完夜廻もしくは深夜廻らない   作:トロリスト

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もう、アレです。深夜廻要素は登場人(神)物以外の共通点しかなくなってきています。
本格的に夜廻(らない)です。
そう言えば、前回から突然オリキャラ出てきちゃいましたね。
町の状況を説明する第3者がいないと話が進まないんですもん。

この元町長というキャラ。私の脳内から勝手に出てきたクセになんかキャラが立ってて重宝するので、これからやたらと出てきます。

この辺りからの話の流れ、自分自身の感想としては「B級ホームドラマみたくなってきてしまった」です。

今回は、ハルが引っ越す前、当時の町長をしていた男から今の町の状況を聞き、町のためにある頼み事をされたハル。いったいどうする?です。


第 5話 できること

通りすがら「管理人さん、こんにちは」とか色々声をかけられている。ここにお参りに来る人にはそれなりに慕われているらしい。

 

「ここが、管理人の小屋だ」

 

謙遜でもなんでもなく、本当にただの小屋だ。高い山などにある登山者が休むための山小屋に比べてもただの小屋である。そうとしか言いようがない。悪く言えば「掘っ立て小屋」である。

 

「はっはっはっ、まあ、遠慮なく入ってくれ」

 

そう言って、ドアを開けて中に促す。

 

「おじゃまします」

 

おそるおそる中に入る。見た目にたがわず内装もいたって質素である。「起きて半畳、寝て一畳」を地でいくかのような小さい部屋である。物が置いてあったりするのでスペース的にはそんなものだが、実際の広さは四畳半くらいか。

 

「見た通り狭い部屋だが座って待っててくれ、今お茶を入れるから」

 

座布団と古めかしいちゃぶ台を置き、お湯を沸かし始める。

 

「いやぁ、一応は神社の管理人がこんな所に住んでいてびっくりしてるだろう?」

「建てる時は町長だったから、ほとんど町長権限で無理やり建てられたけど、その後は管理のための予算は最低限の最低限くらいしか回せなくてね、」

 

跡を継いでくれる者がいるかどうかがなぁ・・・

 

とか、ぶつぶつ言いながらお茶を淹れ、お茶菓子を入れたお皿と一緒にちゃぶ台に置く。

 

「どうぞ」

 

「ありがとうございます」

 

男は「ズズッ」と一口お茶をすすって目をつぶり味を噛み締め・・・いや、想いを噛み締めるようにしてから、目を開け、ゆっくりと息を吐いてから話し出した。

 

「あの時の事は未だによく分かっていない事だらけなんだが、君に言わなければならない事だけは分かっている。これだけは言わせて欲しい」

 

(なんだろう?事件が起こって騒ぎになったことを怒っているのかな?)

 

「ありがとう」

 

(え?)

予想外の言葉に狼狽える。

 

「そして、君の亡くなった友達と子犬にも」

 

(えっ?あの夜のことを言っているの?あの夜のことは誰にも、お父さんやお母さんにも話してないのに)

 

「君が引越してから少しして、コトワリ様が私の夢枕に立ってね」

 

「コトワリ様?」

 

「この町の伝承にある神様でね。縁結びと縁切りとを司っているらしいんだが、なぜか縁切りばかりが先立っていてね。伝承では大きな手にハサミを持った姿とされているからそのせいなのかな。夢枕に立ったのも見聞きした伝承通りの姿だったからそうだと思うのだが」

 

「そのコトワリ様が夢枕に立ってこう言ったんだよ」

 

『山にいたモノは自分が少しばかり手伝いはしたが、ある少女によって倒され、山は安全になった。今まで山にいるモノに唆され命を落とした者達のために慰霊碑を建てて欲しい。そして、その戦いの時に犠牲になってしまった子犬を丁重に弔ってやって欲しい。子犬の亡骸は山のどこそこに、少女が作った小さな墓がある』と。

 

「君が事故にあった直後に亡骸が見つかった君の友達、ユイちゃんもおそらく犠牲者だったんだろうけど、亡骸が発見されて荼毘に付されたことを知っていたんだろうね。そのせいかユイちゃんの事は言ってなかったよ」

