天地無用!皇鮫后   作:無月有用

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本当に、とんでもなく、とんでもなく、お久しぶりです
まだまだ亀更新ですが、少しずつ再開します


結婚式その2

 翌朝。

 

 水穂は天地の部屋で眠り、他の者達も今日までということで我慢した。

 

 今日は天女も来て、水穂と共に淑女会に参加するため別室で休むことになっている。

 ちなみに天地も天地で正木紳士会という集まりに参加することになっている。もっとも、会場は天地宅の一室なのだが。

 

 正木紳士会は遙照を始めとする10人程度の寂しい会である。

 淑女会はその3倍以上の人数がおり、完全に女性上位の村となっている。

 

 ハリベルは起きて、いつも通り畑仕事に行く準備をしていた。

 

「みゃあ!」

 

 そこに魎皇鬼が扉をすり抜けて部屋に飛び込んできた。

 

 ハリベルは微笑んで右手を伸ばす。

 魎皇鬼は嬉しそうに飛び込んできて肩に乗り、頬に頭をこすりつける。

 

「みゃあ!」

 

「ああ、おはよう」

 

 起こしに来てくれたのだろうと察したハリベルは優しく頭を撫でる。

 

「みゃ!」

 

 魎皇鬼は次の者を起こしに、また飛び出していった。

 見送ったハリベルは後を追う様に一階へと下りる。

 

 そこにはすでに天地や砂沙美達も下りて来ており、続々とリビングに顔を出す柾木家一同。

 

 天地とハリベル、水穂、魎皇鬼は昨日同様畑仕事に出る。

 

「ん~……風が心地いいわねぇ」

 

「みゃあん!」

 

「すいません。朝まで手伝って貰って……」

 

「もう、気にしないで。私がしたくてやってるんだから」

 

 天地が申し訳なさそうに言い、水穂が苦笑しながら否定する。

 

 水穂は純粋に天地と畑仕事を楽しみたいだけだ。

 もちろん、ニンジンの味の秘訣を見たいというのもあるが。

 

 まずは収穫時期にニンジンを3人で一気に収穫する。

 

 そして、ハリベルが畑の土を整えている間に、天地は水穂と新しく作り始めた野菜を見に行き、お互いに気づいたことやアドバイスをもらう。

 

 畑仕事を終え、家に戻って朝食を食べて水穂やハリベル達も皿洗いを手伝っていると、鷲羽が顔を覗かせる。

 

「水穂殿、ハリベル殿。ちょっといいかい?」

 

「はい?」

 

「ああ」

 

 2人は鷲羽の部屋に入り、勧められた椅子に座る。

 

「ウィドゥーの受け渡しだけど、日時、方法に変更はないね」

 

「はい。特に問題ありません。本人も大人しくしていますので」

 

 ウィドゥーの引き渡しについて、最後の確認を行う鷲羽と水穂。

 極秘に行われるので、最大限の注意が必要なのだ。西南絡みでもあるので、悪運が働いても困るというのもある。

 

 といっても、西南本人はあの助けた女性がウィドゥーだったなど知らないのだが。

 ウィドゥーの事を除いたあの夜のトラブルについては霧恋達から聞いたが、流石に死刑囚の話となるとショックを受ける可能性があるため話さないことになったのだ。

 もちろん、霧恋達もウィドゥーのアストラルを新型艦のコアにすることは知らされていない。

 

 正直、ハリベルが知っていることがおかしいのだ。

 

「ふむ……順調のようだね」

 

 水穂は瀬戸の副官なので知る立場にあるが、ハリベルは本来ならばその立場にはない。

 自首する過程を知っているからという理由だけで、鷲羽はハリベルに教えてくれたのだ。

 

「これで水穂殿も一区切りついたってわけだ」

 

「アイライの災厄の時は、私はまだ生まれて間もない頃でしたから、正直あまり実感はありません。ですが母は……」

 

