完夜廻もしくは深夜廻らない   作:トロリスト

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結局、2話に分割しちゃいました。
よく考えたらだいぶ前にサブタイ思いついちゃってたから2話にする必要があったという…。
次話はもう少し修正が必要で時間が欲しいかな?と感じて続けて投稿しちゃいます。

今回の話、一箇所、とあるセリフがどうしても思いつかなくて1ヶ月以上悩んでました。どのセリフかは恥ずかしいので秘密です。

今回は、ハルおしごとする。そして運命の日…。です。


第 9話 えんといふもの

大学を卒業したハル。小さな会社ではあるがなんとか就職することができた。

体を動かしたりの肉体労働には不向きなので、事務職である。元々が不器用で機械関係の操作も苦手としていたハル。あまり好きになれない言葉だけど『やればできる』を信条に、苦手だなんて言ってられない!と、一生懸命に勉強してなんとかPCの操作等もできるようになった。

そんなハルの仕事ぶりなのだが、片方の腕がないため単純に計算して作業効率は2分の1。となると、かかる作業時間は2倍。しかし、ハルは自分の体のことがあるため、普通に終わらせることは到底できないことは理解している。だったら!と、とても慎重かつ丁寧に仕事をするしかない。そのおかげでとにかくミスがない。

一緒に入社した同期の女の子はさっさかさーと、仕事を終わらせて「まだ終わらないの?」と厭味を言ってくることもある。しかし仕事は早いのだがいかんせんミスが多い。上司が出来上がったものの精査→ミスを指摘→修正→再提出→新たなミス、もしくは修正漏れが指摘される→修正…と繰り返し、正式に出来上がるのと、ハルが丁寧に行って提出するのと時間があまり変わらないという有様。

 

職場では、左腕がないことは「子供の時に事故に逢った」とだけ言っている。本当のことを話したところで到底信じられるものではないし、信じられたところで避けられることは目に見えている。

会社の人も採用したはいいが最初は不安だった。だが、ハルのミスのない丁寧仕事ぶり、物静かでありながら確固たる『自分』というものを持ち、これは!と決めたらやり遂げようとする意志の強さ。その様子を見るにつけ段々と信用され、重要な書類作成も「ハルに任せれば大丈夫」と言われるようになった程だ。

 

しかしそんなハルだが謎が多い。週末に割と出かけている。その出かけた先が「前に住んでいた町」なのである。何をしに行くのか?と聞いてみても、お世話になった神社の手伝いに行っているだけ。としか言わない。まあ実際そうなのだが、本当のことを話せる訳がない。そんなこともあり、仕事ぶりはともかくプライベートは謎の多い人物という評価だった。

社員だから、同僚だから知りたい。という感情は当然だろう。しかし、これについては「真実は知らない方が幸せ」という類の話である。ハルもそう思い特に説明しようとはしなかった。

 

 

そして運命の日…

その日もいつものように神社の手伝いをしにやって来た。しかし、いつも自分をサポートしに来てくれる彼が今日はちょっとよそよそしい。

 

(いつかはこんな日が来るとは思っていた。あんな日がいつまでも続けばいいのに。と考えてしまった自分が情けなくなる)

 

掃除もひと段落し、一息入れようと休憩していた時、彼が近づいてきた。

 

「ハル、ちょっといいかい?」

 

「なあに?」

努めて明るく振る舞う。

 

「今日はどうしんたんだい?なにか上の空といった感じだけど」

 

「そうかな?」

 

彼は何か言いたそうにしているが言い出せず、まごまごした様子である。

 

「どうしたの?」

 

「え?あ、いやぁ、あー、ちょっと来てくれないかな?大事な話があるんだ」

 

「ん?いいけど」

 

彼について行き、コトワリ様の神社の前まで来る。

 

(ここで、私との縁を切るんだ…)

 

「君も知っての通り、コトワリ様ってのは縁切りの神としては知られているけど、縁結びの神としてはいまいち知られていない。でも僕は君とも縁のあるコトワリ様の前で君に伝えたい」

 

(はやく『もういやだ』って言えばいいのに)

 

彼が『縁切りの神として』と言った時点で、「やっぱり」と思い込み完全に自己否定の状態に入ってしまったハルは、その後続けて『縁結びの神として』からの『君に伝えたい』という流れを聞き逃してしまう。

 

「僕と、結婚してほしい」

 

「…?!え?そんな、うそ…」

(私と縁を切るために呼んだんじゃなかったの?)

