忘却の偽英雄〈凍結〉   作:茶々丸さん

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戦闘訓練 前編

個性把握テストを終え、諸々の書類を受け取った俺は荷物を持って帰路に着いた。

 

「緑谷! 」

 

 朝に自己紹介をした耳郎が走って来た。

 

「おーい! 俺も混ぜてくれよ!」

 

「ん?お前誰だ」

 

「ひどくね!?上鳴!上鳴電気!よろしくな!」

 

「悪いな、自己紹介したの耳郎だけだったからよ。俺は緑谷出久、よろしくな上鳴」

 

「おう!で、そっちが耳郎だったよな!」

 

「うん、よろしく上鳴」

 

 上鳴と耳郎が加わり今までなかった賑やかな帰路にこういうのも悪くないと感じながら笑みを浮かべた。

 

「それにしても、緑谷個性把握テストマジ凄かったよな!」

 

「確かに、やっぱり増強系の個性なの?」

 

「まぁ、そんなとこだ。」

 

「そういえば、爆豪とは知り合いなの?」 

 

「爆豪?」

 

「そう言えば、緑谷の事デクって呼んでたな」

 

「さぁな。俺の覚えてる限りじゃあんな知り合いは居ない。」

 

 その後も3人で談笑しながらそれぞれの自宅へ帰っていった。

 

そういえば、組で俺以外に雄英に入る奴が居るとか言ってたが……

 

 

「あ、おかえりなさい!」

 

「お前か……」

 

アメリカではかなりの勢力や地位を確立していたギャングの組織『ビーハイブ』。

そこの頭が日本人女性と結婚した事で日本にやってきたらしい。

その時に俺を拾ったと聞いていた。

そんなギャングは指定敵団体として登録されるはずだったが、ギャングらしからぬ行動もあってただの慈善団体のような扱いになっている。

しかし、腐ってもギャング。こと戦闘においては並のヒーローに遅れは取らない。

そんなビーハイブの若き新星がこいつ、鶫誠士郎だ。

性別は女だが育ての親が男と勘違いした為にこんな名前をしているが……。

 

「鶫。お前が雄英に入る組の奴だったんだな」

 

「はい!ヒーロー科のB組に配属されました!」

 

「で、人の家で料理を作ってる訳は?」

 

「ボスの命令で……」

 

「親父には言っておくから早く自分の家探せ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結局その日は鶫を家に泊めた。

翌日からは雄英高校のカリキュラムがスタートするため早く眠りに着いた。

翌日の午前中は英語など普通の授業を受けていたのだが

 

「んじゃ、次の英文のうち間違っているのは?」

 

「おらエヴィバディ、ヘンズアップ! 盛り上がれー!!

 

 プレゼント・マイクが担当する英語の授業は良くも悪くも普通だった。

 

「へぇ……美味いな」

 

 食堂で注文した大盛りカツ丼の味に少なからず衝撃を受けた。学校の食堂でこれほど美味いものを安価で提供する……さすがは雄英か……。

 

 

 そうこうしている内に昼休みは終わり、午後の授業が始まった。

 

「わーたーしーがー!!

 

普通にドアから来た!!」

 

 高笑いをしながら教室に入ってくるオールマイトにクラス内のテンションは自然と上がっていく。

 

「オールマイトだ…!! すげえや、本当に先生やってるんだね…!!」

 

「あれ、銀時代のコスチュームね!」

 

「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う科目だ!!」

 

「早速だが今日はコレ!! 戦闘訓練!!」

 

 戦闘訓練。その響きに、全員のテンションは更に上がっていく。

 

「そしてそいつに伴って…こちら! 入学前に送ってもらった『個性届』と『要望』に沿って誂えた…戦闘服!!」

 

 コスチュームを着ての戦闘訓練、これにクラスのテンションは最高潮にまで高まっていた。

 

「着替えたら順次グラウンド・βに集まるんだ!!」

 

 各々がコスチュームに着替えてグラウンド・βに集まっていく。

それを見ながらオールマイトはニヤリと笑みを浮かべ……

 

 

「良いじゃないか皆、カッコいいぜ!!」

 

「先生! ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!」

 

 フルアーマーの戦闘服を身に纏った飯田が挙手をしながら質問をぶつけた事で説明が始まった。

 

 今回は2人1組のヒーローとヴィランに分かれての屋内戦。

状況設定は『核兵器』の隠されたヴィランのアジトへヒーローが乗り込むというもので、制限時間内にヴィランを無力化するか、『核兵器』を確保すれば、ヒーローの勝ち。

逆に制限時間内『核兵器』を守るか、ヒーローを無力化すればヴィランの勝ち。

分かりやすくていいとは思うが問題は……

 

「コンビ及び対戦相手は…くじで決める!!」

 

「適当なのですか!?」

 

「プロは他事務所のヒーローと急造チームアップする事多い。その予行演習みたいなもんだろ」

 

「そうか…! 先を見据えた計らい…気がつかずに申し訳ありませんでした!!

 

 そんなやり取りを済ませた後各々が自身のチーム番号の記されたボールを見る。

 

 Aチーム:緑谷出久&麗日お茶子

 Bチーム:轟焦凍&障子目蔵

 Cチーム:八百万百&峰田実

 Dチーム:爆豪勝己&飯田天哉

 Eチーム:芦戸三奈&青山優雅

 Fチーム:口田甲司&砂藤力道

 Gチーム:上鳴電気&耳郎響香

 Hチーム:常闇踏陰&蛙吹梅雨

 Iチーム:尾白猿夫&葉隠透

 Jチーム:切島鋭児郎&瀬呂範太

 

「続いて、最初の対戦カードはこれだ! ヒーローがAチーム! ヴィランがDチームだ!」

 

 AチームvsDチーム。

対戦相手である爆豪は無言だが物凄い形相でこちらを見ていた。

しかし、やる事は変わらない。

ヒーローとして勝利するだけだ。

 


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