ACE COMBAT7 AFTER STORY/IF 王女様の戴冠式 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
5日後、12月19日、午前8時04分、ファーバンティ近郊のエルジア空軍基地。
ここに、数台のM1151 ハンヴィーが止まっていた。
「何で軍用車両なんだ。式典に行く車じゃねぇ」
「機関銃が外されているのが唯一の良心だな。だが、銃塔はそのまま、発煙弾発射機や対IED(路肩即席爆弾)用電波妨害装置もついてる」
「これじゃあ紛争地帯に出向く武器商人だぜ」
「文句が多いな、カウント。せっかく食事――戴冠式に呼ばれていくというのに」
「本音が漏れたぜロングキャスター、夕食会しか考えてないだろう」
「そ、そんな事は無いぞ」
「嘘こけ」
ハンヴィーの周りには、軍服に身を包んだロングレンジ部隊がいた。
トリガーを始め、ロングレンジ部隊はどのように乗るのかを決める。
「じゃ、トリガーとロングキャスターが1号車、あたしとカウント、ランツァが2号車、3号車が司令とイェーガー、テイラー、4号車はフェンサー、スカルドでいいか?」
フーシェンがメモを読み上げると、全員が頷いた。すると、フェンサーが疑問を投げ掛ける。
「そのメモは?」
「あぁ、司令が考えたメモだ。ちなみに、1号車にミス・ミードが乗る」
「トリガーと相席か」
「なぁ、何でスクラップクイーンなんて呼んでたんだ?」
フーシェンの質問に、カウントが答える。
「どんな状態の戦闘機だろうと、それを修理しちまうからさ。例え、残骸であってもな。完璧な修理をした上で、魔改造までやっちまう。そんな女さ。ザップランドにいた時は、周りとつるむ事をしなかったから、皮肉を込めてクイーンなんて呼んでたが」
「ザップランド……ミスターXに追われた後、ダイバート(代替着陸)した基地か」
イェーガーが思い出したように言う。すると、ランツァが口を開いた。
「彼女、軍人じゃないんだろ? 何で戦闘機の整備なんてやってんだ? 民間の技師か?」
「さぁな。俺も知らん。ただ言えるのは、腕は確かって事だけさ」
「その上、耳もいい」
突然の声に、ロングレンジ隊員達が振り返る。そこには、真っ赤なドレス姿のエイブリル、真っ青な制服姿のイオネラ・アルマ姉妹が立っていた。
エイブリルのドレス姿に、カウント始めロングレンジ隊員達はポカーンと口を開ける。しかしトリガーが、口を開いた。
「似合ってるじゃないか」
突然の褒め言葉に、エイブリルの脳内回路はショートする。
「な、何言ってんだ大馬鹿野郎!」
「?」
エイブリルの暴言に首を傾げるトリガーに対し、カウントが肩を叩く。
「よぉ、天然たらし」
「誰がたらしだ」
先頭のハンヴィーの助手席にロングキャスター、後部座席にトリガーとエイブリル、そして運転席には軍服を着たメガネの女性が座っていた。彼女が着ているのはオーシア空軍のではなく、オーシア陸軍の制服だ。
「お久しぶりね、ロングレンジ部隊」
運転席の女性がそう言いながら、シフトレバーを「P(パーキング)」から「D(ドライブ)」に入れる。
「その声……ドラゴンブレス作戦のマコ二ー少佐ですか?」
「覚えておいてくれたの? 確か、ロングレンジ部隊のAWACS(早期警戒管制機)の管制官だったわよね?」
「ええ。しかし、何故少佐が運転手を?」
その女性――ディアナ=マコ二ー少佐――はアクセルペダルを踏み込みながら答える。
「ロングレンジ部隊の花道を飾りたい、その程度の理由じゃ駄目かしら?」
「なるほど、それで運転手を」
「あとついでに戴冠式の見学も出来ないかなーって」
「そっちが本音か、ミセス・マコ二ー?」
「ミセスだなんて、私未婚よ? 小娘ちゃん」
「おっと失敬」
そんなやり取りの最中、マコ二ーはルームミラーをちらりと見る。そこには、ドレス姿でそわそわするエイブリルと、無言で窓の外を見るトリガーが映っていた。
「そちらの無言な彼は?」
「彼はストライダー隊1番機、TACネーム・トリガーです」
「そう、彼が有名な『三本線』ね。結構若いのね」
「我らの隊にいる若い連中は、どれも腕自慢が揃ってますよ、少佐」
「ええ、分かってるわ。あなた達がいなければ、私の墓標はあの遺跡になってた」
そんな話が続く中、ハンヴィーの車列は繁華街に入っていった。
瓦礫は片付けられたとはいえ、建物の再建は遅遅として進んでいない。それでも、〈ユリシーズの災厄〉こと水没地区を覆い隠すように並んだ高層ビル群は大規模な再開発が成されている。恐らく、彼らはまだ見たくないのだろう、エルジアという国に降り掛かった全ての災難の原因を。
そんな街中の至る所に、軍隊がいる。FA-MASを持ったエルジア兵もそうだが、M4A1を手にしたオーシア兵、L85A2や89式小銃を持ったIUN-PKF派遣兵、更にAK-12を装備したユーク兵やARX-160を手にしたエメリア兵までもいる。軍用車両も、色んな国の物が勢揃いしている。さながら、多国籍合同演習のようだ。
今や軍用車両しか通行できない高速道路に乗り、王宮を目指す。上空を、哨戒のKa-60汎用ヘリが飛んでいく。ユークトバニアもかなりここの復興事業に肩入れしているようだ。
フリフリした装飾に、胸と背中ががら空きというドレスに慣れないエイブリルは、気を紛らわす為に外を見る。そこには、無惨に破壊され、原型が分からなくなったイージスアショア防空システムの残骸があった。