完夜廻もしくは深夜廻らない   作:トロリスト

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まずは、最初に投稿した分を読んで下さった方、ありがとうございます。
あとから見直したら改行がとんでもないことになっていてとても読みにくいので、すこしづつ修正していきたいと思います。
タグについては、他の方のを見る限り「独自解釈」と「ご都合主義」?が当てはまりそうだったので追加しました。

ちなみに、昨日、魔界ウ○ーズの深夜廻含む4タイトルのコラボイベント数時間前に『左手』をハチに刺されまして、これはもしかしてくるか?!と思い、イベ開始してすぐに貯めてあった石でまず10連!見事、深夜廻キャラである「ユイ&ハル」を1発ゲットしました!しかもユイ&ハル含め、コラボキャラ5体中、3体同時ゲットというなかなかの引きでした。
ステータス画面でチョコチョコ動くユイとハル。手をつないで「にこーっ」ニヤニヤすると同時に少し涙ぐんでしまいました。

本題に戻りまして、これから先は本当に私の妄想の産物です。ハルの左腕がないこと、右腕のみで何かをしようとすること。その辺りやたら言及していたりしますが、そうしないと自分がハルに左腕がないことを忘れそうだからです。自分自身で左腕がなかったらこういう時はどうなる?右腕のみでする場合はどうやって?色々と考えて書いてみました。あとは、ちょうどハチに刺された左手が痛くて上手く使えないので、それを利用して右腕のみの状態を最終確認できたりしました。

皆さんの『ハル』に対してのイメージを崩さずに老女まで持って行けたかどうかが不安です。自分では割とできているんじゃね?とは思っています(書いた人は皆そう言う)。

今回は、ハルが引越してからのその後、そしてチャコが寿命で亡くなりユイとクロへその報告のため訪れたハルが見たものは?です。

最初の投稿分の手直しもありますので、これからは少しづつ投稿していきたいと思います。


第 4話 それから

ハルが引越し、この町から去って暫くして・・・

 

その後ワレは、山はもう安全であること。

アレに唆され山で命を落とした者たちへの慰霊碑を建ててほしいこと。

なにより、アレと戦い命を落とした黒い毛並みの子犬。

あの子犬を丁重に弔って貰いたいこと。

 

それらをワレはこの町の町長とやらの夢枕に立ち伝えた。

 

どうやらアレの存在は、町長になった者に伝えられていたものらしく、それなりに信心深く聡明な者であった町長は、山が安全になったのはなぜか?

そして首を吊って亡くなった女の子。左腕を切られた女の子とワレとの関連性。それらに気付き即座に行動に移してくれた。

 

いくら信心深いとは言え、荒唐無稽な話である。半信半疑だったのであろう。それは仕方のないことである。

町長は確かめるために自ら山に登り、ワレの伝えた通り子犬の埋まっている墓を見つけた。

彼は、疑いが確信に変わりワレに感謝し涙を流した。

 

そうではないのだ。

確かにワレはアレに止めを刺し、本来あるべき存在に戻った。

だが、それに至るには少女と子犬たちのお互いを想う強い気持ちと勇気。そして犠牲なくしてこの結果には辿り着けなかった。

感謝をするべき相手は少女と子犬たちなのだ。

元はと言えば、自分の存在に疑問を持ったために産まれてしまった半身。全てはワレの心の弱さが招いてしまったことなのだ。感謝こそすれ、される側ではないのだ。

 

町長は左腕を切られた女の子。つまりハルに詳しい話を聞きたがっていた。ワレがあの夜の後、すぐさま夢枕に立っていたら、傷が癒えぬまま根掘り葉掘り聞かれて傷口を広げることになっていたことだろう。彼女が引っ越した後に立って正解であった。

 

それから町長は、子犬のために祠を作り、山で命を落とした者のために慰霊碑を建ててくれた。

ワレはそれで十分だったのだが、町長はそうは考えなかったらしい。信仰も薄れ神社も打ち捨てられ、その存在さえ忘れられ始めているにもかかわらず、町を救ってくれた(と考え)ワレの神社を祠の隣に新たに建立してくれた。ワレはこのまま忘れ去られ朽ちていくのも止む無しと考えていた。それほどまでのことをしてしまったのだから。しかし忘れる所であった。

ワレはアレのしたことに対して罪を償わねばならなかったのだ。

 

