インフィニット・ストラトス リビルドワールド   作:しびれあくせる

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あけおめことよろ。


第五話 初恋と失恋と不滅の刃
幕間


ドイツ軍過激派によるIS学園乗っ取り未遂事件から二週間。

ようやく再開した学園が最初に行ったのは、クラスの再編成であった。

 

もともと2年への進級の際にISマイスターへの道を断念する生徒が多く現れるため、そのタイミングでクラスの再編成が行われるのが通年の習わしではあるのだが、今回は事情が事情のためそれが早まった形となる。

IS特待生及び成績優秀者についてはAクラス、整備士志願の生徒と通常カリキュラムを申請した者はBクラス。

1年はAクラス20人、Bクラス40人の振り分けとなった。

それによって、IS専用機持ちの生徒達が同じクラスに集まる運びとなったのである。

 

夏本番を迎え、暑いのかトレードマークの長髪をポニーテールにしている夏服の鶴守 綾と、同じく夏服の織斑 一夏が団扇で自分を扇ぎながら自席にてくつろぐ。

「ラウラ、凰さん、そして更識 簪さん。素晴らしい、お互いのISの話をする機会が増えますね」

「でもAクラスって授業のレベルもBクラスより高いんだろ?ついていけるかな・・・」

早朝、前日にメールで知らせられたクラス分けの通りに教室へと向かい、奇しくも隣の席となった綾と一夏がHR待ちの時間で談話を行っていた。

「そこは努力するしかないでしょう。一般科目はお互い不得意ですが、IS学科については我々トップですよ。君は実技のみですがね」

「細かいパーツやら動作の名前なんて覚えられないんだって。俺、高校じゃなくて専門学校に来ちゃったんじゃないか、って思うよ」

「何を今更。シュヴァルツェ・ハーゼ隊員が入学していた時点でお察しでしょう」

実際、そのあたりの境界線は曖昧となっている。

あまり例はないが高校生の年代の生徒に交じって、一般高校を卒業した者がIS学園へ入学してくるパターンも少なくはない。

その場合は再度、高校の授業を履修しつつIS学科を学ぶ事で、専門学校卒の学歴を得られるシステムとはなっているが、明確に専門学校と定義されているわけではない。

それだけにISという兵器の特殊性が世界中で認知されているという事ではあるが。

 

「ま、なるようにしかなりませんよ。これまでと同じく、肩肘張らずに行きましょう」

「そうだなー・・・」

両手を頭の後ろで組んで椅子に寄りかかる一夏。

そんな二人の元へ、綾の義妹であるところのラウラ・ボーデヴィッヒ・鶴守と綾に恋する元御曹司のシャルロット・デュノアが教室へ入ってきたのが見える。

二人とも夏服ではあるが、短めのプリーツスカートを履くシャルロットがシャツのみの上半身となっているのに対し、ラウラは同じくシャツでありながら下半身はプリーツキュロットスカートといういでたちであった。

通常は空軍のフライトパンツを模したような改造制服のラウラだけに、その姿は新鮮ともいえる。

 

「おはよう、リョウ、一夏!」

「おう、おはよう!」

「おはようございます、シャロ、ラウラ。夏服が映えますね、とても素敵です」

「えっへへ、ありがと」

嬉しそうにはにかむシャルロットに比べ、ラウラは少し憮然としたまま腕を組んでそっぽを向く。

「わたしは夏服など男子と同じズボンで良いと言ったのだ。それをシャルロットがな・・・」

「だーめ。ラウラは可愛いんだから、ちゃんと可愛い服で合わせなきゃ」

「これだ。そもそもわたしには可愛いの概念が理解出来ん。実用性を排する理由がどこにあるというのだ」

不満気に唇を尖らせるラウラへと、頬杖をついたまま苦笑いする綾。

「・・・お手数かけますが、これからもラウラをよろしく、シャロ」

「うん!ちゃんと可愛くコーディネートするからね!」

にっこりと笑顔を浮かべるシャルロットの最近のトレンドは、ラウラをいかに可愛く着飾るかという事である。

小柄な妖精のようなラウラを言いくるめて色々と着せ替えるのが楽しい様子である。

一般的な女子としての生活を送ってこなかったラウラに、そういった一般的な女子の機微を教えるのには、センス的な意味でも同居人という意味でもシャルロットは最適な相手でもあり、今となっては最愛の家族の一人であるラウラを気遣ってもらえるのは、綾にとってシャルロットへ足を向けて寝られない程の感謝があった。

