完夜廻もしくは深夜廻らない   作:トロリスト

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今回は、コトワリ様、強いては神様について考えるクロ。です。


第14話 かんがえる

コトワリ様の所から少し離れた山中、とぼとぼとクロが歩いている。

 

「なんだよ、コトワリさま。ボクががんばるっていったらほめてくれたっていいじゃないか…。

なんだよ、かみさまだからって…て、あれ?じゃあ、コトワリさまとか、かみさまはだれがほめてくれるの?」

 

「ひとのおねがいごとをかなえたり助けたりしても、ありがとうっておれいを言ってもらえるけど、ユイちゃんがしてくれたみたいに『がんばったね~』とか『いい子だね~』とか言って撫でてほめてくれるひとはいない?ボクはがんばったらほめてもらいたいけど、かみさまはちがう?」

 

 

 

「…だれもほめてくれないのにがんばってるの?」

 

 

 

(コトワリさま怒らせちゃったな。あんな大きな声出してるのはじめて見た。

でも、怒ってたけど、なんだかじぶんにも怒ってる感じだったかも。

コトワリさまもユイちゃん助けられなくてかなしくてくるしかったのかな?

ボク…いけないこと言っちゃった…?)

 

 

 

(おうちにかえりたいけど、コトワリさまとどうお話したらいいかわからないや。おうちからあまりはなれちゃいけないって言われてるけど、少しくらいならだいじょうぶだよね?きょうはここでねちゃおう)

 

そう言って、近くの茂みの中に入り込み丸くなって目をつぶる。

色々考えて疲れたのか、すぐにすやすやと寝息を立て始めた。

 

クロが寝入ってから少しして、茂みの上に音もなくコトワリ様が現れる。

クロのことが心配になり気配を辿って探しに来たのだ。

 

(こんな所にいたか。祠から少々離れているが一晩くらいなら大丈夫であろう)

 

と、立ち去ろうとするが、自分の分身である小さなハサミを作りだし茂みの近くに突き立てる。

自分の分身で祠からの力を呼び込み、クロへ渡すためである。

 

(一晩だけなら大丈夫だと思うが、念のために…な)

 

そう呟くと現れた時と同じように、音もなくスッと姿を消した。

 

 

ふわぁぁぁ…

 

翌朝、目を覚ましたクロ。今日はどうしようかと考えていると、

外で寝たはずなのに祠の中にいるような感覚にとらわれる。

 

(あれ?ここ、おそとだよね?)

 

眠そうな足取りで茂みから出てくる。すると、目の前に見慣れぬ物が。

 

「なんだろうこれ?コトワリさまの持っているハサミってやつに似てる」

 

クンクンと匂いを嗅いでみる。特に危険な匂いはしない。

前足で押さえてクイックイッとやってみる。動かない。生き物ではないようだ。

 

「ん~、コトワリさま?」

 

声を掛ける。だが返事はない。

 

とりあえず自分に危害を加える物ではなさそうと判断する。

 

「コトワリさまみたいな感じもするし、なんだかおうちにいるみたいな感じもする。

もしかしたら、コトワリさまがボクが安心して眠れるようにかしてくれたのかも?

あんなに怒ってたのに…」

 

「じゃあ、これを持ってかえってコトワリさまにおれいを言わなきゃ。あと、きのうのこと、あやまらなきゃ…」

 

「それと、コトワリさまのことも聞かなきゃだ。

『コトワリさまはがんばっても、ほめてくれるひといないの?』って。

きっと、いつもみたいな言い方で『そういうものだ』って言うんだろうな」

 

(よい…しょ)

 

地面に刺さっているハサミを口で咥えて引っこ抜き、家路へと急いだ。

 

(あ、コトワリさまいる!)

 

「コトワリさま ただいま!あと、おはよう!それと、コレありがとう!

えっと、あと、その…きのうは、ごめんなさい」

 

「ん?あ?おかえり」

 

多少は他の生き物と話すことに慣れて来てはいても、慣れてきた理由が、目の前にいる元気いっぱいの子犬だったとしても、ここまで一気に言われると流石にどうしたらいいか戸惑ってしまう。

 

クロはクロでコトワリさまの戸惑いそっちのけで『なんか、おかえりって言われるのいいよね』とか言っている。

 

(元気になってくれたようでよかった。それにしてもハサミの事に気付くとは、凄い勘だな。

それと、なぜ、ごめんなさい?)

 

「おはよう、クロ。よくハサミのことが分かったな?」

 

「ん?なんかコトワリさまの持っているのににてるし、コトワリさまっぽい匂いがしたし、

おうちにいるみたいな感じもしたから、コトワリさまがかしてくれたのかな?って」

 

「その通り。だが、よくそこまで気付いた。しかし持って来なくても念じればすぐ、もと…に…」

 

クロは持って来たことを褒めて欲しくて尻尾をぶんぶん振っていたが、

コトワリ様の話を聞いているうちにどんどん悲しそうな表情になり、尻尾の振りもゆっくりになっていくのに気付いたコトワリ様。

 

「あ、いや、持ち帰ってくれて助かった。取りに行く手間が省けたぞ」

 

「よかった!」

 

(危ういところであった。昨日の二の舞になってはいかんからな)

 

「では、ごめんなさいというのは何故か?」

 

「あ、いけない!ほめてほしいって考えちゃいけないんだった!」

 

(なんだと?!)

