ポケットモンスターノーブルバイオレット 作:ジャン=Pハブナレフ
「ん……ん?」
囚われの身となったユウトは牢屋に放り込まれていた。
「目が覚めたのね」
幼さの残るような声が牢に響く。
「誰?」
「ヤマブキシティのジムリーダー ナツメよ」
「ナツメさん!?」
「あなた、私のチャレンジャーなのよね? でも私はロケット団に先手を打たれてここに幽閉されてしまったの」
「そうだったんですか……でも奴らはどうしてあなたを?」
「それはここにシルフカンパニーの本社があるからよ」
「シルフカンパニー……」
「ええ、カントーの産業にはだいたい絡んでる大企業ね。
私もしばしば本部の方に顔を出しているのだけれどある日突然ロケット団がこの街を封鎖し、うちの事務のトレーナーやポケモンを拐ってしまったの」
「そうなんですか。しかし、奴らの目的は一体?」
「わからないわ。いずれにせよ、私やあなたの手持ちはここにはない。なんとか脱獄して反撃する機会を待つしかないわ」
ヤマブキシティの外ではすでにジムリーダーたちが向かいつつあったが……
「はぁ……はぁ……まさかこのような事態になるなんて!」
タマムシシティを守るエリカが息を切らしていた。
「エリカさま! カビゴンの大群がどんどん迫ってます。このままでは!」
「くっ……私たちが勘づいたから狙ったとしか思えないカビゴンの襲撃、応援には行けませんね」
「エリカ殿!」
するとアンズがエリカの元にやってきた。
「私も協力します!」
「ありがとうアンズさん!」
一方グリーンやタケシ、マチス、カスミも各々でヤマブキシティに向かっていた。
「待ってろよみんな!」
「カツラさんもきっとヤマブキシティに向かってるはずだし、エリカたちが西から攻めて俺たちがそれぞれ南と北で攻めればうまいところ一網打尽、ロケット団は今日で終わりだ!」
「無事でいて……ナツメ!」
そしてシルフカンパニー屋上ではサカキがモニターでカントーの街を眺めていた。
「もういいか……」
「撤退しますか?」
「ああ、マスターボールの制作には成功した。あとは究極のポケモンをこいつで制御し我々にとっての新たなカントーを生み出すのだ!」
サカキが秘書のアポロを連れ屋上へと避難した。
「団員たちよ! あとは任せたぞ」
「「はっ!」」
団員に見守られながらサカキとアポロはどこぞへと飛び去っていった。
_______________________________
一方、牢に閉じ込められてしまったユウトはナツメと共に脱出を図ろうと瞑想していた。
「こ、これでいいんですか?」
「……」
「あ、あの……!」
すでに瞑想を始めて5分、ユウトは早々にダウンしてしまう。しかしナツメには何も聞こえていないかのように瞑想を継続していた。
「ッ! 来た」
するとひとりでにモンスターボールが2つやってきた。
「はい、これ」
片方のボールを投げて中が出てきた。
「ごめんなさい、あなたや私のポケモンを超能力で引き寄せたけど中身の保証はできないわ」
「そう、だったんですね」
ユウトが足を痺れさせて壁に寄りかかっていた。
「断食しながらも念力を働かせたけど……今はこれが精一杯……」
「いえ、幸い監視カメラはないようなのでポケモンを出して中を確認しましょう」
「ええ」
2人がポケモンを呼び出した。中身はそれぞれ、モルフォンとゴースだった。
「ゴース! 良かった……なんとかこっちに戻ってきたみたいだ」
するとゴースの姿が変化していった。
「なっ、なんだ!?」
「交換進化のようね」
「交換進化?」
「一部のポケモンの中にはトレーナーが変わることで進化できるポケモンがいるのよ。ひょっとしたら、ゴーストは今は私が持ってるっていう判定なのかも」
「そうなんですね……知らなかった」
「あなたのゲンガーよ。受け取って」
「はい! こっちもモルフォンを返しますね」
2人は元の手持ちを交換していた。
「さーて! 囚人ども〜! チェックするぞ〜」
やってきたしたっぱだったがユウトのタックルで頭を打って気絶してしまう。
「とりあえず、俺が取り戻します。ナツメさんもいきましょう!」
「ええ、頼むわ。今の私は疲労でいつもの半分しか動けないからあなたに任せるわ」
牢屋を出たユウトたちはしたっぱや監視カメラを振り切って休憩場所のようなところを発見した。
「ここは……休憩室か」
「でさ〜!」
したっぱの声が聞こえ2人はとっさにロッカーに篭る。
「すみません」
「静かに。気付かれるわよ」
ナツメと共に狭いロッカーに閉じこもりなんとかやり過ごす。
______________________________
一方地上ではロケット団のしたっぱがポケモンたちを使って街を荒らしていた。
「イワーク! 行け!」