 水穂は少し顔を俯かせて憂いを顔に浮かべる。

 

「それもまたいい経験さ」

 

 頂神としても人間としても経験豊富な鷲羽は目を伏せながら言う。

 

「それより水穂殿は、あれが西南殿の船になるってことについてはどう思ってるんだい? なにしろ、魎皇鬼の同型艦って意味もあるからねぇ」

 

 水穂は鷲羽の問いに笑みを浮かべ、

 

「理不尽という意味ではうちの上司も負けていませんから」

 

「くふふふ! 確かにそうだ」

 

「西南君絡みだけでも色々と驚くことばかりで、過ぎたことにいつまでもこだわってなんかいられません」

 

 吹っ切れた顔で言う水穂に、鷲羽は腕を組んで頷く。

 

「あの子も色々とやらかしてくれるよねぇ。ま、あたしとしても、ここと結構な縁が出来ちまったから良い関係でいたいんだよ」

 

「同感です」

 

 水穂は正木の人間でもあるが、生まれた時期や母親の問題からか、やはり完全に身内というわけにはいかない。今回もあくまで船穂の代理であり、親族だからこそ参加出来ているのだ。

 なので、水穂もまた天地達はもちろん、西南と関係が深い正木の村の人々に色々と便宜やお伺いを立てる必要があった。

 

「で、新型艦ということで話は変わるけど、ハリベル殿の新型艦はそろそろ完成するよ」

 

「そうですか……。そちらはどのような船に?」

 

「流石に魎皇鬼と同型艦はどうかと思ったけど、普通なのもつまらないから、ハリベル殿のスクアーロンを基盤とした上で、アカデミーでも再現可能な素材で魎皇鬼を造った技術を使ったよ。まぁ、樹雷で言う第二世代って感じかねぇ」

 

 鷲羽はグレードダウンした感じで言うが、水穂とハリベルは十分過剰過ぎて呆れるしかなかった。

 

「……それでも十分目立つのではないか?」

 

「かもね。だから、義体で水穂殿のおつかいとかで使えばいいさ。水穂殿ならアイリ殿の発明って言い訳も出来るだろうからね」

 

 それでもやはり不安しかないが、今更止めてくれとも言えないので諦めるしかないハリベルであった。

 

「まぁ、これである意味西南殿のフォローにもハリベル殿も出られるってわけだ。ノイケ殿じゃ限界があったし、瀬戸殿が手を出せば霧恋殿達も警戒するだろうし」

 

「母の名前を出しても同じな気がしますが……」

 

「私の名を出しても同じだろ?」

 

「それは……まぁ……」

 

 結局誰の名前を出しても警戒される気がし、そのしわ寄せは全て水穂とハリベルが請け負うことは間違いない。

 特にハリベルの情報は機密扱いとされる可能性が高いため、樹雷でも教えられる者は限られるだろう。それは世二我やアカデミーも同じで、もちろん海賊にも知られるわけにはいかない。

 

 つまりハリベルはあらゆる者から狙われることになる。

 

 そのために、瀬戸は鷲羽に新型艦の設計製造依頼をしたのだ。

 それを水穂もハリベルもすでに理解している。まだ天地には話していないので、どこかで話さなければならないが、そこは鷲羽がタイミングを見計らって説明するだろうと考えていた。

 

「まぁ、流石に魎皇鬼の妹となると、それに集中しないといけないだろうから私は身動きが取れなくなるって瀬戸殿達に伝えといておくれ」

 

「承知しました」

 

「じゃ、話はこれで終わりだ」

 

 解散した一行はそれぞれに作業に戻る。

 鷲羽は引き続き研究に、水穂は前宴会の準備に、そしてハリベルは天地と畑仕事へ。

 天地も夜には正木紳士会という正木の村の男性(宇宙を知っている者のみ)の集まりがあるからだ。

 

