もし、この作品を見ている人がいて、こういうのあった方がいいんじゃね?
というのがあれば教えてくださると有り難いです。
洞窟に着いたワレは、アレが落ちた穴の下を目指す。
遥か遠い日に交わした約束を果たすために。
「グ・・・ガ・・・、オ、ノ・・・レ・・・」
やはり、神と称されるモノ、まだ息があるか。
「きさマ・・・」
落ちた衝撃で思い出すやもと少し期待してみたが、そうはいかなかったようだ
「ワレは、ヌシだ」
「?! たワ、ごとヲ…」
(思い出せぬか。ワレも先刻思い出したばかりだからな)
「あの日、交わした約束を果たしに来た」
「ヤ・・く、そク・・・?」
そう、あの日、山へと向かったアレが振り向いて言ったことは…
『もし、オレが縁結びの力を悪用し、人間に害を為す存在になってしまったら、
オマエの縁切りの力でオレをバラバラにして悪縁から断ち切って欲しい』
ワレはハサミを広げ、ソレに纏わりつく縁もろともに、
五体をバラバラにして、全てを断ち切った。
「ギャァァァァァァァァッ!!!」
洞窟を揺るがす断末魔の叫びと共に、ソレに唆され死して囚われていた哀れな魂が解放される
そして、ソレもまた、縁結びという呪縛から解放される
嗚呼・・・
そういう事であったか…
始めは普通に縁を結んでいた。
しかし、いつの頃からか相手の意にそぐわぬ縁を結ぶなど悪意ある願いに晒されるようになった。
揚句、そのようなものは必要ないのに生贄を捧げる輩まで現れ出した。
しかも、肉親や俗世との縁を切った。ということにして、わざわざ左腕を切り落とした上でだ。
ワレはそのような願いのために縁を切ったことはない。
やがて自分を見失い、見失いながらも、うっすらと記憶の片隅に残るものがあったのであろう。アレは、ワレとの約束を思い出して貰いたかったのやも知れぬ。
言わば、気付いて欲しくて泣き叫んでいる、だだっこのような所業であったのやも。
だからと言って人間を殺めていいということにはならぬ。
縁結びと縁切り、表裏一体のワレらは、文字通り切っても切れぬ仲でなければならなかった。
アレがまず縁を結ぶべき相手は、ワレであったのだろう。
それらが2つに分かたれたことにより、歯車が狂い始めていたのやも知れぬ。
「遅くなって、すまなかった」
ワレはアレの罪を背負って行こう。他ならぬワレの半身であったのだから。
そしてワレらは また ひとつとなった
生ける少女、ハルは治療を終え退院した。失った左腕は戻らぬということ、
それよりも彼女にとって辛い現実は、親友ともう手を繋ぐことができなくなってしまったこと。
ハルは同じように生き残った茶色い毛並みの子犬、チャコを連れて、
山で親友であるユイが命を絶った場所へと毎日やって来ている。
生死の境を彷徨った折に見たモノクロの映像。それは過去の残像ではあったのだが、
ハルはそれが死後の世界で見えるものと思ったらしい。
亡くなったユイが、そんな世界に置かれていることに耐えられなかった。
きれいな色を見ていて欲しい。そう願い、いつもきれいな色をしたものを供えている。
今日は、色鮮やかな赤い花だ。
どうやら明日引っ越すため、今日が最後になってしまうらしい。
「そうだ!ユイがすきだった歌をうたうね。うまくうたえるかわからないけどがんばるから」
(歌…?)
すー、はー、と何度か深呼吸して準備をしたのち、かわいい声でうたい出す。
シャ~ボンだ~ま~ と~ん~だ~♪
や~ね~ま~で と~ん~だ~♪
や~ね~ま~で と~ん~で~♪
こ~わ~れ~て~ き~え~た~♪
歌をうたう時には、次にうたうべき歌詞が先に頭に浮かんできていると思うが、
続けて2番に行こうとしたハルは何かに気付く。
しゃ、ぼん、だ…ま… き、えた…
と、、、ばぁず…に、きえ、た…
ハルの目からは涙が溢れてきている。
時折鼻をすするため歌声が途切れ途切れになる。
う~ま~れ、て す~ぐ…にぃ
こ、わ、れ~て き…え…た…
(飛ばずに、産まれてすぐに、か…、ユイと重なっているのやも知れぬな…)
悲しみを振り払うように声を張り上げるハル。
か~ぜ!か~ぜ!ふ~く~な~!
シャ~ボンだ~ま~! とぉば~…そ~…
「………」
「う、う、うわぁぁぁぁ!ユイィィィィィッ!!!」
ユイがいなくなってから幾度となく泣いた。しかし引越しをするなら、ユイへ『だいじょうぶだよ』という想いでもう泣くまいと決意していた。
だが、歌の歌詞とユイが重なってしまい歌の途中から涙が溢れ、うたい終わったあと堪え切れなくなり地面に突っ伏してしまう。
チャコは何事かと慌てていたが、何も言わず涙が伝うハルの頬を舐め、慰めていた。
「スンッ、グスッ…、このうたは、もしかしたらこういう意味だったのかも…」
ひとしきり泣いた後、涙を拭い立ち上がりながら服についた土を払い、ハルはそう思った。
「クゥ~ン…」
大丈夫?という感じに、チャコがハルのことを見上げて鳴く。
「チャコ、ありがとう。うん、もうだいじょうぶだよ」
「アンッ」
しゃがみこみ、チャコの頭を撫でながら話しかける。
「チャコ、ユイのことわすれないであげてね…」
そう言ってチャコを抱きしめる。
チャコは、ハルの言った事や気持ちを知ってか知らずか、心持ち憮然として「そんなの当たり前!」と言わんばかりに、
静かに、だが力強く「アンッ」と、ひと声鳴いた。
「もう、いかなきゃ。チャコ、ユイとおわかれしよう」
ハルは、木に向き直り、なんとか笑顔を作って…
「またね」
ワレはどうしたらいいのだろう?
この町で起きていた悲劇を終わらせ、ワレがまたひとつになるきっかけを与えてくれたこの少女に。どうしたら報いてあげられるのだろう?
いつまたここにこられるか分からない。もしかしたら二度と来ることは適わぬかも知れぬと言うのに、別れの言葉ではなく、再会を約束するような言葉で去ろうとしている。
適わぬと知りながら、また会いたい。手を繋ぎたい。そう願いながら・・・
ワレのするべきことが決まった。
いつ、その実が結ばれるかは分からない。
いつの日か・・・・・・・・・
ワレは 一度は断ち切った二人の縁を
また 結んだ
それは、本来であれば生者同士で結ぶもの。
生者と死者とを結ぶことは禁忌に近い。
だが、ワレにはこの方法でしか報いる術を知らぬ。
生者と死者とを結ぶ縁。このか細く儚い糸を手繰り寄せ、
いつの日か再びその手が繋がれることを祈っている。
そしてもし、その手を繋ぐことができたなら、
その時は思い出して欲しい、あの日見た神社の石碑に刻まれていた言葉を。
ワレが「縁結びと縁切りを司る神」であったことを。
いつの日か・・・
いつの日か・・・・・・
2019/11/15 改行修正。
2019/11/18 サブタイ、気が付いたら平仮名縛りしていたっぽいので、「日」を「ひ」に修正。
2019/11/30 後半部分、ハルに歌をうたわせました。使用楽曲情報は調べて一応入れましたが、1995年に著作権が失効しています。