インフィニット・ストラトス リビルドワールド   作:しびれあくせる

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Amazing Grace(中)

またあの空間だ。

いや、またというのもおかしいか、俺はこの場所を覚えていないのだから。

 

透き通った湖の上に立つ自分。

空は青く、流れる雲は白く、早送りのように過ぎ去って行く。

ぼんやりと空の様子を眺めていた一夏は、ふと人の気配を感じて振り返ると、白いワンピースを着た幼い少女と、鎧姿の大人の女性。

朧気ながら記憶の端にあるような彼女達へと、一夏は無意識に慣れた仕草で手を挙げた。

「よっ」

気さくな一夏の態度にくすりと笑った少女は、手を振り返して一夏へと歩み寄っていく。

「ごきげんよう、マスター。お元気そうね、ふふっ」

いつかのように、どこか遠くに響く様な声でなく。

しっかりと耳に聞こえる声で語りかけてきた少女に目を丸くする一夏。

自分が言うのも何だが、こんなフランクに話しかけられるとは思ってもいなかったからだ。

「あら?あらあら?マスターったらお顔が愉快になっているわ?白虎(わたし)がお喋りするのがそんなに不思議かしら?」

口の滑りは軽快に、少女はワンピースの裾をふわりとはためかせながら一夏の前までステップを踏むと、くるくると可憐に回ってみせる。

不思議なのは少女の方であった。少なくとも一夏からすれば。

「君は・・・白虎、でいいんだよな?」

 

「そうよ、そうよ!白虎(わたし)は白虎!貴方の剣、貴方の鎧!豪様に作られた最速のインフィニット・ストラトス!空を踊る白銀のプリマドンナ!」

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嬉しそうに頷き、白鳥のポーズで優雅に礼する少女――白虎。

四獣の名を冠するISの人格なのだからもっと厳めしい言葉遣いをするだろうと考えていた一夏であったが、完全に裏をかかれた形である。

だからといってアマデウスのような傲岸不遜な若者であるとも思っていなかったが。

しかし、それならば向こうに立つ鎧姿の女性は何者なのだろうか。

視線をそちらへやる一夏に気付いた白虎は会話もそこそこに、察したように女性へと手招きをする。

「おいで、おいで、純粋なる力。この子は白虎(わたし)の話し相手。そしてマスターの手にすべき力。マスターの中に還るべき宿命の子」

「宿命・・・?どういうことなんだ?」

頷いて、ゆっくりと鎧が擦れる音を奏でながら近づいてくる女性を指した言葉に首を捻る一夏。

白虎は一夏の手を取ると、女性と引き合わせる様に引いてゆき、爪先で立ちながら踊る様にリズムを作って歩いていく。

話し方もそうであるが、バレエのように踊るのが好きな様子である。

「織斑 四季、マスターのお父様。彼は豪様に一つのプロテクト解除コードを渡していたわ。自分が引き取った織斑計画(プロジェクト・モザイカ)の生き残りが、道を誤らないように力を制御したのだと。片割れが世界を壊そうとした時にカウンターとなれるよう白虎(わたし)にそれを隠したわ」

「織斑、四季・・・!」

豪から聞いた、自分と千冬を織斑計画から連れ出し、普通の子供として謎の組織から隠したという、父に等しい男。

白虎の言い方は回りくどく、いちいち解読が必要であるが、それを察する事の出来ない程一夏は間抜けではない。

彼が疎いのは人間関係と恋愛感情だけなのだ。

 

つまりは、一夏の遺伝子改良チルドレンとしての本来の力には、人為的なリミッターが設けられていたという事になる。

 

やがて鎧の女性と一夏が目の前に立ち会うと、白虎は手を離して彼らの回りを舞いながらお話を継続する。

「隠した先の白虎(わたし)のコアと、隠されたマスターが引き合ったのは偶然かしら?運命かしら?これでマスターは織斑 千冬と同じくらいの力を持つことが出来るわ!そのために鍛えられた身体ですものね!これなら自分の力の反動で壊れないものね!」

「千冬姉と、同じ・・・」

その言葉に、少し抵抗を感じる一夏。

自分は、あくまで自分自身の力で千冬を超えたいと願ってきた。

だからこそ綾と共に鍛え、箒や鈴の技術に惚れ、己を磨き続けてきたのだ。

なのに、こんな簡単に憧れに届くと言われて受け取って良いものなのだろうか。

俯きがちに躊躇する一夏であったが、鎧の女性は兜の下から彼の顔を射貫く様に見つめると剥き出された口をゆるやかに動かして言う。

 

「力の使い方はお前次第だ、一夏」

「!?千冬、姉・・・!?」

 

