水は過去へ戻り蟲を救う   作:霜月優斗

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水は最初の運命を打ち破る

「う、ぁ…ここは確か…」

頭が割れるような頭痛と共に目が覚める。俺はハッと起き上がり辺りを見渡すと俺が幼少期に姉と住んでいた家の間取りと一致する。それはいい、だが問題は俺の身体が縮んでいるのだ。それにだ、何故ここに俺はいるのだろうか?最も望んでいるしのぶの運命を変えるだけならば胡蝶カナエが死ぬ前の日でいいだろう…いや待て、そう言えばしのぶはこうも言っていた。

『貴方の本当の願いが叶う』と。それならば納得がつく。俺は死んだ姉さんを助けたかった。錆兎も助けてやりたかった。やり直しなど何度望んのだかわからない。

だが、今やっとこの願いが果たされようとしているのならば、今まで救えなかった仲間や大事な人をすべて救ってやる、たとえこの身が果てようとも…!

俺がそう意気込んでいると後ろから不意に声をかけられた。

「あ、こんなところにいたのね義勇!」

その声に振り返るとそこにはかつて俺を庇い死んでしまった蔦子姉さんがそこにいた。

「あぁ、すまなかった、姉さん…」

「珍しく大人しい…まぁいいけれど、探したのよ?」

蔦子姉さんはやや不思議そうな顔をした後に納得したようだ。いや何にさ。

それよりも今日は何日だ?もし()()()()()()()()()()()()()()()()()()でこの時間だとしたらヤツが出てきてもおかしくない…!

俺は藁にも縋る思いで姉さんに聞いた。

 

「それはすまない。…ところで姉さん、明日は何か用事はあるのか?」

だが、蔦子姉さんが発した回答は残酷だった。

 

「あれ?義勇は知らなかったっけ?実は明日祝言をもらうのよ~!」

 

嫌々気付いていたが今日はやはり蔦子姉さんが祝言をもらう前日だった…こうなってしまったのなら何としても姉さんを助けなくては。

「…そうか、姉さん、悪くは言わない、今すぐ隠れてくれ、()()が来る…!」

それを伝えると姉さんは困惑しているのか、

「義勇?何を言っているのかわからないのだけれど…」と答え、一向に隠れようとしない。それもそうだろう、突然ヤツが来るから隠れろ、なんて言われても理解できる筈がない。

出来れば見せたくはないが、迎え撃つために近くにあった斧を手に取る。

 

「何をする気なの義勇!」

「…そんなもの決まっている。」

 

自分でも恐ろしいほど底冷えするが出て、姉さんも俺の変わりように驚いている。だが気にしている時間などない。もうじきヤツが、かつて姉さんを食い殺した鬼がもうすぐやってくるのだから。

それ故に俺は告げる。

「鬼を殺すんだよ。」

「鬼?」

姉さんはいまいち言っている意味が解らないようだが…そろそろか。さぁ、年貢の納め時だ。化け物め。玄関の外から微かながら音が聞こえた。そろそろ奴が来るようだ。

俺は最後に一度だけ姉さんの方へ振り向き、

「姉さん…達者でな。」

別れとも取れる言葉を送り、玄関を蹴破り、外に出るとその化け物(最愛の姉を殺した鬼)がいた。

 

「ほぉ~自ら喰われに来るとはいい度胸だなァ、決めたぜ、今回の獲物はお前にしてやろう…」

鬼はニタリと気味悪く笑みを浮かべながら義勇を見つめる。だが鬼は目の前の人間がいかに危険であるかに気付かない。

 

「勘違いしているな、化け物が。」

「勘違いだぁ?お前頭大丈夫か?」

 

鬼は嘲笑しながら涎を垂らして俺を見てくる。あぁ、実に気分が悪い、童磨にしのぶが殺された時と同じかそれ以上の怒りがこみ上げてくる。

「俺は今から貴様を殺す。」

今俺が出せる最大限の殺気をかけるが、ほとんど効かない、むしろ馬鹿にした顔で嗤いながら言ってきた。

 

「ハッ、その小さい身体でか?やれるものならやってみるんだなァ!」

「…言ったな?では言葉どうりに殺してやる。」

 

さぁ、行くぞ、身体が小さくなろうとやることは一つだ。

 

大きく息を吸え、そして全身に酸素を、血液を巡らせろ!