なれば、ここにて悪縁を断ち、良縁を結び町を見守り続けて行こう。

クロは、未練があるのかどうかは不明だが、何故か彼岸へ渡らず祠を住処と定めたのか、山をパトロールするかのように祠を中心に走り回っていた。ここにいれば、またユイやハルと会えると思っているのやも知れぬ…。

 

~~~~~~しばらくして~~~~~~~~~~

町長は大々的に祭りを行うなど派手なことはせず。ただ、町を守ってくれた神と子犬の話をし、お参りに行くよう促すに留めた。

ワレとアレがひとつになり、慰霊碑も建てられたことが関係しているのか、あれから町は夜に徘徊する連中もなりを潜め極度におびえる必要もなくなった。

だが、忘れてはならない。いなくなったのではなく、潜んでいるだけなのだと。

 

その後、神社に参拝するものも増え、子供連れの家族の姿も見かけるようになった。クロは、子供が来ると嬉しそうに駆け回っていたが、どこかしら寂しそうでもあった。

 

 

---そして数年後---

左腕のない少女がこの町を再び訪れる。

 

亡き親友の忘れ形見として、自分を守り導いてくれた感謝の印として引き取った子犬。

『あの夜』を一緒に生き延びた親友が飼っていた2匹の子犬のうちの1匹。その子犬『チャコ』が天寿を全うした。ハルは生前のユイからこう聞いていた。

 

『この子たちはおはしみたいにいつもいっしょ』

 

なので、チャコのいないクロは寂しがっているだろう。

チャコはクロと離ればなれになっていて寂しいだろう。

そう思い、できることならば一緒に埋めてあげたい。

遺体をそのまま持ち運ぶわけにはいかないので、遺骨の一部を箱にしまい、クロの眠っている地を訪れた。

あの町へ行く理由として親を説得するのに使ったが、あの日以来、会いに来ることのできなかった親友に会いに行くことも目的である。

 

帰りが夜にならないよう、なるべく早く家を出発して昼頃に神社のある、あの町の最寄駅へ着く。

お昼時だったので駅前で昼食を摂っていると、

「あら?ハルちゃんじゃないの?引っ越してちょっと見ない間にキレイになったわねぇ。それじゃ男の子はほっとかないんじゃないの?それはそうと、ユイちゃんのこと、ホント残念だったわねぇ…。で、今日はどうしたの?」

と、おばさん特有の早口で一方的に捲し立てられた。

正直何から答えていったらいいのか分からない。

 

このおばさんは引っ越す前、近所に住んでいた人である。どう答えるべきか悩んでいると、

近所に住んでいたということで私とユイが仲良しだったのも知ってる。なので、

 

「あ、いいのよ言わなくてもおばさん分かってるから。ユイちゃんでしょ?たまには顔を見せに行ってあげなさい。寂しがっちゃうわよ」

 

おばさんはまた早口で、いや内容が内容だけに少しゆっくり目だが、さっきと同じように一方的に捲し立てた。ユイのお墓参りにでも行くと思ったのだろう。目的の半分は当たらずとも遠からずだったので、

「…はい」

とだけ答えた。

「ごめんなさいね。暗い気持ちにさせちゃって。じゃあ、外が暗くなる前に用を済ませるのよ。もし、帰りが遅くなるようだったらおばさんの家にいらっしゃい。泊まってっていいから。あ、今はそうでもないから大丈夫かな」

 

「ありがとうござ…」

ハルがお礼を言おうとしたが、おばさんは言いたいことだけ言うと会計を済ませて去って行ってしまった。無遠慮にずけずけ言うおばさんではあるが、帰りが遅くなるようなら自分のとこに泊まっていけと言い、夜のことを気遣ってくれる辺り、悪い人ではないのだろう。

 

(今はそうでもない?何がなんだろう?)

 

自分も食べ終わり、そろそろ行こうかと会計をし店を出る。

山までは少しあるが、勝手知ったる懐かしい街並みをユイとの思い出を噛み締めながら、のんびりと向かおうと歩いて行く。

 

勝手に名前を付けておなかを抱えて笑った壁の落書き。

ユイがクロとチャコを見つけてこっそり飼っていた空き地。

そして、私とユイが初めて会った大きな松ぼっくりを落とす木。

どこもかしこもユイとの思い出が詰まっている。

 

(あの時と変わらないなぁ…)

 

変わらない、変わってないはずなんだけど、何かが違う。

ハルは何かよくわからないが、見た目とかではなくあの時と何かが変わったと感じていた。

 

 

小1時間ほど歩き、山の入口まで辿り着く。

「やっと、着いたぁ」

