完夜廻もしくは深夜廻らない   作:トロリスト

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前回のサブタイ、漢字で書くと「和解」です。
チャコはハルのことがあって少なからずコトワリ様を憎んだり恨んだりしていたので、話を聞いて。やっと。という意味です。

今回は、怖がりつつもコトワリ様に疑問をぶつけるチャコ。です。


第18話 なでること

チャコが来てから数日、なぜかチャコはコトワリ様に慣れず近くにいるとビクビクしている。

 

「ねえチャコ?さいしょにここで目を覚ました時はコトワリさまとふつうにお話できてたと思うんだけど、なんでいつもボクにかくれてるの?」

 

最初は実はクロに再会できたことが嬉しくて気分が高揚してて気にならなかったのだが、そんなこと恥ずかしくて言えるわけがない。

しかし元来臆病な性格なため、やっぱり怖いものは怖い。

 

「え?そうかな?クロの気のせいじゃない?」

 

「そうかなぁ…」

 

そこへコトワリ様がふわふわとやってくる。

 

普段であればスーッと横滑りするように移動するか、瞬間移動でいきなり目の前に現れるかなのだが、チャコを怖がらせないようにわざとふわふわと少し揺れながら移動しているコトワリ様。

見た目的にその方が逆に不気味な気がしないでもない。クロはなんとなくそう思っていたが、

コトワリ様の痛ましいまでの気遣いのため言い出せないでいる。

 

(やはりクロと違いハルに襲い掛かった時に近くにいたこともあって、なかなか懐いてはくれないようだ)

 

「どうしたんだ?」

 

「あのね、チャコがコトワリさまのこと、まだこわがってるみたいなの」

 

「ちょっ、クロ!なに言ってんの!」

 

「だって、なにも言わないでこわがってるより、わかっててお話ししたほうがいいんじゃないかなぁって。コトワリさまにはちょっとごめんなさいだけど…」

 

「まあ、仕方がないことだ」

 

「またそうやって『しかたがない』とか『しょうがない』とか『そういうものだ』とかって、

ちゃんとお話ししないとなかよくなれないよ?」

 

「クロ…」

(普段の行動とか話し方とかは子供っぽいままなのに、なんだか頼もしくなってるかも)

 

「むぅ、しかしだな、チャコの気持ちもある訳だから、こちらから急に仲良くしようと押し付けるのもな…」

 

「もう、チャコはコトワリさまになにかお話したいこととかある?」

 

「え?いきなりふらないでよ」

 

しかし何か思うところがあるのか、ちょっと体をプルプル震わせながら前に出る。

 

「あの、コトワリさま?」

 

「なんだ?」

 

(ヒッ、お顔がないから何考えてるかもどこ見てるかも分からないし、クロはどうして大丈夫なんだろう?)

 

怖くてあまり観察できていないが、コトワリ様は返事をするときにちゃんとチャコの方に向き直ってくれているのだが、チャコが考えたように顔がないしどっちが前だか後ろだかもよく分からないので、自分の方を向いてくれているかは気づきにくい。

しかし、意識は自分の方に向けてくれていることはなんとなく察した。

 

「あの、え~と、コトワリ様は手がありますよね?」

 

「ん?あるな」

 

コトワリ様もクロには慣れたがチャコにはまだなので、少々おっかなびっくりでややぶっきらぼうな反応になってしまう。

最初の頃のクロに対しての態度と同じような感じである。

お互い探り探りで話をしている。

 

「手があるなら、わたしやクロを撫でてくれたりはしないんですか?」

 

「あ!それボクも知りたかったことだ!」

 

クロは小さい頃にユイにたくさん撫でて貰いはしたが、命を落としてここで目覚めてからは一度も撫でて貰っていない。撫でて貰ってない期間の方が遥かに長い。

対してチャコは小さい頃にユイにたくさん撫でて貰ったことはクロと同じだが、その後ハルに引き取られて愛情たっぷりに可愛がられていたため、撫でられたい欲求がクロよりも強い。

 

