インフィニット・ストラトス リビルドワールド   作:しびれあくせる

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Smells Like Teen Spirit

チーム【ゼクス】対チーム【クリア・マインド】が終わった後―――。

 

綾は、疲れをとるのもそこそこに、アマデウスの改造計画を立ち上げるべくIS学園の格納庫にてキーボードを叩いていた。

贅沢に三画面モニターを使用し、温めていたアイデアを形にすべく図面を立ち上げ、試行錯誤を繰り返す。

 

新規追加予定の装備はコアを除けば三種。

 

そこだけならまだ良い、問題となるのは誰一人として理解が追い付かない数字と文字の羅列―――アマデウスのISコアの改造案である。

既に本日の試合は全て消化されているものの、いまだシャワーも浴びず、ISスーツのまま凄まじい勢いでシステム構築を行っていく綾を背後から見守るのは千冬、忍、ボゥイの三人。

綾の隣にはそれぞれ、簪とラウラがサポートに入っている。

 

「コアの解析どころか、改造までIS学園でやろうなんて無茶だと思ったけど・・・鶴守くんなら、本当にやれそう・・・!」

武装設計図の検証を行う簪が綾の手際に感嘆しながら呟く。

どちらかといえば頭脳よりも身体を動かす方が向いている千冬は勿論の事、知能派の忍や簪すらも、綾がやっている事の半分も理解が出来ていないのが現状だ。

「おやっさんの孫だぜ?そのくらいやっても不思議じゃねぇさ」

「やれちまうならそれはそれで問題だな。束や鶴守 豪以外にコアを作れる奴が出てきたらまた国家絡みで大騒ぎになるぜ」

「今更こいつが何をしようと驚きはしないさ。我々大人の仕事は世間様を誤魔化す事だ、そうだろう?」

「ふん・・・」

煙草に火をつけながら懸念する忍へ大人としての心構えを説く千冬。

それを受けて面倒くさそうに鼻を鳴らし、また黙って綾の作業を見守る忍である。

 

また、複数のケーブルでつながれているアマデウスのコアからは、縮小された豪の姿がホログラフとなって浮かび上がり、綾へアドバイスを送っていた。

『ふふん、さすがおれの孫といったところか。教えた覚えもないのにここまでコアを理解しているとは』

「そこは教えとくべきじゃねえのかガキジジイ」

『おぉん?ガキジジイとは新しいな架神のォン?』

毒づく忍にクワッと青筋を立てて顔芸する豪。

架神の、という呼び方に反応するのはラウラだ。

「じいさまは架神とも知り合いなのか。顔が広いな?」

「てめえ先生様を呼び捨てかコラ」

「わたしが先立として尊敬するのは織斑千冬教官のみだ。有象無象の名を覚えただけでも褒めるが良い」

「このクソガキ・・・」

「どうどう架神」

本気で怒っているわけではないのだろうが、ラウラの頭を掴んでシェイクする忍を片手で止める千冬。

されるがままにされていたラウラの様子を見ても、ただからかい合っていただけである事がわかる。

 

そんな様子を見ながら豪はしぶしぶと答える。

『その(しのぶ)の事は知らん。ただ、大昔に架神 黒(かがみ くろむ)という老人と将棋仲間だった』

「意外とローカルな繋がりだった」

それだけか、とラウラがつまらなさそうに作業に戻ると、豪は目を細めて忍を見ながら言う。

「ただし、おれが将棋同好会で黒と出会ったのは・・・おれが小学生の頃だ。その時既に孫が居そうな年齢だったあの男が、そこの忍とやらと血縁だとしたら年若すぎる」

小学生にしてはなかなかに渋い趣味をしていた豪には誰にも触れず、年齢についての疑問を簪と千冬が聞きたそうに目を向ける。

ややあって、忍はどうでもよさそうに口を開いた。

「架神 黒はおれの祖父(じじい)だ。親の名は架神 彰人(あきと)。おれはロクに世話もしなかった両親の代わりに祖父(じじい)に育てられた。兄貴の空雅(くうが)と一緒にな」

