インフィニット・ストラトス リビルドワールド   作:しびれあくせる

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ボゥイ・ミーツ・ガール

大量に現れたゴーレムがどんな組織のものなのか、何を目的としていたのかは定かではないが、鶴守 豪研究所から駆け付けた綾や一夏たち、そして架神 忍の駆るジョーカーによって残り60体機のゴーレムは駆逐され、現在は自衛隊による残骸の回収作業が行われていた。

ゴーレムは確かに汎用性高く、パワーと装甲に優れているがISコアによるブーストがかけられているわけではない。

それゆえに、真正面からのISとの戦いでは数が多くともそこまで脅威ではないというのが救いであった。

戦闘力を比較するのなら、ゴーレム5体は通常量産型の打鉄1機分といったところだ。

 

「大丈夫か、箒?」

「ああ、心配かけたな一夏・・・私なら問題ない」

目を覚ました箒は一夏に寄りかかりながらも自分の足で立ち、本音や簪を守り切れなかった己の未熟を恥じていた。

 

「ムチ打ちが酷いが幸い骨に破損は無い。精密検査の結果にもよるが、後遺症が残る事はねえだろう」

救急車に運ばれていく本音を見送った一同は、周囲の目があるため煙草に火をつけられない忍が不快そうに片足をぱたつかせながらごちた意見に胸を撫でおろす。

簪にしがみついて大人しくしているMと忍を順繰りに見た綾は、何があったのか説明を聞き終えると忍へと問うた。

 

「まるで医者のような診断ですね。あなたは一体何者なのです?」

「医者だ。医師国家資格も持っている。束に便利に使われてからあまり長く日本にはいなかったがな」

 

白衣のポケットに手を入れながら答える忍に、驚きを隠せない一同。

医者であるという事もそうであるが、束と関わりがあるというのが大きな驚きだ。

「束さんに使われていたって事は・・・あんたのISは束さんの・・・!?」

「八割方な。残りはおれが仕上げた」

「ヒーローで、医者で、ISにも詳しくて、ボクサーなんて、設定盛りすぎ・・・推せる・・・」

両手を祈る様に組んで忍へ憧憬の眼差しを向ける夢乙女、簪である。

頬など桜色に染めて、恋する少女を地でいっているかのようだ。

 

そういうリアクションに慣れていない忍は簪に背を向けたまま眉を寄せて歯を剥き、

「・・・ボクサーってのはおれの戦闘方法の事か?あれは見様見真似だ、兄貴がボクシングをやっていたからな。要するに真似っこだ、誇れるようなモンじゃねえ」

「しかも見ただけで完コピ・・・!天才・・・しゅごい、しゅき・・・!」

「落ち着いてくださいな簪さん・・・」

鼻血を堪えながら倒れ込もうとする簪を支えるセシリア。

 

「おい・・・このガキは普段からこうなのか?」

「いえ、今日の彼女は異常です」

「きっと恋の病ですわね」

「・・・面倒臭え」

常識枠だと思っていた簪がこんなにも突き抜けたキャラクター性を持っているなど、セシリアや綾だって知り得なかった事だ。

 

片手で頭を抑える忍だが、特にそんな様子を気にせずにラウラが口を挟んだ。

「篠ノ之 束の配下の者というなら、おまえは我々の敵か?」

「知るかよ。おれはあの女から篠ノ之 箒の護衛を頼まれたってだけだ」

「姉さんが、私の護衛・・・?!どういうことだ!?」

思わず声を荒げる箒だが、ISで蹴飛ばされた痛みにまたうずくまる。

本来なら内臓が破裂していてもおかしくないダメージなのだ。

「だからてめえも救急車に乗っておけと言ったんだ。医者の言う事を聞けねえ馬鹿は早死にするぜ」

「これしき、大事無い・・・!それよりも・・・!」

「医者の助言に耳を貸せねえ奴に語る言葉はねえよ。その怪我が治ってから出直せ」

「くっ・・・」

やはりぶっきらぼうながらも、その言動から忍が一番に大事にしているのは身体の健康である様子だ。

愛煙家なのは医者の不摂生といったところだろう。

ともあれ、最終的に箒が救急車での搬送を拒むのを許可したのは、忍がギリギリ了承できる程度の負傷である事を確認したためであるが。

 

