忘却の偽英雄〈凍結〉   作:茶々丸さん

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戦闘訓練 中編

 

「ヴィランチームは先に入ってセッティングを! 5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観察するぞ!」

 

「飯田少年、爆豪少年は、ヴィランの思考をよく学ぶように! これはほぼ実戦! ケガを恐れず思いっきりな!」

 

 度が過ぎぬ事はしないようにとオールマイトに注意を聞いてビルの中へ入っていく飯田と爆豪。

俺もチームメイトである麗日と向き合い作戦会議を始めた。

 

「デクくん、よろしくね!」

 

「麗日だったか?俺は出久だ。」

 

「え!?あ、ごめんね!爆豪君がデクって呼んでたから」

 

「気にすんな。自己紹介してなかった俺にも非はある。それに多分爆豪は俺を知り合いの誰かと勘違いしてんじゃねぇか。俺あいつ知らねぇし。」

 

「そうなんや……」

 

「それより麗日。お前の個性って無重力か?」

 

「うん!」

 

「それが聞ければ充分だ。俺から離れるなよ」

  

 何故か麗日が顔を赤くしはわわわとじたばたしてたが俺は気にせずビルに目を向けた。

 

「そろそろ5分だな。行くぞ」

 

 作戦内容も何も無い正面突破で正面入口に足を踏み入れた。

 

「……爆豪か?」

 

 建物内を歩いている中俺の唐突な呟きに麗日は目を見開いて質問を投げかけた。

 

「出久くん分かるの?」

 

「まぁな……個性の副次効果である程度相手の強さがオーラとして見えるんだよ。」

 

「それで誰かまで分かるんや……」

 

「いや、個性把握テストの時に全員のオーラを見て覚えただけだ。」

 

「すごいなぁ……」

 

 そして予想通り、爆豪が曲がり角で奇襲を仕掛けてきた。

 

見えてたぜ(・・・・・)

 

 爆豪の放った一撃、右の大振りから放たれた爆破を俺は素手で掴んだ。

 

「なっ!?」

 

 奇襲が防がれるとは思っても見なかったのだろう。驚愕の表情を浮かべながら俺から距離を取る。

 

「てめぇ……今の今まで何処にいやがった……」

 

「お前……俺の何を知ってる?」

 

「本当に忘れたんだな……」 

 

 爆豪はそれだけ言うと戦闘態勢を取る。

 

「私情を挟んで悪かったなァ……こっからヴィランとしててめぇを潰す!!」

 

「麗日!俺がここで爆豪を相手する!!お前は飯田を見つけ次第俺に連絡しろ!!」

 

 俺は簡潔に麗日に指示を出すと爆豪は俺めがけて爆破による拳を振り下ろした。

 

「ハッ……来い!!爆豪ォ!!!!」

 

「デクゥゥゥ!!!!」

 

爆破を使って縦横無尽に飛び回りながら俺に攻撃を加える爆豪。

それを見切り確実に避けていく。

 

「おいおい、爆豪と緑谷なんて戦いだよ……」

 

「あいつら学生のレベル超えてねぇか!?」

 

「凄まじいですわね……」

 

 

 

 

 

 

「ハァッハァ……まさかてめぇがここまで……」

 

「終わりか?」

 

「ッッッはっ……とっておきはこれからだ!!死にたくなけりゃあ避けろよ……ヒーローォ」

 

 

ニタァと笑う爆豪はまさにヴィランそのものだったが俺は爆豪の想いに応えなければと思い拳を強く握った。

 

 

かっちゃんすげー! 字読めるの?

 

 んで、デクって何も出来ねーやつのことなんだぜ!

 やめてよぉ……

 

 すげぇ、かっちゃん。何回跳ねた?

 7回! デクは?

 0回……

 

 おぉ、これは凄い“個性”だ!

 ヒーロー向きの派手な“個性”ね。勝己君

 

 デクって“個性”が無いんだって

 ムコセーって言うんだって

 ダッセー!

 

過去の記憶が今爆豪の脳内でフラッシュバックされていた。

爆豪だけが知る出久の記憶が……

爆豪は覚悟が決まったのか左手に持っていた右腕の篭手のピンを引き抜いた。

そして次の瞬間、ビル全体を揺らし、その一角を吹き飛ばすほどの大爆発が発生した。

 

 

「やったか……」

 

 爆煙と土煙がたちこむ中爆豪の無線にオールマイトが大声を出した。

 

『爆豪少年! これは訓練だぞ!』

 

「お前……まだまだ強くなるぜ」

 

「なっ…」

 

「だがこれで終わらせてもらう」

 

 背後から聞こえた幼馴染の声に爆豪は慌てて振り返ろうとした瞬間

 

「がっ……!?」

 

 首に強烈な衝撃を受けてその場で意識を手放した。

 

 

 

 

「さて……麗日は上か」

 

 俺は爆破を受けたダメージでボロボロになったロングコートを脱ぎ捨てる。

黒いライトアーマー姿になった俺はスキル(・・・)を使ってその場から姿を消した。

 

 

「くぅ……飯田くんめ……」

 

「ゲハハハッ! 俺はヴィラン……至極悪いぞぉ」

 

 麗日の元へやってくると核兵器の置かれている部屋はチリひとつ無くなっていた。

麗日の個性対策か厄介な……

 

「待たせたな。麗日」

 

「きゃあ!?出久くん! ?」

 

「悪い、驚かせたか」

 

「あ、ううん。大丈夫!ってそれより出久くんの方こそ大丈夫なん!?下からすごい音したけど」

 

「問題ない。服が焼けたくらいだ。それより状況は?」

 

「私が来てることバレちゃったから投降するようには呼びかけてるんだけど……」

 

「なら麗日。俺が合図を出したら核兵器まで走れ」

 

「分かった!!」

 

 俺は再びスキルで姿を消した。

麗日はそれを見ながら「消えた……」と幽霊を見るような顔で言っていたが俺は配置に着くと麗日に合図を出した。

 

「ハアァァァァ!!」

 

「フハハハハハッ! 遅い! 遅い! 遅すぎる!!」

 

 飯田は猛スピードで麗日の元へ駆けていく。

飯田が麗日に追いつき手を伸ばそうとした時だった。

 

「油断したな……ヴィラン」

 

「な!?緑谷くん!?」

 

 爆豪の時のように背後から現れて頭を床に叩きつけて拘束する。

その間に麗日は核兵器に触れー

 

「核兵器! 回収!!」

 

 麗日は笑顔で俺元に手を上げてやってきた。

俺もそれに応えて手を出すと麗日は自身の手で俺の手を叩いた。

 

 ヒーローチーム! WIN!!

 

 

戦闘訓練1戦目は俺と麗日のハイタッチによって幕を下ろした。


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