その雷は何処へ向かうのか 作:営業マン
最終選別
「征十郎。お前には才能がある。必ず生き残れる」
最近選別に向かう前の晩に爺さんと一緒に食事を取っていると、今まで言われた事のない褒め言葉をかけられる。
「何だよ。突然」
「儂の修行についてこれたのだ自信を持って。弱気になるな。諦めるな。これだけ忘れなければ大丈夫だ」
爺さんからの助言を聞き漏らさないように、励ましてくれているのを無駄にしないように頭に叩き込む。
爺さんとの食事を終えて、一息ついていると鬼について色々と教えてもらう。
「鬼も人と同じよ。基本的に人を食った分だけ強くなれる。力は増し、肉体を変化させ、怪き術を使うものも現れる」
そこまで言うと爺さんは部屋を出て行ってしまうが程なく刀を持ち戻ってくる。
「鬼には二つの弱点がある。一つは急所は頸だが普通の刃物で頸を斬っても殺せん。この刀の名前は日輪刀。特別な鋼で造られた刀だ。明日これを貸してやるから持って行くといい。それともう一つの弱点。太陽の光だ。奴らは昼間は行動出来ない。奴らが行動できるのは夜だけなのだ。覚えておくのだぞ」
爺さんから日輪刀を受け取り明日に備える。
ー翌日ー
爺さんが用意してくれたお揃いの羽織りに袖を通して出発の挨拶を済ませる。
「じゃあ行ってくる」
「あぁ。軽く突破してこい」
その言葉を受け、藤襲山へと向かう。
夜になりやっと最終選別が行われる藤襲山に辿り着くことが出来た。藤襲山と名前が付けられるだけあって山の麓から中腹にかけて藤の花が咲き誇っている。その景色に見惚れながら山に設けられた石段を登り終えると開けた場所に出る。
「こんなに最終選別を受ける奴がいるのか」
既に20名程の受験者がその時を待っているようだった。爺さん曰く、育手は山程いてそれぞれのやり方で剣士を育てるらしい。それが今日此処に集結し、最終選別を受けるのだという。
「ん?‥‥なんだ彼奴ら」
気になった方を見ると狐面をつけた宍色の男と同じ狐面をつけた黒髪の男が仲良く話をしている姿が目に入る。
「皆さま、今宵は最終選別にお集まりくださってありがとうございます。この藤襲山には鬼殺の剣士様方が生け捕りにした鬼が閉じ込めてあり、外に出ることはできません」
刻限になったからなのか藤の花が描かれた提灯を持った一人の女性が場を仕切り始める。
「山の麓から中腹にかけて鬼共が嫌う藤の花が一年中狂い咲いているからでございます」
この話は前置きで次の話が重要なのだと直感が働く。
「しかし、ここから先には藤の花が咲いておりませんから鬼共がおります。この中で七日間生き抜く。それが最終選別の合格条件でございます」
最終選別の合格条件を告げられ場の空気が引き締まる。
「では、いってらっしゃいませ」
それを合図に奥へと足を踏み入れている。
◇◇◇◇◇◇
「まずは、この夜を乗り切る」
七日間生き抜く為には無駄な行動で体力を消費しないこと。その為には最も早く朝日が当たる場所、東側に移動するか。そうすれば体を休めることができる。
「!」
東側を目指して走り出してしばらくすると、止まった方が良いと直感が報せるので動くのをやめ身構える。
「何処だ?」
「ち!感のいい餓鬼だぜ!」
少し先から鬼が姿を現わす。
「でも、それだけじゃ生き残れないんだよ!」
俺を食うためにこちらに向かってくる鬼を見据える。
(落ち着け!俺なら出来る!)
