レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン48 暴露

 

 

同一デッキ対決ということで使うのは構築済みデッキだ。

一重に構築済みデッキと言っても、この頃は属性開眼デッキというのも発売されて、6色全ての構築済みデッキがある。

ヒメ様が青中心デッキしか使えないことは世界大会で知ってる。

よって私達は青の属性開眼デッキ【サファイア】を使うことになった。

 

「じゃ、さっそくやろーか。デッキから4枚オープン」

「うむ」

 

お互いにデッキから4枚オープンして手元に置く。

手元に置く、といってもバトスピの記述的なそれではなくただ手札の内容を公開してるだけで、扱いは手札と同じにしてある。

 

まあどうせこのデッキには手札参照とか手元参照とかするカードがないから気にしなくてもいいんだけど。

 

「私のターンから。ネクサス『鉄壁なる巨人要塞』を配置。ターンエンド」

 

先攻1ターン目、私はネクサスを配置して終わる。

『豪拳のロジャー』や『重槍巨人ランス』も召喚できたけど、ヒメ様の手札を見るにそこまで早そうな感じはしない。

それならまずはネクサスでシンボルを確保する。

 

「手札が見えるバトルっちゅーのも面白いな。相手の次の手が読みやすくなるし、こっちもそれを考えて動かなあかん」

「まあね」

 

私の手札に『双首竜使いのバーンハード』があるのは見えてるし、あまりスピリットは並べたくないはず。

ヒメ様の手札なら『柱岩の海上都市』を配置してから『ストロングドロー』で手札交換するかな、私なら。

 

「『豪拳のロジャー』を召喚する。さらにネクサス『柱岩の海上都市』を配置じゃ。ターンエンド」

 

……まあいいか。

バーンハードはコスト3以下の相手のスピリット2体を破壊して、破壊したスピリット1体につき3枚破棄するカード。

スピリットを1体だけならまだダメージは少ない。

 

「(じゃ、【強化】しよっと)『重槍巨人ランス』をLv2で召喚。これで私のネクサスは破壊されない」

 

ランス自体は効果で簡単に死ぬけど、これでヒメ様は私のネクサスに触るのにワンステップ挟まないといけなくなった。

 

「さらに『鉄壁なる巨人要塞』をLv2にアップ。これで系統:「闘神」を持つスピリットに【粉砕】を与える」

 

私も『豪拳のロジャー』を召喚できるコアはあるけど、ここで召喚する意味を感じない。

このデッキに入っているドロソは『ストロングドロー』くらいなんだし、無為に手札を減らす必要もない。

 

「アタックステップ、『重槍巨人ランス』でアタック。【粉砕】にワンチャージ加えて3枚破棄」

「ライフで受けよう」

「ターンエンド」

 

ヒメ様のデッキを3枚とライフを1つ減らす。

まだ序盤だしLOかライフかは決めてなかったけど、並べて一気にライフを減らしてもよかったかなと後悔する。

 

いや、構築済みデッキで防御カードが少ないし、下手に攻めすぎるのも危険か。

でも防御カードがないのはヒメ様も一緒。うーん。

 

「『巨人小隊』を召喚する。さらにマジック『ストロングドロー』を使う。3枚ドローして2枚破棄じゃ。ネクサス『鉄壁なる巨人要塞』を配置する」

 

『巨人小隊』は自分の系統:「闘神」を持つスピリットが破壊された時、相手のデッキを2枚破棄する。

『豪拳のロジャー』の【強化】も踏まえると、本当に面倒くさい。

 

「『鉄壁なる巨人要塞』『豪拳のロジャー』をLv2に上げる。ターンエンドじゃ」

「? なんでヒメさんは『巨人小隊』を召喚してアタックせんかったんや?」

「コジローこそ何を言うか。何故ここでアタックする意味がある」

 

コジローの指摘はもっともだ。

私は『双首竜使いのバーンハード』を見せている。

私にターンを返したら、バーンハードを召喚して破壊されるだけだろーに。

 