 

「む、早いなお前達。おはよう」

そう言って現れたのは一夏のファースト幼馴染であるところの篠ノ之 箒。

その後ろからはタイミングを同じくしてやってきたセカンド幼馴染の凰 鈴音が姿を現す。

「おっはよー!やー、やっと同じクラスになれたわねー!」

「はは、おはよう。箒、鈴」

これまで隣のクラスであった鈴が感慨深そうに言うのに笑って返す一夏。

それを見て少し不機嫌そうにする箒であるが、綾やシャルロットからしたら鈴がいれば昼食時のトライアングルを無理に組まされずに済むという安堵があった。

その結果、一夏を中心とした幼馴染同士のバトルが毎食行われる可能性があるのだが、まぁ安い犠牲である。

そんな風に思われているとは知らず、どうだっていい内容で口喧嘩を開始する箒と鈴は通常運転この上無かった。

 

「おはようございますわー・・・」

瞼を重そうにして教室へやってくるのはイギリス代表候補生、セシリア・オルコットである。

「おはよ。あれ?なんだか眠そうだね、セシリア?」

「昨日、貴女達の試合に触発されてトレーニングしてから就寝したのですわ。やはり基礎は大事。筋力トレーニングを中心にこなしたので少しだるいんですの」

夏服として、膝下3センチの長さで生地が薄めのスカートを着用して綾の隣の席へ座るセシリアは、優雅さを魅せつける様に振る舞いながらも決して努力を忘れない。

AクラスのIS使いの中でも最も早くセカンドシフトに辿り着いたのも、そういった努力の賜物といった部分がある。

綾は、シャルロットの才能と情熱といった部分を深く尊敬しているが、同様にセシリアのストイックで努力を忘れず、決して驕らないその在り方についてもまた、IS学園へ来てから最初のライバルとして誇り、尊敬していた。

「お疲れ様です、セラ。ところでどの程度の負荷を?」

「AMBACのバランスを調整したいと考えてましたので、足腰を鍛えようかと。ランニング1時間とスクワット300回、ハムストリングスとカーフレイズを200回ずつ、あとデッドリフトと水泳を―――」

「オーバーワークで身体ぶっ壊しますよ!?」

特に変わった事をしている風もなく回答するセシリアに思わず心配になる綾。

道理で美しい太腿をしているわけだと納得しつつも、正しい知識をもったトレーナーはついていないのかと勘繰ってしまう。

このままいくと野太いマッシブなセシリアを拝む日も遠くないなと内心焦りながら、今度一度セシリアのトレーニングに付き合ってみようと決める綾であった。

 

「おはおは~!」

「・・・おはよう、ございます」

次々とやってくるIS専用機持ち達。

最後にやってきたのは布仏 本音と更識 簪のメイドと主人コンビ。

自席へ鞄を置いてやってきた簪は、ラウラとシャルロットをみやるなり、スッと立てた親指をかざして眼鏡を光らせた。

「グッジョブ」

「え?」

「む?」

「私、昨日あなた達が戦った更識 楯無の妹」

自分を知られていない事は慣れている様子で特に気にすることも無く、言葉少なに説明する簪に手を叩くシャルロット。

前日、ラウラとシャルロットは生徒会長たる更識 楯無に決闘を挑まれ、息の合ったコンビネーションを以て危なげなくそれを下したのである。

「何だ、姉の仇討ちにでも来たのか?」

「まさか。私だってあなたには学年別タッグトーナメントで負けてるし」

本音・簪ペアと戦った事を思い出したラウラはあぁ、と頷いた。

そうか、あの時の女か。

 

「かんちゃんってばね、たーにゃんが負けた試合のビデオ観て大笑いしちゃって。なんだか今日はすごい吹っ切れてるんだよ~」

有能ではあるが口下手のきらいがある簪を代弁する本音の言葉に頷く簪。

「完全無欠だって思ってた姉さんが負けるの、初めて見た。いつも私は姉さんと比べられてて、更識家からはずっと冷遇されてて、ああ、これからも一生私は暗いところにいて、姉さんは光の下を歩いていく運命なんだなって、そう思ってた」

