インフィニット・ストラトス リビルドワールド 作:しびれあくせる
入学式から一週間が過ぎたホームルーム。
いつものように壇上に立った山田先生は、一週間前よりなんだかつやつやとした笑顔でクラス内へ声をかけているが、その理由を知るのは彼女自身とどこぞの男子生徒以外にはいない。
「はい、それでは今日は、このクラスの代表を決めたいと思います!」
クラス代表、文字通り他クラス間との模擬戦闘やクラス合同授業中のチュートリアルを担当させられたり、先生の手伝いやクラスのまとめ役などを行う、それなりに責任のある立ち位置。早い話がクラス委員のようなものである。
クラス代表となる事で得られる分かりやすいメリットとして、定期的に開催されるクラス間対抗戦への参加権の入手や学年別トーナメントへの優先出場権を得られる事があり、更にそこで高い成績をあげる事で優先的に専用機や新型兵装を回してもらえる事もある。
もちろんクラス代表自体は定期的に変更が行われるものであるが、最初の一手、これをあえて見過ごす理由は、IS学園から次のステップを目指す者達には無い。
そのためか、山田先生の提案を聞いた生徒全員の目の色が変わる。
IS学園へ入学した生徒は各々のプライドと目的を持ってこの場所にいる。
操縦者はもちろんの事、整備員志望であればより強いクラスメイトの専属になれればそれだけ多くの機体整備のナレッジを得ることが出来る。
ぎらついた雰囲気の中、山田先生は毎年の事と慣れた様子を見せつつ、
「はい、では立候補したい人は・・・」
「「「はい!」」」
問うまでもなく、整備員志望以外の全ての生徒が手を挙げた。
否、全員ではない。
頭から煙を出しながら参考書を読み続けて話を聞いていなかった一夏と、我関せずとばかりに耳のミュージックデバイスから流れる、モーツァルトのピアノ協奏曲第23番の美しい調べに身を任せている綾の、世にも珍しい男性適合者二人である。
どちらにせよ過半数が立候補しているため、公平な決め方を模索する流れとなった。
「それでは選出方法を決めましょう。どなたか提案はありますか?」
「IS適合率上位同士でトーナメントを!」
「これまでの訓練の成績で!」
「各戦闘科目で新たに成績順位をつけるべきよ!」
「成績と実戦は違うでしょう!」
これも案の定、各々が有利となるであろう提案が錯綜し、やがて取りまとめようとする山田先生の言葉も耳に入らなくなってくる1年1組内。
「やはりこうなるか・・・」
「これも毎年の光景ですねー」
苦笑いを浮かべる山田先生と、ポーカーフェイスを崩さない千冬。
ただ、喧しく喧噪を作り出すクラス内で明らかに浮いている一夏と綾だけが例年と違う風景ではあったが、しかし教師達はある一つの確信があってこういった流れを作り出したのである。
「例年通りなら、そろそろですね」
「ああ。一番分かりやすい提案をする生徒が出てくる」
元々各国各地から選抜されて入学したエリート揃い、専用機と呼ばれるワンオフのIS所持の有無を差し置いても、自分に自信をもって入学してきた生徒達。
それも、まだ入学から一週間という付き合いの浅さも相まって、誰一人として引かない膠着状態が続く中、だん、と机にストッキングにくるまれた脚を乗せ、イギリス代表候補生セシリア・オルコットが、声高々に提案した。
「バトルロワイアルですわ!!」
鶴守が鳴かずとも鶴の一声が響き渡り、ざわついていた教室内はぴたりとその音を止める。
「皆様、どなたも腕に覚えがある方ばかりですもの。小賢しい策略など投げ捨てて、最後まで立っていた一人をクラス代表とするのが一番手っ取り早く、かつ納得がいくのではなくて!?」
セシリアの言に、クラスメイト一同が一瞬だけどよめきを見せるものの、最後には誰一人として不満を漏らす者はいなかった。
想定通りとほくそ笑んだ千冬は山田先生の隣へと立ち、
「よし、話はまとまったようだな。では早速、これより第1アリーナスタジアムにて1年1組内参加希望者全員でのバトルロワイアルを執り行う!参加希望者は各自、準備の上第1スタジアム グラウンド内へ13:00迄に集合!見学者は一般観客席へ!では解散!!」
高らかな宣言に驚きを隠せない生徒をよそに、千冬は足早に教室を後にする。
「皆さん、これは実戦を想定しての催しでもあります。戦場ではいつ戦闘が発生するか分からない、事前に通達が無かったから戦えないでは話にならないのです。また、専用機を持っていない方が参加する際はIS学園が保有する量産機・打鉄(うちがね)を使用してください。申請方法はこれまでの授業の中にありましたので、分からない場合はちゃんと自分で調べて、時間に遅れないよう注意してくださいね!」
山田先生らしからぬ緊張感のある通達に、生徒達はそれぞれ緊張感をもって席を離れ、教室を駆け出ていく。
現在時刻は午前10:00。
雪崩のような勢いで、一瞬のうちに入口から消え去ったクラスメイト達。
そして教室に取り残されたのは、余裕をかましていた綾、未だ頭を悩ませていた一夏と、そんな彼に声をかける箒、山田先生のみとなった。
否、あと一人。
「随分と呑気になさっていますわね、鶴守さん?」
机の上から眼下で音楽を聴き続ける綾へ、文字通り見下すように声をかけるセシリア・オルコット。
「貴方はバトルロワイアルに向けて準備は必要ないのかしら?それとも、既に諦めきっていらっしゃるとか?」
挑発的なセシリアの言葉に一切動じない綾はしかし、ようやく耳からイヤホンを外すと、鼻歌交じりに返答する。
「トルコ行進曲トルコ行進曲~」
「・・・は?」
「ご存じないですか?トルコ行進曲。モーツァルトのピアノソナタの中ではかなり有名だと思うのですがね」
「そのくらいは知っていますわ!馬鹿にしてらっしゃるの?」
「馬鹿になどしていませんよ。バトルロワイアルでしょう?どうせそうなるだろうとは思っていました・・・というか、そういう流れにしようと考えていたんですが、貴女がそれを提案するとは思っていませんでした」
ここでようやく顔を上げ、セシリアの目を見つめ返す綾の不敵な表情に、焦りや油断といったマイナスの要素は見当たらなかった。
「最後まで残った者が勝者。シンプルで良いじゃないですか。ここのクラスメイトは皆、栄光を目指して邁進し続ける。切磋琢磨する。ええ、ええ、とても好ましいと感じますとも。成長に貪欲な人間の姿はとても美しい」
心から楽しげに語る綾。
「で、貴女はそこで何をされているのです?」
「決まっていますわ、鶴守 綾。男性IS適正者にして、凄腕として有名なIS開発者、鶴守 豪(つるもり ごう)の孫へ、挑戦状を叩きつけたく存じますわ!」
手袋を投げつけるような仕草で綾へ宣戦布告を行うセシリア。
「ほう・・・成程?僕の事を色々とお調べなさったのですね。この間の意趣返しといったところでしょうか」
