セルモノー・リューに生まれ変わった青年の話。   作:黄色いうちわ

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  不可抗力でした。





 国王になりました。

 

 

   念願の気さくで緩い王族冒険者になりました。

 

   スラムの人達や平民の方々に、ゲームのゼネテスみたいに受け入れてもらえてご機嫌です。

 

   幼いゼネテス君には会うたびに襲いかかれていますが、返り討ちにしています。憧れの叔母さんの夫が嫌いなのでしょう。

 

   レムオン君には国に帰るたびに警告をされています。国王なのですから冒険は程々になさって下さいと。

 

   ちなみにタルテュバ君は生まれたと知らせがきてから、彼を構い倒して生きてきました。誕生日や季節ごとのイベントには必ず贈り物をして、勉強や剣術を教えて、君が大切だと言葉と態度で示してきました。下町やスラムに連れ出して、そこに生きている人々と交流を持たせました。ノーブルに連れていき、父親に殺されかけたエスリンさんに会わせて、エスリンさんと魔人の間に生まれたネメア君と友達にさせました。

 

   暇をみつけてはスラムにいき炊き出しを行い、下町で子守りの仕事をしてノーブルでネメア君と畑の手伝いをする良い子になりました。優秀な従兄弟やゼネテスを妬まない…彼なりにわだかまりはあるのでしょうが、貴族でなくても生きていける事に気づいて、生き方を模索しているようです。

 

   …王になる気はありませんでした。

 

   ですが、兄と弟が国王の座を争ったのです。王国の貴族をそれぞれの派閥に入れて醜い争いを起こしてしまったのです。そうして、相討ちの形で、兄は毒殺され狂った兄の妻によって弟はナイフで心臓を刺されて亡くなってしまったのです。

 

   その知らせはアキューリスで知りました。

 

   急いでロストールに戻ると、生き残っていた貴族達から頭を下げられました。

 

   「セルモノー・リュー国王陛下、私共をお導き下さい」と。

 

   兄上と弟の遺児に継がせてほしい。私は幼い子供達が成人するまでの後見人になりますと言ったら、残された御子様方は、王族殺しの大罪人の子。レムオン様はご自分が罪を負うのでエスト様の命を救ってほしいと告げ、自ら牢にお入りになりました。アトレイア様は王子妃の無理心中の際に盲目となられました。大罪人の子が国王になるなどは他国に侮られます。

 

   最後まで聞かずにレムオンに会いに行き牢から出した。そうして、レムオンとアトレイア、エストとタルテュバ、ネメアとケリュネィアを養子にして、私はロストール王になった。六人には、私の後を誰が継いでも六人でいつまでも仲良くしなさい。六人で支えあって生きていきなさい。守るべきは国民です。と教えました。

 

   驚く事に五人が揃いも揃って国王はネメア君・兄さんで良いよね。だって貫禄が違うし一番民を思えて冷徹になれるものと言っています。待って。ネメア君はディンガル帝国に売約済み。ネメア君も乗り気になって私に民主主義について教えて下さいと言ってきています。

 

   子供達の前で酔って《民主主義最高。賢く公平な王が王でない王国は駄目になるに決まっています。多数決に選挙万歳~政治経済について熱く語る~》をしては駄目に決まってますね。

 

   いえ、幼い頃から自国の政治や経済のありように興味を持つのは良いことだとは思います。生まれてきた時や幼い頃には、国が疲弊していて原因が王族に貴族の派閥争い、内戦が原因だと知ってしまったら責任感が芽生えますよね。…傲慢さのない謙虚で勤勉で年下に優しいレムオン君に平民を愛し平民に愛されているタルテュバ君。盲目だからこそ同じ盲目な人に優しい国や制度を造りたいですと燃えているアトレイアちゃん。兄上を支えますと勉強を頑張るエスト君に、自由にネメア君と下町やスラムに遊びに行くタルテュバ君を羨ましそうに見ているゼネテス君…私、もしかしたらとんでもない事をしちゃいましたかね?

