ACE COMBAT7 AFTER STORY/IF 王女様の戴冠式 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
オメガ11ヽ(0w0)ノイジェークト!!
飛んでいる。
狭く窮屈な空間に、シートベルトでしっかりと体は拘束されている。足を伸ばそうにも、すぐそこにペダルがある所為で伸ばせない。そして、右手は操縦桿、左手はスロットルレバーを握っている。
――操縦桿だって?
頭を上げれば、そこは空だ。黒みがかった青。綺麗とはいえないが、吸い込まれそうな色。じいちゃんが言っていた、戦闘機でしか見れない空の色、ダークブルー――
「アビー、チェック6、チェック6! 赤いSu-33が喰らいついた!」
あたしは言われるまま、後ろを振り返る。くそっ、酸素マスクのホースが鬱陶しい。
赤と黒の模様のSu-33、そういや伯爵様が444で乗ってたのもSu-33だったな。
甲高い警告音、レーダースコープに目を落とせば白い棒が迫ってる。ミサイルか。
《ガルーダ1、ミサイルだ! ブレイク、ブレイク!》
言われなくても躱してやる。フレア放出、一気に機体を上昇させて減速させる。急旋回、敵機が視界に入る。Su-33に、ヘルメットバイザーのマーカーが重なる。オフボアサイト交戦能力は便利だな。
「ガルーダ1、FOX2!」
――あれ、ガルーダ1? ガルーダ1って誰だ? それに、こんな機動、あたしは――
《ゴーストアイから全機。いいぞ、グレースメリア上空のエストバキア機は減っている。このまま――待て》
《どうしたゴーストアイ!?》
《レーダーに新たな反応! かなりの大型機、しかも何かを発射した!》
《何かって何d――》
その刹那、空が光った。
《駄目だ、コントロール不能! イジェクトする!》
《オメガ11丶(0w0)ノイジェークト!》
《ああ! ジャン=ルイがやられた!》
《落ち着けジーン! 指揮を引き継げ!》
《今のは何だ!?》
あたしは、呆気に取られる。何だ、何が起きた。
《ゴーストアイからエメリア空軍機全機に告ぐ。防空司令部及び政府緊急対策室は首都グレースメリアの放棄を決定、直ちに西へと針路を取れ。全機、撤退だ》
《タリズマン、ここは引こう。これ以上戦っても無駄に損耗するだけだ》
あたしの脳は追いつかない。何が、どうなっている。
「ガルーダ1、コピー」
しかし体は勝手に動く。そして、酸素マスクを取り、バイザーを上げた。口の中はカラカラだ。締め付けてくる耐Gスーツの所為で汗だくになり、気持ち悪い。
ふと、コクピットの計器を眺める。大型のヘッドアップディスプレイに3基の多機能ディスプレイ、両足の間に生える操縦桿――こいつは、オーシアの戦闘爆撃機F-15E ストライクイーグルじゃないか。確か、エメリアやユージア大陸の何処かにも輸出されていたはず。そして、こいつは複座機。という事は、後ろに誰かいる。
ゆっくり振り向くと、あたしは目を見開いた。そりゃそうだろう、なんせあたしの相棒として一緒に飛んでいたのは、ローザ=コゼット=ド=エルーゼ、あのじゃじゃ馬王女様だ。しっかりと耐GスーツとJMHCS(ヘッドキューイング機能付ヘルメット)を被ってる。酸素マスクは外しているが。
「どうしたの、アビー」
「なぁ、何であたしらは飛んでいるんだ?」
「どうしたの突然。エストバキア機に対してスクランブルしてスクラップクイーン」
「はぁ?」
突然の単語に、あたしは混乱する。
「――ップクイーン、起きろ。着いたぞ」
エイブリルは目を覚ます。彼女は、隣に座るトリガーに肩を揺さぶられていた。
「王宮だぞ」
「……もう着いたのか?」
「爆睡してたからな」
「気持ち良さそうに寝てたわよ」
マコ二ーがそう言うと、エイブリルは首を横に振った。
「いーや、悪夢を見た」
「悪夢?」
「あたしがストライクイーグルに乗って、エメリア空軍として戦う夢だ」
「どういう夢だ」
ハンヴィーの車列は、王宮の門で停車、不審物が無いかの検査を受けてから王宮に入った。そして、噴水を囲むように停車した。
ロングレンジ隊員達がぞろぞろとハンヴィーから降りていく。そして、王宮を見上げた。
「オーシアにもこんな感じのテーマパークが無かったか」
「あれだ、ネズミのいる夢の国だ」
「そこなら息子と何度も行ったぞ」
カウント、フーシェン、イェーガーが感想を漏らす。
エルジア王宮は、ネズミーランドのようであった。
エルジア近衛兵による身体検査を受け、それぞれ護身用に携帯していたオーシア空軍制式拳銃92FSドルフィンを預ける。そのまま、近衛兵に案内されて玄関ホールに入ると、正面の階段を駆け降りる人物が見えた。
「お嬢様! 準備がまだ――」
「大事なお客様を出迎えない訳には参りません!」
その人物は、真っ白なドレスの裾を掴んで走ってくる。
「女王様のお出ましだ」
カウントが軽口を叩く。走ってきたその人物――ローザ=コゼット=ド=エルーゼ――はロングレンジ隊員達の前で立ち止まり、頭を下げる。
「皆様、起こし頂いてありがとうございます。あなた方ロングレンジ部隊の方々、そしてミス・アビー、私の命、そしてこのエルジア王国を救う為に尽力して頂いた事は一生忘れません。エルジア王女として今一度感謝を――」
「頭を上げな、コゼット。あたしらは、やれる事をやっただけさ」
「ワーオ。まさか、女王様に感謝されるとは」
ランツァの言葉に、ローザが返す。
「いえ、私はまだ女王になった訳では――」
「でも、今日なるんだろう? 宇宙服を着て斧を振り下ろしたじゃじゃ馬娘が女王様なんてな」
「ミス・アビー! あれは、仕方なく――」
「そのお陰であの怪鳥を落とせたんだ。長距離戦略打撃群司令官として、貴女の行動に感謝をしたい」
ロングレンジ司令官の言葉に、顔を真っ赤にしていたコゼットは頭を再び下げた。
「私の行動は、きっかけを作っただけに過ぎません。そうだ、あの三本線のパイロットは――」
「トリガー、呼ばれてるぞ」
カウントがそうトリガーに話しかけた時、トリガーは玄関ホールを見渡していた。
「おいおのぼりさん、女王様に呼ばれてるっつーのに」
「え、何?」
「だから女王様に呼ばれてるんだ」
そして、カウントがトリガーを掴んでローザの前まで引っ張った。
「こいつが噂の三本線、トリガーだ」
「どうも」
「挨拶が軽いぞ」
「はじめまして、三本線さん。ローザ=コゼットです。といっても、無線で言葉を交わしましたよね」
その言葉に、ロングレンジ隊員達が驚愕した。
「トリガーが!?」
「作戦開始時に小さく『エンゲージ』と言ってるのしか聞いてないぞ!」
「作戦中は終始無言のこいつが!?」
するとローザは微笑んだ。
「あの無人機を落とすように言った時、小さく『ウィルコ』と聞こえました。あれは、三本線さん、あなたのですよね?」
トリガーは頷いた。