しかし違った。姉でも敗北する事はあるのだ。

それどころか、任務を全うせずに勝手な私闘を申し込んであまつさえ敗北するという失態を晒した楯無は、更識家の前当主である父に散々叱られており、その際にタッグトーナメント決勝で簪が活躍を見せたにも拘らず、何も出来なかった楯無を引き合いに出されていたのを隠れて見ていた。

これまでずっと、自分が叱られているのを楯無が見ていたのに、逆の立場から姉を見ている。

 

その後に試合のビデオを鑑賞した簪は、なんだか自分が劣等感を感じて塞ぎ込んでいたのが馬鹿馬鹿しくなってしまい、笑いが止まらなかったのだ。

「あれですごく、気持ちがすっきりした。更識家は特別厳格だっただけで、私が無能だったわけじゃない。私には私の土俵がちゃんとあったんだ。姉さんだって完璧超人じゃなくてただの人だった。それが分かって、いまとっても清々しい」

どこか自分に語りかける様に語る簪に呆けるラウラとシャルロット。

「だから私、今後は姉さんの成績も更識家の言う事も気にしない事にしたの。自分の意志で、自分の道を進む。そう思えたのはあなた達のおかげ、だからグッジョブ」

またもビシリとサムスアップする簪に、戸惑いつつ親指を立てて返すラウラとシャルロット。

とはいえ他人の人生である。新しい生き方を見つけられたというのであればあーだこーだと言うべきではない。黙って祝福してやるべきだ。

 

「完璧超人ではなく、ただの人・・・か」

何となく、自分と千冬を重ねてしまう一夏のぼやきをよそに、念願の簪との対面を果たした綾は、椅子を横向きに座りなおして簪へと向き直り、言葉早にまくしたてる。

 

「どうもタッグトーナメントの際にはお世話になりました鶴守 綾と申します。あの時は貴女のバックアップがあってこそ妹を救い出せる事が出来ました、心から感謝していますとも。おや、そちらの眼鏡はIS用のパーソナルデバイスでは?はははお揃いですね。いかがでしょう、この後食事でも一緒にしながらISについて談義しませんか?実は僕、貴女とは一度語り合いたいとは思っていたのですよ」

「え、えと、その・・・」

 

ともすればナンパの口説き文句に取られかねない話しかけ方に、陽キャの空気を感じ取って一歩引く自称陰キャな簪。

そして綾がそうやって簪を誘う事は容易く予想出来ていた本音と、既に綾の性格をある意味誰よりも把握しているセシリア、そして単純に軽薄なのは持ち味としても目の前でナンパ行為に奔られるのが気に入らないシャルロットの三名から同時に後頭部をひっぱたかれて椅子の角に勢いよく頭をぶつける綾。

「ごぎゃん!!」

フランスの有名な画家の名前のような悲鳴をあげる綾と、息の合ったトリプルアタックになってしまうとは思ってもいなかった本音、セシリア、シャルロットが互いに目を見合わせる。

 

「りょ、綾ーー―っっ!?」

額から血を流しながら目を回した綾を急ぎ介抱しつつ、ラウラは信じられないといった表情でシャルロット達をゆっくりと振り返り、

「お、おま、おまえたち・・・?」

と、野良猫がいつも餌をくれていた優しい人間から蹴飛ばされたかのような表情を浮かべた。

「ち、ちがうのラウラっ!これは、これはね!?」

「事故!これは事故ですわ!」

「ここここんな事になるなんて思ってなかったの~!」

ここまでストップ高だったラウラからの好感度が急速に右肩下がりになっていくのを感じ取って慌てる三人をよそに、

「あ、私の話は済んだからこの辺で・・・」

言い残しつつ自席へと戻る簪。

ある種火種だけ残して去っていくように見えなくも無いが、陰キャを自称し人とあまり関わるのを苦手としている簪にはこれ以上はキャパシティオーバーであった。

 

「ほら、今のは何というかコミュニケーションの一環であってね!?あぁ、でもでもボク、なんでこんな事しちゃったんだろ!?リョウがナンパしているのに胸がモヤモヤして気付いたら・・・って、こんなんじゃ大人の女の人なんて夢のまた夢じゃないかぁ!」

 

「今回の事はたまたま、本当にたまたま運悪く発生してしまった回避不能な事故ですの!どうせリョウの事だから簪さんに話しかけるのに気取った話し方をすると思って、良かれと思って一旦落ち着かせるために・・・あ、悪意はありませんのよ信じてくださいまし!」