「ええ、調べましたわ。貴方のお母様が世界的なピアニストであった事も。そして、かの白騎士事件にて犠牲者となった事も」
白騎士事件――日本を射程距離に捉える事が可能なあらゆる軍事基地が同時ハッキングを受け、日本各地へと2千以上のミサイルが一斉に発射されたが、発表されたばかりのIS・白騎士たった一騎によってミサイルの半数以上が着弾前に撃破されたという歴史的事件。
この事件によってISの性能が評価され、軍事転用される切っ掛けとなったのである。
本当に2千ものミサイルが発射されたのかという詳細はさておき、白騎士及び自衛隊が打ち漏らしたいくつかが着弾し、多数の人間が被災したという事実に変わりはなく、その被害者の中には地方チャリティコンサートへ赴いていた鶴守 綾の母親、そして付き添っていた父親が含まれていた。
「貴方と私はどうやら、図らずも似た経歴を持っているご様子。それでもわたくしは動じません。何故ならば、わたくしは由緒あるオルコット家を継ぐ者、どうあがいても一般市民の端くれである貴方とはその使命の格が違うのです。何の因果かISへの適性を得たところで、貴方のような存在がこのわたくしの道を阻むなど許されない事と知りなさい」
この一週間、セシリアは綾を敵視し続けてきた。
IS座学、量産型ISでの実習訓練、体力測定。
男女で差が出る体力測定では綾が圧勝であったものの、IS座学は二人同時に学年トップ、量産型ISでの訓練成績では決着つかずと、お互い高い成績を残してきた。
それでも、それだけで、セシリアの鼻を折るには十分すぎる結果であった。
自分は他の人間とは違う、選ばれしエリートなのだと。そう思っていたのに。
ぽっと出の男が、自身が毛嫌いする男などという取るに足らない存在が、自分の成績を大したことはない、一般的であると貶しているようで。
「決着をつけましょう、鶴守 綾。貴方だけには負けたくありませんわ」
セシリアは、自分でも気づかないうちに、彼をライバルとして、超えるべき壁として認識していたのである。
そして、綾は。
「僕としては誰が勝ち上がってもそこまで気にならないのですが」
のらりくらりと返事をするかと思いきや、投げられた手袋を受け止める仕草でセシリアへ拳を向ける綾。
「ここまで熱い言葉をかけられたら黙ってはいられませんね」
「それで良いのです。なんでしたら、負けた方が勝った方の言う事を何でも聞くというのはいかがかしら?」
「どうぞお好きに。なら僕からもひとつ提案が」
「聞きましょう。何かしら」
「そこから更に、バトルロワイアルで一位になった者に褒賞を与えるというのはどうです?二位は一位に学食のランチを一週間奢りです」
「ふふっ、良くってよ。自分で自分の首を絞めることにならなければ良いのだけれど」
自分達が最後まで勝ち残る前提で話が進む中、箒から説明を聞いてようやく事態を把握した一夏は、急いで自身のISの準備に取り掛かろうとした、が。
「あと三位になった者は一位の者とベッドの位置を交換する事にしましょう」
「おいいいぃっ!?今さりげなく俺を巻き込んだか!?」
「(どうでも)良くってよ!」
「良くねぇよ!勘弁してくれ!そもそも俺、三位まで生き残る自信なんて無いぞ!?」
「あと三位より下になったら一年間ランチ奢りというのはどうですか!」
「(何でも)良くってよ!!」
「だから聞けよお前らあああああ!!」
開始前から既に火花を散らす綾、そしてセシリア。
苦笑いしながら見守る山田先生。
頭を抱えて悲鳴をあげる一夏。
そして、箒は皆を眺めながらぽつりと、
「・・・もしや私も、4位以下になったら一年間ランチ奢りになってしまうのか・・・?」
などと、いらぬ心配を吐露した。
何にしても、全員気持ちの面では万全である。
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時を遡って三日前。
放課後となったタイミングで千冬は一夏と箒を呼び出した。
未だギスギスとした空気の漂う教室から千冬を追い、廊下へ出る一夏、箒、そして綾。細長い廊下へ抜け、技術棟にあるIS格納庫へと向かう。
「・・・いや待て。なぜ鶴守がついてきている」
「そこはほら、僕は一夏の保護者のようなものですから」
「誰が保護者だよ。俺の保護者は千冬姉だっての」
「学校では織斑先生と呼べ、馬鹿者」
仕方の無い者を見る目で振り返って足を止めた千冬は、軽い足取りでついてきていた綾へ警告を発する。
「これから二人にはIS専用機の引渡しを行う。一応関係者以外には詳細情報の秘匿が行われなければならない。ついてきても部外者は立ち入り禁止だぞ」
「えっ、専用機!?」
「私にも、ですか?」
驚きに目を見開く一夏と箒をよそに、しかし綾は癖である眼鏡のブリッジを中指で押し上げる仕草を見せつつ、
「やはりそうでしたか。いやいや、そうでないかと思っていたんですよ」
などとにこやかに返事をした。
「まず僕は部外者ではなくこの学園の生徒のため格納庫への立ち入りは出来ます。また、関係者以外への秘匿と言いますが特定の国家に仕える身でもない一夏や箒にそこまで強力な秘匿義務があるとは思えません。学内の友人への機体に関しての相談事等、公開可能な情報もあるのでは?」
ぺらぺらと持論を展開する綾に対し、ふむ、とすこし思考した千冬はやがて、
「・・・まぁ一理あるか。どうせすぐクラス中に知れ渡る事になるしな。いいだろう、ついてくるがいい」
と、またその歩を技術棟へと進め始めた。
それを見て綾は嬉しそうにステップを踏み、
「やった、やりましたよ一夏、箒!いやぁ楽しみだな!どんなISかな!新型かな、中古かな、第二世代とか好みなんですけど!」
「お前、それが目的で・・・鼻が利く奴だなぁ」
「まぁ、私と一夏だけ織斑先生に呼ばれる、という時点で察する事は出来たのだろう。本当に抜け目の無い」
入学日以来、綾、一夏、箒の三人はよくつるむようになっていた。
他の女子が未だ友人関係を作る程打ち解けていない――エリートの集まりゆえの軋轢であろうが、そのためかむしろ箒としては幼馴染である一夏、および人当たりの良い綾の方が付き合いやすいとの判断である。
当初は三人で学食で昼食をとった際に、あからさまに一夏を意識している箒を見てお邪魔かと思った綾は、早めに食事を切り上げ「後はお若い二人でどうぞお一つ」などと言いつつその場を離れようとしたのだが。
「ばっ、ばかものっ!何故去ろうとする、ここにいないか!」
と、長い裾を思い切り引っ張ってきた箒に、想定外であるといった風の顔を見せる綾は、
「は・・・?何故です。折角の一夏との二人きりの時間でしょうに」
「も、もし二人きりになって、会話が途切れたらどうしてくれる!」
「知りませんよ・・・」
「私に死ねというのか!」
「死んでて下さいお願いします・・・」
恋愛事や女性の機微となると凄まじい鈍感さを見せる一夏が頭の上にクエスチョンマークを浮かべる中、小声で綾を繋ぎとめようと必死になる箒。