着いたのは目的地への入口で、最終目的地はもっと山の上なのだが、とりあえずそう言わずにはいられなかった。途中、花屋に寄り花を買った。ユイの好きだった赤色の花をチョイスして貰っている。まだ学生なのであまり自由にできるお金もなく花についても相場はよく分からないので、資金は幾らくらい。赤色の花を選んで欲しい。そして重要なのが、友達へのプレゼントであること。それだけを伝えて買ってきた。

 

 

ハルは右手を鞄の中に入れる。

子供の頃のようなウサギ型のナップサックはもう使っていない。第一、ナップサックのような両腕を通すものは、左腕のないハルにとっては、背負うのも降ろすのも難儀である。今はだいたい紐の長い肩掛け鞄の紐に頭を通して左肩に掛け、右側に鞄本体があるようにして使っている。落としたりぶつけたりすることも多いためやや無骨なデザインである。

しかしハルも女の子なので可愛らしさも演出したい。ワンポイントで隅っこにウサギのバッチを着けている。雑貨屋に入った時に一目惚れした、2匹のウサギのキャラクターが並んでいるもので、1匹は耳に赤いリボン、もう1匹は青いリボンを着けている。

 

「もうすぐクロに会えるよ」

そう呟き鞄の中のチャコの遺骨が入った箱を優しくなでる。

 

子供の頃は苦労しないで…という訳ではないが、割と普通に歩けたと記憶にある山道が、あの頃より体力がついたはずなのに妙に疲れる。

慣れたとは言え片腕がないというのはバランスが違うから力の入り具合とかが違うのだろう。引っ越す直前に来た時以来、山にも登ってないし。そして歩きながら微妙な違和感に気付く。

 

子供の頃はあまり人が通らないのか、獣道みたいなのばっかりだったが、今は普通に人が歩いている道のようになっている。さっきも降りてくる人とすれ違い挨拶をした。

 

(なんだろう?山の上に何かできたのかな?)

 

「なに、これ?」

 

山の上の目的地に着いてそこにあったものを見たハルが驚くのも無理はない。

記憶にあるクロのお墓のあった場所に小さな祠が建ち、その隣には小さくはあるが立派な造りの神社まである。どうしたらいいかわからず暫し呆然とするハル。そこへ一筋のそよ風が頬を撫で、はっと気付く。

 

自分の記憶と差異のありすぎる光景に目的を忘れかけてしまった。そうだ、今日ここに来たのはそれだけじゃなかったんだ。ハルは、親友がその幼い命を断った木に向かい歩き始める。

 

そんなハルを神社の境内を掃除していた男がじっと見ていることには気付かなかった。男は眉間にしわを寄せ、なにやら思い出そうとしている。少しして思い出したのか「あっ」と呟き、掃除に使っていたほうきを慌てて仕舞い、ハルのあとを追いかけた。

 

 

木の前につくハル。広場にできていた神社や祠とちがって、この木はあの時のままである。ここで、時を止めてしまった親友のように、この木の時間も止まってしまったのだろうか?

崖から町並みを見下ろす。あの日見た、息を潜めて住んでいるかのような寂しい感じがしなくなって、なんだか町の雰囲気が明るくなっている気がする。時刻はまだ昼過ぎなので世界で一番キレイだと思える夕方の風景ではないが、少しだけ、昼間の風景も好きになれそうな気がした。

 

 

「なかなか会いにこれなくてごめんね」

 

「この町に行きたいと言ったり、行こうとしようとするとお父さんもお母さんも止めるんだよね」

 

「ユイは赤が好きだったから、お花屋さんにお願いしていろんな赤い花を選んで貰ってきたよ」

 

 

木の根元に持ってきた花束を供える。

持っている時には角度の関係で気付かなかったが、置いた花束を改めて見ると赤い花の花束の所々に青い花が混ざっている。

 

「なんで、青いお花が…?」

 

不思議そうに首をひねると、三つ編みの先が揺れているのが目に入る。

ハルは子供のころと同じように、髪を三つ編みにしている。片手で三つ編みにすることは難しいので、いつもお母さんにやって貰っているが、そんな事はないと分かっている。でも、もしかしたら、万が一、ユイと会うことができたら、自分はここだよ!と、目印になるようにしていたいのだ。違うところは、子供のころは頭に青い大きなリボンを着けていたが、大きくなるにつれ少し気恥ずかしくなってしまい、今は三つ編みの先を青いリボンで結わえてある。三つ編みの先が目に入ったということは、そこに結わえてある青いリボンが目に入ったということである。

 

「あ、これかぁ」

 