 ちなみに正木淑女会の集まりは村の集会場で、正木紳士会は天地の家で行われる。

 

 何故紳士会だけ天地の家で行われるのかと言うと、単純にメンバー数が少ないからである。

 

 正木の村はびっくりするほど男性が少ない。天地を含めても十人もいないのだ。

 正木の村の頂点である遙照を含めても、である。

 

 天地は本来もっと先の話だったのだが、宇宙を知ったから特例として参加を認められた。

 天地と西南の幼馴染で霧恋の弟である海は、まだ地球人として育てているので紳士会に参加は出来ない。そして現状正木の村に他に参加が確定している男は、まだ赤ん坊の大老(たろう)だけだったりする。

 

 

 

 あっという間に夕暮れになり、水穂、天女、阿重霞、砂沙美は前宴会へと向かった。

 それと入れ替わるように男性陣が続々とやってきて、2階の客間へと上がっていた。

 

 遙照や信行も到着し、あっという間に勢揃いした紳士会。

 

 それを見送った魎呼は、

 

「なんとも寂しい野郎共の集まりだなぁ」

 

「それでも私らより多いけどね」

 

 天地、阿重霞、砂沙美がいないので、現在居間に残っているのは鷲羽、魎呼、魎皇鬼、ノイケ、ハリベルだけだった。

 美星はパトロールで夜まで不在である。

 

「みゃ~」

 

 魎皇鬼は砂沙美達と一緒に行けないことに寂しそうに鳴く。

 魎呼達も一応祝い事の前日と言うことで本日は寿司を用意したのだが、やはりいつものメンバーがいないのは、天地がいないのは寂しく感じる魎呼達だった。

 

 なので、しっぽりと卓を囲むハリベル達。

 

 時折楽しそうな笑い声が響いてくる2階に魎呼は視線を向ける。

 

「上、賑やかだな……。ジジババの集会で酒の肴にされたかねぇけどよぉ……ちと冷たいんじゃねぇか?」

 

 ボヤきながら猪口を傾ける魎呼に、鷲羽は苦笑し、

 

「二次会はこっちでやるんだから、文句言うんじゃないよ」

 

「みゃうん……」

 

 また寂しそうに鳴く魎皇鬼に、鷲羽は慰めるように膝に乗せる。

 

「もうちょっとで皆帰ってくるからな~」

 

「……そういやぁ、ノイケは何で行かないんだ?」

 

 魎呼は寿司を口に放り込みながらノイケに訊ねる。

 

 ちなみにハリベルはずっと静かに猪口を傾けていた。

 

「私は神木家の人間ですので、参加資格がないんです。あそこはあくまで遙照様の一族の集まりですから。遙照様の奥様であるアイリ様でさえ参加資格がないんですよ」

 

 あくまで正木の村一族とその親族の者の集まりなのだ。

 正確には遙照と亡くなった地球での妻〝霞〟の血族、および子孫達の集まりだ。

 

 なので阿重霞、砂沙美は厳密に言えば本来参加資格はないのだが、遙照と同じく現樹雷皇 柾木・阿主沙・樹雷の娘であること、遙照の母であり、霞の伯母である樹雷第一皇妃 船穂が阿重霞達を『娘』と公言していること、そして何より樹雷皇族柾木家の者であるため参加を認められた。

 

 だが、残念ながらアイリはあくまで『妻』、しかも未だ遙照の生存公表がされていないので内縁でしかない。

 

 玲亜も長年正木の村で、信幸や清音、天地達と家族同然に暮らして来ていたし、村人達も家族同然思っていたが、それでも掟。玲亜はこの結婚でようやく淑女会に加入が認められた。

 

「ってことは、アイツが来てたら今頃ここにいたってことか」

 

「そういうことですね、ふふっ」

 

 ちなみにアイリは未だに仕事わんこそば状態である。

 

「その代わり、明日の式には親族として参加できますから。逆に、2階や正木の村に集まっている方のほとんどは列席出来ないんですよ?」

 