綾はといえば学食の中央に置かれたあるものに興味を惹かれていたというのに、引きつった顔でその場に居続ける事になる。
「とにかくお前はここにいろ!いいな、綾!」
「ええええぇ・・・嘘でしょう・・・?僕、何でカップルの橋渡し役なんてやらなきゃならないんですか・・・?」
「だ、誰がカップルだ!は、恥ずかしい事を言うな!」
「しかもこの女面倒臭いですねぇ・・・」
「??よく分からないけど、二人とも仲がいいんだな!」
と、意外と遠慮の無い、ともすれば似た者夫婦じみた一夏と箒に振り回されつつ過ごしてきた綾であったが、逆に二人へも遠慮の無い関係性を築いてきた。
結果として、出会って四日とは思えない仲の良さとなったのは僥倖であった。
そんな彼らが千冬に連れられてやってきたのは、普段彼らがいる教室のある一般棟の隣の建物、技術棟の地下にあるIS格納庫。
技術棟とは文字通り、ISに関する物理機器やソフトウェアの研究を行う施設であり、学園に搬入されたISおよび武装等はこの格納庫へと運ばれる。
格納庫はおおよそ東京ドーム一つ分の広さを誇るとされ、IS学園の所持機器はもちろんの事、各国用のスペースや企業用スペース、個人用に至るまで細かく区枠分けがされている。
エレベータにて格納庫内へ進入した千冬以下生徒三名は、最も手前に存在するIS学園用のスペースへと訪れ、そこに待機状態で配置してある、白と赤、二つのISの前へと立った。
「これが・・・!」
「私たちの・・・IS、か」
「ああ。白い方が織斑、お前のIS白式(びゃくしき)。赤い方が篠ノ之の機体、赤雷(せきらい)という」
どこか近未来的アーマーを連想させる形状の白式と、鎧姿の和服を思わせる赤雷。己の使い手を待ち侘びるかのように佇んでいる自身のISの正面へと、一夏と箒はゆっくりと歩み寄った。
「これらは共に倉持技研という企業で開発されていた機体を改修したものを、私が個人的に譲り受けたものだ。一応、お前たち二人に使って欲しいというオファーがあったものでな」
「使って欲しい・・・?」
「要は希少な男性適合者と篠ノ之 束の妹に使ってもらう事で宣伝効果を期待した、という事でしょう」
いつの間にやら機体のマニュアルを手にチェックを開始していた綾が、箒の疑問に推測で答えた。
一夏が千冬の表情を見るに、おそらくその推論は当たらずとも遠からずといったところなのだろう。
「では早速だが、二人とも初期化(フィッティング)および最適化(パーソナライズ)を行って――」
「いや待って待って待って。駄目ですよこれじゃ。箒はいいとしても一夏はこれでは死んでしまいます」
一次移行(ファースト・シフト)という初期設定作業を指示しようとしていた千冬であったが、二機のスペック確認や外装チェックを素早く終えていた綾が両手を交差させてストップをかけた。
「え、俺死ぬの?」
「し、死ぬな一夏!大丈夫か!?健康か!?」
「・・・そうか鶴守、お前は確か経歴に技術畑出身などと書いていたな。ではどの辺りが気になったのか説明してみるがいい」
冷や汗をたらりとする一夏と驚いておたおたしだす箒をよそに、腕を組んだ千冬は不満げに眉間の皺をよせる綾へと質問を投げかけた。
すると綾は待っていましたとばかりに赤雷のマニュアルブックを手にし、
「まず赤雷。内部構造についてはチェックが出来ていませんが、スペックや間接の稼動域、装甲の素材に問題は見当たりませんでした。武装に関しても標準装備が二対の刀剣、両肩部装甲内にマウントされたカノン砲と初心者でも扱いやすい、癖のないものとなっている」
「ふむ・・・」
「OSは近接格闘に適したイズモ式、これは遠距離武装使用時に簡単な操作でのハンドシェイクが可能で射撃時の威力調整もオートで行ってくれるため、格闘戦時から中距離以上の武装切り替えが非常にやり易い。スペック上のバーニア出力を鑑みるに近~中距離戦闘を想定しているのであろうこの機体には非常に適しています。このまま実戦に出しても能力を引き出しやすく、更に装備品の拡張性も高い。ここまでの内容から赤雷は第二世代型の後期機種と見受けられ、整備性も高く、良い機体です。おそらく剣道を嗜む箒との相性も良いでしょう」
「そう聞かされると、むず痒くなるほど良い気がするな、私の機体・・・」
「これだけの時間でそこまで把握出来るか。合格を通り越して二重丸をくれてやりたいところだな」
綾の評価にこくりと頷き、思いついた通りの感想を漏らす千冬に、驚愕の表情を浮かべる一夏。
「あ、あの千冬姉が他人を褒めるなんて・・・!?」
胸ポケットに刺していた100均のボールペンを一夏の額へとスナップをかけて投げつけた千冬は、本題となるであろう白式についての評価を話す様に綾を促した。
「問題は白式です。なんですかこれ。欠陥機もいいところですよ」
「欠陥とは何を指している?私からすれば、多少攻撃特化となっている程度という認識だが。そもそも、ISは完成された兵器ではない。そんなものに対して欠陥も何もなかろう」
「詭弁で論外です。そもそも僕は武器の話はしていません。僕が言っているのは機体自体の話です」
「なに・・・?」
想定していた評と違う角度からの言に、千冬の顔色が変わる。
至極真面目な表情で綾は続ける。
「千冬先生が仰っているのはこの機体の唯一の武装、雪片弐型(ゆきひらにがた)の事でしょうか。これはそこまで悪くはない。確か千冬先生も現役時代、これの前身となった武装を使用していた筈ですが?」
「ああ、雪片(ゆきひら)だ」
「その発展型である弐型は白式の単一仕様能力(ワンオフ・アビリティ)である零落白夜(れいらくびゃくや)を使用する前提で製作されています。これは自身のシールドエネルギーを消費させて成型されるエネルギーの刃で、攻撃した対象のISのシールドバリアを貫通する能力を持ち、対ISの武装としては非常に高い攻撃力を誇ります」
「??えっと?」
「HPを消費して攻撃力を上げるんですよ、君の武器は」
「ああ、なるほど!」
いまいち理解の薄い一夏へ、彼の好きなゲームに例えて説明し理解を得た綾は、ここからが本番とばかりに白式のマニュアルを丸めて手の平で叩く。
「集団戦ともなれば不利ですが一対一で接近戦に持ち込めば、相手が誰であろうと勝利を奪い取れる。そのコンセプト自体はロマンがあって良い。僕の趣味ではないけれど否定はしませんとも」
「ふむ、では、お前の言う欠陥というのを聞こう」
「そういった特殊能力ありきである事から第三世代である事は明白です。しかし・・・」
バンバンとマニュアルを叩く音を強め、苛ついたように綾は毒を吐き出した。