 

「あのね、どうしてコトワリさまが怒ったんだろう?って、きのうあれからたくさん考えたの。

さいしょは、ボクががんばるって言ったのにほめてくれなかったからボクもチョット怒ってたの。

そしたらね、ふしぎなことに気付いたの。コトワリさまはがんばったらだれがほめてくれるんだろう?って。

ねぇコトワリさま?コトワリさまががんばったらだれかほめてくれるひととか撫でてくれるひととかいるの?」

 

「…いないな」

 

「じゃあ、どうしてがんばるの?」

 

「そういうものだからだ」

 

「やっぱり!だからボクが褒めてもらいたくてがんばるって言ったのに気付いたからおこったんじゃないかって思ったの。コトワリさまもユイちゃん助けられなくて、かなしくてくるしかったんだなって。コトワリさまでもできなかったことをボクががんばるって言ったりしたから。

ボク、いけないことを言っちゃったんだね。だから、ごめんなさい」

 

(おお、おぉぉぉ…、何という事だ。なんだ?この体の中から湧き上がってくる感情は?ワレは、いったいどうしてしまったのだ?)

 

それは、他の生き物を慈しむ心。愛情といったもの。

今までそういった感情から遠く離れた所にいたため、自分に何が起こったか理解できず狼狽えるばかりである。

しかし、遠く離れていたと言っても、自分が理解していないだけであって実際には前から持っている感情ではある。

そうでなければユイを助けられなかった事に苦しんだり、今までの死者のための慰霊碑やクロの墓を造るなど考えようはずもない。

そういった感情初心者のコトワリ様向けに簡単に言うのであれば、

 

『クロのことが可愛くて、愛おしくて堪らない』

 

である。

 

その時、コトワリ様はあることに気付いた。

ワレは縁を結び、切るのが役割である。そのワレがその役割以外に、死者のために慰霊碑を、クロのために墓を造ることを考え、どうしてもそうしなければ。という思いに駆られ町長の夢枕に立ち頼んだこと。

クロは、男の子を助けられて嬉しかったから、ユイを助けられなかった分とまでは言わないが、

そうやって助けられるなら、自分にできることがあるならと、感情に衝き動かされ行動しようとしたこと。

それらは、その2つのことの根本は同じではないのか?

 

そのことに気付いたコトワリ様のやること、クロに伝えなければならないこと。それは…

 

コトワリ様が深く考え出してしまい何も言わなくなってしまったので、

クロは『また、いけないこと言っちゃったのかな…』と、少し悲しくなり、また怒られるのではないかとビクビクしている。

ただでさえ、『そうか』とか『そういうことか』とか『あぁ』とか『なんということだ』とか、

ブツブツ言いながらあっちへふわふわこっちへふわふわしているのである。

クロはどうしたらいいかわからず、コトワリ様があっちへこっちへふわふわしているのを見上げ、

コトワリ様と一緒に自分もあっちへこっちへとチョコチョコ歩き出した。

 

 

やっと考えがまとまりクロに伝えようと動きを止めようとした時、

クロが自分について一緒にうろうろしていることに気付く。

 

「何をしているのだ?」

 

「ん?よくわかんない、なんとなく。あの、ボクまたいけないこと言っちゃった?」

 

「そうではない。そうだ、まず言わねばならない事があったな」

 

「なに?」

 

「昨日は言い過ぎた。すまなかった」

 

「いいよべつに、ボクがいけないこと言っちゃったんだし」

 

「ヌシは、ホントに…」

 

たくさんある手で揉みくちゃにしたい衝動に駆られるが、ぐっとこらえる。

 

「そうだな、ヌシが昨日言った事、やってみるがいい」

 

「いいの?」

 

「ああ、たしかに難しいことではあるが、やる前から『無理だ』、『できない』と言っては何もできなくなってしまうからな。最初から上手く行かない事を考えて何もしないより、まずは自分の思う通りやってみるといい」

 

「ありがとう!ボクがんばるからね!」

 

「ああ、しかし無理はしないようにな」

 

「うん」

 

それからクロは毎日パトロールにでかけては、子供たちを見守った。

実体のない霊体での声なので、声を聞くのにもほんの少しだが霊感というものが必要らしく、

いくら声をかけても聞こえない子供がいることもわかった。

そこでクロは試行錯誤し、声が聞こえないなら武力行使。もとい、直接攻撃!と言わんばかりに、

声の聞こえない子供には体当たりを敢行するようになった。

最初は上手く行かずにすり抜けるだけだったが、何度も試すうちに力の使い方に慣れてきて、

やっと体当たりすることができるようになった。

しかし消耗が激しいため、1パトロールにつき1回が限度である。

 

しかもこの方法はちょっとした問題点があり、鳴き声で危険を知らせて聞くことができれば、犬の鳴き声がした。なのだが、聞こえない子供はいきなり体に衝撃があって突き飛ばされるだけなので、普通に恐怖体験である。まあ、どちらかと言うとその方が飛び出しなどの抑止力になっているので結果オーライである。

 

そして、再会の日が訪れる。

 




一気に行ってしまった…。
文中のクロのセリフで最初漢字なのに次に出たときはひらがなになっていたり、またその逆も。魔界ウ○ーズのユイ&ハルのスキル説明とかも全部ひらがなでしたし、ホントはクロのセリフは全てひらがなにしてもいいのかな?と思いましたが、流石に全部は読みにくいので時々漢字にしたりひらがなにしたりが出てくる訳です。

次回はこのエピソードでは数少ないハルの出番が…。
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