 

「だだだだって、りょーちんって言っても聞かないところあるし、一回このくらいばしーっ!とやらなきゃわたしの気持ちにだって気付いてくれないと思って、あっ、き、気持ちっていうのはね、そういう意味じゃなくってあのそのね、うううぅぅっ・・・」

 

ペラペラとそれぞれの言い分を並べるも、軽々と綾の大きな体を背負って教壇の後ろから警戒しつつ睨むラウラのジト目が彼女たちのメンタルを削る。

まともに理解を得ようとしている内容なのがセシリアだけというのがアレであるが、その時、HR開始を告げるチャイムと共に担任である織斑 千冬と山田 真耶先生が教室へと入ってきた。

 

「みなさーん、席についてくださーい」

朗らかに声をかける山田先生はしかし、頭の上でヒヨコが踊っている綾を背負って教壇に隠れているラウラに気付くと、おろおろとたじろいだ。

「り、綾くんっ!?ど、どうしたの?気分悪いの?保健室行きましょうか?」

心配そうにのぞき込んできた山田先生の声を聞いた綾はぴくりと耳を震わせ、流れる血をものともせずに立ち上がり、山田先生の手を取って抱き寄せる綾。

 

「いえいえ、心配には及びませんよ真耶さん。あぁ、今日も一段と美しい。こんな状況でもIS学園への勤務を続ける貴女の献身には心から憧憬の念を抱きますとも。どうでしょう、今日も授業が終わったら僕と食事でも。今度はまた違うお店へエスコートしますとも」

「だ、駄目よ綾くん・・・私たちは教師と生徒。あなたは確かに素敵な男性だけど、きっとこれから私なんかより魅力的な女の人と出会えるわ。それまで・・・」

「それまで、なんて待てませんよ。そんな悠長な事をしていたら貴女を他の男に奪われてしまうではないですか。僕にとっては貴女より素敵な女性なんて目に映りません。だからどうか、僕の手を取っては頂けないでしょうか」

「やぁ・・・許して、そんな事言われたら、私・・・!」

 

「何を・・・やってるんだお前は!!」

「何をしてらっしゃいますのアナタは!!」

 

教室内の全員が注目せざるを得ない綾の口説きに顔中を真っ赤にした山田先生が陥落しかけたその時、頬をひくつかせた千冬とこめかみにくっきりと血管を浮き出たせたセシリアが、それぞれ左のハイキックと高速ダッシュからのドロップキックを放ち、二連の流星のごとき脚撃は器用に山田先生をかわして綾の後頭部と背中に突き刺さった。

 

「うわああああああっ!綾ーーーっっ!!」

勢いあまって教室のホワイトボードを突き破って下半身だけ残った形の綾に、友人連中はおろか、尊敬していた千冬まで凶行に奔ったショックを隠せないラウラが涙声で助け起こそうとする中、一夏を巡って軽いジャブを撃ち合っていた箒と鈴の間に戦いの鐘が鳴る。

「アッタマきた!今日という今日は許さないわよ乳モップ!!その意味も無くでかい胸を切り落として今夜のおかずにしてやるわ!!」

「こちらのセリフだ低身長貧乳!巨大なふくらみが欲しいのならそのまな板を掻っ捌いて中に風船を詰め込んでくれる!!」

どこから取り出したのか木刀の両手持ちと薙刀でガチバトルに突入する幼馴染ふたり。

さながらハリウッドアクション映画の様相を呈して周囲の椅子や机を薙ぎ倒し、やがて窓ガラスが次々と割れていく。

 

「ボクは決めたのに、リョウを支えてあげられる大人になるって。こんな暴力女じゃきっといつか見放されちゃうよ。今よりもっと、優しくなるにはどうすればいいんだろう・・・」

 

「ちがうのちがうの、わたしそんなにチョロくないし?それに話は合うけどやっぱりりょーちんモテるし、おつきあいするならやっぱりわたしだけ見てくれる人がいーし・・・お、おつきあい・・・え、えへへへへへぇ・・・」

 

などと、自問自答しながら体育座りしつつ、頭上で振り回される箒と鈴の武器は見もせずに回避するシャルロットと本音。

「ちょ、ちょっと落ち着けって箒!鈴!あぁそれにリョウは何でそんな事になってんだよ!?」

しばらく呆けていた一夏が気付くと教室内が崩壊しつつあるのに驚きつつも、まずは相棒たる綾をラウラと共に助け起こそうと四苦八苦する。

 