聞き覚えのあるその声に、はっと顔を上げる一夏。

呼び声に応える様に兜を外した女性の顔は、少し年若いが紛れも無く織斑 千冬そのもの。

かつて白騎士のコアとして千冬と共に戦った際に、その容姿と人格パターンを取り込んだ白虎が、一夏の織斑計画の申し子としての制御プログラムへとインプットしたのが彼女なのである。

「人格データの補足は簡単だったわ。だってマスターは彼女の弟だもの、いくらでも会話からパターンを抽出できちゃうもの!」

「無駄話はいい。一夏、お前は私を―――私のオリジナルたる織斑 千冬を超えたいと言うが、それは何故だ?」

さながら本物の千冬の様に、鎧の千冬は弟へと問う。

「何故・・・って。だって、俺は千冬姉の弟だから。それに、もっと強くなって、皆を守りたいから・・・!」

「何故守る。どうしてお前でなければならない。そして、私はお前に憧れられる程出来た人間でもない」

悲しそうな瞳で一夏の言葉を否定していく偽の千冬は、偽なれど限りなく本物に近い思考で織斑 千冬としての想いを綴っていく。

 

「私とて、目に見えるもの全てを守れる人間になりたかったよ。その力もあると思っていた。他人と比べても大きな力を有している事は事実だったし、そのために四季は私達をあの地獄から連れ出したのだと、誰かの助けになれるようにと、産まれた意味を授けてくれたのだと、そう思っていた。なのに・・・」

 

空の色が陰る。

雲が広がり、たちまち曇天の空に成り代わり、その一点にかつての白虎の―――白騎士の視点から見た戦闘映像が映し出された。

幾重にも降り注いでくるミサイルを、搭載された武装でどうにか撃ち落としていく姿。

「これは・・・!?」

「私の記憶だ。束に白騎士を託され、ろくな訓練もないまま何千というミサイルに立ち向かったあの日。私は自分の慢心を呪ったよ。危機も転機も、ある日突然やってくる。自分の望む、望まないに関わらず、運命とは人の尊厳も未来も掻き回す。そんな事も知らなかった愚かな小娘が、必死にもがいた間抜けな姿が、これさ」

 

ISを知らない頃ならまだしも、今の著しい成長を遂げた一夏だからこそ分かる。

飛行の仕方も、射撃の狙いのつけ方も、初めて白狼を身に着けた時の自分と同じ―――ど素人そのものだ。

あらゆるものを初見で使いこなす史上最高の天才だと思っていた千冬ですらこのように苦戦を強いられる程に、ISの操作とは難易度が高い。

あんなおっかなびっくりな挙動で、ともすれば突然の実戦に恐怖を感じながら、むしろよくここまで戦えたと思えるような隙だらけの動き。

無理もない、織斑計画の最高傑作とされた千冬も、当時はまだ女子高校生。

ISなど世に存在せず、彼女の力を活かす道など自衛隊くらいしか無いような世界だった。

それが唐突に、日本の危機だからと未知の兵器を託された側の気持ちなど、考えた事すらなかった。

 

「結果的に、確かに日本という国は守られたのだろう。だが私には、撃ち落とせなかったミサイルによって失われた命を見過ごす事など出来なかった。命とは、存在だ。歴史だ。あの時点まで自分という存在を作り上げてきたたくさんの命を、私は守れなかった!」

 

髪を振り乱し、眉間に力を込め、千冬は頭を振って苦悩する。

次々と落下し、炎を巻き上げるミサイルの群れ。

拡大映像が映し出す、命が終わる瞬間。

耳を劈く音。身体を失い残された腕。瓦礫となった住宅街。

現実世界の、オリジナルの織斑 千冬が決して口にはしない心の痛みと絶望感。

どんな事情でたとえ情状酌量の余地があったとしても、彼女にしてみればその手から取りこぼした命はあまりに重く。

胸にした責任感と、正義感、善性といった当たり前の感覚は、千冬の心をズタズタに引き裂くのに十分すぎる負荷として伸し掛かったのだ。

 

一夏は―――言葉が出なかった。

 

決して折れない、鋼の様な精神をもった女性。

どんな障害でも華麗に乗り越え、何者よりも頼れる背中を持つ誇らしい姉。

そう思っていた。けれど、違うのだ。

何故気付かなかったのか。そんな人間などいるわけがないのは分かっていた筈だ。

あの綾ですら、人知れず孤独に苦しんで必死にラウラを求めたというのに。

箒だって、束と分かり合えないだけでなく、国をあげての差別と言って良い扱いを受けて来たのに。

鈴や、セシリアや、シャルロット、ラウラも簪もみんな。

大々的に公表していないだけで、辛い思いや失敗を繰り返して来た筈なのに。

どうして千冬だけは別格だと思っていたんだ。

そんなの、千冬を人間扱いしていないのと同じではないか。

あんな、白騎士事件という歴史的人為災害に立ち会っておいて、何も感じないわけがないじゃないか―――。

 