“ シィィィー ”
「 “
片足を引き、力を足に集中させ溜め前傾の居合の構えから一瞬で敵と間合いを詰めすれ違い様に一閃し、刀を鞘に収めた音と同時に鬼の頸が地面に落ちる。
(できた。あの修行は無駄じゃなかった)
後ろを振り向くと、さっきの頸を斬られた鬼はボロボロと姿が崩れ無くなっていく。
(この刀で斬られると何も残らないのか)
完全に無くなったのを見届けて東側を目指して再び駆け出す。
「ケヒヒ!久々の人肉じゃ!」
「 “
構えは抜刀術。雷の呼吸で得た力を逃さないうちに一瞬で五連撃を放つ。切り落とす場所は両腕、両足、最後に頸。
「大丈夫だ。やれてる」
「く、来るなーー!」
雷の呼吸を使いこなし二体目を倒して一息つくと、悲鳴をあげながら俺の脇を通り抜けていく最終選別の受験者。
「怖いのは分かる。でも、覚悟がないなら参加するな」
「ヒヒ、そうだよな!」
今の奴を追っていた鬼が飛び掛ってくるが刀で払い距離を取った。
「もらったぁ!」
すると横から別の鬼が飛び出してくるが、攻撃を食らう前に後ろに飛びそれを避ける。
「おい!俺の獲物だぞ!」
「うるせぇ!早い者勝ちだろぉ!」
何方の獲物かと言い争う鬼達。
「 “
雷の呼吸は基本的に一対一を得意とする流派だが、肆ノ型は雷の呼吸では数少ない複数を同時に相手する技それが遠雷。雷の呼吸で得た力を逃さないようにしつつ、体を捻る。そして、抜刀術の構えから一瞬で刀を振り抜くと共に溜めていた雷の力を自分を中心とした場所から広範囲に飛ばす。
「「ぎぁやぁぁぁ!」」
この技は鬼達には致命傷にはならないが、この攻撃には別の意味がある。鬼達は強度の雷に打たれ、原型を無くすほど焼き爛れるが
「馬鹿が!鬼の再生能力にこんなもの!!!?」
「知ってるよ。でも、お前らの足は止まってる。全身の回復に力を回しているからだ。だから今、頸は無防備なんだろ」
「「ま、待って!」」
致命傷にならずとも鬼を焼き爛れにしてその場に釘付けにする。その間に間合いに詰め寄ればいくら鬼といえど対処は難しい。そして、頸がある程度再生したところを続けざまに斬る。これが遠雷の真骨頂。
「何方にも食われてやるつもりはない」
崩れゆく鬼に目もくれずに先を急ぐ。
あれから八人の鬼を倒し、合計で十二人を倒した時。
「だ、誰かいないかーー!!」
遠くから助けを求める声にまたかと内心で悪態を吐くが、鬼に食わせてやるつもりもないので向かうことにする。
「たすけてくれ!」
「落ち着け。それで鬼は何処にいる」
「あっちだ。さっき宍色の髪をした狐面をつけた奴が行ったんだ。あんなのに勝てるわけがない!」
宍色の髪の狐面?あぁ、彼奴か!コイツの言っている奴に心当たりがあったので直ぐに分かった。
「分かった。任せろ」
逃げてきた奴を更に逃がした後、言われた方へと駆け出す。
(どんな鬼かは分からないがあの動揺は尋常じゃない。急がないとまずいな)
「今、なんと言った!!!」
(いた!何だあの手が幾つも生えた異形の鬼は?!鬼は元々は人間だったと修行に入る前に爺さんから聞いだけど。一体人間を何人食ったらあんな醜い姿になるんだ!)
「ふふふっ!何度でも言ってやる!鱗滝のせいで子供達は死んだ。鱗滝が殺したようなものだ!」
「鱗滝さんは優しい人だ!あの人を悪く言うのは許さん!」
(馬鹿それは挑発だぞ!乗るな!)
探していた奴は既に異形の鬼と対峙している。近くにあった木の影に隠れて会話を盗み聞きする限り大切な人を侮辱し、狐面の奴を挑発しているようだった。
「 “
狐面は跳躍しクロスさせた両腕から勢い良く水平に刀を異形の頸を斬る為に振った。しかし、異形の鬼の頸を斬るはずだった刀が頸に当たっただけで何故か折れてしまった。
「終わりだな!安心しろよ。お前も殺した後で俺が食ってやるから」
(まずい!)
