全てを統べる緑谷出久のヒーローアカデミア 作:ハッタリピエロ
エタらないのでご安心を!
ー時間は出久と轟の戦いまで遡る
爆豪side
な……なんだってんだよ……
今俺の心を占めていたのは困惑と劣等感だった。
デクと推薦入学者の半分野郎の戦闘が始まるのをモニターで見ていたが開始と同時に半分野郎の氷結を見て”勝てないんじゃないか?”と感じてしまった。
だが俺が半ば諦めに近い感情を持っていた脅威を自分より下だと思ってたデクは難なく躱した。
信じられなかった
認めたくなかった
あの無個性で無力だったデクが、自分より上という事実に
これだけで済んだのなら俺はまだ、アイツより上になろうと立ち直れたかもしれない。
自惚れていると自覚しているが俺には才能と強い個性がある。だからここまでさほど苦労せずに上ってこれた。
しかしモニターに映ったデクを見て俺は自分の才能だけじゃ届かないものがあると感じてしまった。
これがオールマイトならまだ諦めがついたのかもしれない。俺が憧れて目標とした相手なら、届かないものだと
だがアイツは違う。自分のプライドが隣にいることを、後ろにいることを認めなかったアイツが、はるか前を歩いてることが許せなかった。
同時にそれを認めることは心の中でNo. 1になるという夢を諦めてしまったのだという事実を受け入れてしまった。
その事実が、それを受け入れた自分が、また許せなかった。
違え……!俺は諦めたわけじゃねえ……いつかデクを超えてやる……!!
と意気込んでいたら
ー諦めろ。お前じゃあ、今のデクには勝てねえ
何処からか聞こえた声に視線を動かしていると鏡の中からもう一人の自分が見つめていた。それもまだアイツを見下していなかった頃の幼い自分が嘲笑いながら
うるせえ……!!
ーデクはお前を見てすらいねえよ。プライドだけは一丁前のお前なんか
黙れ……!!
ー他を見下してきたお前を唯一見てくれていたアイツも、今のお前を見たら嘲笑うだろうなあ……
黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇえええええええ!!!
BABABABABA!!!!!
「ど、どうしたんだ爆豪……?」
ハッと我に返ると、モブ……いや、切島たちが俺を見ていた。
痛みを感じた自分の手を見てみると、怒りで爆破を繰り返していたのがわかった。
「……なんでもねえよ」
俺はただ前で繰り広げられて戦いを見て自分に哀れみの感情を抱くことしかできなかった、
・・・・
戦いは僕の勝利で終わったものの
「今回のMVPはエリザベス少女と障子少年だな!」
「え、私と障子さん……ですか?」
「俺はすぐにやられたのだが……?」
「はい、理由わかる人」
「はいオールマイト先生。それはエリザベスさんと障子さんが一番状況設定に順応していたからです。緑谷さんは最初の奇襲はよかったものの屋内戦であるにも関わらず屋外で戦闘を行ったことです。轟さんも同様の理由ですね。リオネスさんは活躍こそ出来なかったものの自分の役割に徹していたということがプラスポイントですね。障子さんは……すぐにやられましたが、最初に状況把握したのもやはり自分の役割をこなしていました。ところで緑谷さん。最初の障子さんの奇襲はどうやったのですか?それに二人に分身したのも……」
「んー……まあ教えてもいっか」
僕は明鏡止水を発動させると
「ええっ!?緑谷が消えた!?」
すぐに明鏡止水を解除すると
「これで僕の認識を消したんだ。これを使うと僕に対する視覚、嗅覚、感覚、音、気配などが誰も感じられなくなる。この技を僕は明鏡止水って呼んでる」
「なるほど……だから障子さんは気配を感じ取れなかったのですか……では分身は?」
「このロストヴェインには自分の戦闘力を半分にした分身を作る効果があるんだ。それでもう一人の僕を作ったんだよ」
僕が説明すると皆唖然としていたが
「どーやって感知すればいいんだろ?」
「粉とかなにか被せればいいのかな?」
「それに見たところ分身はダメージを受けないみたいだしな」
皆が僕の技への対策を考えていた。
「っていうか緑谷!!その力があれは女子更衣室とか女湯覗き放題じゃねーか!!羨ましいぜこんちくしょーー!!」
突然叫び出した峰田くん。ちょっ!!変な誤解広めないで!!
「確かに……」
「危ない……」
時すでに遅し。女子たちから侮蔑の視線を向けられる
と弱っていたが
「失礼な!!出久様はそんなことしません!!」
「そうよ!!峰田くんと一緒にしないで!!」
氷麗……ヒナタ……
「そうです!!私たちと一緒にお風呂に入ってる出久が今更覗きなんてしません!!心外です!!」
ちょおっ、エリザベス!!?その情報広めないで!!?確かに前世や一緒に住むようになってからは皆で入ってるけどさァァァァ!!
女子たちが顔を赤くして一部の男子陣は血涙を流して僕を睨みつける。
「あー……もういいかな?」
ハッ!
いつの間にか蚊帳の外になっていたオールマイトの一言で場の空気は元に戻ったが未だに上鳴くんや峰田くんは僕を睨めつけてくる。
「今回の戦闘訓練!!特に大きな怪我をした者もいない!!皆、よく頑張った!!初めての訓練にしちゃ上出来だったぜ!!」
「相澤先生の後でこんな真っ当な授業……何か拍子抜けというか……」
切島くんが緊張が抜けたように呟く
「真っ当な授業も私たちの自由!!それじゃあ、お疲れ様!!着替えて教室にお戻り!!」
オールマイトは挨拶を終えるとダッシュでグラウンドから出て行った。
なにか急ぎの用事でもあるのかな?
僕たちは着替えを済ませた後、皆に問い詰められないようにさっさと帰った。
・・・・
ー雄英の校長室
ガリガリの男が犬か熊かわからない動物……もとい雄英の校長に今日の訓練の報告をしていた。
「ふむふむ……それで例の緑谷くんに関してはどうだったのかな?」
「……信じられないようですが、プロヒーローに通用するレベルの強さの上に、かなりの場数を踏んでいるように思えました。それに相澤くんがあれを個性でないと言うのもわかる気がします……あれはまた違う力のように感じられました」
「ふむ……それで彼がオールフォーワンに繋がっているとは思えた?」
「それはまだわかりません。しかし、直感ではありますが緑谷少年かあのオールフォーワンに内通してるとは私には思えません」
ガリガリの男……もといトゥルーファームのオールマイトの頭に思い浮かぶのは轟との戦いで緑谷の叫び。
あれが芝居やスパイのやる行動ではなく心からの叫びだと感じられた。
「……わかった。緑谷くんには機を見て話を聞こうと思う。それまでの間、万が一のために君と相澤くんに監視を頼むけどいいよね?」
「はい。わかりました」
こうして今日も雄英を守るために校長はその頭脳をフル回転させていた
この世界ではまだ出久はオールマイトの事情を知りません