鈴ちゃんは愛され過ぎて困っています! 作:abc
セシ鈴は尊い
たぶん次はシャル鈴だと思います
目を覚ました時には隣に寝ていたセシリアは、どうやら既にベッドから出ていたようであった。セシリアよりも早く起きて朝食でも作ろうと思っていた鈴にとっては少し誤算であったが、昨日のことを思い返し思わず嬉しくてにやけてしまう。
「とりあえずはセシリアが寝てくれたようで良かった……」
セシリア・オルコットは昨日まで失恋のストレスと過去のトラウマの再発により、不眠症を発症していた。それを鈴が少しでも眠れるように付き添ったおかげで何とか眠ることが出来るようになったのだ。
そして昨晩はセシリアの頼みということもあり、一緒に寝ることになった。少し恥ずかしいという思いもあったが、一人になることがまだ怖いであろうセシリアの気持ちを察した鈴は一緒に寝ることを承諾したのだ。
セシリアが寝るまで起きているといったものの、眠気に負けて寝てしまったためそのことが少し申し訳なく感じている。
「セシリアのためにも……私が側で支えていかないと!」
今日はもっとシャキッとしてセシリアの復学を精一杯手助けしようと胸に誓う。
鈴にとってセシリアは大切な友人である。友人が困っているのならそれを支えるのもまた友人なのだ。
セシリアだけではない。失恋で病んでしまった他の友人も立ち直らせる。それが残された者であり彼女たちの友としての使命であるのだ。一夏はもういない。千冬もいない。
だったら誰が彼女たちを鼓舞させることが出来るのか?
誰もいないなら私がやるしかない。
鈴の中には確固たる信念ができていたのであった。
「まあ今日の所はまずセシリアの様子見かな……」
昨日の今日ではセシリアの疲労や体調不良はまだ抜けきっていない筈。他の部屋を回るのは明日からにして、取りあえず今日はセシリアと一緒に過ごそう。
「起きないと」
昨日の出来事や今日のスケジュール、そしてこれからの目標や行動を考えた後に鈴はベッドから降りる。セシリアが何をしているのか確認するためにキッチンに向かう。鈴の予想では朝食を作っていると予想した。
キッチンの方に行くとそこにはエプロンを付けたセシリアが朝食を作っているようであった。髪を後ろでまとめ上げ青いエプロンを付けているその姿は、女である鈴の目からみても思いがけず可愛いと思ってしまう。
後ろから声を掛ける。
「セシリア、おはよう」
「鈴さん!おはようございます!」
「昨日は悪かったわね、先に寝てしまって」
「気にしないでください!鈴さんが先に寝てくれたおかげで、わたくしの方も気兼ねなくぐっすりと眠ることが出来ましたので」
「そう?それなら良かったわ……」
鈴はセシリアが本当に元気になっているのが見た目で分かった。
ボサボサだった髪の毛は綺麗に手入れされており、いつもの髪に戻っている。隈は少し残っているが薄くなっているような気がする。全体的に活気が戻っているように感じられた。
「鈴さんはそこの椅子にでも座って待っていてくださいな」
「それじゃあ御馳走になろうかしら」
鈴はセシリアが促した席に座ると、料理を作るセシリアをボーっと眺めながら朝食が出来あがるのを待っていた。
鈴の視線に気づいたセシリアは、少し考えた後に思い切って問い掛ける。
「あの……鈴さん?何か気になることでも?」
「あ、いや、大したことじゃないんだけど。今のセシリア何だか家庭的な感じがして可愛いなって。これまではあんまり料理するところなんて見たことなかったから何だか新鮮に感じるのかしら」
「かわ、可愛い!?わたくしが?……鈴さんがわたくしに可愛いって……ふふ」
「急に下向いてどうしたのよ?」
「あっ、いえ何でもありません。それよりも料理に関してはこれまでずっと練習してきたので……人並みにはなっていると思います」
鈴はセシリアが料理の練習をしてきたといった時に、一瞬悲しげな顔をしていたのを見逃さなかった。セシリアはこれまできっと一夏に料理を振舞うために練習をしてきたのであろう。だが今はその相手がいない。自分の努力が無駄に終わってしまったことに残念がっているのかもしれない。
鈴は考える。食べさせたいと思った相手がいなくなったのであれば、自分がそれになればいいのじゃないかと。
「セシリアの料理がどれだけ上手になったのか楽しみね」
「はい!沢山作ったので沢山食べていってください」