「武装が雪片弐型のみで、こんな程度の機動性で、ワンオフ・アビリティのために拡張領域(バススロット)を全部使い果たして後付装備(イコライザ)が使えなくなるとかいう糞仕様!更に零落百夜の仕様を前提としている癖に一般のISと変わり無いバリア総量!ついでに遠距離武器搭載を想定せず射撃用センサーも搭載されてないのにOSは赤雷と同じイズモ式って嘗めてんのか!剣撃格闘専用ウェア組むつもりがならせめて射撃センサー内臓の固定射撃武器積め!誰ですかこれ作ったの!センスが無いにも程がある!」
「ああ、そっちか・・・」
ようやく思い至った様子で、溜息と共に前髪を指で梳く千冬。
「えっと、つまり・・・?」
「攻撃力が高いだけでHPはどんどん減るし防具も装備できないしあまつさえ攻撃を当てる手段に乏しい外れ機体だって言ってるんですよ、君の機体は!」
「嘘だろリョウ!?」
「そしてそれをフォローする手段も別段用意されてないんですよ!多少ピーキーなだけなら僕も文句言いませんとも、ええ!ですがこれは流石に酷いと言わざるを得ない!使用者の安全も扱い易さも考慮されないなんて最早ISに対しての冒涜!白式が可哀想だと思わないのですか!」
「お、落ち着け!も、物凄い怒り様だな・・・こんな綾初めて見たぞ・・・」
ぷんすかと地団駄を踏みつつ歯軋りする綾と、なんとか宥めようとする箒。
千冬はというと、倉持技研から欠陥機扱いされ凍結されていた白式を引き取り、好き勝手いじくり回して一夏へ渡すよう依頼してきた、幼馴染の自称天才開発者が怒り狂いそうな評論だな、とぼんやり思っていた。
なお、赤雷に関しては、曰く後で本命を届けるまでのおやつ、との事らしい。
何度も床を踏みつけて落ち着いたらしい綾は、外れ機体を回されたと宣告され落ち込み気味の一夏をじろりと見やり、
「一夏、この機体、ちょっと僕に預けてくれませんか?」
と、提案した。
「えっ、預けるって・・・どうするんだ?」
「僕が白式を改造します。箒はそのままファースト・シフトを続けてください」
「そ、そんな事出来るのか!?」
「他人に自分のISを簡単に貸すな馬鹿者。だいたい鶴守、改造すると言ってもどうやるつもりなんだ」
既に頭の中で改造計画を練り始めた綾へ、呆れ顔で聞く千冬。
「そうですね・・・例えばですが、許可無く使って良い機材やジャンク等はありますか?」
「ああ、基本的にIS学園の関係者であれば、学園用の機材は好きに使っていい。それと、格納庫の最奥に不用品捨て場がある・・・が、殆どがゴミと汚物だぞ」
指差された向こう端の空間には、成程、学校内の不燃ゴミがまとめて廃棄されていると思わしきエリアが遠くからも見える。
千冬からの情報提供を受けた綾は、ちっちっと指を鳴らし、
「ゴミや汚物とは何を指しています?それは捨てた側の認識であって、取捨された物にゴミも汚物も無いでしょう?」
と、不適な笑顔と共に千冬の言を混ぜ返した。
一瞬、面食らった様な表情を見せた千冬は、すぐに吹き出しそうになるのをギリギリで堪え、
「・・・詭弁で論外だな。だが、言ったからには成果を見せてみろ」
綾の言葉を混ぜ返す事で答えた。
それを改造の許可と受け取った綾は、すぐさま機材からケーブルとモニタとキーボードを持ち出し白式と接続、ソフトウェアのデバッグを開始した。
「おお、すげぇな・・・何か本格的な整備士みたいだ」
「本格的な整備士なんですよ、僕は。それより一夏、今のところ君がいても助けにならないので、とりあえず箒のサポートでもしていて下さい。必要なタイミングでまた呼びます」
懐から取り出したUSBメモリを何本も白式のハブと雪片弐型へ突き刺し、乾き始めた唇を舌でなぞりながら一夏へ指示を飛ばす綾。
「おう、分かった!何か手伝う事があったら言えよ!」
「そのつもりですとも」
「よし、ならば赤雷のファースト・シフトが終わったら私も手伝うとしよう」
「よろしくどうぞ」
カタカタを音を鳴らしつつ作業を行う綾と弟達を見やり、困ったような笑顔を浮かべながら千冬は溜息を吐き、その場を離れた。
あのような、友人達と何かを成し遂げようとするなんて事は自分の学生時代には無かった光景だ。
いつも上手く事を回し、良い成績を得ていても、結局は幼馴染の手の平の上で踊る感覚が拭えなかったあの頃。
もしかすると今もそうであるのかもしれないが、実を言えば綾が白式を改造すると言い出した瞬間、彼女に対し、してやってやる事が出来るかもしれないという小さな期待が心に灯った事は確かであった。
「・・・ふ、私とした事が、柄にも無い」
誰に言うわけでも無く一人呟いた千冬は、自分が持ち合わせなかった青春を送る少年たちが眩しくて、振り返る事が出来なかった。
そして次の日の朝、格納庫へ訪れた千冬は見違えるような進化を遂げた白式と、精根尽き果ててだらしなく床に這い蹲る弟達の姿を見た。
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視点は戻ってバトルロワイアル当日。
IS学園はそもそも男子の運用を想定していなかったため男子用の更衣室が無い。トイレに関しては来賓用があったためそちらを利用する事となっているが、ともあれ男子生徒が体操服に着替える際やISの運用効率を上昇させるための専用ボディスーツを身につける際は、一般棟外れにある空き教室を利用する事となっている。
着替えの入った手提げと共に教室内へと足を踏み入れた綾と一夏のコンビは、既に着替え終えていた先客の姿を見て声をかけた。
「よう、シャルル」
「あっ、こんにちは一夏、綾」
「どうも」
金髪の美少年、シャルル・デュノア。
フランスの代表候補生にして、IS開発企業デュノア社の御曹司。
かつ、この世でISを操れる三人目の男性であり、綾や一夏の隣のクラスである2組に属している。
肩甲骨に届く程の長髪を後ろで結び、身長も低く華奢な体型をしているが、温和な性格に似合わずISの適正は高く現状の成績も良好である。
「1組もクラス代表をバトルロワイヤルで決める事になったの?」
細身な身体の後ろで手を組んで、上目遣いで問いかけてくるシャルル。
「ああ。って事は2組もか。お互い大変だなぁ」
「シャルル君なら特に問題は無いでしょう。きっとクラス代表くらい軽くなれますとも」
「あはは、ありがとう。綾はどう?自信ある?」
上着を脱いでいく綾はシャルルのインタビューじみた質問に薄く笑い、
「クラス代表に興味はありませんが、勝ちたい理由が出来たので勝ちますとも」
と、はっきりと答えた。
「流石だね」
「僕より一夏の方が心配ですよ。多分一夏、速攻でリンチに遭いますから」
「え!?何で!?」
ズボンのベルトに手を当てていた一夏がぎょっとして綾を見やる。
「そりゃあ生き残りをかけた集団戦ですし。目立って弱い相手から潰していくのがセオリーだと思いませんか?」
「俺が潰しやすいっていうのかよ?」
「そんな風に見られてるって事ですよ。普段の授業態度やこの一週間の成績で、君はそういうレッテルを貼られている。男性で珍しいからIS学園に入学出来ただけで、実力は大した事が無いとね」