 

この身全てを刃に変えろ、武器を振るえ!我が専心は奴の絶殺に向けられた…!!

 

俺は今出せる全力で、されど水が流れるような滑らかな足運びで地面を駆け、鬼の手足に狙いを定め、斧を振るった。

「…水の呼吸、参ノ型、流流舞いッ!」

 

その一撃は鬼の四肢を容易く傷つけたが相手の傷は瞬く間に塞がっていく。一度後退すると先程までいた場所を鬼の爪が通り過ぎる。

「がっ、ふ!?流石に今の身体では連発は出来ない、か」

冗談じゃないと血を吐いて愚痴る。それはそうだとも、何も鍛えていない身体でいきなり全集中、あまつさえ呼吸を使ったのだ。無事で済むはずもない。

「チッ、ただのガキかと思ったら鬼狩りの子供かよ、まぁいい、すぐに殺して喰ってやる。」

鬼の顔が憤怒に染まり、再度爪を振るう、が義勇には届かない。

 

「そうか、なら喰われる前に殺すまでだ。」

 

俺は再び武器を構える。まだ身体が小さいため、幾分かふらつくがまだこれだけ冷静に分析できるなら大丈夫だ。

 

自身の戦力は把握している。――今の身長では奴の頭を飛び越える事は不可能、ならば死角からの奇襲は可能。ならばやる型は一つしかない。

 

先程と同じく大きく血だらけの口から息を吸込み、踏み込む。されど先程とは比べ物にならないほど速く駆け抜ける。

接地面を最小、最短にして駆け回る、またの名を『水の呼吸 玖ノ型 水流飛沫』。

 

「何、このガキ、さっきよりも速いだと、何処に消えた!?」

鬼は俺の速さについていけてない、加えていま俺がいる場所は奴の死角、やれる…!

 

「水の呼吸、壱ノ型、水面斬り」

俺は飛び上がりその刃を奴の首に叩き込み、俺が振るった斧の刃は奴の頸を飛ばした。だが日輪刀で頸を跳ねたわけではないのでゆっくりと再生しておりあと数十秒もすれば身体と頸がくっつくだろう。

 

どうする…このまま来る夜明けまで持ちこたえるべきか?いや、それではギリギリ先に俺の身体に限界が来てしまう。かと言ってもう一度殺すにしても次はない。ならば身体が再生しきる前に…!!

 

「…貴様はここでじっとしていろ。」

 

水の呼吸 肆ノ型 打ち潮

 

頸を落とされ動けない鬼に俺はすかさず連撃を叩き込む。

鬼の四肢は完全に千切れ、当分は動けないだろう。

だが、限界が来たようで突然に俺の視界が歪み、同時に襲ってくる倦怠感に立っていられず片膝を着いた。

「流石に、急に呼吸を使ったのが、がふっ…いけなかった、みたいだな…」

少し焦ったのがいけなかったか…!身体が負担に耐え切れずに血も吐いてしまうとはな…

だが、先程の攻撃のおかげで夜明けまでは奴は動けないようだ。

「早く…戻らなくては…姉さんが、心配してしまう…」

それもそうだ、かれこれ三十分以上も斧だけで鬼とやりあったのだから。

「大丈夫ですか!?」

遠くから誰かが近づいてくる声がしたが、今の俺ではもう意識を保てなくなり、俺の意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 




評価、感想お待ちしております。

追記、順番がずれていて申し訳ございません。m(_ _)m

番外編書くとしたらどんなお話が良い?

  • ぎゆしのでデート♪
  • ぎゆカナで料理教室♪
  • 胡蝶姉妹の休日!
  • キメツ学園編!
  • 義勇さんにお酒を飲ませようとする胡蝶姉妹!
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