「面倒だよな。全員揃ってパ~ッとやればいいのによ」

 

「遙照様の生存が公表されれば、盛大になりますよ。それこそ、銀河連盟中からVIPが招待されると思います」

 

「げっ……それはそれでめんどくさそうだよな」

 

 魎呼は顔を顰めて酒を注ぐ。

 

 それにハリベルも小さくため息を吐く。

 

「おや、ハリベル殿も何やら落ち込み気味だねぇ」

 

「……やはり、私が明日の結婚式に親族として参加することが場違いのように感じているだけだ」

 

 ハリベルは少し前にやってきた居候。しかも、依頼とは言え襲い掛かった者だ。

 更には樹雷の首輪付きになったとはいえ、現役の海賊。

 

 樹雷皇族の結婚式に参加する立場ではないと思うのは無理もないだろう。

 

「だからこそだと思うけどねぇ」

 

 しかし、鷲羽は魎皇鬼の頭を撫でながら言う。

 

「アンタがそう思ってるだろうって信幸殿達も感づいてたからこそ、参加してほしいって言ったんだよ。元々は瀬戸殿や遙照殿達が依頼したことだ。で、信幸殿も自分の息子のために戦って死にかけたハリベル殿に申し訳ないと思ってたんだろうさ。だからこそ、身内だけの行事に参加してもらって、少しでも早くこの家に馴染めるようにってことだよ。ま、要は信幸殿達の罪滅ぼしって奴さ」

 

「……そうか」

 

「それ、バラしていいのか?」

 

 信幸達の心境と狙いをあっけらかんと明かした鷲羽に魎呼は呆れながら問い、ノイケは空笑いを浮かべるしかなかった。

 ハリベルも小さくため息を吐くが、もちろん鷲羽は気にするわけがない。

 

「ぐふふふ! どうせハリベル殿なら気付いてるだろ?」

 

「……まぁ、な」

 

「それこそ平穏を知るには今回の結婚式はうってつけだろうよ」

 

「……」

 

 ハリベルは僅かに眉間に皺を寄せるが、何も言わずに猪口を傾ける。

 

「ここの連中は身内と受け入れた奴にはとことん甘いからねぇ」

 

「それであっという間にこの大所帯だもんな」

 

 魎呼がうんざりしたように言うが、魎呼がここに住んでおり、明日の式に出ることに誰も異論を出さないことがその証明である。

 

 時効になったとはいえ、樹雷を襲った大悪党を家族と認めているのだから。

 

 もっとも、正木の村の者達からすれば自分達が生まれるきっかけとなった存在でもあり、自分達が生まれる前のことなのでそこまで忌避感がないというのも大きな要因なのだろうが。

 

「……そういえば」

 

「どうされました?」

 

「西南や霧恋には連絡していないのか? 西南の家族もどちらにも参加出来ないのだろう?」

 

「西南さんのご家族にはすでに挨拶しているそうですよ。信幸さんも再婚ですから、式は身内だけでと伝えているようです。ただ、西南さんにはまだ伝えていないと思います。霧恋さんは知っているでしょうけど、今は西南さんの傍を離れられないでしょうから」

 

「まぁ、西南殿も前宴会にも式にも出られないからねぇ。アイリ殿もわざわざ帰郷を認めないだろうさ」

 

「それに……今帰ってきたらアイリ様の愚痴を色々と言われるかもしれませんからね」

 

「……なるほどな」

 

「やれやれ……遙照の奴をさっさと生存公表した方が色んな奴の為になるんじゃねぇか?」

 

「そ、それは……私の口からは……」

 

「更にはっちゃける可能性もあるけどねぇ、ぐふふふ!」

 

 

 なんだかんだでアイリの話題を肴に盛り上がり、阿重霞達が帰宅するまで楽しく過ごしたのであった。

 

 

 

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