「んぐっ・・・」
否定しきれるだけの材料が見当たらず、言葉に詰まる一夏。
「ま、それが過ちだったとあの高ビー共に教えてやる良い機会でしょう。それに、昨日、一昨日と箒と特訓してあげたんですから、それなりに結果は残して貰わないと」
「わ、分かってるよ」
改造された白式は既に一夏とのファースト・シフトを終えて、今は量子変換されて待機状態――左腕のブレスレットとなっている。
「あ、一夏、専用機もらったの?見せてもらっても良い?」
それに気付いたシャルルが、どこか小動物的な動きでひょこりと顔を覗かせる。
「はは、後でな。何なら応援席に試合を見に来るか?」
「うーん、ボクも第2スタジアムで試合だからなぁ。後で録画映像を見せてもらうよ。生で見れないのは残念だなぁ」
しぶしぶ引き下がるシャルルは、ふと思い出したかのように綾へ向き直る。
「そういえば、綾も専用機持ちなんだっけ?」
「ええ、そうですよ」
言いつつ、普段は服の下に隠している、首からぶら下げたお守りのような物を掲げる綾。これも一夏のISと同様、量子化した機体の待機状態の姿である。
「僕の宝物です」
心から愛しい物を見やるように視線を向ける綾の言葉に偽りは無い。
それは祖父の最期の作品であり、母が名をつけてくれた大切なISであった。
「そうなんだ、じゃあそれも後で見させてもらうね」
「ええ、君のISもね」
微笑み合ったシャルルは、しかし綾と一夏がほぼパンツ一丁となっているのに気付くと、わたわたと慌てた様に手を振って、
「じ、じゃあボクは先に行くね!」
と言い残し、そそくさと空き教室を出て行った。
「・・・なんかあいつ、いつも着替えるの早いし出て行くのも早いよなぁ」
「そういう年頃なんじゃないですか」
「?同い年だろ・・・?」
不思議そうに首を傾げる一夏に、綾は腹筋を震わせながら雑に返事をした。
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時刻は13:00。
全長2kmにも及ぶ巨大なスタジアムのフィールドに集まりしは1年1組生徒、バトルロワイアル参加希望者総勢30名。
うち、専用機持ちは5名。
各国各所から集まりしIS使いの卵達が睨みを利かせる中、スタジアム管制室からグラウンド内の生徒達の様子を観察しつつ、千冬がスピーカーを通して声を放った。
「全員よく聞け。これよりバトルロワイアル戦を開始する。制限時間無し、ISのバリアが尽きた者、機体損傷や意識消失により戦闘不能となった者、自己申告により戦闘を離脱した者は退場となる。退場となった者は速やかに非常ルートより戦場から退避する事。また、最後まで生き残った者はクラス代表となるが、そこまで至らずとも他ISの撃破数や生存時間など、様々な視点から個人ステータスを評価するものとする。総員、気を引き締めて臨むように」
「各自、ISを起動して下さい」
生徒全員のステータスパラメータを観測しつつ、コントロールパネルを叩く山田先生の号令と共に、生徒達は各々のISを起動し、身に纏っていく。
日本製第二世代型量産IS・打鉄(うちがね)。
グレー地に緑の塗装がされた、鎧武者を思わせる佇まいで、かつて千冬が専用機として使用していた第一世代型IS・暮桜(くれざくら)をモチーフにしたとされている。
標準装備の大刀とアサルトライフル、装備の拡張により様々な戦闘状況に対応が可能で、かつ柔軟なOSは使い易さを重視しており、専用機を持たない生徒は基本的にこの打鉄か、フランス製第二世代型量産ISであるラファール・リヴァイヴを使用する。
「行くぞ、赤雷」
箒の掛け声とともに、リストアンクル状の待機状態から解き放たれ、赤き二刀流の機体がその華奢でありつつも豊満な身体を包み込む。
「目覚めなさい、ブルー・ティアーズ!」
絹糸のような金髪を靡かせながらセシリアはイヤリングの形をした青き遠距離射撃特化型IS、ブルー・ティアーズを弾くと、その流麗なボディが目を覚まし、彼女を戦士の姿へと変えていく。
「白式・・・いや、白狼(びゃくろう)!来い!」
一夏が左腕のブレスレットを突き出すように掲げると、白き流線型のアーマーが彼の胸部、両脚、両腕へと接続され、その背には加速用バックパックと純白の翼を思わせるフレキシブルブースターが出現し、その手には唯一の武器であう大型剣、雪片弐型が握られていた。
その名は白式・超高速戦闘用改修モデル。通称コード白狼。
鶴守 綾の思いつく限りの改修及び、装備の追加、ソフトウェア含む内部構造をフルアップデートさせ、機動力・操作性を格段に上げられ、近接戦闘により特化させた、一夏専用のISである。
そして。
綾は首からぶら下げた御守りを手にし、横手で口元へ引き寄せ歌うように自らの相棒の名を呼び出した。
「さあ、奏でよう。アマデウス――」
彼の呼び出しに応え、量子化された鋼鉄の機体――ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトから拝借した名を持つISがその姿を現す。
赤い下地に紺色を重ねたような鮮やかなディープブルー。
頭部ヘッドギアには狙撃用バイザーが待機状態で内臓され、両肩部のアーマー及び脚部アーマーの踝周りにはそれぞれ姿勢制御用のアポジモーターが内臓されており、大型のシューズ部分は地上戦時のエネルギー消費軽減を目的とした内臓電池式のホバークラフトとなっている。
ISを象徴する大型のウイングポッド型バーニアは肩部に接続されており、内部はそれぞれ4口の噴射口。
更に背部バックパックには二本の大型ロングテール・ブースターが装備され、主武装である二門の大型サブマシンガン型の銃は、腰部へマウントされていた。
「何だ、あのISは・・・?」
千冬がぼそりとつぶやく程度に、綾のIS・アマデウスは異彩を放っていた。
戦闘を行っていなくとも、身に纏っただけで姿勢制御の安定性が従来のISの技術をほとんど超越していることが一目でわかる。
製作者は確かに高名な鶴守 豪である事は知っている。
しかし、彼が製作したどのISにも似て似つかない機体構造と既存の彼の技術を大きく上回る、丁寧かつ大胆なその在り方は、ISに詳しければ詳しい程に高性能を期待させるものとなっていた。
「第二世代とも、第三世代とも違ったアプローチで設計された機体、という事でしょうか?」
「第四世代とでも?まさか、未だそこまでの領域に手を出せる者など・・・」
一人しかいない、という言葉を飲み込み、千冬は山田先生の言葉を否定した。
しかし、最も違和感があったのはアマデウスに使われているISのコアが、篠ノ之 束が製作したどのコアの形式番号とも合致しない、という事にあった。
考えられない事ではあるが、それは鶴守 豪が、自力でISのコアを開発する能力を持っているという事実を示してしまう。
それはあり得ない事であるのだ。