『なんつーモヤモヤする名前の一家じゃい』

その流れでどうして忍だけ忍なのかはさておき、簪は一旦手を止めて忍へと向き合った。

「じゃ、じゃあしのぶさんはお幾つなのですか・・・!?」

「忘れた。60は過ぎてんじゃねえか?」

「―――――」

しれっと煙草を吸いながら回答された年齢に気を遠くする簪は、仰向けに倒れかけるのを咄嗟にマドカに椅子を支えられながらも、絞る様に言う。

「こんな・・・こんなにダークヒーローらしさを極めてしまっていいの・・・!?時代を超えた恋・・・性癖しゅぎる・・・!」

「何でもいいのかおまえは」

さらりと挟まれるラウラの毒など意に介さず、簪はシャキッと立ち直るとまた忍へと向き合う。

 

「でも、その年齢でその若さはやはり何が理由があるんですよね?」

「ああ。おれはエデンに肉体改造をされた男だ。脳以外の身体はほぼ有機生態部品に挿げ替えられている」

掌を握ったり開いたりしながらさらりと答える忍。

「修復型ナノマシンの恩恵で脳かリアクターを破壊されない限りは死なない身体だ。そのあたりはシューマッハと同類だ」

「あー、なんか似てる気がしてたけどそういう事か」

腕を組みながらうんうん頷くボゥイ。

しかし、豪は論点はそこではないと首を振って忍へ指を差す。

『エデンという組織については千冬君に聞いておる。問題なのはそいつらが何のために架神のへ改造手術を施したのかという事だ』

「ん?強い兵隊が欲しかったからじゃないのかい?」

『バカ。強い手駒が欲しいにせよ何のために欲しがるのかという理由があるじゃろがい』

「理由?そりゃ世界征服とかよ」

『昭和へ帰れ』

「オレ平成生まれ」

などと、ボゥイと豪がどんどん話をすり替えてボケの応酬を繰り広げる中、忍は仰々しく溜息を吐いてみせて千冬を横目でじろりと見た。

「・・・ほら見ろ。こうやって話がずれるから面倒臭かったんだ」

「慣れろ。私はもう慣れた」

苦笑いしつつ千冬が肩をすくめ、すぐさま真顔に戻ると豪の話を引き継いで推論する。

 

「つまりは架神が言っていた、男尊女卑というエデンの在り方と関係があるという事か」

「そうだ。奴らは女という生き物に見切りをつけた集団だ。力も弱く、権利を主張するばかりで男の足枷としかなり得ないと決めつけ、もはや時代に不要として抑え込もうとした奴らがエデンだ」

クールの煙を吐き出しつつ語る忍に、疑念を募らせるのは簪だ。

「どうしてそんな極端な考えに至ったんですか・・・?」

「創始者の理念なんざ知らねえよ。ただ、考え方に賛同する奴は数多くいた。共感する奴らの思惑は様々だ、地球人類が増え過ぎた事に対するアンサーとして、女の数をコントロールする事で住み場所や権利を充実させようとする奴ら。一部フェミニスト共に迫害された同性愛者。果てにはモテない自分の苛立ちを発散させようって輩まで、様々だな」

「壮大から小物まで取り揃えているという事だな」

ラウラの皮肉に鼻を鳴らして頷く忍。

組織というものは数多くあれど一枚岩とはいかないのが常識である。

しかして、思惑がどうあれ方向性さえ同じであれば衝突せず力を一方向へ向ける事が出来る、それはやはり組織としての群れの力と言えよう。

たとえそれが一般的に誤った考え方であったとしてもだ。

 

「おれの親父は研究者だった。科学者であり医者であり薬剤師だ。どういう経緯かは知らねえがエデンと繋がりを持った親父は、ほぼ無尽蔵に供給される人体実験の素材に惹かれて専属契約を交わした」

