ACE COMBAT7 AFTER STORY/IF 王女様の戴冠式 作:土居内司令官(陸自ヲタ)
静寂に支配された王の間に、ローザが入ってくる。彼女の着る真っ白でとても裾が長いドレスは、ウェディングドレスを彷彿とさせる。しかしその上から羽織っているコートのような物は、王としての威厳を感じさせる物であった。
そんな彼女が、来賓の座った長椅子の列の真ん中を歩く。その後ろから、従者が数人ついて行く。
階段をゆっくりと登り、壇上へ。そこには王の椅子が鎮座し、戴冠式のメインたる「王の冠」を持った神官長、そして「法治の剣」と「豊穣の玉」を持った2人の臣下が立っている。どれも、宝石で煌びやかに飾り立てられている。
神官長の前でローザは立ち止まる。そして、神官長は口を開いた。
「あなたは、エルジア王となる覚悟がおありですか?」
ローザが答える。
「はい。私、ローザ=コゼット=ド=エルーゼはエルジア王となり、この国の安定と繁栄の為に忠誠を誓います」
そして、ローザは跪く。その頭に、神官長が冠を載せた。そのてっぺんには、大きなダイヤモンドが輝いている。
「ワーオ。あれ、いくらするんだろうな」
「黙れランツァ」
冠を被ったローザは、立ち上がり、王の椅子に座る。従者がドレスの裾を持ち、形を整える。そして、舞台袖へと散っていく。2つの王族の印を持った臣下が、それぞれローザの両脇に立ち、彼女に印である「法治の剣」と「豊穣の玉」を渡した。剣の鞘には、大きなコーンフラワーブルーサファイアが藍色の光を散らす。一方の「豊穣の玉」はルベライトトルマリンの大きな玉で、妖しい赤紫の光を振り撒く。
両手に王族の印を持ったローザは、正面を向いて制止する。シャッター音と共にフラッシュが焚かれるが、撮影しているのはエルジア新政府の広報官のみである。それ以外にお呼ばれしたマスコミの人達は必死にメモを取る。
【それでは皆様、テラスへとご移動ください。我がエルジア空軍の精鋭部隊、第156戦術航空団 アクィラ隊による式典飛行を行います】
そのようなアナウンスが流れる。来賓達は立ち上がり、テラスへの移動を始める。ロングレンジ隊員達も立ち上がる。
「ドレス着ているとこ、見たかったなぁ」
カウントがボヤくと、フーシェンが口を開いた。
「何か言ったか?」
「何でもねぇ」
「……いつか着てやるよ」
「聞こえてるじゃねぇか」
トリガーも立ち上がり、テラスへ向かう為に180度方向転換する。すると、別の長椅子で涙を流すイオネラと、それを慰めるアルマの姿が見えた。
「綺麗だったわね。さすが王女様、今は女王様か」
「……少佐も綺麗ですけど」
「レーマン准尉、何か言った?」
「いえ、何でもありません」
「そう、ならいいわ。でも、次からはちゃんと聞こえるように言いなさい」
テラスへと移動した来賓達は、青空を見上げる。雲がいくつかあるが、快晴といっても差し支えない。そこへ、5機の戦闘機が編隊を組んでやってきた。
5機は翼端から煙を吹き出したかと思えば、その直後にブレイク、散り散りになる。
「Su-37か」
「カナードに長いテイルブーム、37だな」
「翼端が黄色く塗られている。何か理由があるのか?」
見上げるロングレンジ隊員達は口々に言う。
散開した5機は、一斉にお互いへと向かう。そして、5機がすれ違う。その瞬間、5機は宙返りをした。クルビットターン、Su-37だから出来るポストストールマニューバだ。1つ間違えば、失速状態が酷くなってきりもみ状態に陥って墜落する、難易度の高い技だ。それを、5機がタイミングを合わせて一斉に行った。それには、来賓達は勿論ロングレンジ隊員達も唸る。
「見事なものだ、5機がクルビットのタイミングを合わせるなんて」
「ワーオ。開幕そうそうド派手だぜ」
「あたしらには無理だな」
「言えてる」
「そんな訳ないだろ。トリガー、俺達にだって出来るよな? 帰ったらやってやろうぜ」
「ネガティブ、死にたくない」
「言われてるぞ、カウント」
その時、サイレンが鳴った。