「人を守るとはこういう事なんだ、一夏。いくら守りたいと願っても、守り切れない場面に出くわす事の方が多いんだ。白騎士事件だけじゃない、私はお前が誘拐された時だって守ってやれなかった。ラウラの事だって見て見ぬふりをしたようなものだ。IS学園の生徒の中には、戦闘中の事故で死んだ者や、今も意識を戻さない者だっている。箒の母だって―――」

「・・・箒の、お母さん?」

千冬が幾つもの後悔を吐露していく中で、箒の母が挙がる事に疑問符が浮かぶ一夏であるが、それを改めて問える空気ではない。

本来、白虎は千冬の全てを知っている筈はない。

白虎が千冬と関りを持ったのは白騎士として戦ったあの一戦のみだ。

それでも、知り得ない筈の知識を千冬自身の体験として鎧の千冬が語れるのは、束のところにいた頃に情報を得たためだ。

だから白虎は、朱雀は全てを知っている。

束の行動理由も、千冬がどれほど多くのものを失ってきたのかを。

 

「分かってくれ一夏。私はお前が思うような姉にはなれなかった。何が織斑計画の成功体だ、何が最高の人間だ!私の手はこんなに血にまみれて薄汚れているというのに!大切なものすら守り切れない私など、お前が目指す頂には相応しくなどないのだ・・・!」

 

顔をしわくちゃにして懺悔の涙を零す鎧の千冬。

ぽたり、ぽたりと湖の上に雫が落ちては波紋を広げていく。

本物の千冬が、一夏に対しては絶対に見せない顔をこの千冬は見せている。

偽物が千冬を騙るな、などとは思わなかった。

彼女が吐き出した想いは間違いなく千冬と抱いた感情と同じものなのだろう。

きっと千冬が隠し続けてきた弱さそのものなのだろう。

ならば、彼女がこうして言ってくれなければ、鈍い自分はいつまでも千冬の悲しみも辛さも理解出来なかった。

 

だから、感謝している。

そして、決して退く事の出来ない想いも芽生えた。

 

「それでも」

 

そうとも、だからこそ。

俺は退かない。負けない。諦めない。

自分の為の中に、千冬の為が重なっただけだ。

少し重いくらいで丁度いい、でなきゃ皆と同じラインに立てないだろ?

そんなの不公平で、悔しいじゃないか。

あいつらの仲間として、織斑 一夏として、俺は。

 

「それでも千冬姉は俺の憧れで、目指すべき場所だ」

「一夏・・・」

「千冬姉が守れなかったものは俺が守る。千冬姉が出来なかった事は俺がやる。たとえ守れない事があったとしても、俺は歯を食い縛ってまた守り続ける。這い蹲っても何度でも立ち上がる!いつか千冬姉が、自分のこれまでが無駄じゃなかったって思えるように、俺は戦い続ける!世界とも、自分自身ともだ!!」

 

たった一つだけ、一夏には千冬と違うものを持っている。

それは仲間。親友。相棒。

自分だけで足りない力を貸してくれる友がいる、だからきっと大丈夫。

鎧の千冬の手を取った一夏は、弱気な眼差しを正面から受け止めて深く頷く。

そしていつか、あいつらと共に進む自分の道が千冬の救いとなる日が来る。

その時こそ、自分が千冬を超えたと思える日なのではないだろうか。

 

どう受け止めたのかは分からないが、鎧の千冬は柔らかく笑うとさらさらと輝く粒子となって消えていく。

 

「そうか、なら頼むよ一夏。どうか私を救ってくれ」

「分かった、任せてくれ」

「・・・お前が、私の弟で・・・よかったよ」

 

さらさらとその全身は砂の様に流れていき、やがて光の球体となった千冬は吸い込まれるように一夏の身体の中へと消えていった。

 

受け容れた一夏の中で、力強い脈動が息衝く。

生身でISの実体剣を持ち上げる程の千冬が有していた地力、それと同等の力が身についたことが分かる。

いま、世界中において織斑 千冬に身体一つで立ち向かえるたった一つの存在が目覚めたのである。

それは千冬を倒すためではない。

千冬を守り、手に届くすべてを守り、愛する仲間全てを守りゆくために。

「・・・俺もだよ、千冬姉。大好きだ」

己の胸に仄かに灯る熱き光を手に握り締め、一夏は瞳を潤ませながらひとりごちた。

 

相棒に似た焦茶色のロングヘアを靡かせて舞いながら一夏を見あげる白虎は、にこりと微笑んで言う。

「マスターは一人じゃないわ」

視線を合わせた一夏はゆっくりと頷く。

 

「いつだって白虎(わたし)が傍にいるわ。マスターが疲れた時も、悔しさに涙した時も、理不尽に怒る時も、達成感に喜ぶ時も、白虎(わたし)がその気持ちを分かち合ってあげる。マスターは白虎(わたし)のすべて。ずっと一緒に戦っていきましょう、死がふたりを分かつまで」

