完夜廻もしくは深夜廻らない   作:トロリスト

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第 3話 いつまでも

どれ程の歳月が経ったのだろう?

この町は良くも悪くも昔のままの風景が残っている町だ。

口さがない連中が言うには『時代に取り残されている』そうだが…。

 

特に皆、信心深いという訳ではないが、ワレの神社へ散歩がてら参拝に来る。

子供たちの守り神的な存在として、子犬を祀った祠もある。

ただ穏やかに時が過ぎていくので、子供を育てたり老後に暮らすにはいいらしい。

 

ワレも、縁結びの神としてこの町の人間には知られるようになり、

縁切り以外の願掛けに来る者も少しは見かけるようになった。

とは言え、年に数回あるかないかだが…。

 

しかし、ワレが思うのは、ワレが自分を取り戻し、最初かつ初めて縁を結んだ少女らのこと。

彼女らの行く末は…。

少女らに寄り添い、少女らを導き共に戦った2匹の子犬、クロとチャコ。その子らは当時の町長が感謝の印に祠を建て、祀ってくれている。

チャコについては後からハルがクロの隣に埋めてあげようと遺骨の一部を持参し、当時の町長がハルの一途な願いを受けてクロの隣に埋め、葬った。

そのためなのか2匹の魂は此岸に留まり続けている。

なぜそうなったかはワレにも分からぬ。だが、子犬らはそのことに意味があると考え、山を町をパトロールし、危険が迫っている子供らに吠えかけて注意を促し助けるという役目を自ら科し、毎日のように走り回っている。

 

助かった子供らは祠にお礼をしにくる。

その上、子供がその祠にお参りすると子犬が守ってくれる。という言い伝えまで出来てしまっている。

あの子らはお参りに来ようが来まいが関係なく助けるのだがな。

まあ、お参りに来てくれた子供は匂いというか気配を覚えることができるので、危険が迫ったことをより察知しやすくなる。という利点がある。

ただのお参りならいいのだが、お礼に来る子供が多いというのは、それだけ道路に飛び出したりする危なっかしい子供が多いということでもあるので如何ともし難い。

おかげでワレの神社よりお参りにくる者が多い程である。

 

そうやって子供の頃から神社などの場所に親しみを覚えさせ、そういった場所に人の足を向けさせ、神とか超常的なものに対して敬う心を忘れさせたくない。

という、当時の町長の目論見は見事に上手く行っている訳だ。

 

それにしても今日のクロとチャコはどうしたというのだろう?

いつもならパトロールに出かければ特別なことがない限り夕方まで帰ってこないのだが、今日は出かけたと思ったらさっさと帰ってきて何か妙にそわそわしている風である。

何か特別なことがあったのだろうかと聞いてみても、片方の前足を口元に持って来て『ナイショ』と言う最近お気に入りの仕草ではぐらかして答えてはくれなかった。

 

クロとチャコが戻ってから少し日が少し傾き始めた頃、2人の子供が仲良く手を繋ぎながらやって来た。

子犬の祠にお参りに来たのだろう。

 

 

 

「あ、なんか広いとこに出た」

 

「ホントだ」

 

見渡すと小さいけど神社があり、そのとなりにもっと小さいほこらがある。

きっと、これがわんちゃんをまつっているというほこらだろう。

そして、少し離れたところのがけの辺りに大きな木が・・・

 

「こっちのほう、いいかんじかも」

 

と言って一人が木のあるほうへ走っていく

 

 

ドクンッ

 

(あれ、なんだろう?へんなかんじがする)

 

 

「ねえ、こっちにおいでよ。すごくいいながめだよ!」

 

「ちょっとまってよぉ」

心の中になんだかよくわからないモヤモヤが広がる。

 

「「うわぁ」」

 

山登りに少し時間がかかってしまい、時刻はもう黄昏刻。

沈みかけた太陽の光を受け、移ろい行き少しも同じ色はない色彩。

夕闇に染まり始めた町並み。二人はその光景に文字通り息を呑んだ。

 

(すごくキレイ。でも、はじめて見るはずなのに、なんだか見たことあるような?