 

「山にいたモノが巧妙に隠していたのか今まで行方不明になった人の亡骸が見つかることは稀だったんだ。でも、いなくなったと分かったあとに山を捜索したらもの凄い数の亡骸が見つかった」

 

「その中に、行方不明になっていたユイちゃんのお父さんも含まれていてね。娘さんと一緒にお葬式をすることになった」

 

(旦那さんとユイの2人をいっぺんに見送らなくてはならなくなったユイのお母さんはどれだけ悲しかっただろう)

 

「だが、僅かだけど1つだけ救いがあったんだ」

 

「救い ですか?」

 

「そう、お父さんの亡骸と一緒に手帳が見つかってね。そこに何故家族の前から姿を消したかが書かれていたんだ。原因はやはり山にいたモノが関係していたらしい。奥さんは自分と娘を捨てて出て行ったと思っていたから、手帳を見た後泣き崩れていたよ」

 

(ユイの最後の日記に『おとうさんがいなくなって』と書いてあったから何があったのかと思っていたけど、ユイのことが嫌いになったんじゃなくてよかった。アイツの犠牲になったのだからよくはないけど・・・。今頃は天国で仲直りしているのかな?)

 

「話が逸れたね。コトワリ様のお告げを聞いた私は、まず『子犬のお墓』というのを確かめに行ったんだ。普通に考えたらあんな見た目のモノに何か言われても信じられないからね。私は伝承である程度知っていたからまだマシな方だったと思うけど、それでも半信半疑でね。言われた場所に行ってみたんだ。そこには小さく土が盛られ、墓標のように木の枝が挿されているお墓らしいものがあり」

 

「これかな?と思い、手を合わせてから土を掘ってみた。そうしたら黒い毛並みの子犬が埋まっていた。そう言えばここに来る途中、今まで山に入った時は何かを誘うような、それでいて何故か心が安らぐような。そんな鳥肌が立つような不気味な気配がしていたんだけど、それがなくなっている。自然に抱かれた時の本当の意味で心が安らぐ気配に満ちていたことに気付いた」

 

「私は、これはもうお告げの通りに違いない!と確信した。そして、土を戻してもう1度手を合わせてから、慌てて山を降りて行動に移ったって訳だ」

 

「そのあとはもう大変だったね。まあ、ここで誰それを説得したとか、手続きがどうとか話しても仕方がないので省くが、そんなこんなで、まず命を落としてしまった方たちへの慰霊碑と子犬を弔うための祠を建てた」

 

「クロのために、ありがとうございます」

 

「いや、君たちのしてくれたことに比べればなんて事はない。そうか、あの子犬はクロというのか・・・」

 

「で、神社なんだが、コトワリ様は自分のことはこうして欲しいとか一切言わなかったんだ。しかしね、亡くなってしまった女の子。そしてその友達である左腕を切られてしまった女の子」

 

「コトワリ様の伝承を思い出した私はやっと気付いたんだ。左腕を切られた女の子は、切りたくなかった友達との良縁、言わば絆を断ち切らねばならない事態に陥っていたんじゃないかってことに」

 

「その左腕は、コトワリ様に切られた。そうじゃないかね?」

 

「・・・・・・・・・」

私は俯いてしまい何も言えなかった。その様子を肯定と受け止め、目の前の元町長は言い過ぎてしまったか?と申し訳なさそうな顔をして

 

「すまない。辛いことを思い出させてしまったね。少々興奮して一気に話し過ぎてしまった。私としては最後まで聞いて貰いたいんだが、辛いようだったら・・・」

 

「いえ、続けてください」

正直辛い。でも、あの夜のことをちゃんと受け止めてくれる人がいて、そして色々動いてくれた人がいたことが嬉しかった。

だから、私は最後まで聞こうと思う。

 

 

「ありがとう」

 

「あんな小さな女の子がそこまでの覚悟をしなければならなかったこと。そして役割とはいえその覚悟を受け止め絆を断ち切ったコトワリ様」

 