 

「嘘なんかじゃない。どう、かな?」

 

「もう…」

 

思わず言いかけて慌てて口を押さえる。

(もういやだって言いかけちゃった。自分で縁を切ってどうするんだろう)

 

「あの…」

 

「………」

 

彼は黙って答えを待っている。

 

(どうしよう、なんで、こんなこと…嬉しいのに何て言ったらいいか分からない。ユイ助けて)

 

思わず亡き親友の名前まで出して助けを求めてしまうほど、ハルの頭は混乱していた。

 

(そうだ!コトワリ様!これがコトワリ様が結んでくれた縁だったらきっと答えてくれるはず!)

 

そう思い、神社に向き直りお祈りしようとして気付く。

 

(違う、そういうんじゃない。コトワリ様が結んでくれたから良縁。結んでくれなかったなら悪縁。そんなのは違う。コトワリ様が結んでくれたかどうかなんて関係ない。これは、私のこと。私自身が考えて答えを出さなきゃいけないんだ)

 

 

2人は見つめあい、沈黙の時間が流れる。時間にして1分足らずではあるが、2人にはこのままお爺さんお婆さんになってしまうのではないか?そのくらい長い時間が過ぎたかのような感覚に陥っていた。

そして、永遠とも思えるほどの沈黙に、彼が諦めかけたその時。

 

 

「…はい、私でよければ」

 

 

神社の陰からこっそり見ていた出歯亀、もとい元町長は年甲斐もなく小さくガッツポーズしていた。

 

そう、運命が許さなかったのは、人生の絶頂にあると考えていたことではなく、

『自分なんかが』と、自分を卑下していたことにである。

 

彼の胸に抱かれ嬉しさに泣いているハル。彼もプロポーズを受けて貰えてホッとした顔をしている。

 

そんなハルの耳に、風に乗って遠くから「ハル おめでとう」という懐かしい声が、聞こえたような気がした。

 

 

 

そのあと彼はハルが家に帰る時に同行し、ハルの両親に挨拶をしに来た。

これには両親も驚くやら嬉しいやら。

しかし、娘の前であることも憚らず、こう、念を押さずにはいられなかった。

 

「うちの娘は、見ての通り左腕がない。通常の生活にも苦労している。結婚生活は言わずもがなだ。本当に、それでもうちの娘がいいのか?」

 

「ちょ、ちょっとお父さん!」

 

「ハルは黙っていなさい!」

 

別にこれは決してハルを貶めるために言っているのではない。お前の覚悟を真意を両親である私たちではなく、相手であるハル本人を目の前にして見せてみろ!というものである。

これが、嫁ぐ娘に対して父親がやれる最後のことである。

 

父親は腕組みをして彼を睨み付けるように、いや睨んでじっと目を見据えている。この真意を察し、父親の想いを受け止めて答えられるかどうかが男の見せ所である。

 

しかし、これは男同士の話なので女であるハルは訳も分からず、父親が娘を嫁にやりたくなくて難癖つけている。ようにも見えている。

 

「僕は…」

 

「あぁン?ボクだぁ?」

 

「あ、いや…」

 

心を落ちつけるため深呼吸する。そして…

 

「私は、他の誰でもなく、ハル…ハルさんだったからプロポーズしました。片方の手がないとかそんなものは関係ありません。左手がないのであれば、私がその左手になればいいだけです。そのことはコトワ、リ…いや、違いますね。コトワリ様に誓ったから嘘偽りがない。という言い方は卑怯ですね。これは、私が自分で考え答えを出した。私の真意です」

 

これでどうだ!と言わんばかりにハルの父親を睨み返す。

傍から見たハルには、視線を合わせた二人の間に火花が散っているかに見えた。

永遠とも言える一瞬の後、ハルの父親は一言

 

「ん゛、わかった。娘はくれてやる」

 

急に昭和の頑固親父のようになってしまった父親に戸惑い、彼と父親の顔を交互に見比べている。なんだかよく分からないけど、上手く行ったらしい。彼もホッとした顔でこちらを見ている。

 

急な話なので、相手方のご両親への挨拶も含めて詳細は後日となりお開きとなった。さすがにもう夜更けとなってしまったので、昭和の頑固親父と化したお父さんも「言いたい事が済んだらとっとと帰れ!」とは言わなかった。

 

それからはトントン拍子というかまあ、善は急げともの凄い勢いで話が進み、晴れて、2人は結ばれることとなった。その準備に、あの元町長が張り切って動き回っていたことは言うまでもない。

 




ハルが就職して仕事するのならこんな感じじゃないかなぁ?と思ったことなのですが、
やっぱり「おしごと編」は脇に放っておくのが正解だったですね。
セリフなしで仕事っぷりの説明しかないから無理矢理の場繋ぎ感がハンパない。


さて、次でとうとうこのエピソードも最後です。(たぶん)

投稿して速攻、サブタイの数字が全角だったので半角に修正。
目次での並びで妙にスペースが空いていて気持ち悪かった。(細かい)
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