ちなみに私なら、ドローステップで引いていた『大巨人エウリュトス』を召喚して次のターンからその高いBPで殴ってたかな。

 

「メインステップ。まずは『豪拳のロジャー』を召喚。そして『双首竜使いのバーンハード』を召喚。召喚時効果でヒメ様のロジャーと巨人小隊を破壊する。1体につき3枚、2体破壊したので6枚破棄。さらにツーチャージで+2枚、計8枚破棄だね」

「『巨人小隊』の効果でお主のデッキも2枚破棄じゃ。【強化】により+1枚、3枚破棄する。そして『豪拳のロジャー』の破壊時効果で『重槍巨人ランス』を破壊する」

 

これでヒメ様のフィールドにスピリットはいなくなった。

破壊時効果を受けたけど、それでもヒメ様の方が全体として打撃を受けている。

 

「やっぱこうなるわな。どうせコスト3以下を2体並べた時点でレイがバーンハードを召喚するのは見えてたやろ」

「む、むう……」

 

ヒメ様は見えているのにゲームに縛られてる。

でも外から見てるコジローは、ヒメ様の動きがおかしいことを指摘した。

 

これが続けば、コジローなら何かあると気づいてくれる、はず。

 

「アタックステップ、『豪拳のロジャー』でアタック。ネクサスの効果で【粉砕】が与えられてるから効果で1枚、ワンチャージ加えて2枚破棄する。フラッシュはないよね?」

「ない。ライフで受ける」

「『双首竜使いのバーンハード』でアタック。同2枚破棄」

「それもライフで受ける」

「ターンエンド」

 

ヒメ様の残りライフは2。

いつも通りなら、CPUの動きはここからさらに酷くなる。

 

「コジロー、ここからは私のプレイングは気にせず、ヒメ様だけを見てて。そうすれば私が何が言いたいか気づくと思うよ」

「ん、分かったわ。ヒメ様やな」

「メインステップ。『槍兵のジェフリー』を召喚じゃ。『柱岩の海上都市』の効果で2枚破棄する。さらに『大巨人エウリュトス』を召喚じゃ。召喚時効果でコスト3以下のスピリット全てを破壊する」

「……なあヒメさん、エウリュトスから召喚したらあかんかったのか?」

「なぜそんなことを問う? 妾がこの方がよいと感じたまでじゃが」

 

ヒメ様の返答を聞いたコジローがちらりとこちらを見る。

私は頷くことで返事をした。

 

『大巨人エウリュトス』の召喚効果は召喚したプレイヤーも巻き込む。

今回の場合、私の『豪拳のロジャー』、そしてヒメ様がついさっき召喚したばかりの『槍兵のジェフリー』が破壊された。

コジローが指摘した通り、召喚の順番が逆なら、ジェフリーは破壊されなかった。

 

「そして『柱岩の海上都市』の効果で2枚破棄じゃ。『大巨人エウリュトス』をLv2に上げてターンエンドじゃ」

 

ヒメ様の最後の手札は『デルタクラッシュ』。

「闘神」がスピリット3体いないと効果を発揮しない、残念なマジックだ。

当然エウリュトスしかいないヒメ様はあのカードは使えない。

 

さて、私のターンか。

 

「マジック『ストロングドロー』で3枚ドローして2枚破棄。『槍兵のジェフリー』『二刀流のアムブローズ』を破棄」

「え、それを破棄するんか?」

「確かにこれはミスだよ。だってこの子達を召喚すれば数で勝てるんだから。でも今回はそれが目的じゃないし。ヒメ様に次のターンを回したいの」

 

今回の目的は勝つことじゃない。

 

私の目的は彼らの常識がおかしいと気づかせることだ。

バトスピをしている時だけCPUに寄る、ということは外からバトスピを見ていたらその違和感に気づける可能性がある、ということになる。

 

大会とか、観客がいる場でのバトルもあったけど、あれは不正防止のためプレイヤーの手札は観客に伏せられている。

つまり外から見ても「そうする手札なんだろう」で思考停止されるわけだ。

そのためにこの超変則ルールを設けた。

 