「ところで、その子が使用していたというIS、それは・・・」

戦闘データを確認したセシリアが放っておけないのは、Mが身に纏っていたブルー・ティアーズそっくりのISである。

頷いた忍はポケットから待機状態のイヤリングを取り出すと、

「データは好きに取得しろ。ただし、これ自体は束が欲しがってるみてえだから持ち帰るがな」

「・・・いいでしょう、それを勝ち取ったのはあなただ。寛大な心遣いに感謝しますとも」

受け取った綾がアマデウスのデータサーバへ機体の全容をダウンロードしながらわざと臭い礼を述べると、忍は鼻で笑う。

「はン・・・いけ好かねえガキだ」

「そうでしょうとも、僕もあなたとは仲良くできる気がしませんよ」

「同感だぜ」

データ取得を完了した綾が忍へイヤリングを投げ返して不遜に笑い合う。

前世の因縁でもあるのだろうか、ともあれまた出所不明のISを白衣へとしまう忍。

「心配しなくともこれはISイギリスが製作したものじゃねえだろうな。ただし、そのデータをどこかからハッキングして組み上げた可能性はあるが」

「なんてこと・・・!」

忍の推論を聞き、憤りに眉を寄せるセシリア。

自国への侮辱ともとれるその可能性に、彼女の心中にて怒りが灯る。

綾もまた、こんな簡単にVTシステムのデータやブルー・ティアーズのデータが流出している事に違和感を感じ取っていた。

 

自分達の目に見えぬ敵が巨大であるというより、むしろ足元の地盤から吸い上げられているような感覚。

もしかしたら盗まれたのではなく、誰もが疑いもせずに自分から提供しているのではないだろうか。

 

何かを見落としている可能性に考え込む綾を見やった忍はまたも鼻を鳴らすと、簪にすがりついていたMの手を取った。

「あっ・・・っ」

「おれにビビるのは仕方ねえだろうが、もう痛い思いはさせねえよ。てめえが誰かを傷つけねえ限りはな」

「・・・・・・はい」

しょぼんとして頷いたMが、簪を振り返りながら忍に手を引かれて去って行く。

 

慌てて声を投げかけるのは一夏だ。

「ま、まってくれ!その子は何者なんだ?どうしてその子は千冬姉と似ている!?まさか、その子は織斑計画の・・・!」

Mを指して問いかける一夏。

忍が手を引く少女の面影は、さながら千冬をそのまま幼くしたような外見であったからだ。

 

「少しは知っているようだな。こいつだけじゃねえ、他にも似たようなガキが裏の組織で道具扱いされてんのが世界の真実だ。忘れんな織斑 一夏、織斑計画で作られた生き残り共はてめえの命を狙っている。てめえを殺せば織斑 千冬の家族に成り代われると言い聞かせられて、違法な活動に手を貸して身を滅ぼしている事をな」

 

「なんだって・・・!?」

表情を強張らせる一夏、そんな彼を心配そうに見つめる箒。

豪から話を聞いたわけではない箒でも、愛する一夏にとって深刻な事が発生している事くらいは察する事が出来た。

「今後もし、このガキの姉妹がてめえの前に現れた時、てめえがどんな対応をするべきか。よく考えておけよ」

「・・・・・・わかった、ありがとう」

「ふん・・・」

もう自分は綾に憧れていただけの腰巾着ではない。

白虎と共に覚悟を決めたあの時から、舞台の主要人物となっているのだ。

力強く頷いた一夏に何かを感じ取ったのか忍はそれ以上は言わず、Mを伴って去って行く。

 

「あ、あの、しのぶさんっ!また、会えますよね・・・!?」

「・・・ま、そのうちな」

 

簪の問いにひらひらと手を振って、忍とMは姿を消していった。

その返事に切ない気持ちを噛み締める簪は、いつか彼に認められたいという思いで胸が一杯になっていた。

 

「待ってます、しのぶさん。次に会える日を・・・マドカちゃんも、元気で」

「?簪さん、マドカちゃんとはどなたですの?」

「いま、しのぶさんが連れて行った子。話す時間があったから、名前を聞いておいたの」

 

