レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン38 秘めた過去

 

 

文化祭の2日目。

私は学校を休んで彼と会っていた。

 

風花の願いを叶えるため。

そしてーー()()()()を抱えた私の意地を通すため。

 

そのために私は彼に依頼をした。

 

「僕は君をあの場に送る訳にはいかない」

「嫌なら勝てばいい。勝負の結果にどうこういうつもりはないよ」

 

彼なら、私の望む場を提供してくれる。

ネオ・ブラックゴートの賭場について知っている。

 

「そもそもネオ・ブラックゴートについては僕達の責任だ。君が命を賭ける理由はない」

 

私の命?

そんなもの、どうでもいい。

 

「私はね。そんなものよりも、もうこれ以上バトスピで人を殺した人間を作りたくないんだよ」

 

 

◇◆◇◆

 

【ハッカー目線】

 

氷田零に負け、渡雷烈にも負けた僕は自分のいた世界の狭さに気付かされた。

 

僕は自分が強いと思っていた。

周りは取るに足らない人間だと見下していた。

 

僕は自尊心に囚われて、いつの間にか自分を見失っていた。

 

僕は弱い。

だからもっと強くなりたいと願った。

 

僕達が負けて、ブラックゴートは潰れた。

それで決着がついたはずだった。

 

ネオ・ブラックゴート。

彼らはブラックゴートの後釜で、しかも殺人まで犯している連中だという。

 

そんな連中を放置して置くわけにはいかない。

僕達の作ったブラックゴートだ、その責任は取らないといけない。

そして遂に今日、あいつらを潰す機会ができた。

 

しかしそんな時に、彼女はやってきた。

 

「ハッカー、力を貸してほしい」

 

あの戦いの後チャンピオンとなり、更には世界1位まで昇りつめたカードバトラー氷田零。

 

よりによってこんな日に、と思ったが彼女もネオ・ブラックゴートと戦っている。

邪険にはできない。

 

「僕に何の用だ。……力を貸せ、だけでは分からない」

「ネオ・ブラックゴートについて。どーせ裏サイトへのアクセスには成功したんでしょ?」

 

彼女の指摘にドキリとする。

 

確かに僕はネオ・ブラックゴートの裏サイトへ加入している。

しかしそれは彼らを潰すためだ。

 

ネット上のサイトなんて、潰しても潰してもまた新しいのができるだけだ。

大元を倒さないと終わらない。

 

だから僕はネオ・ブラックゴートの()()()としてのアカウントを作った。

 

「……君の言う通りだ。君なら気づいてるかもしれないが、万が一にも誤解はしてほしくない。これは」

「ファイトマネーで獲られる金なんて、あいつらを潰すのに足りないでしょ」

 

やっぱり分かっていたか。

だが、この感じだと信用はされていない。

僕はあんな奴らの仲間だと思われたくない。

 

「リアルライフバトルは知ってるだろ。君が彼らに吹っかけられたバトルだ」

「知ってる」

「あれのファイトマネーは普通の賭けの何万倍だ。あれなら奴らを潰せる」

 

元々リアルライフバトルは金に困って何も賭ける物の無い者が挑む最期の賭博だ。

その対戦相手、つまりネオ・ブラックゴートの幹部には巨額のファイトマネーを出す必要がある。

 

「ネオ・ブラックゴートの幹部は5人。つまり5回バトスピに勝てば、奴らは賭けなんて出来なくなる。元手がないからな」

「ふーん。頭悪い計算してるね」

 

実際はそのバトルでの賭けで相手がさらに金を得ることになる。

ファイトマネーを奪っても、相手が更に金を得るのでは追いつくまでには5回じゃ足らない。

 

だが、それをさせない手はある。

 

「……僕達幹部がブラックゴート時代に稼いだ金がある。それを僕達にベットする」

 

ブラックゴート時代に稼いだ、今となっては誇れない金だが、これを元手にすれば更に相手から金を毟れる。

これで大元に入る金を少なくする。

 

「計算上、これで奴らを潰せる」

「まあいいや、じゃあ本題。()()()()()()()()()()()()()()()

「……は?」

 

コイツは何を言ってるんだ?

自分の命がかかってるんだぞ?

 

「悪いがそれは出来ない。これは僕達ブラックゴートの責任だ。君達を巻き込む訳には」

「ジョーシキ的に考えて、バトルで強い方が行った方が勝率は高くなるでしょ。だからさ、私が勝ったら私が行く、ハッカーが勝ったらそのまま行ってらっしゃい、でどう?」

「どう? じゃない!今回は保険もないんだ! そんな危険なことさせられるか!」

「それはこっちの台詞にもなるね。どうせないなら、初めから勝算のある私がやった方がいい」

 

なんだ?