そう言うと異形の鬼はいくつもあった手を一つに纏め、無防備な狐面に向けてそれを伸ばす。それを見た俺はあの狐面が死んでしまう事が容易に想像できたので、間に合うか分からなかったけど急いで隠れた木の陰から飛び出す。
(諦めない!必ず助ける!もう誰も俺の目の前で死なせない!!)
「 “
狐面を掴もうとしていた腕を斬り落とし間一髪のところで狐面を救い出すことに成功する。
「誰だ!!」
異形の鬼は怒り狂っているがそれを無視し、狐面に目を向けると
「大丈夫か?狐面」
「あ、あぁ」
狐面は刀が折れた事で動揺していたがそれ以外は大丈夫だったようだ。
「あれは俺が倒す」
「大丈夫だ。彼奴は俺がやらなくちゃならないんだ。鱗滝さんのことを侮辱した彼奴だけは!」
「頭冷やせ!馬鹿が!そんな折れた刀で彼奴を倒せると思ってるのか!!大切な人を侮辱されて怒る気持ちは分かる。でも、今ここでお前が死んだらその人は喜ぶのか!もう一人の連れは悲しむんじゃないのか!自分を責めるんじゃないのか!そう言う事考えてから言え!!!」
此処で死んでしまったら大切な人がどう思うのか、一緒に来ていた連れはどうなったのか分からないが、もし、其奴だけが生き残ったらどう思うのか、考えるように伝えると彼は悟ったような表情を浮かべていた。
「なら、頼む!彼奴は俺の恩人を尊敬する人を侮辱したんだ。俺の代わりに倒してくれ!」
「‥‥あぁ。分かった。必ず倒す」
視線を手が複数生えた異形の鬼へと戻して対峙する。
「話は終わったか?お前も、宍色の餓鬼も俺に殺されて食われるんだからな」
「俺も、こいつも此処では死なない」
駆け出して間合いに入ろうとするが、手が伸縮自在、斬っても直ぐに分裂する手が近づくのを阻もうと邪魔をしてくる。
「手を斬るだけじゃ俺は倒せないぞ」
「分かってるよ。そんなこと」
無数に伸びてくる手を斬りながら異形の鬼に向かう。
(何だ下から嫌な気配が!)
「ち!飛びやがったか!勘がいいな!」
地面からも手を出せるようで、間一髪のところで飛び上がって躱す。
「でも、空中では避けられないだろう!」
さっき狐面にした攻撃。複数あった手を一つに纏めて無防備な俺へと伸ばす。
「!」
咄嗟に刀を握り返し、俺を掴もうとした手を刀の棟で押しとどめ、その時にできた反動を生かして前中し手を完全に躱す。そして伸びきった腕に着地し頸めがけて駆け出した。
「(刀の棟で押しとどめた力を利用して躱しやがった!?)」
慌てた様子の鬼は頸の辺りからも手を生やし、間合いに入られるのを止めようとするがそれを全て斬り防ぎそして、刀を収め抜刀術の構えをしながら間合いに入った時、鬼が焦った表情が見えたが関係ない!
「俺を倒せると思っているのか?!お前ごときが!!」
「いつまでも下に見てるつもりなんだ!“
鬼の間合いに入り片足を引き前傾の居合の構えから一瞬で頸へと間合いを詰めすれ違い様に一閃する。
(斬られたのか?!俺が!あんな餓鬼に!!くそくそくそ!!!これも全部鱗滝のせいだ!許さん許さん許さん!!!)