「『柱岩の海上都市』を配置。そして『巨人小隊』を召喚。『鉄壁なる巨人要塞』の効果で「闘神」を持つスピリットに【粉砕】が与えられて、【粉砕】を持つスピリットが召喚されたので『柱岩の海上都市』の効果で2枚破棄する」

 

コジローの中ではまだ違和感程度。

おかしいと思っても突っ込むにはあまり確証がない、といった感じだろう。

だから私もあえて手を下げて、ヒメ様にもっとバトルをさせる。

CPUの、あの理解不能なバトルを。

 

「アタックステップ、『双首竜使いのバーンハード』でアタック。【粉砕】で1枚破棄」

 

「エウリュトスでブロックじゃ。BPはこちらの方が高いぞ」

「バーンハードは破壊される。「闘神」が破壊されたので『巨人小隊』の効果で2枚破棄。『巨人小隊』でアタック、【粉砕】」

「ライフで受ける」

「ターンエンド」

 

ヒメ様のライフは残り1。デッキも10枚を切った。

対して私はライフはまだ5つ全て残っているし、デッキも20枚以上残ってる。

キャッスル・ゴレムが入ってるデッキならともかく、構築済みデッキならこの差は覆らない。

 

「マジック『ストロングドロー』じゃ。3枚ドローして2枚破棄する」

 

ヒメ様はやっと『デルタクラッシュ』を捨てることができた。

引いてきたカードは『魔剣使いのクローヴィス』『巨人帝王アレクサンダー13世』。

どちらもデッキに1枚しかない強力なカードだ。

 

「『魔剣使いのクローヴィス』を召喚する。召喚時効果でお主の『鉄壁なる巨人要塞』を破壊することでお主のデッキを7枚破棄じゃ。さらに『柱岩の海上都市』で2枚破棄する。クローヴィスをLv2に上げてターンエンドじゃ」

「ヒメさん、『巨人帝王アレクサンダー13世』は召喚せんでええのか?」

「召喚しようにも、もうリザーブにコアがない。コアがなければ召喚もできんわ」

 

コアがないから。

そう言えばそうなんだけど、それはあくまでリザーブの話。

 

フィールドではエウリュトスの上にコアが4つも乗っている。

 

「(意地でもスピリット上のコアを外さないからね、CPUは)ドローステップ」

 

お、私もアレクサンダーを引いた。

ヒメ様の残りデッキは5枚。アタック時効果でジャスト0だ。

 

「『巨人帝王アレクサンダー13世』を召喚。召喚時効果でクローヴィスを破壊する。アタックステップ、アレクサンダー13世でアタック。デッキを5枚破棄」

「『大巨人エウリュトス』でブロックじゃ」

「アレクサンダーは破壊、巨人小隊の効果は発揮しない。『巨人小隊』でアタック」

「フラッシュはない。ライフで受けよう」

「はい私の勝ち」

 

デッキ0かつライフ0。

あと手札も0だったらゼロ勝ちだったね。

 

「……ふふ、普段青デッキを使わぬレイに同じ条件で負けるか」

「そりゃ負けるやろ、あれだけ変な動きすれば」

「む、何を言うかコジロー。妾は全力でバトルをした。それを貶すようならば友人とて容赦せんぞ」

「いやエウリュトスの召喚は間違いなく悪手やったやろ! その前もバーンハードが見えとるのにスピリットを並べるわ、何考えとるねん!?」

「さて、じゃあ今のバトルを踏まえて話を続けようか」

 

私は喧嘩になりそうな2人を止めて話し始める。

コジローもヒメ様も腰を下ろすが、互いに顔を見ようとしない。

 

「ヒメ様、風花から私の元の世界がどんな所だったか、こことの差は何か、とか聞いたよね?」

「うむ。バトスピがあまり盛んでないことと、オダイハマが存在せぬことじゃったか」

「うん。あと多分千樺町もないと思うよ。そんな有名所じゃない町の名前なんて覚えないだろーし」

「それが今までの話となんの関係があるっちゅーねん。2つの世界の差を説明されても、何もピンと来んぞ」

 