ISのコアは完全たるブラックボックスであり、篠ノ之 束はその制作方法を一切公表しないまま姿をくらませている。
故に、束以外にコアを製作出来る者は、この世に存在しない筈なのである。
「後で鶴守を問いただすとして・・・一旦はこの情報は外部秘匿レベルAに設定を」
「りょ、了解です」
真偽はともかく、もし鶴守 豪がコアを生み出せるなどという情報が公開されれば、また日本内部での争いの種に発展しかねない。
緊張感と共に山田先生は学内で取得中のアマデウスの情報データを一部公開不可に設定。
一旦はこの件を後回しにする方針を固めた教師陣は、気を取り直すかのようにマイクへ声をかける。
「戦闘開始、5秒前!」
それと共に、フィールド内にCGでカウントダウンが表示され、同時にスタジアムを包み込むように対IS兵器用のバリアが展開される。
グラウンド内に円状に並んだ生徒達は、最初にどう動くべきかを考え、緊張感を高めていく。
「4!」
「さて、まずは露払いですわね」
前髪から垂れる縦ロールの金髪を揺らし、セシリアが薄く笑う。
「3!」
「・・・・・・」
箒は何も喋らない。
緊張しているのではなく、集中力を増すための精神統一を図っているのだ。
剣道道場の娘として生まれた彼女は、人生のあらゆる苦難や困難を迎える度に剣を取って練習に打ち込んできた。
ISを通していても、その手に刀が握られている限り彼女の心に隙は生まれない。
「2!」
「やってみせるさ、俺に出来るやり方で・・・!」
そして、かつては箒と同じ道場へ通っていた経験のある一夏もまた、剣を握ることで集中力を増していた。
腰を低く落とし、右手の雪平二型を腰の後ろに、左手は添えるように前へ差し出す。
「1!」
「さてさて・・・皆様のお手並みをご拝見・・・」
両手に銃を持ち、こきりと首を鳴らす綾。
周囲から感じられる威圧感もどこ吹く風、目を細めて不敵な表情を崩さない。
「戦闘、開始!」
CGのカウントが0を示してかき消え、ブザーが鳴ると同時に打鉄を身に纏った女生徒の半数程が、一夏の白狼へと襲い掛かった。
手にしたバズーカが火を吹き、またある者はライフル弾を発射し、ある者は飛び上がってミサイルランチャーから追尾弾を放ち、近接戦闘用のブレードで飛び掛かっていく者もいる。
「ホントに俺のとこに来るかよ!」
苦虫を噛み潰したような表情をしながらも、即座に回避行動に移る一夏。
滑るように横へバーニアをふかして初弾を避けると、振り返りざまに飛来してきたミサイルへと左腰部に三つマウントされている手榴弾のようなものの一つを投げつけた。
ボンッ、と音をあげながら派手に弾け飛んだ手投げ弾はしかし、ミサイルの勢いを止めることは出来ない様子で、一夏は自らを狙う飛来物を、どうにか避けるべく更にバーニアをふかした。
「馬鹿ね、追尾ミサイルの事を何もしらないのかしら!アンタの事をターゲット識別した以上、アンタに接触しない限り止まらないし爆発もしないわよ!」
高をくくるように女生徒はもう一発、一夏へとミサイルを放った・・・が。
初弾のミサイルが目を回したかのように地面へ突き刺さり、二発目も蚊取り線香を吸った蚊のようにくるくると回って落ちるのを見て、驚愕した。
「うそっ、何でっ!?」
慌てる女生徒と同じく、他の生徒も一夏への射撃照準が合わなくなった様子で困惑を始めていた。
「何でよ!こんな時に故障っ!?」
「ちゃんと整備したはずなのに!」
その様子を見ていた千冬は面白いものを見たかのように鼻を鳴らした。
「なるほど、チャフ弾か」
綾が準備した、遠距離戦闘用兵器対策の一つ、手投げチャフクラッカー。
起動させて数秒で破裂する様設計されており、周囲に大量の金属のカスを散布する、威力の無い爆弾である。
射撃用センサーやレーダーは金属に反応して動作するため、遠距離から照準を合わせようとするとチャフ弾によって空気中に散布された金属片を誤検知してしまい、本来の照準を狂わされてしまう。
製作自体もそこまで難しくはなく、ジャンクとなっていたISの装甲板を削って塵状にしたものを、細かく刻んだプラスチックフィルムと混ぜ合わせて、技術棟にて譲り受けた火薬を仕込んだ、設計綾・製作一夏のお手製である。
慌てて自機のステータスチェックを始めた女子達の隙を見逃さず、近接戦闘を仕掛けてきた打鉄をやり過ごした一夏は背のバーニアを最大出力でふかすと自分の投げた手榴弾の爆発した――チャフの濃く舞っている空間をあえて通り、それによって更に舞い散るチャフの範囲を広げながら遠距離からの攻撃を仕掛けてきた集団へと突撃を仕掛けた。
「うおおっ!」
振りかぶられた雪片弐型はその刀身を中心から二分割し、中心より白い粒子の刃を形成させ、ミサイルランチャーコンテナを掲げていた女子の懐へと入り込んだ一夏によって一閃された。
「き、ゃあああああっ!!」
バリア無効化攻撃形態・零落白夜。
貫通された雪片弐型による攻撃はIS本体へ強力な斬撃を、操縦者本人にスタンショックを与える。
悲鳴と共に意識を飛ばされた女生徒は自由落下し、IS標準装備の絶対防御と安全装置であるエアバッグにより命を落とすことは無かったが、完全に気を失ってしまっていた。
まずは脱落、一人目である。
さらに、白狼本体が被ったチャフによりやはり照準を狂わされていた女子二人の打鉄へと急速落下し、唐竹割の要領で一人、横薙ぎでまた一人と打ち倒していく一夏。
撃破と同時に零落白夜を解除させた雪片弐型を軽く振って、今度は近接戦装備の打鉄へとその切っ先を向け、飛翔する――。
「いい感じですね、一夏くん!」
「まだ機体に振り回されている様なものだがな。確かに、白式だった頃よりずっと性能面で向上しているように見える」
感嘆する山田先生に、辛口ながらも頷く千冬。
配線の最適化と装甲の流線形化によりブーストレスポンスが向上し、空気抵抗が低減された事により反応速度と安定感が増し、また、零落白夜未使用時はそれをオート解除させる事でバリアエネルギーの消費を抑え、燃費を上げている。
更に肩の可動範囲を上へ広げることで一夏本来の近接戦闘を阻害しない作りに変えられ、背部のバーニア追加により突進力を上げてある。
それもこれも綾が零落白夜――ワンオフ・アビリティに割かれていた拡張領域の見直しを行い、不必要・無駄となっている箇所を軒並みカットした事でバーニア一つ分の拡張領域を確保した事による。
もちろんそのあたりにはセキュリティがかけられて解読・変更・削除が不能となっていたが、綾はそのセキュリティ自体を解読し解除させてしまったため、既にあって無いようなものとなっていた。
その際に別途用意されている専用機体との連携機能なるものを発見もしたが、現状関係ないのでバックアップだけ取って削除してしまっている。
また、左腕に固定武装として小楕円盾(スモールシールド)を追加。必要最小限の防御機能であるが、あるのと無いのではまるで違う上に、小型ゆえに格闘戦時の邪魔にならないという利点も大きい。
