インフィニット・ストラトス リビルドワールド   作:しびれあくせる

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憎しみを映し出す鏡なんて壊すほど

リベリオンの大弓がアモンの大剣と衝突し、摩擦で火花が散る。

力ではツインドライブ搭載のリベリオンが圧倒出来るはずだが、アモンのパワーも引けを取らずに熾烈な争いが繰り広げられていく。

中央から大きく咢を広げた大剣の噛牙を、つっかえ棒でも入れるかのようにイチイバルを挟んで止め、ダインスレイフという短剣を番えて発射するリベリオン。

それに触れる事は大きなダメージに繋がる―――既にリベリオンのデータを研究し頭に入れてきた宇泽は体勢を斜めにしてかわしながら蹴り剥がし、ブーメラン上の鍔を投げ放つもそちらは同様に投げられたダインスレイフと相打ちとなる。

一進一退の攻防の中、アモンが、周 宇泽が叫ぶ。

「おまえさえいなければ!おまえさえいなければ、オレは幸せに生きられたんだ!!優しい母も、頼れる父も、壊れて離れ離れになる事は無かったんだ!!」

 

宇泽は全てを知っていた。

自動車事故に見せかけられて大怪我を負った彼は、エデンのエージェントによって顔を潰されボロボロだったボゥイと入れ替わられ、そのまま回収されていった。

彼が狙われた理由は単純に、ボゥイと背格好が似ていた・・・ただそれだけの理由だった。

エデンの研究所へ連れていかれた宇泽は再起不能なほどの肉体を、改造手術の実験として成長に合わせて幾度も重ねられていった。

無事だった生身の部分は残され、脳の半分以上を機械化され、四肢を取り替えられ、内臓の殆ども有機部品と入れ替えられた。

最近では、ボゥイのリベリオンを参考に、疑似的なツインドライブの実験としてISコアを体内に組み込まれた。

ゆえに未だ出力は不安定ながらも、こうしてリベリオンと互角の戦闘をこなしているというわけだ。

 

彼は思った。

自分がこんな身体となってしまったのは、全てボゥイと名乗るあいつが悪いのだと。

脳を改造され、その思考を暴走させていった宇泽は、諸悪の根源がエデンであるなどと考える事は出来なかった。

エデンの意志は正しい。悪はそれに逆らう者。

いち戦闘員としてエデンに取り込まれた彼には、そう思い込ませる方が管理が楽だった。

その事実を偶然に知って尚、宇泽はボゥイが、ボゥイだけが許せなかった。

 

何を犠牲にしてでも、自分の全てを壊したあいつの人生を、滅茶苦茶にしなけばならないと。

 

それが彼にとっての全て。成し遂げるべき復讐なのである。

 

「おまえがオレをこんな身体にした!おまえがオレを悪魔(アモン)にした!許せねぇ、絶対に殺して、殺して、殺し尽くしてやるぁ!!」

「おまえがオレを憎もうが、オレはおまえのために死んではやれねぇ!オレは叛逆者(リベリオン)!シャルロットのために、仲間のために戦う仮面の騎士だ!おまえがオレの敵となるなら、戦って打ち倒すだけだ!!」

「黙れぇ囀るな!!屈服しろ、無様に泣いて許しを乞えぇぇ!!!」

 

剣と弓での打ち合いを続けながら、アモンは背部のスタビライザーを触手のように伸ばしてリベリオンの背後を狙う。

挟み撃ちにされたボゥイはしかし、全身を発光させると背部スラスターの配置を全て下方向へと変えると肩アーマーを下げ、爆発的加速で上方向へと離脱。

「なに!?」

データにない動きを目で追う宇泽、楕円上に飛び去りながらボゥイはアモンへ体当たりを敢行すべく飛来する。

「ストライド!ブレイカーーーーッ!!」

全身をIS量子の波動で包み込み、空中を飛び回って身体全体でタックルを敢行するリベリオンの大技。

シュヴァルツェア・ガーベラの輝く太陽の盾(ゾネ・スヴェル)と似ているが、こちらの方が威力が低いぶんスピードがある。

 