「素材・・・」

『拉致した人間、という事か』

豪の言葉に無言で答える忍。

何も言わず耳だけ貸して作業を続けている綾の心には、それがどう映っているのかは誰にも分からない。

ただ、エデンに対して燃え滾る怒りの炎を蓋するように燻らせている事を、ラウラは感じ取っていた。

「奴らの厄介なところは権力を有しているという事だ。学園長がIS学園の防衛力強化をIS国際連合へ要請した事は知っているか?あれから2ヵ月以上経過しているにも拘らず何も物資を送ってこないのが良い証拠だ」

「IS国際連合にエデンの幹部が潜んで、学園への援助を停滞させているとでも・・・?」

「停滞どころか事実上のストップだろうな。マドカが使っていたIS・・・イギリスが製作したBT兵器装備型IS 2号機、サイレント・ゼフィルス。あれもIS国際連合へ提出されたデータをエデンが亡国機業へ横流しして製作させたものだ」

亡国機業(ファントム・タスク)!そいつらなら知っているぞ、第二次世界大戦中から発足した組織で、戦争継続による人類の進歩を目的としたテロリスト集団だ。そいつらもエデンの協力組織というわけか!』

「協力というより下請けだな。エデンがその正体と目的を隠すために、表立って動かせているのが亡国機業となる。エデンの傀儡となっている事も知らない憐れな連中だ」

『むう・・・IS国連も亡国機業も手の内という事か。束が手古摺る訳だ』

眉間を寄せて唸る豪、口元を横一線に締めて顎に指をやる千冬。

 

そこまで手を回せる程なら既に世界はエデンの手中にある様なものだ。

ボゥイの言ったように世界征服が目的なら既に達成されているも同然であり、下手に反旗を翻そうものなら逆に反逆者扱いされて世界中から指名手配を食らうだろう。

そうなるともしかしたら、束が指名手配されているのはコアの生産を止めた事だけが理由ではないのかもしれない。

 

「おれも兄貴も親父がそんな組織に加担している事なんて知らなかったが、それを止めに行ったプロボクサーだった兄貴はそのまま拉致されて行方知れずだ。更に、兄貴を返してほしければとおれにエデンへ協力を要請してきたのは、親父だった」

「ひどい・・・!」

実の父からネグレクトを受けていた簪すら、否、だからこそ忍が受けた扱いに震え、手を止めて俯いてしまう。

共感が欲しいわけではない忍はそれでも、簪の頭をぶっきらぼうに撫でやって続ける。

「エデンからしたら医療技術のある人間は貴重だったんだろうな。おれは騙されるがままに意識を奪われ、身体を改造され、洗脳を受けてエデンの医療班兼尖兵として数十年を過ごした。マドカがしてきた事なんざ甘いくらいの非道を重ねてきた、数え切れない程の人間をこの手にかけ、旨い素材となる人間を親父に捧げてきた」

「・・・・・・!」

平然と語っている様で、深い後悔と悲しみが入り混じった感情をマドカは感じ取る。

だからこそ、マドカが笑いながら人を傷つける事を止めたかったのだと悟る。

人を救いたくて医者となったのに人を殺め続ける、理想と現実の矛盾。

ならば彼が自意識を取り戻した際の絶望は如何程だったのだろうか。

 

「おれの最後の任務は、行方をくらました束の捕獲だった。そこで返り討ちにあったおれは束に洗脳を解かれ、それからは協力者として今に至るわけだ」

「さすがのサイボーグもISには勝てなかったというわけか」

「ああ。束のISと、束の義娘(ようじょ)であるクロエってガキのIS二機が相手じゃな」

ラウラの横槍を素直に肯定しながらも、その銀髪を眺めて忍は意味深に彼女へ言う。

「クロエ・クロニクルはてめえと同じ髪の色をしていたぜ。そういえば顔も似ているな」

「・・・?!」

ばっ、と顔を上げるラウラ、そして綾。

もし忍の指し示している事が、クロエという少女がラウラと同じようにカトレア・ボーデヴィッヒを母体とした遺伝子改造チルドレンであるとしたならば、まだ彼らにとって救わねばならないきょうだいが残っている事となる。

