時を超えた陰陽師達   作:うた兎

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第一話

 

「おきろ!昌浩!!」

 

「ん~…あと5分…」

 

「5分前にもそのセリフ聞いたわ!!」

 

「うるさいぞもっくん…細かいこと気にしてるとハゲるよ…」

 

「なっなんだと!?このふわふわの毛に包まれた俺様になんてこと言うんだ!!」

 

 

朝からけたたましい声で起こしてくるのは、兎のような白い毛で犬のような体躯の物の怪、もといもっくん。

 

もののけだからもっくんという安易すぎるネーミングだが、長い付き合いなので今更呼び名を変える気も起きない。

 

可愛らしい外見のくせに性格は可愛くない前世からの相棒だ。

 

 

 

そう、前世からの。

 

俺が前世の昌浩の記憶を取り戻したのはいつだろうか。

 

俺としては物心つく頃には自然と昌浩として生きていたつもりだけど、もっくんやほかの式神たち曰く昔は普通の子供らしかったみたい。

 

そのせいか俺は昌浩としての記憶をもちつつも中身は完全なる大人というわけでもない不安定な存在である…気がする。

 

でも、ちゃんと前世での記憶を自分のものとして考えられるし、普段の生活に違和感は殆どないから昌浩として転生したってことでいいんだと思うけど。

 

ちなみに前世での俺の名前は安部昌浩(あべのまさひろ)だけど、今の名前は土御門昌浩(つちみかどまさひろ)だ。

 

土御門っていうのは安部の子孫らしいけど、正直大層すぎて苦手だ。

 

それになんだか語呂に違和感がある…気がする。

 

 

「なに寝ぼけてんだ昌浩!今日は荷造りをするんだろ?あとお前にやたら構ってくるガキどもに別れの挨拶もしにいかなきゃなんないんだろー?」

 

「あ…そうだった」

 

 

そうだ、俺は前世でもそうだったように最高の陰陽師を目指すために、東京の高校を受験に行くんだった。

 

明日の朝ここを出るから今日のうちに色々済ませなきゃならないんだ。

 

 

「夏目はもう支度とか終わったのかな?」

 

パジャマを脱ぎながらもっくんに聞いてみる。

 

「さぁなー、でも夏目はお前と違ってしっかりしてるからもう終わってるかもな」

 

ちなみに夏目というのは俺の義理の妹だ。といっても誕生日数ヶ月しか変わらないけど。

 

俺はもともと分家の息子だったのだが、身寄りがみんな死んでしまったため本家に養子として引き取られた。その本家の一人娘が夏目だったというわけだ。

 

といっても、土御門の外では息子としているみたいだけど。

 

一人っ子なので後継問題とかがいろいろあるらしい。

 

 

「よし、行こっか」

 

パジャマから普段着に着替え、もっくんに声をかけた。

 

犬のように大きく伸びをした後、もっくんは肩に飛び乗ってきた。重い。

 

こんなことをしているからいつも肩が凝るんじゃないかと思いつつ、言っても無駄なことは分かっているので口には出さない。

 

 

 

 

「夏目、おはよ」

 

「あっ、昌浩兄様!おはようございます!」

 

もっくんは夏目やほかの人の前では基本的に黙っている。

 

俺にしか見えないくらいまで隱行し、存在を隠しているのだ。

 

そのもっくんが言葉こそ出さないもののひどく呆れ、目が口ほどに意思を訴えかけているので、俺はそっとため息を吐いて夏目の傍に座った。

 

「あ、あのさ?夏目?」

 

「はい、なんでしょう?」

 

夏目は長い黒髪を垂らし、おしとやかに正座して荷造りをしていた。

 

その姿は流石本家の一人娘とでもいおうか。気品があり、気高く見えた。

 

…が、問題がひとつあった。

 

「夏目、その荷物を東京に持ってくの…?」

 

「えっ、はい」

 

何を言ってるんだほかに何があるのかという目で見てくる夏目。

 

 

「ちょっと…いやかなり、多すぎない?」

 

「え…そうですか?」

 

「いや確実に多すぎるよ。そんな大きなカバンを三つも持っていけるわけないでしょ」

 

「えっ!でも、その、宅配便とか…」

 

「そもそも夏目」

 

「はい」

 

「俺はね、あんまりしきたりとか気にしないんだけどさ。夏目は一応男の子としてやっていくんだよね?」

 

「……あ」

 

 

夏目の大量の荷物、その中身は服や靴などのおしゃれなものがほとんどを占めていた。

 

そして何故か入っているやかんや鍋や座布団達も場所をとっている。

 

 

「そっそうでした!」

 

「でも帰省用に一着か二着は女物を入れとこうね。あと男物の普段着も買わないと…東京で買えばいいかな?」

 

 

夏目は俺の話を聞いているのかいないのか、一心不乱に荷物整理をしだした。

 

その顔は単純なことに気づかず荷造りをしていたことを恥じているのか、耳まで真っ赤である。

 

夏目は普段、土御門の当主として気張っており、真面目でしっかりものでいようと努力している。

 

しかし生まれながらにしてそうなってしまっているものはどうしようもないのである。つまるところ、夏目はど天然なのだ。

 

 

「夏目、食器とかもある程度は向こうで買うから。長くいることになるんだし、こっちの家もなくなったら困るでしょ」

 

「はいっ、わかってます!!」

 

夏目はさらに慌ただしく荷造りをする。

 

 

これは自分の荷造りをした後に、夏目の荷造りを見届けないといけないな。

 

俺は頭の中で予定を付け足し、夏目の用意してくれていた朝食を食べに向かったのだった。

 

 

 

 

 




これは陰陽塾を受験するために田舎を離れる前のストーリーです。

少しの間オリジナル回となりますがお付き合いくださると嬉しいです。

更新が滞っていてすみません(; ̄ェ ̄)
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