それから数分後セシリアは鈴が座っているイスとそのテーブルに、次々と料理を運び込んでいく。朝にしては少しボリュームのある和食が鈴の目の前のテーブルに広がっていた。
少し昔セシリアの料理が下手だった時に、彼女の料理を食べたことがある鈴は本当に美味しく作られているか心配であった。
まずは様子見に見た目はごく普通のお味噌汁を口に運ぶ。
「何これ!すごい美味しいじゃない!」
「本当ですか!?」
「ええ、ダシもしっかりと取れてるし風味も損なわれず雑味もほとんどない……とっても美味しいわ!」
鈴は心の底からこの料理が美味しいと思っている。
他の料理にも手を付けていくがどれも丁度良い味付けがなされており、昔のセシリアからは考えられない程に成長している。それと同時に一夏をどれだけ愛していたのかより如実に実感させられた。
鈴は一夏が言うはずだった言葉を鈴に掛けることにした。
「セシリア……よく頑張ったわね。ここまで上達するの大変だったでしょ。セシリアの努力がしっかり伝わってきたわ。美味しいご飯を本当にありがとね!」
「……はい!」
セシリアは満開の笑顔を鈴に向ける。そして少しだけその笑顔は赤かった。
その後はセシリアも席に着き食事を始める。
「それにしてもこのお味噌汁は美味しいわね……何か隠し味でもいれてるの?」
「!…………ええ、少しだけですが」
「何を入れたの?参考にするから教えて欲しいんだけど」
「ふふ、隠し味だから内緒です……鈴さんがわたくしのを……あ、それと、お代わりもありますから」
隠し味のことは気になるが、あまり詳しく聞くようなことでもないのでそれ以上の追及はやめた。ただ鈴が料理を口に運ぶたびに、セシリアが嬉しそうに口元を歪めている。きっと自分の料理を食べて貰えたのが嬉しいのだろう。
結構な量を食べて鈴は割と苦しかったが、何とか全て食べ切った。セシリアの好意を無駄にしたくないし、何より料理が美味しくてついつい完食してしまったのだ。そんな鈴にセシリアも満足気であった。
「ねえ、セシリア、今日はどうするつもり?眠れるようになったからってまだ病み上がりなんだから、今日は無理せずに休んだ方がいいんじゃないかしら。一人じゃあれだって言うなら私も付いていようか?」
鈴は心配そうにセシリアに話しかける。
セシリアは昨日までは碌に寝ることが出来ない状態がずっと続いていたのだ。それに今朝だって朝食のために早起きをしたはずである。疲れているなら無理に学校に行かず今日一日くらい休んで欲しいと鈴は考えていた。
「鈴さんがずっと一緒………………い、いえ、そ、そういう訳には行きませんわ。心配してくださっていたクラスや教師の方々にも挨拶に行きたいです。それにわたくしは代表候補生です!休んでいた分のブランクを取り戻さなければいけません」
「わかったわ。そこまで言うなら無理には止めない、でも途中で辛くなったり、気分が悪くなった時には無理せずに教えてね」
「はい!」
その後は身支度を整えて学校に向かう準備をする。鈴も一旦自分の部屋に戻り、制服に着替えカバンを持って再びセシリアと合流する。学校までは校舎と繋がっているために大した距離ではないのだが、一緒に行きたいというセシリアの思いを汲み二人で登校することになった。
まずは職員室に向かいそこでこれまでセシリアのことを心配していた教師たちに、今日から復帰することを伝えていく。そして最後に一番心配をしてくれた副担任……現在は担任の山田先生の元へ行く。
「多大なご迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。イギリス代表候補生セシリア・オルコット今日からまたこの学園に通わせていただきます」
「良かったです……本当に……良かった……」
「先生何で泣きそうになっているんですか!?」
セシリアの横にいて彼女に付いていた鈴は、感極まって泣いている山田先生にビックリする。
「これも全て鈴さんがわたくしのことを支えてくれたからなのです」
「なっ!べ、別に私は大したことなんてしてないわよ……ただ、セシリアが自分の力で立ち上がったに過ぎないわ……」
「凰さん……た、大変かもしれませんが他の子たちへの力添えも、出来ればお願いしたいのですが……」
そこでセシリアは疑問を頭に浮かべる。
「わたくしの他に学校を休んでいる生徒がいらっしゃるのですか?」