(クロも前からワレの手を見ていたり撫でてアピールすることがあるが、あの子は察しがいいので大きさやら何やらでダメなんだろう。とか考えたのか何も言わずに引っ込んでしまっていたな。察しがよすぎるというのも考え物だな)

 

(しかし、撫でる。撫でるか…。ワレの手はハサミを握るためだけにあると思っていたからな。

最近はクロに物の説明をする際に指で図を描くことはあっても、他の生き物を撫でる。

この手でそういうことをするとは考えたこともなかった)

 

「ボクたちのまえあしじゃ撫でるって感じじゃないしなぁ…」

 

と、前足の肉球でチャコをポコッとする。

 

「ちょっと、なにするのよ!」

 

お返しにチャコもクロをポコッとする。

 

「やったなぁ~」 と、ポコッ

 

「もう、クロったらぁ」 と、ポコッ

 

気が付けば2匹は前足の肉球でポコポコしながらひっくり返ってわちゃわちゃしている。

 

「はあ、はあ、はあ…」

 

「ふう、ふう、ふう…」

 

やっとポコポコ合戦も収まり肩で息をしながら起き上がるクロとチャコ。

 

「なんだか、あたらしいあそびを見つけちゃったね」

 

「そうね。久し振りに犬同士でたくさん遊んだ気がするわ」

 

「あれ?チャコ、ハルちゃんのおうちに行ったあと、犬のともだちいなかったの?」

 

「いたことにはいたけど、なんだっけ?わたし、しつないけん?とかだったみたいで、お散歩とお医者さんの時以外はおうちの中にいたから」

 

「えぇ~?好きにおそとに出られなかったの?」

 

「うん。なんか、犬と人間がいっしょに生きるのは、いろいろ難しいみたい」

 

「ふ~ん、ユイちゃんやハルちゃんといっしょにいられるのはいいけど、好きにおそとであそべないのはなぁ…」

 

「でもあたしはハルちゃんのそばにいてハルちゃんを守るって決めてたから」

 

「ふ~ん。チャコ、こっちきて」

 

「なに?」

 

トコトコとクロに近づくチャコ。

 

「がんばったねぇ~」

 

クロは愛情込めてチャコの毛繕いを始める。

 

ハルのことを守ろうと雌犬(おんな)であることも捨て、ずっとそばにいたチャコ。クロの優しい毛繕いでそのことが報われた気がした。

うっとりとしながらも少し涙ぐんでいる。

 

(もうっ、自分だって子犬のまま死んじゃったっていうのに…。あれ?クロは今コトワリ様と一緒に過ごしていることは分かったけど、なにをやっているのだろう?)

 

そうやってクロとチャコがイチャイチャしている間、コトワリ様はどうしていたかと言うと、

ずっと『撫でる』について考え込んでいたので2匹のラブラブっぷりには気付かなかった。

 

ふと我に返ったチャコ、

 

「あ、コトワリさまは?」

 

言われてクロも気になりコトワリ様を見上げる。

コトワリ様は先ほどから微動だにせず浮いたままである。

 

「あ~、また考え込んじゃってる…

あのね、チャコ。かみさまってすっごい長生きでじかんがたくさんあるから、

こうやって考え込むとずぅ~っと気がすむまで考え続けたりするみたい。

この前も丸々1日考え込んでた時もあったくらいなんだよ」

 

「もうしかして怒らせてしまったのかしら?」

 

「ちがうと思うよ。たぶん、撫でるってことをしたことがないと思うから、

撫でるってなに?とか、どうやったらいいの?とか考えてるんじゃないかな?」

 

「ふわぁ、クロはなんか、すごいね。」

 

「そう?ボクがここでめをさましてからずっといっしょにいてお話したりしてるからね」

 

「あの、クロ?」

 

「なに?」

 

「わたしは寿命でもう少しで死んでしまうんだろうな?というのが分かってたからそんなにはショックじゃなかったけど、あなた、自分が死んだということを知ってショックじゃなかったの?」

 