そして、そのうちの一人を既に束に救われていたという事も。

 

吸い終わったクールを吸殻入れ代わりのペール缶へ放り込み、忍は全員を見渡して言う。

「おれのやっている事は罪滅ぼしに過ぎねえ。親父を殺し、もしも兄貴が敵となっているのならそれもおれが殺す。全てが終わったらおれも送った先へ逝く、それだけだ」

 

忍は既に覚悟を完了していた。

自分の一族が犯した罪を、自分自身が行った悪を、自分一人で背負って裁こうというのだ。

簪にはそれがたまらない程にダークヒーロー然としている行動理念であると理解しながらも、それでも許容する事が出来ずに立ち上がって吼えた。

「逝かせません」

勢いよく歩み寄ってその手を握る簪、追ってマドカも忍の白衣の裾を握る。

「私がしのぶさんを死なせません。あなたが死ぬときは、わたしが天寿全うするときです」

「しのぶ・・・!(わたし)は、しのぶが死んじゃいやだ!」

「おまえら・・・」

もはや取り返しのつかない程の悪徳を重ねた自分は許されざる存在だ、だから、出来る事を全て終えたら消えるのがベストだ。

そう考え口にしようとする忍を、言わせないとばかりに簪とマドカは捲し立てる。

「あなたに罪があるのなら私も背負います!私も一緒に罰せられます!私が一緒に戦いますから、だから一緒にいてください・・・死ぬなんて、言わないで」

「しのぶは(わたし)が一人前になるまで守ってくれるって言った!やくそく、破っちゃいやだ!しのぶが戦って傷つくくらいなら・・・(わたし)が戦う!」

「簪・・・マドカ・・・」

それ以上は何も言えず、忍はサングラスをかけて二人を抱きしめた。

この二人に、情けない男の顔は見せられないと思ったのだろう。

ボゥイはそんな忍に感動よりも、共感をより強く覚えた。

 

オレ達は仮面を被っている。

サングラスやIS量子で本当の顔を隠し、全身装甲(フルスキン)IS(仮面)で戦いに赴く狂気すらも隠す。

仮面(それ)さえ被れば愛も使命も全てを忘れられる、哀れな仮面舞踏会(マスカレイド)の住人だ。

・・・そんなオレ達に、本当に生きる意味などあるのだろうか?

 

人知れず思うボゥイには誰も気付かず、豪は頭をかいて話をまとめる。

『我々の敵の名はエデン。エデンは世界中の権力や地位を掌握しており、こちらがどう動こうが必ず後手に回ってしまう。束すら下手に動けんのが現状だ。どうすればエデンを止められるのかは分からんが、少なくとも今狙われているのはIS学園、地下深くに隠された凍結状態のIS・暮桜だ。我々は全力でこれを守らねばならん』

 

「暮桜を奪いたいのに日本ごと銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)で吹っ飛ばそうとしたのか、奴らは」

「凍結状態の暮桜はいわば、別次元に存在しているのと同じ状態だ。位相空間にいると言った方が早いか。だから物理的攻撃では破壊できん」

ラウラの疑問には千冬が答える。

暮桜を操っていたのも凍結に立ち会ったのも彼女なのだから、知っていて当然だ。

「なるほど。ならばどうやって奪うのです?」

「それを考える時間も欲しいから、連中はIS学園を乗っ取りたいのだろう。ゲルトナーが起こした事件を不祥事扱いしてIS学園を廃校し手中に収めようとしたのも、束がそれをさせじと姿を現わした事も、それで納得がいく」

「見事な辻褄合わせです、教官」

「・・・・・・辻褄合わせと言われると少々馬鹿にされている気がしなくもないな」

尊敬する千冬の推論に目を輝かせるラウラには決して悪気はないのだが、言葉選びにいまいちが過ぎる。

 