それにこの木、あの子は・・・あの子?わたし、どうしちゃったの?)

 

「どうしたの?」

 

心配そうに顔をのぞきこまれる。

 

「ん、すごく、キレイだなぁって」

 

「そうだよね。こんな場所があったなんて知らなかった。

ここだったら、花火よく見えそうだよね?」

 

「うん、ここだったらあまり人もいないだろうし、音もうるさくなさそうでいいかも」

 

「じゃあ、明日はここで花火を見よう!」

 

「うん!」

 

「よし、せっかくきたんだし、お参りしてからかえろ」

 

手をひっぱられ、神社の前へいく。

 

「小さいけど、けっこうリッパは神社だね」

 

「うん・・・」

わたしは、何故か近くにある石碑が気になって生返事をしてそっちへ向かう

 

「ん?あれ?どこいったの?」

 

「この神社にまつられているのは、え~と、なんて読むんだろう?」

「ねぇ、この字なんて読むかわかる?理科の理だけど、『りさま』じゃおかしいよね?」

 

「ちょっともう、きゅうになにしてるの・・・て、この字?『コトワリさま』かな?」

 

「コトワリさま?」

 

「たぶん」

 

「そうなると、『コトワリさまは、えんむすびとえんきりをつかさどる・・・』て、あれ?」

「山の神社の神様って、縁切りの神様って話じゃなかったっけ?」

 

「あたしもそうきいたよ?でも縁結びってたしかに書いてあるね」

 

「コトワリさま、縁結びと縁切り・・・なんだろう?わたし、このことをよく知っている気がする」

 

「で、でじゃぶ?とかいうやつ?なんか、はじめて来たのに来たことあるとか、見たことあるとかかんじるやつ」

 

「う~ん、そういうのとはちょっとちがう気がするんだよなぁ。」

 

「そうだ!縁結びっていうんならさ、あたしたちが会えたのはもしかしたら、コトワリさまのおかげだったりして」

 

「そうかも!」

 

「じゃあさ、ホントは縁結びの神様でもあるのにみんなが縁切りの神様ってばっかり言ってたら神様でも悲しくなっちゃうよね?あたしたちだけでも、ちゃんと縁結びの神様って知ってるよ。こんなになかのいい友達と出会えたんだもん。ありがとうございますって」

 

「うん!」

 

二人はそれぞれお財布から10円玉を取り出し、賽銭箱に投げ入れ手を合わせる。

 

「「コトワリさま」」

「ハルと」

「ユイと」

「「会わせてくれて ありがとうございます!」」

 

(!!!!! なんと!そうか・・・あのか細く儚い縁の糸を手繰り寄せ、とうとう二人が再び手を繋ぐことが・・・

これがクロとチャコが最近そわそわしていた理由だな。特に今日は登ってくる所をみかけて慌てて帰ってきたという事か)

 

「次は、わんちゃんたちだね」

 

二人はとなりにある小さなほこらに向かう。

普通の神社であれば、ほこらなど社の前には狛犬がいるものだが、

こちらは狛犬のかわりに犬の像が立っている。

狛犬と普通の犬がちがうことは、小学生でもわかる。主に見た目的に。

 

(このわんちゃんたちがそうなのかな?)

 

そして、ほこらの目の前にやってきた二人はあることに気付く。

 

「あれ?このお供えものって」

 

「そういえばおかあさんが、山にあそびに行くんだったら持って行きなさい。ひつようになるからって。ほら」

 

「あたしも」

 

 

 

二人がウサギ形のナップサックから取り出した袋に入っていたのは、目の前のほこらにお供えされているものと同じ、さかなの形をしたペット用クッキー。お供えされたものはよく見るとなにやらかじった跡もある。

 

(ネズミとかかなぁ、もしかしてわんちゃんが?)