「自分は少しだけ手伝った。とだけ言ったが、どう考えてもコトワリ様なくしては成し得なかったことではないのか?」

 

(最後に私にハサミを貸してくれた少し前までは何度も襲われて、町を守っているようには見えなかったような? ハサミを貸してくれるまでに何があったんだろう?でも、何度も襲われはしたけど、神社の状態を見たらなんか悲しくなって、そう思ったらコトワリ様も寂しかったのかな?って)

 

ハルは知らない。ハルとユイ、そして子犬たちのお互いを思う強い気持ちと勇気が、コトワリ様の埋もれていた記憶を呼び覚まし、自分を取り戻すきっかけとなったことを。

 

「昔のコトワリ様の神社は見たことあるかい?」

 

「え?あ、はい、あの時たまたま行きました」

 

(神社のこと考えてたらそのことを聞かれたんでびっくりしたぁ)

 

「だったら、どんな有様だったか知っているね?あんな風に忘れられ信仰する人もいなくなっていたというのに、この町を守ってくれた。それでもコトワリ様は神社をどうにかして欲しいとは言わなかった」

 

「ダム建設はだいぶ前の町長の時の事だが、私はコトワリ様に感謝すると共に、この町のしてしまった事を恥じた」

 

「そこで私は・・・え~と、子犬はクロと言ったっけ?」

 

「はい」

 

「その、クロのための祠の隣にコトワリ様の神社を新たに建てたんだ」

 

「そうだったんですか」

 

「まあ、見ての通り小さくて、町を守ってくれた神様に対していささか失礼じゃないかと思ったけど、私の権限ではあれが限界だった」

 

「いえ、そんなことはないと思います。今思い出してみると。私が見たコトワリ様は、忘れられてしまったことで少し自分を見失っているようで、どこか寂しそうな、悲しそうな・・・そんな感じでした。だから、思い出してくれて神社も造ってくれてでコトワリ様も喜んでくれているんじゃないかと思います」

 

「な・・・!君は、コトワリ様に会ったのか?」

「あ、ああそうか、腕を切られたのであれば会っているのは当たり前か」

 

「これで、私からの神社ができた経緯の話はおしまいなんだが、君にお願いがある」

 

「お願い?」

 

「ああ、思い出すことも辛いということは承知している。だが、私はどうしてもあの夜、何が起こったのか知りたい。コトワリ様のお告げがあった後、君が関連していると気付いた私は、君が引越した後だと知ってとても残念だった。しかしそれは、事件直後で悲しんでいる君を想って、同じく事件直後で興奮している私が君に根掘り葉掘り聞いて傷口を広げたりしないよう、コトワリ様があえて君が引越してから少し経ったのを見計らって夢枕に立ったのだと思う」

 

「コトワリ様が…」

 

「あれから何年も経っているからと言って、君にとっては昨日のことのように思い出せるくらい辛い記憶だろう。あの時、町長でありながら何も知らずに歯痒い思いをした。というのもある。しかし、私はこの町のこれからを考えるにあたって、どうしても知っておかなくては。と感じるんだ」

 

目をつぶって少し考える。この人であれば話してもいいのではないか?

コトワリ様のお告げを聞き、クロのために立派な祠まで造ってくれたこの人であれば…。

ハルは話すことを決心し、目を開けて元町長の目を見据え

 

「わかりました」

ハルはぬるくなってしまったお茶を一口飲み、あの夜、何があったのかを語りだした。

なぜ自分が夜に友達を探していたのかを。どうやって山の上のアレを倒したのかを。

そして、親友と二度と手を繋げなくなってしまったのかを…

今日はあの夜、自分を助けてくれたもう1匹の子犬、チャコが亡くなってしまったため、クロの隣に埋めてあげようと遺骨の一部を箱に入れて持って来た事を告げた。

 

「そうか…」

元町長はそう呟くと、考え込むように黙り込んでしまった。

 

 

「話を聞いてみて、まず君に話しておかねばならないことがある」

 