OSに関しても一から組み直しており、射撃用プログラムを排除、格闘戦時の挙動をほぼマニュアル化、飛行・ブースト・停止の行い方を徹底的に簡略化させて一夏の操作感覚を最適化させている。
「鶴守の技術と発想に脱帽するしかないな。一夏の特徴を良く理解している」
器用ではない一夏は、自分と同じように一つの事を極めようとした方が肌に合っている。そう考えている千冬には、最終的に雪片弐型による近接戦闘のみを武装とさせた綾の判断に、教師としてではなく姉として大きく評価していた。
一夏自身は中学時代は家計の支えとなるべく内緒でアルバイトを行っていた関係で、剣を握るなど久しぶりではあったのだが、箒に叱られつつも手解きを行ってもらう事で辛うじて昔の勘だけは取り戻すことが出来たと考えている。
勿論、この先剣で戦うにはまだ修練が必要ではあるのだが、それだけISでの戦闘能力も伸びる要素がある事を示している。
また、補助兵装としてのチャフ弾という発想も面白い。
あえて一夏に自作させる事でISへの興味や愛着を持たせる良い手法であり、近接戦へ持ち込む小細工としても悪くない。
同じ剣での戦いであれば後手に回る事のない一夏が4体目の打鉄を撃破したあたりで、千冬は綾へとそのモニタリングを変更させた。
丁度その目に飛び込んできたのは、女生徒の打鉄を蹴り飛ばす、射撃戦重視と思われた綾のアマデウスの姿。
「!?」
強烈な前蹴りから振り向きざまに取り囲んでいた打鉄へ左手のサブマシンガン型の銃――トルキッシュ・マーチの銃口を向け、放たれたのは散弾。
距離の近い状態からの直撃を受けた打鉄は、その衝撃であっという間にバリア残量と操者の意識を失い脱落となる。
更に右手のトルキッシュ・マーチは速射弾で周囲を牽制し続け、近づいてきた者は蹴りや立ち関節からのショットガンまたはグレネードのコンボで脱落、遠距離から攻撃しようものならロングバレルモードに変形したトルキッシュ・マーチの弾丸に撃たれバリアを削られていく。
「まるでガン=カタだな・・・」
綾が製作したトルキッシュ・マーチという銃は速射弾(マシンガン)と散弾(ショットガン)、擲弾(グレネード)を自在にスイッチが可能で、更にバレルを変形させる事で、グレネード以外の射程距離を調節出来る。
さらにその威力は既存のISが使用するマシンガンやショットガンを軽く凌駕しており、一番威力の低い速射弾でも数発で打鉄の腕が吹き飛ぶ程である。
そこから綾は更に、アマデウスでの徒手格闘まで行うため容易に近づく事すら出来ない。
ISでの徒手格闘を行う者がいないわけではないが、基本的に武器兵装での戦いが主流であるIS戦において、圧倒的にデータが少ない。
それというのも、ISを身に纏う人間はどうあがいても生身の人間である事から、徒手格闘をISで行うには手足が重すぎるのである。
殴打にしろ、蹴撃にしろ、武器による衝撃の吸収が行われないためその反動はダイレクトに肉体へと返ってくる。
それを衝撃の少ない護身術じみた振る舞いで行っているにしろ、綾の関節及び筋肉にかかる負担は想像を絶するものであるはず、だが。
「り、綾くんのボディメディカルに全く異常なし・・・!肉体の発熱や乳酸値の上昇は通常運動レベルです・・・!」
「・・・・・・!」
確かに、高校生にしては引き締まった肉体をしているとは思っていた。
また、一夏から聞いたところによれば素手で容易く、動く木刀をへし折ったとも聞く。
薬物によるドーピングを行っているわけでもないのにこの肉体性能は異常とも言える。しかし。
「鍛錬で身につけられないレベルではない、とは言い切れないか」
そもそもが、千冬自身が同様の事をやってのける事が出来る人材である。
綾がいつから適性を得たのかは不明だが、幼い頃からISと関わり、その機能・構造を良く知り、身体を鍛え上げた上で使用ソフトウェアと機体のバランスが最高値でフィッティングすれば、後は絶対防御の恩恵もあり出来なくもない。
そんな奇跡のような環境を、確かに、鶴守 綾は持ち合わせていたのだ。
「それでも気の遠くなるような修練が必要の筈だが。奴はなぜそこまで・・・」
そう呟いた千冬の言葉を聞いた山田先生は、一瞬の思考の後にぽとりと双眸から涙を落した。
「・・・真耶?」
「ご、ごめんなさい。ちょっと、ちょっとだけ嬉しくて、誇らしくて・・・」
眼鏡をはずしてごしごして目元を拭った山田先生は、すぐ真面目な表情でモニタリングへと戻る。
不思議そうな顔をした千冬であったがそれも束の間、既に脱落した生徒が三分の一を切ったアラート音に感心の声をあげた。
「早いな。撃破数のランキングを貰えるか」
「はい」
要求を受けすぐさま管制室内のビジョンにランキング一覧を表示させる山田先生。
「鶴守 綾、8機。セシリア・オルコット、織斑 一夏が5機。篠ノ之 箒、布仏 本音が2機か。やはり専用機持ちが上位に食い込むな」
「1組は専用機持ちが多いですからね。それにしても一夏くんが大健闘じゃないですか!」
「まず相手する数が多かった、というのも理由に上がるのだろうが、確かにここは評価せざるを得ないか」
撃破数を評価に入れる、とはいえ、それは個々の得意とする戦闘方法にもよってくるため、最終的な評価はその戦い方の効率や正当性が大きく関わってくる。
そこへきて、機体性能が良いというのは勿論の事、白狼を使用した一夏が、一夏らしい戦い方で戦績をあげられているのは間違いのない事であった。
「零落白夜を使用しておきながらもシールドエネルギーが十分残っている。これは番狂わせがあるかもしれんな」
千冬が知らず知らず楽し気に観戦している事に気づいた山田先生は、尊敬する彼女のらしくもない姿にくすりと微笑んだ。
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「さて、あらかた片付きましたかね」
くるりとトルキッシュ・マーチをアマデウスの手の平で回転させた綾は、センサーが背後から接近してきた機体を確認したことにより即座に右手の銃を向けて構えた。
「つるみょー、覚悟ーっ!!」
馴れ馴れしく綾を愛称で呼びつつ、白地に赤を基調としたカラーリングのISが、背部バックパックから伸ばした有線式遠隔操作型兵装をアマデウスへと射出した。
その先端には狐の尾を模したブレードとビーム砲塔を有しており、9本あるそれぞれが、まるで意志を持っているかのようにアマデウスを切り裂かんと伸び、また、あるいは熱線を放つ。
近づいてきた一基をショットガンで撃ち落としつつバックステップでビームの帯を回避し、少し屈んでブレードを回避し、またブーストジャンプで足元へ絡みつこうとした一基をかわす。
「ああーん!よけられたー!」
「いやいや、なかなか良い攻撃でしたよ、布仏 本音(のほとけ ほんね)さん」