織斑 マドカ。

それがあの少女が自分自身を指した名前であった。

豪が示唆し、忍が一夏へ忠告した通り、織斑計画で誕生した千冬や一夏のスペアとされる存在は少なからず現存しており、それぞれが非合法組織の元で戦力として扱われている。

今後、敵と戦い続ける中で、マドカ以外のきょうだい達と邂逅する日も遠くないだろう。

 

決意を新たにする一夏と簪。

怒りに瞳を燃やすセシリア。

更なる高みを目指すべく心を決める箒。

改めて敵へと気を引き締める綾とラウラ。

 

「・・・うぅっ・・・!私が一番に簪ちゃんの元に駆け付けるつもりだったのにぃ・・・!」

各々がより一層の誓いを胸に秘める中、またも出ていくタイミングを逃した楯無が木陰の後ろから彼らをのぞいているのだった。

 

========================

 

フランス・パリではデュノア社ビルや近隣の被害が出た建物への修復作業が行われていた。

アラクネ・ケントリアによって生じた被害はデュノア社が全て補償する事を約束し、世間からの注目と支持を受ける事となり、またテロリストの破壊行為と発表されたオータムの強襲はフランス内での対テロ意識を強める事となり、拘束され警察病院へ収容された彼女の取り調べを進めていくと共に、フランス陸軍による自国強化を一層強化する流れとなったのである。

 

とりあえず一旦は鈴の身柄をデュノア家で預かる事にしたアルベールは、事後申請としてISチャイナへ事情を報告、そこでの一幕はフランスと中国間での強力な結びつきを得る事となる。

 

まずは、デュノア社社長アルベールと、ISチャイナ理事長・王 秀英(ワン シゥイン)との電話での会話をご覧頂こう。

 

「今回は中国代表候補、凰 鈴音さんのご友情によりフランスの危機を救って頂いた事、心から感謝致します」

「我々の誇りである凰が貴国の力となったのなら何よりだ。我々はISを通して力を合わせるべき同志、畏まる事など無い」

「痛み入ります、王理事長。しかし、問題となるのは鈴音さんが許可なく国境を越えて来てしまった事です」

「それなら気にする必要は無い。今回だけは特例として片をつける手筈がついている。彼女ほどの精鋭を、他国を思いやる気持ちを踏み躙る様な狡い考えを持つ者は中国にはいない。皆、彼女の帰還を心待ちにしているのだ」

「共感致します。ところで話は変わりますが・・・中国IS企業・浪漫飛行(ランマンフェイシン)が新たなISの開発に取り組んでいるとか」

「・・・何が言いたいのかな、アルベール社長?」

「その話、我々デュノア社も協力出来ないかと考えております。世界シェアとしてはフランス・デュノアは第三位ですが、ツインコアドライブを完成させて以降は格段にシェアを伸ばしています。既に二位イギリスを超え、今期決算までには一位日本に届く見込みです」

「ふむ、それなら我が国でも把握しているとも。我が中国はアメリカと並んで四位だ。資源量では優っているものの、いかんせん技術者の精度が低くてね。日本からの技術者を招いて後れを取り戻そうと躍起になっているところだ」

「ならば今こそ、我がデュノア社と技術提携致しませんか。ここだけの話ですが、我々のバックにはあの鶴守 豪がついているのです。彼から得たナレッジこそが今のデュノア社の強み」

「なに、あの凄腕と有名なあの男か!?うむむ、それが事実だとすれば・・・」

「浪漫飛行の発想力は我々デュノア社も一目置いているところです。いかがでしょうか、お互いの技術を学び合い、未来を見据えて進化を遂げるには良い機会かと」

「くっく、商売人だな君は。そんな事を言いながら中国の保有する豊かな鉱物資源を分けてもらう事が目的だろう?」

「はっはっは、無論、そういった欲求はありますがね。しかし悪い話ではない事は間違いないでしょう。いかがです?」

「いいだろう、詳しい話をする機会を設けようじゃないか。ISフランスへ話を通しておくといい、詳細はISチャイナと打ち合わせてから追って連絡しよう」

「承知致しました。互いに良い結果を出せるよう努力しましょうとも」

 

こんな具合である。

優しい世界でよかったよかった。

 

また、鈴がお咎めなしの処遇となったと分かった途端にアルベールは記者会見を開き、フランスと中国の厚い友情によりテロリスト撃退と発表。

握手をするシャルロットと鈴の写真が世界中へと報道され、デュノア社及びISフランスの支持率は鰻登りとなったのである。

 