「ああ・・・俺に力を貸してくれ、白虎!俺一人じゃ届かない場所でも、俺達が一緒ならいける!」

「よろこんで!よろこんで!さぁ行きましょう!あの頭でっかちな青龍を懲らしめてやりましょう!」

「ははっ、そうだな!」

反射的に綾の事だと思った一夏が笑う。

自然と白虎の手を取って、晴れゆく空の光に包まれていく。

一緒に行くのは白虎だけじゃない。

「・・・ありがとう。この力、大事に使うよ」

いつも自分の中に千冬がいる。

自らの運命も宿命も飲み干して、一夏は往く。

あいつらが待つ、あの場所へ。

 

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「俺は一人じゃない!白虎が、千冬姉が力を貸してくれる!それが俺の力だって分かったんだ!」

叫びは力、たとえ地に足がつかなくとも一夏のパワーと白虎のスピードはそれだけで朱雀を圧倒する。

負けじと残像を生み出しつつ、箒は一夏の目に見える成長に微笑みを消さずに迎え撃つ。

「そうだな、一夏。お前も、私も一人じゃない。だから最後まで諦めずに戦える。こんなに嬉しい事はないじゃないか―――!」

激突する剣と刀。

弾ける粒子、鮮やかに弧を描く鉄。

その中で、箒もまた鬨をあげて技を振るうのだ。

 

「お前に白虎と千冬さんがいる様に、私ももう一人じゃない!朱雀と鈴音の想いが私を強くする!今の篠ノ之 箒の全て、受け取ってもらうぞ!!」

「ああ見せてくれ!お前の想いが俺とお前をまた強くする!その繋がりがきっと!」

「我らIS操者を至上へ導く希望となる!」

速度と力の白虎。

技と手数の朱雀。

全く互角の二機の戦闘は激しく重なり合い、白と赤の軌跡をスタジアム中に描いていく。

 

 

本音の操る九尾ノ神獣の新たな武装、それは罠設置である。

罠の種ともいえる目に見えぬ細かなナノマシンを手甲部分から放出し、任意の空間で爆発物や鉄板、エアバッグといったアイテムを自在に出現させる、トリックスターたる本音らしい装備だ。

ボディ部の装甲は鎖帷子に浴衣を重ねたような形状、器用で細長い腕、地上戦の運用を切り捨て足首そのものをスラスターとした大柄な脚部。

X字の大型バックパックには有線式ビットが12門、そしてみくじ筒型だった炸裂爆弾発射筒は打ち上げ花火発射筒を模し、後腰部に予備の弾倉をマウントしてある。

 

ラウラが戦闘前に恐れたのは、ただでさえ頭の回る本音が自在に発動が可能なトラップを仕掛ける能力を得たがためだ。

アマデウスのバスター・ランチャーを防ぎえる程の防御機能を有していたとしても何の制限も無く使えるというわけではなく、自身のバリアフィールドは自分の攻撃すら通さないという弱点がある。

ゆえに、少しでも攻撃に転化しようと思えばその穴を本音が見過ごすわけもない。

更に守りを固めるだけでは勝てず、それでは白虎の零落白夜の良い的となる。

さらに、バリアフィールド内でトラップを発動させられるのが一番の問題だ。

動き回っていれば多少の狙いのズレで直撃(と言っていいかどうかは不明だが)を避ける事が出来るかもしれないが、ならば動きを止めた瞬間がガーベラの最後となり得る。

だからこそネガティブな結末しか見えていなかったが、今は違う。

シュヴァルツェア・ガーベラとの―――玄武との邂逅が、ラウラの心をまた一回り強く包み込んだからである。

 

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ラウラが辿り着いたのは、クルーズ船の甲板の上であった。

豪華客船である事が一目で分かる。誰もいないのは不自然ではあるが、デッキプールや野営バー、多段デッキに望遠鏡と、パラソル下には分厚いソファが配置されているためだ。

夕日が沈みゆく夜景、紺色とオレンジが入り混じった幻想的な景色に目を奪われるラウラ。

ふと振り返ると、背後のピアノラウンジにて美しい音色を奏でる女性が一人、グランドピアノに向かい鍵盤を叩いているのに気付いた。

曲目はモーツァルト、ピアノ曲の中でも最も有名であろう曲。

 

老若男女問わず、誰でも耳にした事のある曲目。

きらきら星。

 

正確にはきらきら星変奏曲、1770年代のフランスの流行歌【ああ、お母さん、貴女に申しましょう】による変奏曲である。

優しい曲調におずおずと女性へ近づいていくと、ラウラに気付いた彼女はにこりと笑い、おいでおいでと手招きをする。

罠かと警戒する気は起きなかった。

ラウラは純粋な子供の様に女性に従って二人分が座れるチッペンデールの椅子へと腰をおろす。

そういえば綾がピアノを弾いているのはよく目にするが、こうして鍵盤の前に座るのは初めてだなとぼんやり思うラウラ。

隣に座る女性はラウラの方をちらりと垣間見ながらも手を止めず、楽しそうに白黒の盤上へと指を滑らせていく。

 