「ん?さいしょはショックだったよ。もうチャコにもユイちゃんにもハルちゃんにも会えないって分かったから。

だけどね、コトワリさまとお話ししているうちに、死んだのにひがんってとこに行かなくてこっちにいるのは、なにかすることがあるんじゃないかな?って思ったの」

 

「すること?」

 

「うん」

 

それからクロは町をお散歩していた時に飛び出して車に轢かれそうになった子供に声をかけたら自分の声が聞こえてびっくりして立ち止まって助かったこと。

それで、わんちゃんありがとうってお礼を言われてうれしかったこと。

それから山や町をパトロールして、あぶない子供がいたら声をかけて助けていること。

そして…

 

「チャコもいっしょにやってくれるとうれしいなぁ?」

 

小首を傾げてチャコを見つめる。

 

「たまにうまくいかなくて落ち込んじゃうときもあるけど、それでも助けられる子がいたら助けたいんだ!」

 

(あらあら、ホントにクロってば、なんだか頼もしくなっちゃって)

 

もう霊体なので歳は取らないから成犬(おとな)にならないし、そうでなくても子孫を残すこともできないが、何れお互いの気持ちに気付いて番い(つがい)のような関係になる。しかしそれはまだだいぶ先のお話。

※人間で言うなら、内縁の妻(夫)みたいな感じ。ま、犬とか猫とか動物は婚姻届とかないから皆そんなものか。

 

「ええ、わかったわ。わたし、クロが子供たちを助けるお手伝いするわ。どうしたらいいかは教えてね」

 

「ホント?やったぁ!チャコ大好き!」

 

またもやチャコに飛びついてわちゃわちゃし出す。

 

(ちょっと、もう!見直したと思ったらすぐ子供になっちゃうんだから)

 

「あ、そうだ!えっとね、チャコはまだこうなってから何日かしかたってないから、あまりとおくまで行けないんだった」

 

「そうなの?」

 

「うん。コトワリさまが言ってたんだけど、ボクたちこのおうちから力をもらってるんだって。

だから、力のかげんがまだよくできないうちは、おうちからあまりはなれちゃいけないって」

 

「ちから?」

 

「そう、なんかその力でボクたちはここにいられるんだって。

この前お話したけど、ボクたちがユイちゃんとハルちゃんを助けてあのでっかいのをやっつけたから、やっつけてくれてありがとうってにんげんの気持ちがあつまってボクたちの力になってるんだって。

おうちからはなれて力をもらえない所でうごきすぎちゃうと力がなくなってうごけなくなって、コトワリさまにむかえに来てもらわなくちゃならなくなっちゃうんだ」

 

しれっとコトワリ様に助けて貰うことを前提にして話しているクロ。

 

「えっと、いまボクたちはおなかがすかないけど、その力がごはんだとしたら、おなかがすいてうごけなくなるのと力がなくなってうごけなくなるのが同じ感じ。だと思う」

 

「なんか、むずかしいんだねぇ」

 

「だいじょうぶだよ。ボクでもなんとかなったんだから。ね?コトワリさま?」

 

「………」

 

「まだ考え込んでる…」

 

「クロ、チャコ」

 

「やっとおわった。なあに?」

 

「悪いが、明日ちょっと出かけてくるので留守を頼む」

 

「わかった。でも、コトワリさまのおうち、じんじゃっていう方のおしごとはだいじょうぶなの?」

 

「明日は、参拝に来た者の話を集めておいて、帰ってきたら聞けるよう細工しておく」

 

「だいじなようじなの?」

 

「ワレにとってはな」

 

「ふ~ん」

 

そう言って、なにやらぶつぶつ言いながら自分の神社へとふわふわ帰って行った。




縁結びと縁切りの役目以外はクロとチャコのことしか考えていないと言ってもいいくらいになってしまったコトワリ様。
さて、コトワリ様の用事とは一体何なのか?

元々このエピソードはバカ話というか笑える話で進めていこうと考えていたので、コトワリ様が時々かなりの暴走を見せてくれます。
ユイやハルの話が出るとどうしてもやや重い流れになってしまいますが…。
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