コジローは語気が強いまま私に質問をしてくる。

2つの世界の差、それは全て()()()()()()()()によって説明がつく。

 

「……千樺町という小さな町に、1人の少年がいました。彼の名は渡雷レツ。彼はバトスピチャンピオンシップで黒マントの男に負けた夢をきっかけにチャンピオンとなることを目指します」

「それはレツの話やろ。昔聞いたわ。それが今までの話となんのーー」

「バトスピを始めたレツはグングンと成長し、ついにはコアリーグで優勝するまでになりました。しかしコアリーグで優勝した彼に、ブラックゴートという謎の集団が目をつけたのです」

「……確かにコアリーグはレツの優勝じゃった。ブラックゴートも、優勝したレツを仲間にしようとしておった」

「レツは襲ってくるブラックゴートの連中を返り討ちにし、ついには彼らのアジトに乗り込み壊滅させました。そしてその後に行われたチャンピオンシップ決勝戦、夢に出てきた黒マントの男、加賀美緋色に勝利しチャンピオンとなったのです」

「待てや! チャンピオンシップで優勝したのはレイ、お前やないかい!」

「決勝戦はレツ対レイ、加賀美緋色は初戦にレイに負け……て」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。千樺町も、オダイハマも、全てそのゲーム内で登場した地名」

 

まだ直接的に「ここはゲームの世界だ」とは言ってないが、頭のいいコジローはもちろん、ヒメ様も察しがついたらしい。

 

「……そのゲームには、ワイらも出てくるんか」

「うん。だから私はコジローやヒメ様のことを、会う前から知っていた」

 

ここで私の話を冗談だと笑ってくれたらどれだけ楽だったか。

そんなのは嘘だ、ありえないと断じて笑い飛ばしてくれたらどれだけ辛い思いをせずに済んだか。

 

でも、それは逆に彼らが私を信じてくれているということなんだ。

なら私も全てを打ち明けよう。

 

「それはつまりーーナナシやハッカーのことも知っておったわけじゃな?」

「うん。ブラックゴートの首魁がナナシだってことも知ってたし、ヒメ様の別荘に篭ったら襲ってくることも知ってた」

「……なら、ワイとレイが初めて会った時に、ワイをレツにぶつけようとしたのも、そのゲームと帳尻合わせるためやったんか?」

「あ、それは違う」

 

それはただレツに経験値を積ませて私と戦えるレベルまで引き上げようとしただけ。

ゲームとはなんの関係もない。

 

「この世界で私は何度もゲームの流れに逆らってるし、ゲームの流れに関係なく動いてる。私が無理やりゲームのシナリオに誘導したことはないよ。……というか、今話すことはそれじゃないでしょ」

「なんや、言うてみい」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。あ、なんで私が勝ち続けるのか、その理由について説明するってことね」

 

コジローはそれにハッとしたけど、ヒメ様は何を言っているのかわからない、という風だった。

わざわざ後に説明を付け足すくらいには、バトルをした本人は気づかないらしい。

 

「コジローもゲームはよくやるでしょ? ゲームのコンピューター対戦ってあるじゃん、それでコンピュータに負けたことある?」

「……よっぽどない。初めてやるゲームならともかくやが、慣れたゲームならまず負けることはないわ」

「待て、それはつまりーー」

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

 

彼らが私に勝てない理由と、その要素を提示する。

 

「……すまぬ、妾は少し頭冷やしてくる。情報量が多すぎる……」

 

ヒメ様は立ち上がり、ゆっくりとした動きで外に出ていった。

「この世界がゲームであなたはNPCです」なんて急に言われたら、混乱するのも当然だ。

 

「…………」

「…………」

 

広い部屋に私とコジローの2人だけ。

なんていうか、かなり気まづい。

 

「……なあ」

「ん? なに?」

 

沈黙を破ったのはコジローだった。

蚊が鳴くような声だった。

私は聞き漏らすまいと、聴覚に神経を集中させた。

 

「……いや、やっぱええわ」

 

どれだけ注意していも、それ以降私の耳にコジローの声は届いてこなかった。

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