約10分と少しの間、女性の音色に聴き入っていたラウラであったが、弾き終えた女性はウェーブのかかった栗色のロングヘアをかき上げると、満足気に息を吐いた。

「ふぅ、ごめんね。一度弾き始めると最後まで弾かなくちゃ気が済まない質なんだ。どうだったかな、わたしの演奏?」

「・・・わたしは、音楽については素人なので大した感想は言えないが・・・すごく、綺麗だったと思う」

「ふぅん?綾とどっちが綺麗だった?」

「それは・・・ん?綾を知っているのか?」

意地悪な質問に口をもごもごとさせるラウラが綾の名前に反応すると、女性は立ち上がりラウラと向き合って頷いた。

 

「そうよ、綾はわたしのオリジナルである鶴守 愛奈の愛しい子供だもの。はじめましてラウラ、わたしは玄武。シュヴァルツェア・ガーベラと名乗った方が良いかな?」

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「あなたが・・・い、いや、おまえがガーベラなのか。驚いたぞ」

おもわず下手に出てしまいそうなのを堪え、いつも通りの態度で接するラウラに、微笑ましいものでも見たかのような表情を作る玄武(ガーベラ)

レオン・ボーデヴィッヒを自分の養父と言って憚らないラウラが、養母たる愛奈を模した人格と向き合っているという事実が、想定外過ぎて戸惑いを隠せていないのだ。

咳払い一つ、気を取り直してラウラは問う。

「ここは?」

「わたし、ガーベラの精神世界よ。ISの中にあなたの心だけがダイブしてきたって言うとわかるかしら。この風景は愛奈が最も心に残った心象。初めて夫と出会った、ナイトクルージングの海」

金持ち向けのピアノコンサートでレオンと愛奈は出会い、そして恋に落ちた。

疑似人格であるガーベラがこの景色を居場所としたのも、オリジナルたる愛奈の中で忘れ難い記憶であるという事なのだろう。

「ガーベラは、鶴守 愛奈そのものなのか?」

「基本的には同じよ。愛奈の記憶と人格パターンはほぼ完璧にトレースしたと自負しているわ。わたしとオリジナルの違いといえば、他者からの認識と実際に愛奈としての人生を経験したかどうかの差ね」

「他者からの認識・・・?」

「そう。どれだけ似せても同じでも、他人からすればわたしは愛奈の偽物に過ぎないわ。わたしの思惑や気持ちに関わらず、ね」

少し切なげな表情で風を受けるガーベラを見て、例えようのない胸の苦しさに見舞われるラウラ。

 

なんだこの気持ちは。

ガーベラを見ていると芽生える苦しさは。

 

言葉にならない、されど嫌ではない未曾有の感情に視線を彷徨わせるラウラへと、愛奈は問う。

「あなたはどう、ラウラ?」

「どう、とは何だ?」

「わたしを、ただの偽物の愛奈だと思うかしら?」

夕闇をバックに微笑むガーベラは美しい。

上品な紺色のロングスカートを纏う彼女がISコアが作り出した疑似人格であるなど到底信じられない程だ。

立ち上がりながら、俯き加減にラウラは答えた。

「・・・鶴守 愛奈は、もうこの世にいない。だから、おまえがどう思おうが勝手だ」

「回答になってないわ、ラウラ」

「・・・ええい、素敵だと言っている!こんな綺麗な女性がわたしの義母などと考えた事も無かった!」

普段、自分自身の女性的な部分を伸ばそうともしないラウラですら、こうありたいと思えるほどにガーベラは、愛奈は華奢で美しい女性だった。

やけを起こしたかのように肩をいからせて叫ぶラウラへと、嬉しそうに微笑むガーベラ。

その表情はまるで子供を慈しむかのような母の顔に見える。

「ありがとう、ラウラ。そう言ってくれるとこの姿を選んで良かったと思えるわ」

「なぜだ、綺麗だからか?わたし以外の誰に見せるというわけでもあるまいに」

首を傾げるラウラへと、ガーベラはかぶりを振って答える。

「いつか、わたしの子供が玄武のマイスターとなった時に、喜んでもらいたかったの。綾は青龍のところへ行ってしまったけど、ラウラ。あなたはわたしのもとへ来てくれた。そんなあなたに、少しでも母を感じて貰えたなら、愛奈をコピーして良かったと思えるということよ」

「母を、感じる?・・・ガーベラにか?」

「そうよ。だって、ラウラは母を知らないのでしょう?ならせめてわたしが、と思うのは不自然かしら?」

「そんなことは、そんなことは・・・ない、と、思う・・・」

 