「話しておかねばならないこと。ですか?」

 

「おそらく君は知ってしまったと思うが、この町の夜のことだ」

 

「………!」

 

「町長であった私も含め、町の大人たちは殆ど知っている。でも、これだけはわかって欲しい」

「知っていながら何もしなかった訳じゃない。見て見ぬふりをしていた訳じゃない。どうにかしたくてもどうにもできなかったんだ!だから、子供たちには『夜になったら外に出てはいけない』と言うことしかできなかった…」

 

元町長は血を吐くかのようにそう言った。

 

(この町の夜のこと、ただ話を聞いていただけの人だったら、何を言っているんだろう?としか思わないかも知れない。でも、私は知っている。夜の街をうろついているモノたちがどんなモノかを。きっとこの人も言葉通りどうにかしようとしたんだろう。でも、アレは本当に人間にどうにかできるモノではない)

 

「だが、山が安全になったというコトワリ様のお告げの後から少しずつ。慰霊碑とクロの祠、コトワリ様の新しい神社が建立されてからは、町のなかでも目撃例が極端に減って行った。今では夜、表にでても問題ないほどだ」

 

「ほんとですか?」

 

「ああ、本当だ。だが、そこかしこに気配はする。いなくなったのではなく潜んでいるだけ。ではないかと思う」

「今はコトワリ様が山にいたモノを倒してくれて力が強くなっている影響だと思うが、また人間が信仰を忘れたり山にまた何かが棲み出すようになってしまったら、嬉々として潜んでいる場所から出てくるだろう」

 

「私はそうならないためにも、コトワリ様への信仰を廃れさせてはいけないと考えた」

 

「そうならないための一つの方法として考えたのが、クロとそして君が今日持って来た…その子の名前は?」

 

「チャコです」

 

「今はクロだけの祠だけど、チャコも併せて祀りたいと考えている」

 

「実はね、祠を建ててからなんだが、子供たちに危険が迫ったり、例えば車に轢かれそうになったりすると犬の鳴き声がして、びっくりして立ち止まると車が目の前を通り過ぎていく。そういったことが度々起こるようになって来たんだ」

 

「私はクロが子供たちを見守っていてくれて、助けてくれているんじゃないかと思っている」

 

「クロが…」

 

「勝手な推測で済まないんだが、君がチャコの遺骨をクロの隣に埋めに来たってことは、2匹は仲良しだったんだろ?」

 

「はい、ユイは『2匹はおはしみたいにいつもいっしょ』と言っていました」

 

「そうか、では私が責任を持って、クロの隣に埋めさせて貰おう」

 

「この祠のわんちゃんが子供を見守ってくれている。ということになれば、子供のうちから神社などに親しみを覚えて、コトワリ様の信仰も廃れるのを防げるんじゃないかと思っている。君と、ユイちゃんの愛犬を利用するようで本当に申し訳ないと思っている。この町のためというより、子供たちのためにどうしてもそうさせて貰いたい」

 

そう言って、元町長は両手をちゃぶ台に置き、突っ伏すように頭を下げた。

 

「…あの、頭を上げてください」

「わかりました。チャコの遺骨、お預けします」

 

「ありがとう。それでだ、子供たちにもっと親しんでもらえるように、クロとチャコ、ちょうど2匹いるから、狛犬の替わりに2匹の像を建てようと思うのだが、写真とか持ってないかね?」

 

「写真、ですか?」

 

「そう」

 

「チャコは私が引き取ってから撮ったものがありますけど、クロは…」

 

「あぁ、そうか、子犬たちはユイちゃんが内緒で空き地で飼っていたんだっけね。

 君たちもまだ小さかったらか携帯を持っている歳でもなかっただろうし」

 

「…!携帯!」

 

「どうかしたのかね?」

 

(そうだ、あの日、初めて会ったチャコはびっくりして逃げて行ってしまったから、仕方なくクロだけを連れてお散歩していた時、たまたま近所のお姉ちゃんが通りかかって…)

 

