レイちゃんは強いカードバトラーと戦いたい   作:OZo-2

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ターン50 剣刃環境

 

 

「レイ!」

「あれ、レツじゃん。偶然だね」

 

オダイハマのカフェからの帰り、千樺町の駅でマドカと別れてすぐ、私はレツに声をかけられた。

レツは基本ここにいる、みたいな場所がないから会えたのは本当に偶然だ。

 

レツは鬼気迫る表情でぐんぐんと近づいてくる。

私達の距離が1メートルを切ったくらいで、こんな近くでそんな声出すなよと言いたくなるような大声で話しかけてきた。

 

「本当なのか!?」

「え、なにいきなり。落ち着いてよ」

「コジローから話は聞いた! レイが別の世界から来たって本当なのか!?」

 

あれ、コジロー話しちゃったのか。

 

まあ私が「この世界(ゲーム)の主人公はレツ」って教えちゃったしね。

それならレツに話を聞きに行くのも分かるか。

 

「本当だよ。だから昔から未来予知みたいなこともしてたでしょ。コジローのこととか、ブラックゴートのこととか」

「? 別の世界から来たことと、それって何か関係あるのか?」

「え」

 

あれ? え、コジローから話聞いたんじゃないの?

私がゲームとしてこの世界を知っていた、て話を聞いたのなら今ので分かるはず……あ、さてはコジローそのことは黙ってたな。

 

「えっと、コジローから聞いたのって、私が別の世界の人間で、今度元の世界に帰るって話だけ?」

「そうだな。ってそんな確認はいいんだよ! どーゆーことなんだレイ!」

 

よし裏がとれた。

どうせ話すなら全部話せよコジロー……そういうとこだぞあのサボり魔め。

 

「コジローの言ってた通りだよ。私はこの世界では満たされない。私は私のために元の世界に帰る」

「満たされない? 何言ってるか分かんないけど、俺はレイと離れ離れになるなんて嫌だぞ!」

「落ち着け。話をしよう」

「お、おう……」

 

荒ぶるレツの肩を抑えて無理やり落ち着かせる。

感情だけで動いてる相手にまともに話をするのも無駄なだけだ。

まずは落ち着くところから。

 

「この世界じゃ私はバトスピを楽しむことが出来ない。アゲハとのバトルで思い出したんだよ。私はバトスピを楽しみたいってね」

「そんな……今まで楽しんでなかったのか?」

「ない。足りなかった。この世界のバトスピはバトスピじゃない。バトスピのような何かだよ」

「バトスピみたいな何かってなんだよ! 何が足りないっていうんだよ!」

「カードバトラーの多様性と環境の理解」

 

前者にレツは関係ない。

みんな同じ動きをしてくる相手なんて、そんなの同じ人とデッキを変えて遊んでいるに等しい。

同じ人相手なら、経験的に「この人はここでアタックしてくる」「ここではアタックしない」と()()()()()()できる戦術をとってしまう。

つまり慣れ、マンネリが発生する。

 

まあこの世界の場合、それ以前の問題なんだけど。

 

そしてレツのことを言ってるのは後者だ。

レツはこの世界で唯一CPUじゃない貴重な人間だ。

でも、レツはこの世界しか知らない。

井の中で生きていたために、海を知らない。

 

「レツに足りないのは知識、経験、知恵。いい種があっても土が貧しかったり水や日光が不足してたら育たないんだよ」

「そんなの分からないだろ!」

「分かるんだよ。世界大会の時に分かった。()()()()()()()()()()。それは私のやりたいことじゃない」

 

勝つ勝たないは割とどーでもいい。

大事なのは楽しいか楽しくないかだけだ。

 

Lv100のポケモンで、最初の草むらでバトルしていて楽しいか、というようなもの。

私はレート戦がしたいんだよ。

 

「でも、それは……」

「ま、やってみれば分かるよ。カードに対する理解がどれだけ重要なことなのか、てね」

 

 

◇◆◇◆

 

 

「さてやろーか。私は後攻でいいかな」

 

剣刃編はカードパワーがおかしくなり始めた時期だ。

【白紫】【青緑】と言った【連鎖】により強力な効果を発揮するデッキがある。

 

今回私が使うのはその【白紫】。

頭のおかしいグリフォンとザンデで殴るデッキだ。

 

「『ダーク・ディノニクソー』をLv2で召喚! ターンエンド」

「私のターン。『ボーン・ダイル』を召喚。ボーン・ダイルはメインステップに白のシンボルを2つ追加する。4コスト3軽減、1コストで『ジャコウ・キャット』を召喚。召喚時効果でダーク・ディノニクソーを手札に戻す。【連鎖】効果で1枚ドロー」

 

やっぱり強いな『ボーン・ダイル』と『ジャコウ・キャット』。

これが後攻1ターン目にできるってのがもうやばい。

 

「アタックステップ、『ボーン・ダイル』でアタック」

「ライフで受ける」

「『ジャコウ・キャット』もアタック」

「それもライフだ」

「ターンエンド」

 

レツのライフを2つ減らして、残り3つ。

手札にダブルシンボルの『冥府三巨頭ザンデ・ミリオン』とシンボル持ブレイヴ『スカル・ガルダ』があるから、これで3点取って終わり。

 

「『ダーク・ディノニクソー』を再召喚。そしてネクサス『黄昏の暗黒銀河』を配置。ターンエンド」

 