愛奈もレオンも、既に故人。

ラウラにとって生きている家族は綾と、豪のコピー体のみ。

いくら要求しようとも父母の愛は受けられないと理解していたラウラだ。

あの日、愛奈とレオンが死んだと聞いた玄武は愛奈の情報を可能な限りかき集めた。

何を思い、どう感じ、どう語るのか。

ベートーヴェンと名付けてくれたあの女の人が生きた証を、少しでも残したくて。

いつか自分のマスターとなるべき人へ、それを伝えたくて。

果たしてラウラはガーベラの元へやってきた。

一緒に戦おうと声をかけてくれた。皆を守ろうと誓ってくれた。

ガーベラにとっては、それだけでも十分に満ち足りる想いだったのだ。

 

「おいで、ラウラ。こんな偽物のわたしだけど、あなたを想うこの気持ちは本物だから。わたしの中に、愛奈を感じてくれると嬉しいわ」

ゆっくりとラウラを抱きしめるガーベラ。

少し抵抗するものの、次第に力を抜いていくラウラ。

「ひとりにさせてごめんね、ラウラ。わたしがもっと生きられていたら、こうしてあなたを抱きしめてあげられたのに、ごめんね」

段々とか細く、絞る様な涙声になっていくガーベラ。

母の胸に顔をうずめ、温かな手に撫でられるうちに、ラウラはじわりと涙を浮かべていく。

 

何が偽物なものか。

オリジナルもコピーもあるものか。

だって、こんなにも、こんなにも、ガーベラは、愛奈は優しい。温かい。

千冬が決してくれなかったもの。

綾すら代わりになれなかったもの。

こんなところにあったんだ。

わたしが、大好きでいていい、わたしの―――。

 

「お、かあ、さん・・・」

「うん、ここにいるよ、ラウラ」

「おかあさん・・・っ!!」

 

その温かさに、母性に、全てを包み込んでくれる包容力に、ラウラは涙した。

たとえ自分を産んでくれたのが目の前の人ではなくても。

たとえ目の前の人が人間ではなくても。

この優しさがデータから生まれたものであっても。

そんなものは関係なしに、ラウラはガーベラと名付けたこの存在を、母親と認識して心を許した。

 

きっと愛奈が、ラウラと出会うような事があればこうして抱きしめて、伝えてあげた筈の言葉達。

ISという存在によって紡がれた、人間の死をも超えて届いた気持ち。

それがラウラの、最後に残った人を愛する事への恐怖という壁を撃ち払ってみせたのだ。

 

「おかあさん、おかあさんっ!わたしは、わたしはぁっ・・・!」

「ラウラ。ラウラ。あなたはわたしを素敵と言ったけど、あなただって素敵なのよ、ラウラ。こんなにも可愛くて、強くて、優しい子。ずっと見ていたわ、あなたが頑張っているところ、たくさん。わたしのところに来てくれてありがとう、ラウラ。愛してるよ」

「もっと、もっとわたしの名前を呼んでくれ、おかあさん・・・!」

「ラウラ。らーうら」

 

人が産まれた時に無条件に与えられる筈の愛情を受けられなかったラウラが、初めて知る母の愛。

綾や、じいさまが言った通りだった。

世界はこんなにも愛で溢れている。

時を超え、生死を超え、形を変えたとしても、こうして届く愛がある。

自覚の有無はどちらにせよ、愛奈はこんな風に自分を愛してくれたのだ。

いままでの自分が無駄ではなかったと強く思える。

また同じ人生を送りたいかと言われれば言葉に詰まるが、この瞬間だけは何物にも代えがたい幸せだ。

兄と、祖父と、父と、そして母と。

ようやく家族全ての愛を知ったラウラという少女はこの日この時、愛という人の本質を知ったのである。

 

 

やがて日は沈み、夜闇が訪れ、クルーズ船に電気が灯る。

お別れの時間が訪れたのだ。

「ラウラ、そろそろ戻る時間よ。綾やみんながあなたを待っているわ」

「やだ。ずっとおかあさんと一緒にいたい」

らしくもなく駄々をこねるラウラ。

困ったような笑顔を浮かべながらガーベラはラウラの髪を指でとかす。

「仕方のない子。寝坊助さんは嫌いよ?」

「いやだ、嫌われたくない」

ばっと顔を上げたラウラの額にキスをしたガーベラは、幸福に満ちた笑顔で頷いた。

「焦らなくても、わたしはラウラの傍にいるわ。あなたが空を見上げれば雲の中に、星の中に、虹の中に―――そして、シュヴァルツェア・ガーベラの中に。いつだってあなたを見守っているから、大丈夫」

「そう・・・か。そうなんだな」

 