「ハルちゃん、ユイちゃんこんにちは」

「「こんにちは!」」

「元気がいいねぇ、あれユイちゃん、今日は1匹だけ?」

「はい、チャコも一緒に連れてきたかったんだけど、はじめて見たハルにびっくりして空き地の隅っこににげて出てこなくなっちゃったんです」

「あらら、じゃあこの前ユイちゃんと2匹を撮ったから、今日はハル&ユイとクロで写真を撮ってあげるね」

「え?あの、その」

私がもじもじしてるのを見てすかさずユイが

「おねがいします!」

で、そんなこんなで写真を撮って貰って、貰ったんだけど、ユイもクロもあんなことになって、私も左腕を失くして…

私が退院した後、お姉ちゃんがあの時撮ったお写真と、ゆうえすびぃめもり?とかいうのを私に手渡しにきて、私はまだ小さかったからそのUSBメモリというのがよくわからず「これは?」と聞いたら、お姉ちゃんは悲しそうな顔をして

「もう渡す人がいないから、ハルちゃんが貰ってくれたら嬉しいな。その子もきっと喜ぶと思う」て言ってた。

私はお姉ちゃんの言った「いなくなっちゃったわたす人」というのはユイのことなのかな?となんとなく考えてた。

おうちにかえってお父さんに「お姉ちゃんにお写真とこれもらったんだけど、どうしたらいいの?」と聞くと、「ああ、これはね」と言ってパソコンに挿したあとマウスというのを何度かカチカチしていたと思ったら、画面にはユイと、クロとチャコがいっしょに写っている写真の画像が…

あの時のことが夢だったら、ホントはユイなんかいなくて自分が事故で左腕を失っただけだったら。何度も何度もそう思った。

でも写真のなかのユイはいつもと変わらない笑顔で笑っている。その笑顔が、たしかにユイが生きて存在していたことの証でもある。

「ユイぃ…」

それからしばらく泣いちゃったんだっけ。

そのままお父さんがパソコンにも保存してくれて「見たくなったり印刷したくなったりしたらいつでも言っていいからね」と言ってくれた。そういえば、クロとチャコ1匹で写ってたデータもあった気がする。

 

「あの、写真、あります」

 

「ホントか?」

 

「はい、たまたま近所のお姉ちゃんが携帯で撮ってくれて、そのデータがお父さんのパソコンに保存してあると思います」

 

「じゃあ、そのデータを送ってもらえるかね?」

 

「あの、その…私、手がこうなってしまって、えっと元々不器用っていうのもあるんですが、なんと言うかそういった機械の操作って苦手で、アナログでのやりとりの方がやりやすいんです。お父さんのパソコンだし、操作もよくわからないし。なので、帰ったらお父さんにクロとチャコの写真を印刷して貰って、それを封筒で送る。でもいいですか?」

 

「そういうことだったら、それでお願いしたい。送付先は…ここに送ってもらえるかな?」

 

そう言って、名刺を手渡された。

 

「必ず送ります。かわいい像をお願いしますね」

 

「任せてくれ」

 

「ところで、不躾な話で悪いんだが一つ聞きたいことがある」

 

「なんでしょう?」

 

「あ~、君はコトワリ様に左腕を切られた。つまりそれはユイちゃんとの切りたくなかった絆を断ち切ったいうことに他ならない。なのに、君のユイちゃんへの想いは変わらないように見える。なぜだろう?」

 

「それは」

自分でも不思議だった。縁を切られたのならユイのことを気にしなくなってもおかしくないのに、元町長の言った通り、今も変わらずユイのことを想い続けている。

きっと、これが答えなんだと思う。

 

「それは、断ち切られた左腕が、ユイと私との絆の証だからです!」

 

片田舎の小さな町の地方自治体とは言え、政治に関わっていた身である。こんな小さな町でも利権を貪ろうとして暗躍する輩もいた。いったい利権なんてどこにあるのか?と、首を傾げるような町なのだが何故かそういった輩はどこにでも一定数存在するらしい。正直、夜に徘徊する連中の方が目的は単純明快。そしてブレがない。かえって可愛げがあるとすら考えてもいた。そのような人間の後ろ暗い面を見続けていた元町長に、そう言ったハルの姿はとても眩しく映った。

 

この子のために必ずや可愛い像を造ってみせよう!