「はい、オルコットさんは休んでいたから知らないでしょうし、教員や生徒達も敢えてオルコットさんに教えてなかったんです……申し訳ありませんでした」
「構いませんわ。わたくしのことを思っての判断であったのでしょうし……それで一体誰が休んでいる状態なのですか?」
鈴は重い口を開く。
「箒、シャルロット、ラウラ、簪よ……それと噂では生徒会長も……」
「なるほど……どうやら皆さん同じことで悩んでいらっしゃるようですわね」
全員が一夏への思いを抱いていた者たちであった。
セシリアもそれくらいのことは分かる。
そして次にセシリアは自分が疑問に思っていたことを質問する。
「……わたくし達の中で一番最初に気持ちを切り替えることが出来た鈴さんが、初めにわたくしを励ましに来たということですのね」
「そ、そうよ、セシリアは私にとって大切な人だから」
「り、鈴さん」
セシリアがうっとりとした表情で鈴を見つめる。鈴はセシリアから視線を外し顔を赤くしてそっぽを向いて照れていた。二人の思いがけない仕草に山田先生は苦笑を漏らしてしまう。
「あのー……そろそろホームルームを始めるので教室へ戻ってくれませんか?」
「い、行くわよセシリア」
「はい」
返事をしたセシリアはそのまま鈴の腕を握り教室へ戻っていった。
教室に着くと久しぶりの登校であるセシリアの元に、彼女を心配していたクラスメイトが集まっていく。その光景を微笑ましく鈴は見つめていた。
その後、ホームルームも無事に終わり、午前の授業も終わったところで昼休みに入る。鈴は食堂にでも行こうかと考えていたところでセシリアが話しかけてくる。
「鈴さんよろしければ一緒に食べませんか?」
「そうね……それじゃあ購買でパンでも買ってくるわ」
「その必要はありませんわ。朝食を作っている時に鈴さんのお弁当も作っておいたので、そちらを召し上がってください」
「本当!?それじゃあせっかくだから頂くわ!それにしてもセシリアは料理の腕だけじゃなく作る早さもあがっていたのね」
「まさかあの時の努力がこうして役に立つなんて考えもしませんでした」
二人は一夏がいた時によく昼食を食べる場所として利用した屋上に向かった。今日は晴天で屋上には程よい風と日差しが溢れていた。
セシリアは持ってきたお弁当を鈴に渡す。
鈴は受け取ったお弁当を開けてみると栄養のバランスが考えられたおかずが入っていた。
「いただきます」
鈴はお弁当を食べ進めていく。
朝食同様に美味しかったのだが、ふとセシリアの方を見ると箸が止まっていた。
「どうしたのセシリア?食欲が出ないとか?」
「あ、いえ、そういう訳では、ただ少し考え事を」
「悩みがあるなら聞くわよ」
「悩みという程では……今朝山田先生が仰ってたことなんですけど。あの、鈴さんはもしかして私以外の今学校に来れていない方達のこともわたくし同様励ましに行くつもりなのですか?」
「当り前じゃない、もちろん話を聞きに行くつもりよ」
その言葉にセシリアは複雑そうな顔を浮かべる。
鈴はセシリアがどうしてそんな浮かない顔をしているのか分からなかった。
セシリアは何かを決意して思い切って鈴にある提案を持ちかける。
「あの!その役目鈴さんではなくわたくしに任せてもらえないでしょうか?」
「なっ!ど、どうしてよ。私じゃ頼りないっていう訳?」
「そういうことではありません!ただ他の方が……何と言うか、その、他の方が鈴さんに好意を……いえ、何でもありません。とにかくわたくしが代わりに部屋を回りますから」
「……セシリアの頼みでもこれは譲れないわ。これはいなくなった一夏や千冬さんのためにも私が何とかするって決めたことなの。それに病み上がりのセシリアに無理をさせる訳にもいかないしね」
「……どうしてもですか?」
「どうしてもよ」
少しの間沈黙が流れた後に先に話しを切り出したのはセシリアであった。
「それなら約束してください。ずっとわたくしの側にいるということを。それと今晩も一緒に寝るということも」
そんなこと約束しなくてもいいのに、と思いながらセシリアの提案を受ける。
「はぁ……しょうがないわね。約束してあげる。できる限り側にいるようにするわ。それと寝るのは今日だけよ」
「はい」
鈴ちゃん
他のヒロイン達も元気づけたいと思っている
セシリア
鈴ちゃんを自分の国に連れて帰りたいと企てている