ようやく心の底から理解出来た。

綾がいれば自分は一人じゃないと思っていた。

それも間違いではない、自分が守るべき絶対は綾、それは今も変わらない。

でも、こうして自分を見てくれる母が、こんなにも近くにいる事を知った。

自分を守ってくれる人がいてくれる事を知った。

こんなに嬉しい事などない、そう思った。

 

「わたしが近くにいる限り、あなたの事を守り続けるわ、ラウラ。だからあなたはあなたの幸せのために戦って。あなたの大好きな人達を守って。そのために、わたしはあなたに力を貸すのだから」

「おかあさん・・・」

 

ラウラの姿が薄くなって消えていく。

繋いでいた手が離れていく。

けれどもう、寂しくなんてない。

離れていても心は繋がっている、これからも、これまでも。

 

「行ってらっしゃい、ラウラ。今度は夢で逢いましょう」

「うん・・・行ってきます、おかあさん」

 

手を振るラウラは空の景色に溶け込んで消えていく。

その姿が見えなくなっても見守り続けたガーベラは、柔らかな風に吹かれながらいつまでも立ち尽くしていた。

「心配しないで、愛奈。わたしがきっと、あなたの娘を守ってみせるから」

静かに呟いたガーベラの言葉は、ありもしないあの世へと届いただろうか。

 

========================

 

ラウラは知った、母の愛を。

これまでずっと守られ続けていた事を。

だからもう、迷わない。弱気に支配などされはしない。

自分の持てる全てで、目の前の壁を乗り越えなければならない。

それはISを駆っての戦いだけではない、生きるという事そのものが限界突破の繰り返しなのだ。

一世一代の賭けは人生の中で幾度も幾度も繰り返し行われる。

伸るか反るか、全てが自分次第ならば。

 

「わたしは戦う。妹として、娘として、わたし自身として!たとえ未来の色が滲んでいたとしても何度でも描き直す!死ぬまでラウラ・ボーデヴィッヒ・鶴守を貫いてみせる!」

 

次々と目の前に広がる障害をバリアフィールドで弾き、散らせながらラウラは九尾ノ神獣へと迫る。

「わたしはそんなに気張る相手じゃないよ~!もっと肩の力ぬいてこ~!」

緊張感を解すように、のほほんと間延びした声をかけつつ、ラウラの行く手に鉄板を配置して阻害する本音。

避けても避けても眼前へとそそり立つ鉄壁の群れを華麗なるターンで回避するラウラは、そうはいかないとばかりに目を細める。

「いいや本音、おまえこそ注意を払うべき相手だ!専用機の中でも特別感のある機体ではないという隠れ蓑に、幾重もの罠を仕掛け足元を掬いに来るお前の様な女が最も厄介だ!最初に言っただろう、わたしはおまえと戦う位なら帰りたいとな!」

ラウラの言葉に、本音の睫毛がひくりと震える。

誉め言葉が嬉しかったのではない、この調子では油断を誘えないと察したからだ。

「だがそんなわたしに、ガーベラは力を授けてくれた!もう負けないと決意させてくれた!二度とわたしは負けん、おまえにも、誰にも、わたし自身にもだ!」

「あはは~!それじゃあわたしも本気で相手しなきゃね~!」

「無論だ!でなければ意味が無い!」

ガーベラのハンドガンの射程距離まで近づかれた本音はビットを放出、トラップとの二重の攻勢でラウラを攻め立てる。

全方位にバリアフィールドを展開しつつ防ぐラウラ、その動きは縦に横にとせわしない。

動きを止めるか、攻撃のためにフィールドを閉じるか、どちらかをラウラが行えば本音は即座にかき集めたナノマシンを爆発力へと変換するだろう。

ガーベラにとっての鬼門たる能力と担い手、ならばどうすべきか。

この強敵を乗り越えるには、もっと柔軟な発想が必要である事をラウラは認識していた。

 

(信じろ!ガーベラはまだこんなものじゃない!まだまだ使いこなせていない領域がある!わたし次第というのなら、存分に乗りこなしてやろうではないか!)

 

段々と近づいてくるガーベラ、退きながら攻撃を続ける本音。

ラウラは何かを狙っている、近づかせてはならない。

そう判断する本音であったがしかし、全力退避するタイミングが少しばかり遅かった。

「いくぞガーベラ!イグニッション!!」

「なっ、なんでーっ!?」

直線距離が開いたと見るや、イグニッションブーストで勢いよく九尾ノ神獣へと迫るガーベラ。

イグニッションブーストはISの有する猛烈な速度で加速するリミッター解放機能のようなもの。

一時的に凄まじいスピードを出せるものの、直線にしか動けず上下左右への方向転換が出来ない、ゆえに。

本音がバリアフィールド内部での爆発を狙うには格好の餌となってしまう。

(ゼロ距離に組み付いてトラップを発動させる前に堕とそうって算段かにゃ・・・!?)