イワークでポケモンたちを攻撃するもギャラドスが立ちはだかる。
ミスタータケシ! 任せてください!」
マチスがギャラドスを抑える横でカツラとカスミが避難所で人々やポケモンセンターのスタッフの手伝いをしていた。
「一応ジムのトレーナーたちも向かわせてるけど、明らかにおかしいわ! いるのはしたっぱばっかりよ!」
「うろたえるな! ここが終われば儂等もあの2人と合流してナツメくんを助けに行くんだ!」
「はい!」
エリカとアンズは今もタマムシシティで足止めされていたためヤマブキにはとても急行できずにいた。グリーンも向かっていたが駆けつけるのにはまだ時間がかかっていた。
「ふん、いい気になるなよ!」
ロケット団幹部ランスがタケシとマチスに立ちはだかる。
「きっさま! よくもナツメを!!」
「ふん! 行けフリーザー!」
「何ですって!?」
すると上空からフリーザーが現れた。しかし頭部には怪しい装置が取り付けられており、咆哮をあげる。
「くっ! よりにもよってフリーザーを操ったのか!」
「ライチュウ! 10まんボルト!」
電撃を仕掛けフリーザーが怯むもれいとうビームを受け一撃でライチュウとイワークが凍結してしまう。
「相性が良くても勝てるはずがなかろう!」
「くっ! 行け、イワーク!」
二体目のイワークを呼び出してフリーザーに突撃するもしろいきりで攻撃が外れてしまう。
「エレブー!」
マチスもイワークの背をよじ登りながらフリーザーに攻撃するよう命令するも全く通用しなかった。
同じ頃、ヤマブキシティ地下ではユウトとナツメが無事ポケモンを全て取り返すのに成功した。
「みんなと合流しましょう!」
「ええ!」
「おっと待ちな!」
そこにはアテナとラムダが立っていた。
「よくもフリーザーを!」
「ふん! かかってきなさい」
「やりましょうナツメさん!」
「ええ!」
_______________________________
一方外では、グリーンが遅れて駆けつける。
「きたか!」
「待たせたな!」
彼の手持ちを全て呼び出してフリーザーを押さえつける。
「サイドン、カイリキー ストーンエッジ!
ウィンディ かえんほうしゃ!」
「俺たちも! イワーク いわなだれ! カブトプスギガドレイン!」
「ライチュウ かみなり! エレブーかみなりパンチ!」
ジムリーダーの連携プレイによりフリーザーは攻撃を正面から受けてしまう。
(あれか!)
「ピジョット、つばめがえし!」
ピジョットが油断したフリーザーの装置を破壊する。悲鳴を上げるフリーザーだったがすぐに正気に戻る。
「くそっ! しかしまだファイアーにサンダーがいる!」
休むまもなくファイアーにサンダーが襲いかかる。
「待たせたの!」
「遅れてごめんね!」
するとその場にカスミとカツラがやってきた。
「私たちもいますわ!」
さらにはエリカとアンズも駆けつけた。
「よし! ジムリーダーの力を見せてやろうぜ!」
「「おう!」」
______________________________
一方、アポロはラムダと、ユウトはアテナと交戦していた。
「ヤミカラス! ナイトヘッド!」
「かわすんだ! ゲンガー シャドーパンチ!」
シャドーパンチを直撃するもヤミカラスは受け身をとってダメージを軽減していた。
「アーボック、どくばり!」
援護で放つどくばりもストライクの羽で叩き落とし、正面から攻撃し合うのだった。
「ストライク、つばさでうつ!」
「だったら……ラフレシア、あまいかおり!」
アテナも手持ちを全て繰り出して勝負を仕掛けてきた。対するユウトはストライクとビリリダマを繰り出して応戦する。
「ビリリダマ、妨害にソニックウェーブ!」
ビリリダマのソニックウェーブが敵全体を狙う。
「このトリプルバトルは本来ここではイレギュラーな代物……あなたに勝てるかしら?」
「うるさい、お前のような悪党に俺が負けるか! フリーザーを助けるって約束したんだ!」
進化したばかりのゲンガーでアテナのヤミカラスを迎え撃つ横では、ラムダが卑劣にもフーディン相手にラッタとズバット、ドガースの三体で袋叩きにしようとしていた。
「俺様はバトルに関しちゃこだわりはねえ! かちゃあいいんだよ、勝ちぁなあ!」
「下劣……」
吐き捨てたナツメの指示でフーディンは瞑想に入る。
「バカが! そんなくっだらねえ技で俺の手持ちが負けるか!」
ヘドロばくだんに、ちょうおんぱ、ひっさつまえばがフーディンを襲うが……
突如としてラッタがズバットを攻撃した。
「なんだ!?」
「サイコキネシス……」
フーディンに操られたラッタはそのまま動きを封じられていたドガースと正面激突されてしまう。
「まとめて終わりよ……」
