インフィニット・ストラトス リビルドワールド   作:しびれあくせる

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今年最後の投稿なのに短いぜ。


月が綺麗ですね

戦いを終え、シャワーを浴び終わったラウラはチューブトップにスパッツという軽装でIS学園のカフェテラス端の柵に寄り掛かりながら黄昏ていた。

 

夏風が絹糸のような長い銀髪をなびかせ、夜空はまるで微笑んでいるかのように月が照っている。

かつて何を感じるでもなかったこんな空が、今は色づいて見える。

自分の中で何かが変わったという事はわかる。

それだけで、世界はこんなにも美しいものなのかと、ラウラは幼い子供の様に瞳を輝かせていた。

 

「どうしたの?」

そこへ洗ったばかりの髪を後ろに束ね、タンクトップにショートパンツを身に着けたシャルロットがラウラの隣へ立つ。

風呂上がりに同室のラウラがいないため、探していた様子である。

「いや。少し風にあたっていただけだ」

視線を向けることなく答えたラウラは、楯無達との戦闘後の事を思い返した。

 

========================

 

「・・・負けました」

意気消沈といった具合にぺたんとグラウンドに座る楯無の言葉に、イーリスがからからと笑い、

「いやぁ強ぇ強ぇ!お前ら軍に来たら即戦力で使っていけるぜ!」

負けたのに明朗快活にあぐらをかき、愉快そうにしている。

「あいにく軍にはしばらく関わりたくないのでな」

すげなく答えるラウラ。そこへ綾や一夏達がグラウンドへ降りてくる。

 

「やったなシャル!ラウラ!!」

「アンタならやれると思ってたわよ!」

「おい低身長貧乳!それは私が言おうとしていたセリフだ!」

「はぁ!?どっちだっていいでしょ!?」

賛辞に来たのか喧嘩に来たのか分からない箒と鈴はさておき、一夏とそれぞれハイタッチするシャルロットとラウラ、そして。

 

「お疲れ様でした」

言いながら両手を掲げた綾へ、ラウラとシャルロットは笑顔を浮かべながら同時にハイタッチを行った。

 

「やったね、しゃるるん!ららちゃん!」

「少しヒヤッとした場面もありましたけど、完封ですわね」

「うおおおおおおシャルローーーーット!!素晴らしい戦いだったぞおおおおお!!」

本音とセシリアからタオルとスポーツドリンクを受け取って飲み干したシャルロットへと、今度はアルベールが勢いよく泣きつく。

「ちょっ、お父さん!恥ずかしいから!!」

「社長、もう帰りますよ。本来なら昨日帰るところを今日まで伸ばしたんですから。奥様もきっとお怒りです」

「ぬああああ何をする離せぇ!」

顔を赤くしてアルベールを引きはがそうとするシャルロットであったが、そうするまでもなくデュノア社スタッフにより両腕を掴まれて引きずられていく父を見てホッとする。

 

「シャルロットさん。我が社も一枚岩ではありません。色々な派閥がありますが、我々技術スタッフは我が社の技術を正しく強く使用してくれる貴女を心より尊敬しています。どうか今後もご健闘を」

「あ、はい!ありがとうございました!」

女性スタッフの一人に想定外の言葉を投げかけられ、ついお辞儀で返すシャルロット。

「シャルローーーーーーット!!ジュッテーーーーーーム!!!」

去り際に愛を叫ぶアルベールに全員が苦笑いする中、ぷるぷると肩を震わせて癇癪を起こしたのは楯無だ。

 

「うえぇぇぇええええんん!!くーーーーやーーーーしーーーーいーーーー!!!」

 

まるで駄々をこねる子供の様に、転がってじたばたとする楯無に驚く一同と、こっそりとビデオカメラを回す本音。

「ぜったい勝てると思ってたのにーーーーっ!!それでちゃんと任務遂行してやるつもりだったのにーーーーーっ!!これまでこんな負け方だってした事なかったのにーーーーーーっっ!!!」

 

更識家きっての天才児であった楯無は、十代にして既に当主の名を継ぐ程の能力を有している。それゆえに。

ろくな敗北も知らず、そのカリスマ性や弁論の達者さもあって躓く事の無い人生を歩んできた。

 

彼女が考える人生の課題など、妹とどのように接するべきか考える程度だった。

だからこそ綾達に接触できない事が、全てにおいて自分の思惑通りに進むと考えていた楯無のペースを崩し、それを取り戻そうとしてケアレスミスを繰り返してきたのだ。

ラウラに指摘された喋り過ぎという部分も、無理に自分のペースに戻そうとした行為に過ぎない。

 

それを知ってか知らずか、綾は長髪をかきあげながらにこりと笑い、

「僕にはこのように素晴らしい味方がいます。特に貴女の手助けはいりませんよ?」

と、止めを刺すのであった。

「うっうううう~~~~~っ!!」

唸りながら足をばたつかせる楯無。

本当の目的である護衛任務という名目を話す事が出来ればどれだけ楽か。

しかし、楯無が護衛しなくとも綾は自分と一夏の住む部屋に万全のセキュリティを敷いており、強力なISと、協力的な仲間も多くいる。

護衛する必要がそもそも無いという事を、楯無は察しているものの更識家は認識しているのだろうか。

 