確かに、組み付かれてしまえば本音も自分もろとも爆発に巻き込みかねない。

だからこそ決め手を急いたのかもしれない、とはいえ、何を狙っているかはともかく本音としては迎え撃つべき手を打つだけである。

「当ったーーーれっ!!」

本音が指を鳴らした刹那、ラウラのフィールド内部で派手な音と共に巻き起こる爆発。

直線移動のみのISなど、X軸とY軸の計算だけで済むためピンポイントで狙うには容易い。

しかし。

バリアフィールド内に、本体であるラウラを包み込むようにもう一層のバリアフィールドを纏ったガーベラは、煙を撒き散らしながら九尾ノ神獣へ肉薄。

「うっそー!?」

「フィールド出力全開!仕掛けるッ!」

イグニッションブーストを継続したままフィールドを維持し、九尾ノ神獣に体当たりをかますかのように激突するシュヴァルツェア・ガーベラ。

出力を増したバリアフィールドは自身へ向けられる攻撃や障害物の全てを薙ぎ払う灼熱の防護壁となる。

いわば、フィールドの表面を高密度・高熱でチェーンソーの刃が行き交っているようなものだ。

加速力、バリア出力、熱量の計算式が衝突した九尾ノ神獣の装甲とバリアを根こそぎ奪い、近づこうとするビットを弾き、破壊していく。

これがまさに、シュヴァルツェア・ガーベラのバリアフィールド精製に大きなエネルギー消費をしない理由。

全開のバリアを攻撃に転化するためには多大なエネルギー消費を必要とするため、普段は逆にそのパワーを抑えられているのだ。

 

このバリアフィールドアタックの名称を、【輝く太陽の盾(ゾネ=スヴェル)】。

北欧神話はグリームニルの言葉に言及された盾の名前。

太陽の前に立ちし物、輝く神の前に立つ盾。

 

「くぅっ―――!!」

逃れようとも逃れられないガーベラの接触に、どうにか抵抗すべくフィールド内部で爆発を乱発する本音。

外側のフィールドに全力を賭しているラウラは当然、直撃を食らう事になる。

しかし止まらない、終わらない。

ラウラが攻撃に全てを賭けていようとも、ガーベラ自身がラウラを守っているのだから。

「内部にも、フィールドがまだ張って・・・?!」

「おおおおおぉーーーーーーーっ!!!」

勢いに任せ、九尾ノ神獣を地面へと叩き落すガーベラ。

白土とのサンドイッチに、みるみるバリア残量をレッドゾーンへと導かれる本音。

これは負けたな、と判断した本音は最後に全ナノマシンを放出し、指を鳴らした後に宣言した。

 

「降参、ギブアップするよ、ららちゃん」

「む―――」

 

その言葉にフィールド出力を弱めていくラウラ。

シュヴァルツェア・ガーベラが離れると、大きく息を吐きながら大の字となった本音はISを待機状態へとシフトし、頭をかきながら眉をハの字に寄せた。

「やー、やっぱ強いなぁららちゃんは。結構いけると思ったんだけどなー」

「馬鹿を言う。このわたしがここまでしなければ勝てなかった自分を誇れ」

自力で立ち上がる本音を見ながら、ラウラは放熱する自身の機体のステータスを鑑みて舌を鳴らす。

「くそ、オーバーヒート気味だな・・・熱が冷めるまでしばらく動けんか。ゾネ=スヴェルは長時間の使用を控えた方が良いな」

「ふっふっふ~、いまのうちにセラちーに墜とされてしまうがいいー」

「洒落にならん事を言うな」

じゃれ合うように笑うラウラと本音。

普段から遊び相手たる二人はまた、こうしてお互いをより深く知る事が出来たのだろう。

 

邪魔にならない様そそくさと去る本音を見送り、ラウラは現状を把握せんとコンソールを開いて各々のバリア残量を確認する。

何の気も無かったラウラではあったがしかし、表示された一覧を見て目を見開いた。

「これは・・・!?」

味方機――自分を含めたチーム【ゼクス】の機体は全員大きく傷ついているのに対し、チーム【クリア・マインド】はほとんど万全の状態。

バリア残量に変化はないものの、まだまだ全力で戦えるコンディションとなっていた。

してやられたと、歯噛みするラウラ。

本音は倒される直前に、自身の所有しているナノマシンをセシリアと一夏へ向け、受けたダメージの修復に回していたのだ。

「タダではやられんというわけか。流石だぞ、本音」

困ったような顔でほくそ笑んだラウラは、熱を帯びた機体を冷ましつつ遠距離から攻撃できるセシリアから遠ざかるべく歩いてその場を離れる。

 

戦況は3対2、されど優位は【クリア・マインド】。

まだ勝負の行方は誰にもわからない。

 




もはや長すぎてどこから切ればいいのかわからない。。。
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