ホバリングしつつ襲撃者を誉めやる綾。
その相手の名は布仏 本音。
1年1組の5人目の専用機持ちであり、その身に纏う機体の名は第三世代型IS・九尾ノ魂(ナイン・テイル)。
巫女服と九尾の狐をモチーフとしたであろうデザインであり、所々遊び心が感じられる機体ではあるが、それゆえにトリッキーで侮れない。
IS学園主体で開発された機体であるため情報も少なく、綾も初めて目にするISを前に、唇を上へと吊り上げる。
「面白いISを使うのですね。これは少々歯ごたえがありそうだ」
「えへへ~。まだまだ、もっと驚かせちゃうよ~」
間延びした口調でへらへらと笑いつつ、思わせぶりな動作で腰部にマウントされていたみくじ筒のような装備を「じゃ~ん!」などと言いながら取り出す本音。
「ふっふっふ~、これをどう使うか気になるかな~?」
「焦らさないで下さい。僕もそう気の長い方では――」
刹那。
九尾ノ魂の背中にあったはずの有線式ビットが、三つ足りない事に気づく綾。
うち一つは自分が撃ち落とした。では、残り二つは―――
悪寒と共に足元からの殺気に仰け反る綾。
それまで自身の顔があった箇所をビームが駆け抜けるのを感じ取る間もなく、右のトルキッシュ・マーチがもう一本のビームにより貫かれ、銃身を破壊された事に気づく。
「なにっ・・・!」
「えっへへー!どうだーっ!」
流石に動揺をみせた綾を畳みかけるように、本音は残りのビットをアマデウスへと伸ばしつつ、両手に構えたみくじ筒からそれぞれ吉、中吉と書かれた爆弾を射出する。
「くっ――」
すかさず左のマシンガンで爆弾を打ち抜きながらもビットから逃げるようにバックブースト、更に背部スラスターによる急加速で上空へと飛び上がる綾。
「やってくれる・・・!」
使用不能と化した右のトルキッシュ・マーチを腰へマウントし、左をロングバレルにして本音へ照準を合わせる綾だったが、
「まだまだ~!あ~めよふれふれー!」
くりん、くりんと本音が天へ掲げた指を転がすように回した瞬間、綾の周りのコントラストが一気に下がった。
何事かと上を向いた綾はしかし、唐突に上空から自身を叩きつけた大量の水流に、グラウンドへと抵抗する間もなく叩きつけられる。
「ぐおっ・・・!」
九尾ノ魂のワンオフ・アビリティ、水流操作。
雨ではなく、ある程度の水の塊を生成し、それを自在に操る能力。
みくじ筒を取り出した時点で既に、本音トラップの術中に嵌っていた事を思い知った綾は、濡れそぼった髪を振りながらも驚きに笑顔を浮かべた。
「・・・素晴らしい」
ゆっくりとアマデウスを立ち上がらせ、呑気にのほほんとしているようで隙の無い本音のやり方と九尾ノ魂の実力に、心の底から舌を巻いていた。
「このクラスの中では、僕を除けばセシリア・オルコットが最強であると思っていたのですがね」
器用にISの指で眼鏡のブリッジを押し上げた綾は、一切の慢心を打ち消して目の前の少女へと向き直った。
「布仏 本音さん。貴女程の実力者がいたなんて、僕は嬉しいですよ」
「ふふふ~、ありがと~」
のほほんと受け流しながらも次の手を模索する本音。だが。
「今度はこちらから行きますよ」
言い切るが早いか、綾はおもむろに本音へとグレネード弾を射出し、続けざまに自身が発射した弾を速射弾で撃ち落とす。
2発、3発と同じ動作を繰り返し、一面が黒煙につつまれて視界が遮られていく。
「っ!まずっ――」
爆発音が響き渡る中、爆風と煙により瞬間的にアマデウスの姿を見失ってしまった本音は、またも静かに展開させていたビットをバックパックへと戻し、その戦闘領域から撤退すべく上空へと退避した。
「想定外のアクシデントには無理せず退き、次の機会を待つ、ですか。それもまた良い判断だ。よほど頭が回るのでしょうね」
「えへへ~、またほめられちゃった、嬉しいな~」
黒煙の中から声を響かせる綾。
未だその位置にいると踏んだ本音は、ゆるい言葉とは裏腹に綾の射程から静かに離れていく。
「――但し、貴女のたった一つの計算外は」
瞬間。
黒煙の中から暴力的な、総てを焼き尽くさんとするかの如き一本の、業火を発する極太の粒子熱線が伸び、背を向けていた本音の無防備なバックパックを貫いた。
そのままその熱線はスタジアムのバリアを軽々と貫き、周囲の空気を燃やしながら灼熱の柱を大気圏まで届かせていく。
「に、にゃあああーーーーーっっ!!!」
悲鳴を上げ、暴発したバックパックによって吹き飛ばされる本音。
その装備の大半をバックパックによるものとする九尾ノ魂は、核となるそれを失ったことにより安全装置の一部を失い、絶対防御のみ有した状態で落下していく本音の命の保証が出来なくなっていた・・・が。
イグニッションブーストと呼ばれるISの急加速により、黒煙から脱兎の如く飛び出したアマデウスは一瞬にして落ちゆく本音へと辿り着き、急制動で停止をかけつつ彼女の身体を優しく抱き留めた。
「ほわぁ・・・!」
「・・・貴女のたった一つの計算外は、僕の最大射程距離を見誤った事ですね」
一体何が起きたのか理解できず、一方的に撃墜された形となった本音であったが、狙撃用バイザーを待機モードに戻した綾の笑顔を見て、まだアマデウスには隠された兵器がある事を悟った。
自身の脱落を告げるアナウンスにため息を吐きつつ、いわゆるお姫様抱っこの形に少し逸る胸の鼓動に頬を染めた本音は、ゆっくりと着地したアマデウスに地へ降り立たせてくれた事に礼を言った。
「えへ、えへへへ。ありがとね、つるみょー。負けちゃったけど、楽しかったよ~」
「僕もですよ。君とはまた後で話がしたいですね。もちろん、またお相手して頂きたいとも思います」
「うんっ、楽しみにしてるね~」
「あと、つるみょーはやめてください。切実に」
「えー、けっこう考えたんだけどなー、あだ名~」
楽し気に、ぱたぱたと非常口へと駆ける本音の背中を見送る綾であったが、またも聞こえてきた間延びした声に、また軽く笑う事になった。
「がんばってね~!応援してるよ~!りょーちん!」
「そう来ましたか・・・ま、ありがとうございます」
手を振って、残った好敵手達の元へとスラスターをふかして向かう綾。
てくてくと歩いて非常口を抜け、観客席へと向かう本音は思い返していた。
純粋にISを好きだという事がわかる、嬉しそうな顔。
自分が設計した機体を、何の偏見もなく褒めてくれた事。
マッチポンプかもしれないけれど、危ないところを助けてくれて、また後で話そう、と笑顔をくれた事。
「・・・やだなやだな。わたし、そんなにちょろいつもりなかったんだけどな」
待機状態である髪飾りとなった九尾ノ魂をひと撫でして、紅潮する顔と落ち着かない心臓の音に戸惑いながら、布仏 本音は嬉しそうにつぶやいた。
「りょーう、ちん。・・・えへへ」
少し照れつつも、後ろ手を回して機嫌よく小走りする本音であった。
――残りIS数、4機。
ソロモンの白狼と深紅の稲妻。