「いやもう無茶苦茶。アンタの親父さん無茶苦茶だわホント」

「ご、ごめんね鈴。ボクもこんなプロバガンダに使われるなんて良くないと思ったんだけど・・・」

「まぁ、別に嘘ついてるわけじゃないからいいんだけど。あたしとシャルの間に友情があるってのもホントだし」

「うん・・・!助けに来てくれてありがとね、鈴」

デュノア家のソファで寝転がった鈴へ、紅茶を注ぎながら礼を言うシャルロット。

 

アルベールにISチャイナへの言い訳を任せた結果については怒られずに済んで万々歳であるものの、見返りとして色々連れ回されて宣伝に使われるとは考えもしなかった鈴である。

おかげさまで時の人となった鈴はしかし、目立つのが嫌いではない・・・むしろ好きなため、新聞やテレビ、ネットニュースに自分の写真が写っているのをたまに眺めてはニヤニヤしているのだ。

シャルロットのお礼を上機嫌に受け取りながらアイオリソース味のポテトチップスをつまんでいる鈴の目の前で、所在なさげに座っているのはボゥイである。

 

彼が前世と呼んでいる時代―――親に見放され、安物の車椅子と共に山奥で暮らしていた頃。

立つ事も見る事も聞く事もままならなかった彼は幾度となくいじめに逢っていたのだが、そういった悪意からその気の強さを以て庇ってくれたのが他ならぬ鈴であった。

生きる価値などないと塞ぎ込んでいた幼いボゥイを励まし、耳の悪い彼に聞き取れる様大きな声で話してくれ、歩けない彼の車椅子を押して山の中を散策してくれた彼女は、当時のボゥイ―――周 宇泽にとって、あまりにも眩しいヒーローのような存在であったのだ。

 

その後、親の都合で日本へと引っ越した鈴とは会う事もなくなったが、彼女がくれた善性と正しき心は今もボゥイの心に根付いている。

もう一度鈴と逢いたい、そんな想いがオータムの凌辱から生き延びる力となったのかもしれない。

 

そして鈴は、仮面越しに再会したボゥイをあの頃と同じように阿宇と呼んだ。

エクシードとしての感応力が非常に強い彼女ならではといえるが、その事実がボゥイには複雑ながらも喜ばしい事であったのだ。

自分を覚えていてくれた、自分に気付いてくれた、それがとても嬉しい。

話したい事、感謝の言葉、伝えたい事はたくさんある。

憧れだった阿鈴へと、心から。

 

「あ、あのよ、阿り―――」

「そういえばアンタ、ボゥイって言ったっけ?あたし何でアンタの事阿宇って呼んだのかなぁ」

「そりゃお前、オレが昔に」

「昔?むかしねぇ~・・・なんかいまいち覚えてないけど、昔遊んでた友達の中にアンタと似てるやつがいたのかもね。たぶんそうだわ」

「・・・・・・・・・」

 

固まったままシャルロットの隣から崩れ落ちて床へと倒れ込むボゥイ。

「ぼ、ボゥイ!?」

「なに、どしたのいきなり?」

心配そうに声をかけるシャルロットと鈴には目も合わせず、硬直したボゥイは白目をむきながら心の中で叫んだ。

 

(覚えてないんかーーーーーーい!!!)

 

運命とは時として残酷で理不尽なのであった。

 

========================

 

「ご報告を」

以前と同様、黒く、暗い部屋にてランプの灯り一つ、ワインを嗜む紳士へと話しかける執事風の男。

顎髭をひと撫でした紳士は乱れ一つないオールバックの黒髪を傾けると、話したまえとばかりにワインを少し掲げた。

「シャルロット・デュノアの拉致には失敗。その最中に亡国機業のオータムへ試作型暴走ウイルス【アムリタ・ソーマ】を使用させましたが、ツインドライブ搭載機のIS二機と中国の新型ISによって撃破されました。これは私のミスです」

「と言うと?」

「オータムがあれを使用した際、彼女は瀕死でした。我々の想定通りの出力ならば少なくとも一機は撃破か捕獲が出来たところを、肝心のオータムに生命力が足りなかった。あれでは不完全な力しか発揮できなかったのです」