そう、決意を新たにしたのであった。

 

窓の外を見るとだいぶ日が傾いている。

 

「もう黄昏刻か…、だいぶ話し込んでしまったが電車の時間は大丈夫かね?」

 

「あ、え~と」メモを取り出し電車の時間と時計を見比べて確認する。

 

「今から山を下りればなんとか」

 

「そうか、じゃあ駅まで送って行こう」

「本当は今日はこの町に泊まって貰って、明日改めて話をしたかったのだが…。一応、宿泊施設もあるしな。いやいや、私が引き留めるんだから宿代は私から出させて貰うよ」

 

「いえ、そこまでして頂く訳には」

 

「そうか? う~ん、残念だ」

 

そう言って、湯飲みに残ったお茶を飲み干す。お茶はすっかり冷めてしまった。

 

小屋を出たハルと元町長。

 

「じゃあ、帰る前に寄るところが」

 

「あ、そうか。行ってきなさい。私はまた盗み聞きする訳にもいかないから向こうで待ってるよ」

 

「ありがとうございます」

 

木の前まで行き、今日起こったことを少し早口で報告した。元町長を待たせているので世界一キレイな風景を堪能する暇もない。

そして

 

「またね」

 

そう言って、ハルはその場を後にした。

 

 

帰りの電車の中、ハルは少し興奮していた。

あの夜にあったこと、今まであの町で起こっていたことをちゃんと考えていてくれている人がいたんだ。そして、コトワリ様のお告げがあったからってただクロのお墓を作るだけじゃなくて、感謝して祠まで建ててくれて。

それが例えクロが望んでいたことではなかったとしても、それを利用しようとしていたとしても、心から感謝してくれていることは疑いようもなかった。

きっとクロもそんな気持ちを察したんじゃないかな?私が引越しのことで少し落ち込んでたのを察して、どこで拾ったかわからないけどお人形をプレゼントしてくれるような優しい子犬だったし。それでなくとも子犬のうちに死んでしまい、もっとユイと遊びたかったに違いない。

だから同じ年代の子供たちが危険にさらされた時、ユイや私にしてくれたように守ろうとして行動してくれるのだろう。元町長も利用しようとしているかも知れないけど、そうやって町のこと子供たちのためを思って行動してくれているのであるのなら、自分にできることがあるなら手伝いたい。そう思った。

 

人間、そうやってウキウキしていると何か重要なことを見落としがちになるものだが、ハルもまた例外ではなかった。




ごめんなさい。なんか、後を引くような、悪いことを想起させるような終わり方が続いてますね。
たぶん、私のクセなんでしょう。あまりやりすぎると単調になってしまいますので、なるべくそうならないように気を付けます。
ただ、このエピソードでは最低あと1回はあります。それは最初からそこで区切ろうと思っていた箇所なので勘弁して下さい。

あと、ここから先、ハルにとって重要な分岐点が発生します。
一応、下書きはほぼできていて、微調整してアップするだけなのですが、
私の頭の中の脳内ハルちゃんが、
『投稿するならもっと詳しく!』と、ツッコミを入れてきました。

私「いや、もうほとんどできてるし」

ハル「………」

私(あの、無言で目に涙を浮かべて見つめてこないで…)

シャリ…シャリ…

私(ん?何の音?…!?コ、コトワリ様がハサミを砥いでる!)

私「はい!やらせていただくであります!」

ハル「ニッコリ」

いつの間にかコトワリ様もいなくなっている。

と、いう訳でして、下書き段階で少しはやっていたのですが、ゲーム本編の頃のユイ&ハルと同年代のお子さんを持つ職場の人とかに追加で取材と、少々の調べものが発生してしまいましたので、
次話はまあそんなにかからないと思いますが、その次は割と間が開くかもです。

万が一、続きを楽しみにしている方がいましたら申し訳ございません。
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