 

          ※※※

 

   「セルモノー陛下が昨日、またスラムの酒場で泣いていたな」

 

   「ああ。冒険からもどられたのか。ならノーブルか王宮に戻られれば良いのにな。あの優しい御方が泣くなんて旅先で悲しい事があったのだろうな。落ち込んだままかえられたらエリス様や御子様達が悲しまれるからな。気をつかわれたのだな」

 

   「だよなぁ。ロストールは平和そのものだからな。ああ、もしかしたら悲しいの涙ではなくて嬉し泣きだったかもしれないな。ほら、スラムだった名残なんて、あの酒場だけだろう?」

 

   「だよなあ。優秀な王子様と王女様達が率先して俺達平民の為に改革をしてくれているから皆が笑顔だ」

 

   「アイリーン嬢ちゃんが、女騎士になる日も近いなぁ。叙任式でびっくりするだろうな。親切な貴族様のセルモノー様とタルテュバ様が国王陛下と王子様としていらっしゃるのを見るんだからな」

 

   「ああ。オッシさんの敬語に貴族だった頃の上司なんですね認識で訂正されないままここまで成長しちまったからな。…平和だなぁ。王公貴族は優しく賢く慈悲深く、国と民を導いてくださる。兵士は強いし頼りになるし実直だ。騎士団は強くて優しく国の誉れで子供達や女性の憧れちくせう。国土は豊かで治水も完璧で飢饉に備えて蓄えがある。医療や福祉も雇用も充実していて女性が安心して働けているっ」

 

   「ああ、平和だ。この平和をくださったセルモノー・リュー国王陛下に万歳っ」

 

 

   「万歳っ!もう、俺はセルモノー様に一生ついていくぜっ」

 

   「俺もだぜっ。ガキの俺と妹がスラムで生き残れたのはセルモノー様が孤児院と施療院を国中に造ってくれて毎日炊き出しをしてくださったからだ」

 

   「ご自分の資産を惜しげもなく使って、キマイラやグリフォンを狩って炊き出しをして下さったから俺達国民とロストール王国は立ち直れた。…エリス様やエスリン様の手料理を食べれて光栄だった。陛下と王家に乾杯っ」

 

   「乾杯っ。ぶっちゃけ冒険には行かないで欲しいぜ」

 

   何やら深刻そうな顔をして話し合っていたから、悩みがあるのかと思った。相談にのろうと声をかけようとしていたが、父上のファンだった。父上のファンといえば、ロストール王国の臣民がほぼファンだが。息子として誇らしいものがある。赤い髪の男性よ、最後の言葉は丸っと同意しよう。

 

   父上はいまだに賢者の森を探索している。あの森は捨て子が多いし犯罪者の温床だからな。優しい父上は定期的に見回りをなされているのだろう。

 

 

   「ネメア、買い物は終わったか?」

 

   「タルテュバ、終わったぞ。…本当に付いてくるのか?お前はロストール貴族だ。私のゴタゴタに関わる必要はないぞ」

 

   「ネメア、お前は俺の親友で兄弟だ。で、うちの次期国王だ。ディンガル帝国に命を狙われまくるなんて冗談じゃない。さっさと憂いは断つに限る。レムオンとエリスお母様が集めた情報を無駄にはせん。ケリュネィアの弓の稽古を無駄にさせるな。セルモノーお父様を足止めしてくれているゼネテスとレーグ殿の苦労を考え「へぇ。で、ネメア君とタルテュバ君は、お父様に黙って何処に何をしにいくつもりなのかなぁ?君達が強くても子供のうちに、子供達だけでよその国に行くのはお父様は許さないよ」「すまん。このオッサン強すぎた」「…すまぬ。師には勝てなかった」

 

   …こってりとお父様にお説教をされた。

 

   ゼネテスはなんとなくだが司法取引をした気がする。俺達子供は縄で縛られているが、あいつだけ縄がゆるゆるだし、エリスお母様のクッキーを食べれているし。

 

  

 

 

    






  レーグ君はリベルダムの闘技場で倒したら弟子になってくれました。


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