縦横無尽な前から後ろからの衝突に翻弄されるアモン。

形勢不利と悟った宇泽は追随してくるリベリオンから逃げるようにブーストし、反転するとカウンターとして最大威力の一撃を見舞うべくエネルギーを溜める。

「調子に乗るなよ!サイコバスターーーーーーーーーッッ!!!」

頭部へ集中された量子が反物質エネルギーと化し、咆哮と共に赤き激流となって放出される。

リベリオンのフェルミオンブラスターと違い、エネルギーチャージに時間をかけず速射が可能としているのだろう、破壊の奔流に飲み込まれまいと体勢を横にしてどうにか回避しようとするボゥイ。

「ぐぅぅぅぅっ!!!」

しかし完全には回避しきれず、右腕の一部分が熱にて焼け焦げていくリベリオン。

直撃を免れただけでダメージは大きい。だが、生きているならまだ戦える。

洪水の様な粒子の流れからはじき出されたリベリオンは、瞳から意思を失うことなく雄々しく叫ぶ。

 

「くぅ・・・おおおおおおっ!!イグニッションブーーーーーストッ!!」

「なんだとぉ!?」

 

この上さらに加速して、発射体勢を解除したアモンの顔面を抉りながら掴むリベリオン。

勢いに任せてグラウンドの土へと叩きつけ、地を抉りながら加速を続けて鋼鉄製の壁へとアモンをぶち当てたリベリオンは、その胸部に仕込まれたISクリスタルを露出させ、大量のフェルミオン粒子を収束し始める。

 

「い、いかんっ!だから使うなと言ったろうにっ!!」

 

モニターしていた豪が頭を抱えるも、もう遅い。

ボゥイ・シューマッハという男は・・・バカなのだから。

 

「フェルミオンッ!!ブラスタアアアアアアアアアアーーーーーーーーーーッッッ!!!」

 

翠玉色の輝きが、閃光となってアリーナ内部を再度染め上げる。

美しくも儚いエメラルドの光は至近距離から強靭なアモンの装甲を灼き、次第に崩壊させていく。

その威力はアリーナの壁とバリアを貫通し、外で戦闘していたゴーレムの群れを巻き添えに直線を描いていく。

 

「ぐぉあああああああああああああああああああああああ!!!」

 

ゼロ距離からのフェルミオンブラスターの熱に、痛みに悲鳴をあげる宇泽。

ISのバリアスキンは勿論の事、装甲の半分以上が使い物にならなくなっていく様に、仮面の下の表情を怒りの憎悪と屈辱の涙で着色していく。

「くそっ!くそぉ!!なぜだ、なぜオレが負ける!なぜ勝てない!!」

正義はこちらにあるのに。自分の方が正しいはずなのに。

この世の理不尽全てをボゥイとリベリオンの中に見た宇泽は、最後の力を振り絞ってリベリオンの手を離させると、無理矢理天空へとイグニッションブーストで離脱していく。

 

見上げるリベリオン。見下ろすアモン。

 

「次だ・・・次こそおまえと、おまえの大切なものをグチャグチャにして殺してやる!!」

 

捨て台詞ひとつ、どこかIS学園外の領域へと離脱していくアモン。

強烈な執念と憎しみを抱いた彼との戦い、これから長くなるだろうボゥイと宇泽の第一ラウンドは、ボゥイに白星がついたようである。

しかし――――。

「ぐ、う、ぐぅ・・・!」

無茶な状態で―――ISクリスタルが完全に修復されていないままフェルミオンブラスターを放ったボゥイは、そのまま膝をつくと前のめりに倒れ伏してその装甲を崩しながらISを解除させていく。