彼女の言い分はもっともだ。

だけど何か、その裏に大きなものを感じてしまう。

 

「はい! じゃあ早速やろうか」

 

これ以上先は探らせまいというように、彼女はそこで無理やり話を断ち切った。

 

 

◇◆◇◆

 

 

「僕のターンからだ。スタートステップ、ドローステップ、リフレッシュステップ、メインステップ」

 

前に彼女とバトルした時はブラックゴートの変則ルールだった。

何のハンデもないバトルはこれが初だ。

 

「『ラクーンガード』を召喚。Lv2にする。ターンエンドだ」

 

そもそも何故彼女はいきなりこんなことを言い出した?

僕の知る氷田零は、危機に対して上手く立ち回り、なんとか回避しようとする奴だった。

()()()()()()()()、というのが適当か。

 

「メインステップ。『ドス・モンキ』を召喚。バーストをセットしてアタックステップ、『ドス・モンキ』の効果でBP+3000。アタック」

「ライフで受ける」

「ターンエンド」

 

まさか今回も何か秘策があるのか?

いや、ありえない。

負けたらその場で殺されて終わりだ、保険なんてかけようもない。

 

「メインステップ。『ミブロック・ソルジャー』を召喚。召喚時効果で『ドス・モンキ』を手札に戻す。ターンエンド。……なあ氷田零。何故急にこんなことを?」

「私のため」

 

今までの氷田零ではありえない行動に疑問を投げかける。

しかし返ってきた言葉はなんとも理解出来ないものだった。

 

「『アルマジトカゲ』『ドス・モンキ』を召喚。アタックステップ、BP+3000。『アルマジトカゲ』でアタック」

「ライフで受ける」

「『ドス・モンキ』でアタック」

「……ライフだ」

「ターンエンド」

 

第4ターンで早くも残りライフ2まで削られる。

 

「質問を変えよう。命をかけるなんて馬鹿げたことに、なんで自分から首を突っ込む」

「だから、私のため」

 

ダメだ。

会話が成り立っていない。

 

「……僕が勝ったら、詳しく話せ」

「いいよ別に、そんな条件なくても。私は彼女の願いを叶えたい。そして私以外の人にバトスピで人殺しをしてほしくない」

「人殺し?……ネオ・コレクターのことを言ってるのか?アイツの死はお前の責任じゃ……」

「違うよ。私が殺した人の話は、それよりもっと前のことだから」

 

氷田零の告白に思考が止まる。

 

「人を殺したって……キミは一体何をしたんだ?」

「あれ、バトスピ賭博なんてやってた犯罪者がよく言えるね。何人ものカードバトラーの人生を潰して言える台詞かな?」

「それは……」

「あなた達と同じだよ。私も昔に1人のカードバトラーの人生を潰した。あなたが私に手を汚してほしくないと思ってるのと同様に、私も私以外の人に手を汚してほしくないんだよ」

 

彼女の言葉は真実だ。

ブラックゴート時代、何人ものバトスピ人生を潰してきた。

ただ僕達を拒否した奴らがムカついたからと、様々な嫌がらせをした。

その結果バトスピを辞めたカードバトラーは多い。

 

「いや、だからこそ僕がネオ・ブラックゴートと戦わないといけない。これ以上関係ない人を巻き込まないためにも! メインステップ、バーストをセット。『ミブロック・パトロール』『ミブロック・ザ・ワン』を召喚。ターンエンド」

「ハッカーのいうそれって、結局は自己満足でしょ?」

 

自己満足。

ああそうだ。

実際に奴らを潰すだけなら僕よりも氷田零の方がいい。

 

だけど僕はそれを認めない。

これ以上、僕達の黒歴史に誰かを巻き込まない。

 

「それと同じ。私は自己満足のために、ネオ・ブラックゴートと戦いたい。理由はそれだけで十分なんだよ」

「……訳が分からない」

「分からなくていいよ。メインステップ『時統べる幻龍神アマテラス』を召喚。召喚時効果で『ミブロック・ザ・ワン』を破壊する」

 

氷田零の過去に何があったのか、僕は知らない。

でも、彼女の過去に「何か」があったのは間違いない。

彼女はその「何か」のために、ネオ・ブラックゴートと戦いたいんだ。

 

でも、それは僕らと同じ。

同じだからこそ、絶対に負けられない!

 

「相手による自分のスピリット破壊によりバースト発動! 『魁の覇王ミブロック・ブレイヴァー』! このバースト発動時に白のスピリットが破壊されていたため、召喚する!」

「あらら。じゃあこれでターンエンドかな」

「『魁の覇王ミブロック・ブレイヴァー』の効果。相手が1度もアタックしてこなかった時、相手のライフのコア1つをリザーブに置く」

 

『魁の覇王ミブロック・ブレイヴァー』は効果で相手のライフを減らす。

さらに次は僕のターン。

 

「メインステップ。『コテツ・ティーガー』を召喚。『魁の覇王ミブロック・ブレイヴァー』に合体(ブレイヴ)。そしてミブロック・ブレイヴァーとミブロック・パトロールをLv2に上げる。バーストをセットしてターンエンドだ」

「私のターン。メインステップ『獣装甲メガバイソン』を召喚。『時統べる幻龍神アマテラス』に合体(ブレイヴ)、そしてLv3にアップ。アタックステップ、合体(ブレイヴ)アタック」

「『ミブロック・ソルジャー』でブロック。破壊される」

 

これで彼女のスピリットは全て疲労状態。

このターンはこれ以上のアタックはない。

 

「ターンエンド。ここで『時統べる幻龍神アマテラス』の効果発揮」

「ターンエンドしてから?」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。『時統べる幻龍神アマテラス』は回復」

 

ターン終了時にもう一度アタックステップを行う? それになんの意味が……まさか!