どうやらお花屋さんは何やら訳ありで赤い花の花束を買いに来たような客がいるが、赤が好きな友達に赤い花だけでは友達が寂しがるんじゃないかな?思っていると、目の前の客は青いリボンをしている。そこで店員はこっそりと青い花を忍ばせてくれていたのである。

 

「プロっていうのはちゃんとお客さんのことを見ているもんなんだね」

 

しきりに感心していたが、そろそろ本題に移らなければならない。

すーっと1回深呼吸をしてから静かに話し出す。

 

「ユイ、あのね、悲しいけど伝えなきゃならないことがあるの。

 先月のことなんだけど、チャコが死んじゃったの。あ、事故とか病気じゃなくて寿命だって」

「私が引き取ってから連れて行っているお医者さんが最初に診て貰った時に言ってたんだけど、チャコは同じ犬種の同じくらいの歳の子に比べて、妙に体が歳をとっている。みたいな事を言ってたの。きっと、あの夜、ユイや私を探し回ったり助けてくれたり頑張ってくれたのが原因かも?そう思うとチャコに申し訳なくて…」

 

「あの子は、死期を悟っていて自分が苦しいはずなのに、最後まで私のことを心配してくれているみたいだった。私はもう大丈夫だから、クロのところに行ってあげて。と言ったら、目をつぶってそのまま眠るように…」

「それでね、クロはずっとチャコがいなくて寂しかったと思うし、チャコもクロの傍にいたいと思って、一緒にしてあげたくてチャコの遺骨を持ってきたんだけど、なんだかあの時から色々変わっちゃってて、ユイが作ったクロのお墓のあった場所になんか祠があるの。なにがあったのかな?」

 

「それについては私から説明させて貰っていいかな?」

 

「え?」

 

慌てて振り向くと人の良さそうな初老の男の人が立っている。近くに人がいたのに全く気付かずに独り言をし続けていた気恥ずかしさで顔が真っ赤になる。

 

「いやぁ、すまんすまん。後をつけてしまい、結果として盗み聞きする形になってしまって申し訳ない」

「君は、え~と、ハルちゃん。だったかな?」

 

「え?あの、なんで?」

 

「嫌なことを思い出させてしまうが、君が小学生のとき、山の入り口で左腕を切られた状態で発見されたという事件があっただろ?」

「その時の町長が私で、君とも何回か話をしたはずなんだが、さすがに覚えてないか」

 

そう、この男はコトワリ様から夢枕でお告げを聞き、クロのために祠を造り、山で命を落とした人のために慰霊碑を建て、コトワリ様の神社をここに建立した町長その人である。

町長の職を退いた後、自ら進んでこの神社と祠の管理を買って出て今に至る。左腕のない女の子というのはそうそういる訳ではないが、全くいないという訳でもない。なので、無作法ながらも後をつけ独り言を聞くことで、あの時の女の子だ。と確信し声をかけたのである。

 

「ごめんなさい・・・」

 

言われてみるとどことなく見覚えがあるような・・・

あ、私のことを心から心配してくれているのがわかる目だけは覚えている。目の前の男は姿形は歳を取ったせいで記憶の中の映像と結びつかないが、その目は、あの時見た優しい目と同じである。

 

 

「いやいや、責めている訳ではないんだよ。あんなことがあったんだ。その頃の記憶が曖昧でも仕方がない」

 

「あの、それで、神社とかの話は・・・」

 

「あぁ、すまんすまん、」

 

「神社の隣に管理人の小屋があってな。そこで話をさせて貰えないかね?」

「長い話になるし、私も歳を取ってきて立ち話をし続けるのもなかなか辛いんでね」

はははっと笑い、腰をトントンする。

「君も、もう少し友達の傍にいたいだろうけど、そうして貰えると助かる」

 

 

「わかりました じゃあ」

 

と、振り向いて「帰る前にまた寄るね」と声をかけ、男のあとについて歩いていく。

 

普通ならいくら見覚えがあるとは言っても、ほぼ初対面の男性である。のこのこと着いて行ってしまうのは余りにも警戒心がなさ過ぎなのだが、そこはそれ、あの夜の経験から他人の悪意を感じ取ることにかけては感覚が鍛えられている。その直感を信じて着いて行ってみよう。と思ったのである。

しかし、本当に悪意を持った人間と言うのはそれを隠して近付いて来るものだが、そこまで考えるにはまだ若かった。

 




2019/11/18 サブタイの話数がずれてたので修正。

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