「―――見た!?やっぱり最初に駆け付けるのは旦那の元なのよ!」

「だから解釈(ソレ)の話はすんなとあれほど(以下略)」

「エモいわー。織鶴エモいわー。見てなさいよこのあとキッスするわよキッス」

「『リョウ・・・傷ついたお前を見て初めて気付いたんだ。俺の、本当の気持ち・・・!』」

「『まったく・・・遅いんですよ、一夏。そんなところも、愛してますけどね・・・』」

「やっべ鼻血止まんね」

「あぁ良い!すごく良い!!ねぇ演劇部!これ文化祭で演りなさいよマジで!!」

「ご心配なく。既に脚本は完成しております」

「神か(崇拝)」

「アタシ本当にAクラスになれて良かったぁ!一生鶴×織推すわ課金するわ」

「課金ってナニ?お揃いの服買ってあげるとか?」

「いいーーーっ!!ガチ良い!!捗るわー!!(絶頂)」

「描かねば(薄い本)」

「書かねば(ラノベ)」

「作らねば(ビジュアルノベル)」

 

更に1組から残っていた腐女子達が燃え上がり、騒がしい様子を覗きに来たB組の同士を交えて語り、妄想を膨らませていく。

 

「トイレいこ・・・」

「簪ちゃん、どこいくのー?」

「お手洗い?アタシらもいくいく!」

そそくさと教室から逃げ出す簪。

それを追う、クラス対抗戦で簪と仲良くなったチームメイトの二人。

 

「綾!綾!しっかりしてくれ!おまえがいなくなったらわたしはどうすればいいんだ!」

「もう早く起きろリョウー!ていうか重いなお前ーーー!!」

「どうしてアナタはそうやって大人の女性と見るとそう見境が無いのかしら!先々週、遊園地へ行った時の事覚えてまして!?アナタってばわたくしのエスコートを忘れてつまづいたどこぞの奥様にかかりっきりで、わたくしがあの時どれだけ手持無沙汰で寂しい想いをしたか・・・聞いてますの!?リョウ!?」

「ぬ!?セシリア、綾とどこか出かけてたのか!?いつの間に!?」

「失言でしたわーーーーーっ!!!」

一夏とラウラが引っ張るもびくともしない綾へクドクドと説教をするセシリアの話の内容に、速攻で反応するラウラ。頭を抱えながら頬を染めて叫ぶセシリア。

 

「わ、私ったら教師失格だわ・・・!教え子なのに、こんなに胸がときめいて・・・こ、これがもしかして、ファースト・ラブ!初恋だとでもいうの!?」

顔中どころか耳や全身を真っ赤に染めてどこか古い言い回しで少女漫画を初めて読んだ小学生のような反応をみせる山田先生・・・と、凄まじくバラエティに富んだ各々のリアクションで教室内をカオスへと変貌させる生徒達と教師。

 

「・・・今年はこんな糞ガキ共を相手取らねばならんのか・・・」

 

収集がつかなくなってきた室内にて、片手で頭を抱えてうつむいた千冬は、導火線を辿る火種のように次第にゆっくりとしかし確たる速度で我慢の限界を超え、ぶちりと堪忍袋の緒を引き千切り、

 

「――貴様ら全員、ISのレッグサスペンションを抱えてグラウンドを100周して来い!!」

 

その場の全員の頭を拳骨で黙らせた千冬の怒号が響く。

退避していた簪たち三人を除き、A組17人と山田先生は20kgはあるサスペンションを抱えながらグラウンドをひた走る。

途中で止まる事も倒れる事も鬼神と化した千冬は許さず、彼女がブリュンヒルデどころか悪鬼羅刹たる姿をまざまざと見せつけ。

割と普段からそのくらいのトレーニングをこなしている綾や一夏、ラウラ、セシリアは倍のサスペンションを持たせられ。

久々の運動に半泣きになる山田先生を交えつつ。

夏休み直前、海沿いの宿への臨海学校を三日後に控えたA組の最初の一日は、昼食抜きで日が暮れるまで走り続けて終わったのであった。

 




新年一発目からこんなオチかぁ・・・。
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