「待たせた、リョウ!」

「遅いですよ、相棒」

そうしてまた綾たちが作業に戻ってから一時間程。

食事やシャワーを済ませた一夏達が格納庫内へと姿を現わし始める。

綾や簪はこうした作業が三度の飯より大好きだから一刻でも早くと着替えもせず進めていたわけであるが、他のメンバーは基本的に平常運転でいてくれと頼んだのは他ならぬ綾だ。

ラウラだけは綾に気を遣って一緒にいるのであって、ボゥイに関してはシャワーは必要なく、本来であれば食事すらほとんど必要のない行為だ。

食べる事自体は好きであるが、絶対というわけではない。

それでも、シャルロットがワゴンに乗せた食事を運んでくると、喜んで飛びつくラウラとボゥイである。

「助かったぞシャルロット!危うく一食抜くところだった!」

「いやぁさっすが気遣いの女シャル子!こいつぁ良い子ちゃんスタンプを圧してやらにゃならんかもしれねぇ!」

「もう、大袈裟なんだから・・・」

 

本日のメニューは凰 鈴音特製酢豚定食だ。

パイナップルやマンゴーなどは入っていないが、隠し味にイチゴジャムが投入されている。

からっと揚げられた豚肉と、炒められた野菜にからむ甘酢はそのためか甘さが柔らかく、酸味を損なう事も無く程良い味わいを醸し出している。

かつて幼い一夏が毎日でも食べたいと絶賛し、鈴をドギマギさせた程の逸品である。

 

「うっま!!なんだこれ美味いぞ!!うーーーまーーーいーーーぞーーーっっっ!!!」

「迸る甘味・・・ッ!だがしつこくなく、爽やかに駆け巡る酸味とのハーモニーが食欲をそそる・・・ッ!ああ、刻がみえる・・・ッ!!」

 

あまりの味の奥深さに巨大化してIS学園をISとして身に纏うラウラ(イメージ)。

そして広大な宇宙空間へと放り出されて白鳥と共に銀河を駆けるボゥイ(イメージ)。

 

全身から光を吹き出しながら美味しさをアピールするラウラとボゥイであるが、同じものを口にする綾と簪は「・・・美味しいけどそんなに?」といった風の呆けた眼差しで彼らを眺めていた。

作った鈴本人ですら、「あたし何か変なもの入れた!?」とパニくる程である。

感涙にむせぶ二人は、空腹がスパイスとなったというのもあるのだろうが余程美味しかったようで、各々のリアクションを取りながらもご飯をお替りしながら語る。

「なんかこう、なんかこうなんだ。刻が健やかに育てた味というか」

「ああ、分かるぜお嬢。愛しい味よもう一度、誰も一人では生きられないというか」

『ア・バオア・クーに帰れ』

 

あっという間にたらふく平らげてご馳走様でしたと叫び、大の字に寝るラウラとボゥイ。

片付けるシャルロット達が変な目で見る中で、二人は拳を重ね合わせて心を通わせていた。

「さすが鈴、わたしの嫁だ。これから毎日おまえの作るご飯を食べたいぞ」

「お、なんだいお嬢とリンちゃんはそういう関係かい?結婚式にゃ呼んでくれよ、父兄枠で参加すっぞ。なんなら仲人やるぜ」

「ふふふそれは良いなシューマッハよ。いやさ、ボゥ義兄(にい)とでも呼ぼうか?」

「いいね」

「良くないわよ!?なに勝手に話進めてんの!!」

「僕の預かり知らないところで兄妹増やさないでラウラ!!」

流石に黙っていられない鈴と綾であった。

また、ボゥイの他者を呼ぶ時の仇名もかなり極まってきた感があるなと思うシャルロットである。綾が少年でラウラがお嬢て。

 