 

自分がセットしたバーストを思い出す。『絶甲氷盾』、効果は「アタックステップを終了する」。

アタックステップを終了させても、またアタックステップがくる?

 

「『時統べる幻龍神アマテラス』でアタック」

「『ラクーンガード』でブロック」

「ターンエンド。『時統べる幻龍神アマテラス』の効果はターンに1回だから、これで本当におしまい」

 

セットしていたバーストも、一気にその安全性が失われた。『絶甲氷盾』を超えるアタック性能。

正直どうすればいいのかも分からない。

 

でも、

 

「僕は、どうしても君をあの場に送る訳にはいかない」

「そう。嫌なら勝てばいい。勝負の結果にどうこういうつもりはないよ」

 

そうだ、勝てばいい。

僕が勝てば全てが収まる。

 

「メインステップ。『氷の覇王ミブロック・バラガン』を召喚! ターンエンド」

 

『氷の覇王ミブロック・バラガン』『魁の覇王ミブロック・ブレイヴァー』の2体の覇王(ヒーロー)スピリットが並んだ。

相手が2回アタックステップを繰り返しても、これなら……

 

「メインステップ。『ワン・ケンゴー』を召喚。アタックステップ、『時統べる幻龍神アマテラス』でアタック」

「『ラクーンガード』でブロック。破壊される」

「この時点で追加のアタックステップは確定ね。『ワン・ケンゴー』でアタック。【激突】」

「『氷の覇王ミブロック・バラガン』でブロック」

「あー、そう言えばそうだったっけ。まあいいや、お互いに破壊で。これでアタックステップは終了、ターンエンド」

 

ここで『時統べる幻龍神アマテラス』の効果が発揮する。

 

「で、もう一度アタックステップだろ?」

「うん。でもアタックはせずに終了!」

「『魁の覇王ミブロック・ブレイヴァー』の効果でライフを1つリザーブに置く」

「いいよ。ライフ減少によりバースト発動。『龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード』の効果でミブロック・ブレイヴァーを破壊する。そしてLv2で召喚」

 

まさかミブロック・ブレイヴァーの効果でバーストが発動するとは。

しかも『龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード』

これで僕のフィールドに残ったのは『コテツ・ティーガー』のみ。

 

「ワン・ケンゴーのアタックを合体(ブレイヴ)スピリットで受けてくれれば、『コテツ・ティーガー』の効果でアタックステップ中にヤマトを召喚できたのに。惜しかったなー」

 

『コテツ・ティーガー』の合体(ブレイヴ)時、バトルで相手のスピリットだけを破壊した時、相手のライフのコア1個をリザーブにおく。

 

あの時ミブロック・ブレイヴァーでブロックしていたら、そのまま追加のアタックステップで負けていた。

僕は九死に一生を得た。

 

だけど、

 

「メインステップ。『ラクーンガード』『ミブロック・パトロール』を召喚。どちらもLv2に上げてターンエンド」

 

ミブロック・バラガンとミブロック・ブレイヴァーが破壊された時点で、僕に勝ち目はなかった。

 

「メインステップ。バーストをセット、ヤマトをLv3にアップ。アタックステップ、『時統べる幻龍神アマテラス』でアタック」

「『ラクーンガード』でブロック」

「『龍の覇王ジーク・ヤマト・フリード』でアタック。アタック時効果で『コテツ・ティーガー』を破壊、『ミブロック・パトロール』を指定アタック」

「『ミブロック・パトロール』でブロック」

「ターンエンド」

 

そして彼女の、3度目の追加のアタックステップ。

 

「『時統べる幻龍神アマテラス』でアタック」

「……その先が破滅だとしても、進む覚悟はあるのかい?」

「今いる地獄と未来の破滅、どっちにしても同じだよ」

「ライフで受ける。……僕の、負けだ」

「はい私の勝ち」

 

何が彼女の背中を押すのか。

過去に対する罪悪感と狂気的な破滅願望。

 

僕には彼女は救えない。

同じことをやろうとしていた僕には、彼女を救えない。

 

もし彼女を救える人がいるとしたら、それはーー

 

(渡雷烈。彼なら、きっと)

 

立ち去る彼女を救うため、僕はその希望の元へ走り出した。

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