「はぁ、はぁ、倒せた。‥‥危なかった」
今までの鬼とは比べ物にならない戦闘をして、どっと疲れが押し寄せる。
「倒したのか」
「何とかな」
狐面も安心したような表情を浮かべている。
「刀が折れたんじゃ戦えないだろ。これからは一緒に行動しよう」
「あ、あぁ。そうしてくれると助かる」
冷静になっていた狐面は俺の話に素直に乗ってくれた。狐面の男の名前は錆兎と言うらしい。そして、彼が言うには藤襲山の鬼は大方倒したはずだと。
「でも、全部じゃないんだろ。今みたいのがいないとも限らないし油断は禁物だな」
「そうだな」
錆兎は崩れゆく異形の鬼を少し気にかけていたが俺と共にその場を後にする。
錆兎の言った通り襲ってくる鬼は殆どいなかった。何故、鬼がいないと分かったのかと尋ねると彼は自分が倒したからだと言った。凄い奴もいるんだと思ったのと同時に自分を磨かないといけないと言うことも分かった。
それから錆兎とは数日間一緒に行動したせいか、色々な話をした。自分達が何故鬼殺隊に入りたいのか、互いの流派の修行はどうだった、とか様々な事を語り合った。こうして、最終選別の合格条件の七日間は終わりを告げた。
朝日が昇ったのを確認して最終選別が始まった場所へと戻ると、七日前と同じ人数とあの時の女性がいた。
「お帰りなさいませ。そして、おめでとうございます。ご無事で何よりです」
女性は此処にいる全員の合格を告げると、皆安堵した空気に包まれる。
「まずは隊服を支給させていただきます。体の寸法を測り、その後は階級を刻ませていただきます。階級は十段階ございます。甲、乙、丙、丁、戊、己、庚、辛、壬、癸。今現在皆様は一番下の癸でございます」
そんな空気を壊すかのようにてきぱきと鬼殺隊の隊服についてと鬼殺隊の階級についての説明を受ける。
「さらに今から鎹鴉をつけさせていただきます」
パン、パンと女性が手を叩くと上空を舞っていた鴉が一斉に俺達目掛けて降りてくる。
「鎹鴉は主に連絡用の鴉でございます」
降りてきた鴉はあたかも当然のように俺の肩に止まっていた。
「では、あちらから刀を造る玉鋼を選んでくださいませ。鬼を滅殺し、己の身を守る刀の鋼は御自身で選ぶのです」
最初に来た時にはなかった机がいつのまにかあり、その机の上にはゴツゴツとした石のようなものが用意されていた。
いきなり自分で選べと言われて困惑しているようだったが、俺は直感に任せて鋼を一つ取り女性へと手渡す。
「刀が出来るまで十日から十五日程度ようしますのでご了承ください」
刀はすぐにはできないとの事だった。なので、爺さんの元に戻ったらまた修行に戻ることに決めた。錆兎のような強さを少しでも身につけられるように。
俺が選んだことで困惑していた錆兎をはじめとした面々も次々と鋼を一つ取り女性へと手渡して行く。そして、藤襲山での最終選別と鬼殺隊入隊の準備が終わり各々が隊服を持ち帰り帰路へとつくことになった。
◇◇◇◇◇◇◇
「そうかい。最終選別は全員が生き残ったのかい。凄いね。また、私の剣士達が増えた」
報告を持ってきた鴉を撫でながらも、内心では驚いていた。
(まさか全員が生き残るなんてね。近年稀にみる成果だ。一体、どういう子達なんだろうね)
詳しい報告がないので詳細は分からないけど、いずれ会う子供達に思いをときめかせる。
「会うのが楽しみだよ」
その思いを口にするだけで更に胸が高鳴った。
全集中のみ色を変えてみました。
見ずらかったら色を黒に戻します。
遠雷については独自解釈です。水の呼吸 ねじれ渦に似せた感じにしようと思いました。
漆ノ型 火雷神(ほのいかづちのかみ)は善逸独自の技ですので使いません。
代わりの漆ノ型 は 漆ノ型 草薙の剣・千鳥刀にします。NARUTOのサスケが使っていた技ですね。
そして、もう一つ 捌ノ型 建御雷神(たけみかづち)
これについては使うんですけど、効果はまだどうしようかなと言った感じです。