あとはボゥイが呼んだ事の無いのはセシリアだけかー、とシャルロットが考えていると。

「そういや少年とですわは付き合ってんだっけ?だったらお前さん達もオレを兄さんと呼んでいいんだぜ」

「でっ、ですわ!?わたくしの事!?」

綾の作業を後ろから覗き込んでいたセシリアが金髪を逆立てで振り返る。

よりによってそこ拾うかー、と目を線にするシャルロットである。

「おう。なんか妙な言葉遣いしてるし狙ってんのかなってさ」

「こういう話し方ですの!変な呼び方しないで下さいまし!」

「あははははは!ほら変な喋りkウボァーーーーーーー!!?」

「そういえば貴方には研究所行きの車の件で借りがありましたわねぇ!!」

下はコンクリートだというのに全身の体重をかけてボゥイの鳩尾へと肘を落とすセシリア。

どうにも彼氏の影響なのかプロレス技を多用している今日この頃である。

その影響はシャルロットにも及んでいるのだがそれはさておき、千冬の鉄拳でもびくともしなかったボゥイがそれでダメージを受けるはずもないのだが、消化中の酢豚を吐き出すのを堪えているのは確かであった。

「や、やるじゃねぇかですわ・・・ってあだだだだだだだ!!もげるもげる!!」

セシリア追撃のクローバー・トゥ・ホールドでコリコリと足首をねじられていくボゥイ。

打撃にはめっぽう強いボゥイだが、もしかしたら関節技には弱いのかもしれない。

 

「というか彼氏の前で他の男とベタベタするのやめてくださいな」

「はっ!わ、わたくしとしたことが・・・!」

ようやく席を立ってセシリアを羽交い絞めにして引っ張っていく綾。

なかなかに白熱したレスリングであったが、確かに恋愛対象でない男とのスキンシップとしては相応しくないかもしれない。

「・・・大丈夫?ボゥイ」

「おう・・・何で頭抑えてくるんだシャル子・・・」

傍ら、うつ伏せに倒れたままのボゥイの頭をぐりぐり手でおさえつけながら声をかけるシャルロットの表情に浮かんでいるのは、あからさまな嫉妬の色であった。

ここまで色濃くこの感情を浮かべる事は、綾に恋していた頃にはなかったシャルロットの一面だ。

そんなシャルロットの様子に気付いたのは鈴と綾だけであり、しかし口で指摘する事無く少しほくそ笑んだのみであるが。

 

「遊びが終わったら早く作業始めますよ。簪さん、装備の方はお願いして良いですか?」

「うん、挑戦してみるわ。新装案のバスター兵器と、近接戦闘用マニュピレータ・・・それに、ウイングフローターね。これが全部実装されたら第四世代なんてレベルじゃないけれど」

「なぁに、第三世代と言い張りますとも」

ディスカッションの結果、綾はコアの改造に専念する事となり、発案・設計した武装の調整と精製は簪を中心に全員でかかる事となった。

これまで綾が皆へ送っていたものを、巡り巡って返してもらう事となった形だ。

 

「バスター兵器二つはナレッジのあるデュノアさんとボーデヴィッヒさん。シューマッハ君も手伝ってあげて。マニュピレータの方は織斑君と篠ノ之さん、凰さん。ウイングフローターはオルコットさんとミーアとダーシャ、それと本音。私が全体の進捗を管理します」

『このおれがサポートするから安心しろ』

簪と豪が自信ありげに宣言し、各々が頷いていく。

 

「かなり緻密な作業が必要だね・・・でも、頑張るよ!」

「うむ、バスター兵器の扱いは鶴守家の基本だ」

「へへ、オレも心は鶴守家みたいなモンだしな!」

意気込むシャルロット、ラウラ、ボゥイ。

 

「俺達、設計の経験はないけど大丈夫か?」

「なに、為せば成るさ!」

「というか授業でマニュピレータの設計やってるでしょ。その延長よ、出来ない事ないわ」

「い、意外とインテリなんだな鈴・・・」

「本当に意外だ。鈴音おまえ、馬鹿じゃなかったんだな・・・」

「馬鹿はあんたらよ!!」

ちょっと不安な一夏、箒。最後の希望である鈴。

 

