ACE COMBAT7 AFTER STORY/IF 王女様の戴冠式 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
ユージア大陸の西の果て、エルジア王国。その首都であるファーバンティ近郊に、1つの空軍基地がある。そこには、エルジア空軍主力戦闘機ラファールCやユークトバニアからの輸入機であるSu-37やSu-30、ユージア大陸停戦監視軍(IUN-PKF)のタイフーンやF-2A、そしてオーシア空軍のF-15CとE-767が駐機していた。
オーシア連邦やユークトバニア連邦、エメリア共和国からの復興物資を満載した輸送機がひっきりなしに離着陸していき、管制や兵站の人間が慌ただしく動く中、戦闘機パイロットは暇を持て余していた。
戦争が終わり、緊迫感の無いアラート待機が延々と続く。輸送機優先の為に滑走路どころか駐機場も空かず、戦闘機や早期警戒管制機は格納庫に仕舞われっぱなし。
8機ある内の3機のF-15C イーグルは、11月のハッシュ作戦を最後に飛んでいない。残りは、4機は10月31日のビーハイブ作戦、1機は元他隊の予備機という状態だ。しかしいずれも、スタータースイッチを入れれば補助動力装置が始動するし、燃料も武器も満載している。主翼には短射程多用途ミサイル、主翼と胴体には中射程マルチロック空対空ミサイルがぶら下がっている。
そんな8機のイーグルは、いずれも垂直尾翼に「WW」のテイルコードが振られている。しかし、その内の1機はテイルコードが小さく、代わりに3本の爪痕と、獣の爪、そしてリボルバー拳銃を咥えた狼のイラストが描かれていた。
オーシア国防空軍 長距離戦略打撃群 第124戦術戦闘飛行隊(コールサイン・ストライダー)の1番機、TACネーム・トリガーの乗機だ。爪痕を持つイーグルは、今もその強力な爪を研いで主を待つ。
一方の主、トリガーはというと、基地の食堂でスマートフォンを弄っていた。その画面にはニュースサイトが出ているが、どれもユージア大陸のマスコミだ。通信衛星が破壊された今、インターネットもユージア大陸の物しか見れない。オーシアやユーク、アネア大陸についての情報なんて入ってこない。オーシア本土との通信もスプリング海に展開した艦隊と早期警戒管制機でリレーしてどうにか、という状態だ。その回線にゴシップなんて紛れている訳が無い。
トリガーはため息をつき、スマートフォンの電源ボタンを押す。
「よぉ、いつにも増して辛気臭い顔だな」
話し掛けられ、声がした方を見ると見慣れた人物が2人いた。片方は金髪に口髭の男、もう片方は長い黒髪を後ろで1つに纏めたヘアスタイルの女だ。
「落とす獲物が無くなって、生きる活力が無くなったか? 隣、座るぞ」
女がそう言って、トリガーの近くに座った。その向かいに金髪の男が座る。2人は、トリガーと同じストライダー隊のパイロット、カウントとフーシェンだ。2人とも、食事の載ったトレーをテーブルに置いていた。カウントはケバブサンド、フーシェンはサンドイッチという組み合わせである。
「トリガー、食事はいいのか? サンドイッチやハンバーガーは売り切れちまったぜ」
「もう食ったよ」
「早いな、地上でも食らうのは早いときたか」
カウントとトリガーが軽く言葉を交わすと、聞き慣れた声が響いた。
《基地内にいるロングレンジ隊員及びミス・ミードは第3ブリーフィングルームに来てくれ》
それは、長距離戦略打撃群の司令官の声だった。カウントとフーシェンは肩を竦める。
「何てこった、まだ食ってねぇのに」
「ま、食いながら行こう。あのトーンじゃ、出撃では無さそうだし」
2人は立ち上がり、それぞれのトレーを持ち上げる。手持ち無沙汰なトリガーは、作業着のポケットに手を突っ込んだ。