 

 

「これをお供えしろってことだよね?」

 

「そうだと思う」

 

「じゃあお供えしようか」

 

二人は袋からクッキーを一つ取り出すと、祠にお供えした。

 

「こっちにコトワリさまのところと同じように石碑があるよ」

 

石碑にはこう刻まれていた。

 

「この ちいさなからだに大きなゆうきを宿した者

 

 名を『クロ』と『チャコ』といい

 

 少女たちを時にはげまし 時になぐさめ 共にたたかい

 

 ついに 悪神をうちほろぼすなり

 

 『クロ』はたたかいのなかで その身をぎせいに

 

 『チャコ』は たたかいのあとも少女によりそい 天寿をまっとうせり

 

 我ら この者らの功績に感謝し ここにまつるものなり」

 

 

「クロと」

 

「チャコかぁ」

 

「ふ~ん、こっちの子がクロで、こっちがチャコかな?」

 

2匹の像を撫でながらそう言う。

 

 

(わんちゃんの像にユイが呼びかけたとき、なんだかまわりが明るくなったような)

 

「ホントに合ってるの?」

 

「なんとなく。それにほら、なんかうれしそうだよ」

 

と、その時

 

「アンッ」

 

「「アンッ アンッ!」」

 

 

「「え?!」」

 

「ねえユイ、今わんちゃんの声・・・」

 

「ハルもきこえたの?」

 

「うん きこえた。なんか『おかえり』って言われた気がする」

 

「あたしもそう、言われた・・・気が・・・」

 

見ると、ユイの目から涙が溢れ始めている。

 

「あ、ユイ泣いてる」

 

「そんなこと・・・それを言うならハルだって」

 

それから二人は心の導くまま、抱擁(ぎゅっ)をして泣き続けた。

痛いわけじゃない。苦しいわけじゃない。なぜだか分からない。

ただ心の奥から涙があふれてくる。

そんな2人を2匹の子犬は嬉しそうに見つめていた。

 

気が済むまで泣いたあと、

 

「グスッ・・・ハル、すごいかお」

 

「ユイだって」

 

2人は顔を見合わせ微笑む。いまだ涙の跡が残っているが、全てを洗い流したような晴れやかな顔。

 

 

「いけない!もうだいぶ暗くなってきてる。はやく帰らなきゃ!」

 

「なにしてるの?置いてくよぉ」

 

ハルは立ち止まり、振り返って神社と祠を見る。なんとなくじゃない、きっとそうだ。

自分だけど自分じゃないような薄っすらと浮かんだ記憶。そう確信したハルは、もう1度心の中で

 

(ありがとう)

 

とお礼を言い、

 

「ユイ、まってよお」

 

ユイのあとを追いかけ、差し出されたその手を繋ぐ。

もう少女たちの繋がれた手が離れることはないだろう。

 

(あの時、異形と化したユイがハルを求める光景を美しいと思ったが、

やはり、生きて笑顔でいるのを見る方が遥かに良い。これだけは訂正せねばならんな)

 

少女たちに見えはしないが、クロとチャコが少女たちを守るように、先導するように隣を走っていった。

まあ、半ばじゃれついている感じではあるが。

 

あの、か細く儚い縁の糸を手繰り寄せることができて本当に良かった。

ワレは、少女たちの魂に報いることができたのだろうか?

 

これから先、少女たちの手が離れないことを、

もう2度と、あのような深い夜を廻ることのないよう心から祈っている。

 

いつまでも・・・

 

いつまでも・・・・・・

 




とりあえず、私が書きたかったのはここまでです。
ここから先は書いている最中に、頭の中で勝手に話が分岐してどんどん膨らんで、
書くのが止まらなくなってしまい、本来書きたかった事の数倍になってしまいました。

だいぶと言うか、かなり捏造しています。夜パートが全くない。といっても過言ではありません。
なので、タイトルが「深夜廻(らない)」です。
センス無いですね・・・

2019/11/15 改行修正。したはいいけど、PCでは気にならない。どうやらスマホで見ると画面の幅のせいか色々おかしいみたい。
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