「それにしても、よくこんな装備を思いつきますわね。自分の彼氏ながら脱帽ですわ」

「ねーねー、鶴守くんとの馴れ初めとか聞かせてよセシリアちゃん!」

「そうそう!他人のコイバナとかマジおいしいっしょ!」

「これは第二回『ドキドキ!セラちーはぢめてのデート大暴露大会』開催かにゃ!?」

「貴女達目的を勘違いなさってない!?」

やる気十分なセシリアに水を差していくミーアとダーシャと本音。

 

そしてそれら全ての作業に目を通していく簪、豪。

また、マドカは忍の手を引き、

「・・・しのぶ、(わたし)にもISをちょうだい」

綾や簪達を見据え、決意の眼差しを作るマドカに目を丸くする忍。

もうISや戦いからは身を引いたと思っていた娘の言葉を意外そうにしていると、マドカは忍を見上げて縋る様に言った。

「譲れない想いがあるから戦うって、なんとなくわかった気がする。守りたいものがあるから戦うって、皆を見てて理解出来たの。だから、(わたし)だって・・・無力じゃいられない。かんざしとしのぶ、それに皆を守れる(わたし)になりたい!」

「・・・そうかよ。なら使いこなしてみせろ」

頷いた忍は、懐から二対のイヤリング―――束が回収したサイレント・ゼフィルスを改造したISの待機状態であるそれを、マドカの手へと握らせる。

そしてしゃがみ込み、目線を合わせて言う。

「ファースト・シフトと訓練にはおれが付き合ってやる。何のために戦うのか、何に力を振るうのか、何を伝えたいのか。それをよく考えながら使え」

「うん・・・!」

受け取ったイヤリングを身につけ、マドカは力強く頷いた。

忍が訓練に付き合うという事は、彼女がジョーカーから受けた心的外傷(トラウマ)にも立ち向かう必要があるという事。

言われずともマドカにはその覚悟がある。

「なら私も協力してやろうか。待っていろ、空いている練習場を手配してやる」

「ねえさま、ありがとう!」

千冬の提案に礼を言い、マドカは耳のイヤリングを鳴らして忍へ問う。

 

「しのぶ、この子の名前は?」

「黒騎士―――」

 

忍の回答に、すこし驚いた顔をするマドカと千冬。

かつて千冬が駆った白騎士をオマージュした機体名であるが、忍は少し考え込んで首を振ると、マドカの肩に手を置いてこう言うのだ。

「だが、これは束が考えた名前だ。お前はお前、架神 マドカだ。織斑 千冬に縛られる必要はねえ。だからといって繋がりを捨てる必要もねえ、わかるな?」

「うん・・・わかるよ、しのぶ。いまの(わたし)にはわかる。ねえさまの代わりじゃない、だけどねえさまの想いは継ぐ。そういう事なんだ」

「マドカ・・・」

千冬はすこし震える心を堪え、目の前の少女を見やる。

姿や生い立ちは似ていても、この子は素晴らしい環境に身を置いている。

ブリュンヒルデなどと仇名された自分よりもよほど、大きな成長を遂げている。

そして自分の運命に立ち向かうべく、織斑としての立場は捨て、されど絆は保ったまま。

マドカは自身のISへと名を授ける。

 

「立ち向かおう、運命の黒騎士(フェイト・ザ・ブラックナイト)・・・!」

 

色は義父、形は義姉、その名は自分自身として。

束式ツインドライブ搭載機であるフェイト・ザ・ブラックナイトが今、目覚める。

 




素直に黒騎士と名付けられない我。
いやもう、黒騎士って言われるとバッシュ・ザ・ブラックナイトしか浮かばんのよ。

知ってる?バッシュ・ザ・ブラックナイト。
エルガイムのHMバッシュをファイブスター物語のMHとしてリデザインした機体。
ナイトオブゴールドもオージェもLEDミラージュも好きだけど、これも好きなのよ。

知らない人は画像をググってみよう。めっちゃカッコいいぞファイブスターの機体は。
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