容赦ない追い討ちに三体はあっという間に倒されてしまう。
「なんだと!?」
そしてユウトは硬直状態となっていた。
「ビリリダマ、ころがる!」
ビリリダマがラフレシアを狙うが進路上にねむりごなを吐かれる。
「チャンスね! ヤミカラス、おどろかす!」
ねむりごなで動きの鈍るビリリダマをヤミカラスがお攻撃する。
「ストライクは!?」
ストライクはアーボックに狙われそれどころではなかった。
「ゲンガー行け!」
ゲンガーがカバーしようとするとビリリダマが目を覚ましたかのように、激しく転がり出した。
「なんだと!? 眠ったはずだ!!」
するとビリリダマから光が溢れた。
「進化した!?」
「マルマインか……所詮地雷のような捨て駒など総攻撃で捻り潰す! 行けお前たち!」
アテナが一瞬狼狽えながらも総攻撃を命じる。
「マルマイン、パワーアップしたお前のスパークを見せてくれ!」
マルマインがニヤリと笑い全力のスパークを放ち三体をまとめて撃破するのだった。
「マルマイン、ごめんな。お前は故郷をロケット団に荒らされて頭にきてたんだよな?」
ユウトが尋ねるとマルマインはにっこり笑った。
「終わったようね」
ナツメが声をかける。
「さて、あなたたちは……」
「チィッ!」
ラムダが煙玉を投げる。
「あばよ!」
ラムダとアテナは逃走してしまう。
「逃げられた!」
「……いきましょう。私たちの目的はみんなと合流することにある」
「はい……」
_____________________________
表に出るとジムリーダーたちがなんとかファイアーとサンダーを抑えていた。
「みんな!」
ナツメがジムリーダーたちに駆け寄る。
「無事でしたか!」
「ええ、あなたたちが噂してた彼に偶然ね」
「どうも……」
カツラがユウトの前に現れ頭を下げる。
「ユウトくん、すまなかった! 君のような若者を苦しめ、年長者のワシが不甲斐なくて……」
「いいですよ。奴らになにされるかわからなかった中でこうなったのはチャンスでしたし!」
「そうか……」
「みんな! 行くぜ!」
「おう!」
グリーンたちの後ろからトレーナーたちが飛び出してきた。
「あちこちに強いポケモンと戦えるぞってメール流したらカントー中のトレーナーが集まったよ。
みんなで止めるぞ!」
ジムリーダーや多数のトレーナーたちがポケモンを呼び出してファイアーとサンダーに立ち向かう。
「行け!」「そこ!」「ヒャハハハ!」
トレーナーたちがポケモンに命令するもファイアーやサンダーは伝説の存在___決定打にもならずに薙ぎ払われる。
「イワーク、たいあたり!」
「ヒトデマン、バブルこうせん!」
「ラフレシア、ギガドレイン!」
「クロバット、どくどくのキバ!」
4体の同時攻撃を受けてもなおサンダーはびくともしない。
「ユンゲラー、サイケこうせん
サンド、みだれひっかき
マルマイン、スパーク!」
ユウトはカツラと共にファイアーの相手をしていた。他にはみずやでんき、いわのポケモンたちで攻撃していた。その中には明らかにカントー以外の地方のポケモンがいた。
「怯むな! わしたちが二体を救うんだ!!」
カツラの号令でなおも攻撃をやめないポケモンたち、そんな中多数のポケモンの間をすり抜けてフリーザーがファイアーに突撃した。
「フリーザー!?」
ユウトを一瞥したのち、サンダーにも突撃し二体の装置は外れ、あっという間に正気を取り戻すのだった。
「やったのか?」
トレーナーたちが歓声を上げる。そんな中ユウトは軽く笑い飛ばしてその場に尻餅をつく。
「ユウトくん! やったな!!」
「い、いえ……けどビックリしましたよ。自分が伝説のポケモンと戦うなんて」
「そうだ! 君にお礼をしなければな。ほら、クリムゾンバッジだ。当分ジム戦はできないからもらっておくと良い」
「おい! 俺からもやるよ! ナツメ先輩を助けてくれてありがとうな」
「ええ! いいんですか?」
「いいんだよ、お前に無茶させちまったわけだし後で欲しいやつにグリーンバッジを渡しとくしな」
「ありがとうございます!」
(これであとはゴールドバッジを……?)
「頑張りなさいユウトくん」
ナツメはすでに街の避難所に向かっていた。
戦いの中ユウトはついに3つのバッジを集めるのだった。これでバッジは8つ、ポケモンリーグへのパスポートをゲットした!
ロケット団はここで物語からフェードアウトです。そもそもトキワジムをグリーンにしたからただの悪役っていう扱い止まりなのは最初から予定していました。
今回一気に3つとバッジを獲得しましたが、理由としてはこのままのペースじゃ最悪未完のまま放置になるんじゃないかという判断です。そのお詫びとして次回でちょっとだけポケモンリーグの前に軽い腕試しみたいな展開を用意してます。