだよ。

誰も自分の命が大切なんだから。

それは私も例外じゃない。

 

「(1番やばいのはリスクなんて度外視して突っ込んでくる人なんだけどね……)」

 

 

◇◆◇◆

 

 

結局相手はハンデなしでのバトルを選んだ。

 

悩んでたのも多分、私にそうなる様に誘導されたのが嫌だっただけ。

けど、誘導には逆らえなかった。

 

バトルは私の先攻から。

 

「ネクサス『英雄皇の神剣』を配置。バーストをセットしてネクサスの効果で1枚ドロー。ターンエンド」

「俺のターン。『ブフモット』を2体召喚。バーストをセットしてターンエンドだ」

 

『ブフモット』は破壊時にBP4000以下のスピリット2体を疲労させる。

でも、あんまり関係ないかな。

 

「『ワン・ケンゴー』を召喚。マジック『双翼乱舞』を使用して2枚ドロー。『ワン・ケンゴー』でアタック、【激突】」

「『ブフモット』でブロックだ。破壊時にBP4000以下のスピリットを疲労させる」

「対象はいないよ」

 

『ワン・ケンゴー』は疲労状態だし、そもそもBP6000だ。

『ブフモット』の破壊時効果は不発だね。

 

「相手による自分のスピリット破壊によりバースト発動! 『ターザニア・グレート』を召喚する」

「ターンエンド」

 

『ターザニア・グレート』を調査員以外で見るのってすごい新鮮だね。

アタック時効果は面倒だけど、運ゲーだしなんとかなる……よね?

 

「『大首長ジャムカ』を召喚。アタックステップ、『ブフモット』でアタックだ」

「フラッシュはない、ライフで受ける」

「ターンエンドだ」

 

ふー、よかった。

『ターザニア・グレート』で連鎖されたらかなりやばかったからね。

 

相手がCPUだと分かっていても、さすがに自分の命を賭けたバトルは怖い。

できるならライフを1つも減らしたくなかったし、なんならアタックもさせたくない。

 

剣獣ならブレイヴによるシンボル増加を考えてもライフが3つあれば大丈夫だと思うけど……その予測にもあまり確信はない。

 

「『焔竜魔皇マ・グー』を召喚。アタックステップ、トラッシュのコア全てをマ・グーに置く。『ワン・ケンゴー』でアタック、【激突】」

「『ターザニア・グレート』でブロックだ」

「『焔竜魔皇マ・グー』でアタック」

「ライフで受ける」

「ターンエンド」

 

『焔竜魔皇マ・グー』は自身の効果でシンボルが1つ追加されていてダブルシンボル。

これでライフの数は4対3と逆転した。

 

「『ジャドバルジャー』を召喚。効果で疲労状態で召喚される。『ブフモット』『大首長ジャムカ』をLv2にしてターンエンドだ」

 

『ジャドバルジャー』はコスト5軽減5でLv1BP7000とBPは高いけど、代わりに疲労状態で召喚されるデメリットを持つスピリット。

動けるのは次の相手のターンからだね。

 

「『獣装甲メガバイソン』を召喚、マ・グーに合体(ブレイヴ)。そして2体目の『ワン・ケンゴー』を召喚。アタックステップ、トラッシュのコア全てをマ・グーに置く」

 

私のフィールドには【激突】もちのワン・ケンゴーが2体いる。

そして相手のスピリットは2体。

 

ここはバーストに『絶甲氷盾』がある今のうちに攻める。

 

「『ワン・ケンゴー』でアタック、【激突】」

「『ブフモット』でブロックだ。破壊時効果は発揮しない」

「もう1体の『ワン・ケンゴー』でアタック」

「『大首長ジャムカ』でブロック」

「『ワン・ケンゴー』は破壊される。マ・グーで合体(ブレイヴ)アタック」

 

マ・グー自身の効果でシンボルが+1。

メガバイソンが合体(ブレイヴ)して+1。

トリプルシンボルのアタックだ、フラッシュがないならこのままゲームエンド。

 

「ライフで受ける」

 

ふー、何もなかったや。

良かった良かった。

 

(100%負けないと思ってても、内心結構ビビってましたね)

「(この世界に100%なんてないから。私が負ける確率が1%でも0.001%でもあるなら、そりゃビビるよ)」

 

さて……

 

「私の勝ち。それじゃあ約束通り、さっさと出てって」

 

私がそう言うと、ネオなんちゃらの男は顔を伏せたまま教室を出ていった。

逆上して襲いかかってくる可能性もあったから、しっかりと約束を守って帰ってくれたのは助かった。

 

「ふー、疲れた」

「大丈夫か? レイ」

 

バトルの間ずっと背負っていた精神的な疲労がやばい。

私はイツキに頼んで、裏方で休ませてもらうことにした。

 

「……あれが、命を賭けたバトルね」

 

私はこれだけ保険をかけても内心ビクビクしていたのに、風花は何もない状態であんなりマトモに戦ってたのか。

 

 

『なんでお前が平気な顔してるんだ』

『お前のせいでアイツの人生がおかしくなった』

『アイツじゃなく、お前がああなれば良かったのに』

 

 

……ああ、嫌なものを思い出した。

 

(? どうかしたんですか?)

「(いや、大丈夫だよ)」

 

そうだ、私はまだ『氷田零』だ。

だから『水野風花』の最悪の記憶を忘れてたんだ。

 

あのクソッタレ共との繋がりを。

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