「成程ね、まぁ自分を責めすぎても仕方あるまい。次回からは健康な被験者を選びたまえ」

「恐れ入ります」

アムリタとはインド神話において不死を与える飲料とされている。

破滅へ導くコンピュータウイルスに名付ける名としては不適切である筈だが、その真意はどこにあるのだろうか。

 

「また、篠ノ之 箒を狙って100のゴーレムと亡国機業所属のMを派遣させましたが、こちらも失敗。ゴーレムは全て撃破され、肝心の篠ノ之 束の誘き出しにも成果が見出せませんでした」

「君らしくもない不手際だ。それとも、束くんと鶴守 豪がよほどやり手なのかな?」

「は。しかし、この二件で新たなIS操者を確認致しましたので、こちらを」

感情を露にしない執事風の男は、二枚の印刷紙を紳士へと差し出した。

そこに映るのは、ボゥイ・シューマッハと架神 忍だ。

「共に、男性でありながら全身装甲のISを顕現させました。特に、ボゥイと名乗る方はフランスデュノア社と契約してIS学園へと通う事が発表されております」

「ふふふ、成果が出せなかったなどと謙遜をするものだ。大した成果ではないか、アドルフ君」

「はっ」

アドルフと呼ばれた執事風の男は、紳士からの言葉を待つ。

ワインを一口含んで香りを楽しんだ男は、すっきりとした喉越しを味わうと指を一本立てる。

「つまりこの二人が豪と束くんのアンサーというわけだよ。我々の動きなど察知しているぞ、こんなに対抗手段も用意しているぞ、そう言いたいという事だろうねぇ・・・しかし!確実に彼らの持つリソースを削っているという証明でもある!これは成果だとも!」

「はい」

歌劇のように演技めいた口調で立ち上がりポーズを決めた紳士は、言い終わると熱が冷めたかのようにまた座り直し、寂しそうにごちる。

「それだけ我々の事を警戒しているという事でもある。悲しい事だ、我々と思想を共に出来ないなど・・・束くんはともかく、豪なら同調してもらえると思ったんだが」

言いつつも、本心としては期待など微塵もしていない紳士である。

一度見切りをつけた男に再び手を差し伸べる気など無いのだから。

 

「とりあえずツインドライブ搭載機を狙うのは中止しよう。デュノア社がISチャイナへ技術提携を開始したという情報もある、今更こちらで手を出しても手遅れだろうね」

それはデュノア社から中国へツインドライブの技術が渡った可能性を示唆しており、そうなってしまっては彼らが危惧していた強力な技術の拡散が止められなかったという事となる。

男性IS操者が現れたという点には微塵も興味を示さず、紳士はもう一枚の架神 忍へと目を通す。

すると驚いたかのように瞳を見開き、大袈裟にのけぞってみせる紳士。

「おおおっ!なんだい、彼、生きていたのかい!」

「そのようです。Mを無力化した彼は彼女を伴い、我々の追尾を振り切って行方をくらましました」

「ははぁ、今更罪悪感にでも駆られているのかねぇ。彼の肉体は我々の色に染まっているというのに」

眉をひそめて頬杖をついた紳士は、その紙をアドルフへと投げ返し、

「ともあれこっちは架神博士の管轄だな。持っていってあげるといい、喜びはしないだろうがね」

「承知致しました」

宙を舞う用紙を危なげなく受け取ったアドルフは、今後の方針について伺うべく頭を下げたまま待機する。

 

顎髭を撫でた紳士はやがて、ワインを飲み干すと横目でアドルフへと視線を向け、

「亡国機業の実働部隊(モノクローム・アバター)、あれもう使い切っちゃっていいんじゃない?炎の一族が潰れてもまだ水と風と土が残ってるでしょ?」

「はい。では・・・」

「うん、ここらで大攻勢に出るとしようじゃないか」

デスクの上のチェス駒―――ナイトを手で玩び、紳士は微笑みながら言った。

 

「IS学園と炎のミューゼル。諸共に滅んでもらおうか」

 

第六話・終

 

 




こんかいのおはなし。

・あのおじさんマドカちゃん連れてっちゃった。
・ボゥイくん不憫。
・なんか怖い人たちが怖い話してて怖い。

次回、IS学園壊滅!!さらばゲッター!
仮面の下の涙を拭え!

※予告と本編は限りなく誤差があります。
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