レツのデッキは赤連鎖かな。

いや、今までのレツのデッキからして、ツルギ君みたいな光と闇の混合な気がする。

 

「(ま、どっちでもいいや)『スカル・ガルダ』を召喚。召喚時効果、1枚ドロー。『ジャコウ・キャット』に合体(ブレイヴ)、Lv2にアップ。『旅団の摩天楼』を配置、1枚ドロー。ターンエンド」

「俺のターンだな! 『輝龍シャイニング・ドラゴン』を召喚! 召喚時効果で『暗黒の魔剣ダーク・ブレード』を召喚する! 召喚時効果で『旅団の摩天楼』を破壊して1枚ドロー。さらにシャイニング・ドラゴンに合体(ブレイヴ)! Lv3にアップだ!」

 

やっぱりツルギデッキか。

「剣使」で固めたデッキ、というよりは構築済みデッキを組み合わせて作った感じだよね。

 

「アタックステップ、合体(ブレイヴ)スピリットでアタック! アタック時効果で『ボーン・ダイル』を破壊、さらに『ジャコウ・キャット』を指定アタックだ!」

「『ジャコウ・キャット』でブロック。破壊される」

「ターンエンド」

 

シャイニング・ドラゴンとダーク・ブレードの2枚で私のフィールドは焼き尽くされた。

……ま、ブレイヴの『スカル・ガルダ』が残ったからいいや。

 

「メインステップ。『ソードール』を2体召喚。そして『冥府三巨頭ザンデ・ミリオン』を召喚する。不足コストはソードールより確保」

「ダブルシンボル……いや、トリプルシンボルか」

「『スカル・ガルダ』を『冥府三巨頭ザンデ・ミリオン』に合体(ブレイヴ)。アタックステップ、合体(ブレイヴ)スピリットでアタック」

「そのアタックは『ダーク・ディノニクソー』でーー」

「フラッシュタイミング、マジック『ヴァニシングコア』。相手のスピリットのコアを1つリザーブへ置く。さらに相手の緑スピリットがいるなら、そのコアはリザーブではなくボイドに置く。対象はもちろん『ダーク・ディノニクソー』だよ」

 

『ヴァニシングコア』は【連鎖】でコアを増やせるんだけど、白シンボルがないため不発。

まあそれがなくてもこのトリプルシンボルのアタックで終わる。

 

「……ライフで受ける」

「はい私の勝ち」

 

6ターン、かなり速攻で決まったね。

 

「これが白紫。そして次に使うのは青緑ね。やれる?」

「……いいさ! やってやるよ!」

 

デッキを持ち替えて再びレツとバトルをする。

白紫が全部強いとしたら、青緑はキーカードが強い。

序盤にしっかり盤面を固めれば、ウスバシードラで終わる。

 

「『黒蟲の妖刀ウスバカゲロウ』が合体(ブレイヴ)した『森羅龍樹リーフ・シードラ』でアタック。マジック、バーストは使えなくてバトルで勝ったら3点貫通ね」

「……フラッシュはない」

「あ、じゃあ『ストームアタック』で回復」

 

そして実際その通りに終わった。

途中経過? いらないでしょ。

ウスバシードラは頭おかしい、それだけでいいです。

 

「はい私の勝ち」

「リーフ・シードラでマジックバースト制限、しかも緑連鎖でバトルに勝ったらライフ2個。ウスバカゲロウでBP+5000してシンボル1つ追加、しかもバトル勝利で1個トラッシュ。BP18000以上のスピリットがいなきゃ1回のアタックでライフ3個確定って……」

「強いでしょ。私がいた世界はこれが普通だったの」

 

落ち込んでいたレツが、「私のいた世界」と言った途端に真剣な目で真っ直ぐこちらを見てきた。

 

「私は元の世界の知識で白紫や青緑が強いことを知ってる。でもこの世界で白紫とか青緑とか使ってる人見ないでしょ?」

「……ああ」

「だから帰る。ここにいてもただの知識チートなだけだし」

 

なんなら知識チートなしでも負けないし。

私とレツは経験値の差だけど、他の人とはそれ以前の問題だからねー。

 

「……レイの言い分はわかった」

「でしょ? なら」

「でも!」

 

レツは私の言葉を遮って話を続ける。

それは私が昔諦めた話だった。

 

「3日だ、3日待ってくれ! それまでに()()()()()()()()()()()()()()()()()! マドカも、コジローも、ヒメも、みんなレイに勝てるくらい強くなってやる!」

 

みんなを強くする?

 

「……できるの?」

「やるさ。俺はレイと別れたくない」

 

世界を成長させる。

それは私が考えたけど無理だと諦めた方法だった。

 

「……本気で言ってる?」

「ああ」

 

ーーさすが主人公。

夢を魅せるのが上手い。

 

私はその夢は諦めた。

だけど「この世界で」「レツが言うと」なんとも不思議にそうなりそうな気がした。

 

「いいよ、それで」

 

レツによって魅せられた希望。

私は「この世界に希望がない」として元の世界に帰ることを決めた。

 

なら私のやることは、その希望を完全に否定して堂々と帰還することだ。

 

「私も本気でいくよ。この世界の氷田零じゃなく、異世界の水野風花として。異邦人として、私は本気でこの世界を否定する」

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