「まぁクヨクヨすんな。一回負けたくらいじゃ今時経歴に傷なんてつきゃしねぇよ。むしろ負けたのに生き残るってのは生存能力を評価される事もあるんだぜ」

「あなたと私じゃ立場が違うでしょー!!」

元気づけようとするイーリスの言葉も届かずめそめそと泣き続ける忙しい楯無。

そんな彼女へ、幼馴染である関係の本音が腹を抱えながらしゃがみ込んで話しかけた。

「あははははは!たーにゃんたーにゃん、これかんちゃんに見せていいよね~?」

「だっ、駄目ええええええっ!!こんな無様な私を簪ちゃんに見せないでーーーっ!!」

その言葉にバッと起き上がり、本音の手にしたカメラを奪おうとするも避けられ、長い袖につつんだそれをくるくる回りながら逃げる本音。

 

「そういえば簪さんは見に来なかったんですね。姉上様の試合だというのに」

「うん、かんちゃんはインドア派だからね。たーにゃんの試合って言っても、『どうせ姉さんが勝つからいい』って。妖怪モンスターの最新作を夜通しやってたよ?」

「うっうっ、簪ちゃんの信頼すら裏切ってしまったわ。もはや腹を切るしか・・・」

きっと信頼ではなく怠惰なだけであるのだが、楯無はさめざめと泣きはらす。

 

「さってと。楽しい時間はそろそろ終わりだ。アタシは仕事に戻るぜ」

楯無のネガティブに呑まれる事も無く、イーリスは立ち上がって伸びをしてフィールドの出口へと歩いて行った。

「ラウラ、シャルロット。名前は覚えとくぜ。また今度会う事になるかもしんねぇけど、そん時はよろしく頼むわ」

「あっ、はい!ありがとうございました!」

「おまえは良いIS使いだった。またやりたいものだ」

「ハハッ!次があんなら容赦しねぇぞ!」

ひらひらと手を振って去るイーリスは、最後にやってきた千冬とすれ違いざま、

 

「・・・ナタルの機体はまだ見つかんねぇそうだ。ただ、日本近海に運ばれた可能性がある」

「・・・そうか。IS学園側でも調査はしておく」

「頼むわ」

 

小声で会話を交わし、やがて出口から姿を消していくイーリスを見送り、ラウラとシャルロットは拳を軽くぶつけ合った。

「やったね」

「ああ」

新たな力を使いこなして勝利を収めた二人の間には強い絆が産まれ。

見渡せば、ウィンクを飛ばしてくるセシリア、サムスアップする一夏、八重歯を見せて笑う鈴、頷く箒、楯無と追いかけっこを続ける本音、片手の指を二本掲げる綾がいて。

この勝利が自分達だけのものではない事を感じ、それを誇るのであった。

 

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あの時感じた勝利の感覚は、軍では得られなかったものだ。

たった一人の戦いではなく。

仲間と生き残ったのではなく。

かつてセシリアとシャルロットに教わった、命を賭けるのではなく、形のないものを守るための戦い、その意味が何となく分かった気がする。

「・・・シャルロット」

「なぁに?」

隣に立つシャルロットへ何の気はなしに声をかけたラウラだが、その後何が言いたいのか自分でもよく分からずに、きょとんとして待つシャルロットへ考えた末に、

 

「・・・上手く言えないが。おまえたちに会えた事。わたしにはそれが嬉しいと思う」

 

ゆっくりと自分の言葉で、自分の気持ちを口にするラウラに、不意打ちを食らったかのように胸をどきりとさせるシャルロット。

照れや気恥ずかしさという感情を上手くコントロール出来ていないラウラは無意識に頭をがしがしと掻き、頬を染めながらシャルロットへと目を向ける。

「おまえはどうなんだ」

どう、と聞かれても。

シャルロットがラウラへ返す言葉は、悩むまでもなく決まっていた。

 

「大好きだよ、ラウラ」

 

娘を慈しむ母親のように、ふわりと小さな体躯を抱きしめるシャルロット。

今度はラウラが驚きと戸惑いに視線を震わせる。

 

「ボクと出会ってくれてありがとう。僕の大事なリョウの妹になってくれてありがとう。一緒に戦ってくれてありがとう。これが、ボクの素直な気持ちだよ」

 

脳がとろけそうな優しい囁きに何故か泣きそうになりながら、ラウラはおずおずと手を回して抱き返した。

「・・・シャルロットは、思っている事を言葉にするのが上手いんだな」

「一緒に覚えていこう。想いを言葉にすることも、大切な人の守り方も」

「・・・うん」

母へ甘える子供のように、シャルロットの胸へ額をこすりつけるラウラ。

その様子を、物陰から綾とセシリアがこっそりと覗いていた事を知らず、ラウラとシャルロットの二人は手を取り合って、また夜空を見上げた。

今宵は空気が澄んでいて、三日月がとても綺麗で。

輝く星々が、まるで祝福しているかのように輝いていた。

 




第四話・終

あらー^良いお年をー^
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