生身のボゥイ・シューマッハとなった彼は息を荒く吐き、そのまま気を失っていった。

「シューマッハくん・・・!」

同様に気絶したセシリア、鈴、本音を回収していた簪が駆け寄り、その身柄をかかえて格納庫へ向かう。

この一戦がボゥイへどれほどの負荷を与えたのか、すぐに検査する必要があった。

 

エデンの男性操者、残り3人である。

 

 

========================

 

 

「ふぅん、U号を退けたか。やるじゃないか、お前のお仲間は」

褒めているのか嘲っているのか、おそらく後者であろう京秋の言葉が耳障りに一夏に響く。

箒を庇いながら京秋の凄まじい連続攻撃を防ぐのは今の一夏の技量では厳しいが、かといってやらざるを得ない。

「ボゥイはな・・・俺が羨ましかったんだとさ!お前と言ってる事は同じなのに、どうしてこうも違うんだろうな!」

京秋たちが現れる前、格納庫で聞いたボゥイの告白。

暗い場所にいたものにしか分からない嫉妬、その抑えきれない衝動を。

ボゥイ程の強さを持っていてもそんな感情に縛られる・・・目の前の京秋が―――自分と同じ顔をした人間が輝ける人間性を持っている事は、そんなにも辛く感じるものなのか。

一夏には共感できない、でも理解はした。

自分に分からないだけで、そう感じる者はいるのだろう。

きっとそういった負の感情も正しいものなのだ。だが。

 

「ボゥイは、結局は乗り越えた!乗り越えようとしてくれた!お前と違って俺への嫉妬や憎しみに負けなかった!だからあいつはお前より強い!自分にすら打ち勝てないお前なんかより、ずっとな!」

「はは、笑えるなぁ!自分の感情に素直になれないのが強さだって?そんな考え方、お前にとって都合がいいだけの話だろう!!」

 

白虎の蹴りを尻尾で弾かれ、バックブローのように振るわれる零落白夜のクローを仰け反ってかわす一夏。

続けざまに放ったフック気味の一撃は左腕のシールドで防がれ、下方向から振り上げられる吹雪での零落白夜をサイドブーストでよける京秋。

技量に差があれど、一撃にて勝敗を決する零落白夜同士の決闘は綱渡りの如く。

どちらに転ぶかなど分かりはしない。

「強さっていうのは力だ!技だ!心の持ち方なんて関係ない、ただ最後に立っていた者だけが語れる正義の事だ!千冬姉の弟を名乗るくせに、それも分かんないのか!?」

「お前が千冬姉をそう呼ぶんじゃねぇっ!千冬姉の強さはそんなところにあるんじゃねぇ!」

強さの在り方、その問答は平行線を辿って答えなど出はしない。

互いが互いの譲れぬ信念を、目的をもって零落白夜をぶつけ合う様、それを見つめながら箒は手を震わせる。

 

「一夏・・・ボゥイ・・・!」

 

自分と同じように戦意を失っていたボゥイはシャルロットの手を取る事でまた立ち上がった。

だけど、自分はどうしたらいいのか分からない。

もしも本当に、エデンに父がいるのならその真意を確かめたい。

本当に、IS学園地下に母がいるのならすぐにでも助け出したい。

けれど・・・けれど。

そのために、一夏や他の仲間達を裏切って、京秋の手をとるべきなのか。

自分が取るべき手は、一夏なのか。京秋なのか。

揺れる心は方向を定める事が出来ずに、視界を黒く狭め続ける。

 

一方、億春は一夏を狙うその切っ先を忍に阻害されていた。

強烈な雷撃は零落白夜の指向性を歪め、高威力のハンマーはドリルで砕かれ。

最終的にはドリルの射程より内側にて、ベアナックル同士での殴り合いを開始する。

零落白夜が効果薄な全身装甲IS相手には有効だと思われたが、忍自身の目の良さとボクシングテクニックでなかなか有効打につながらない。

逆に忍からも、殴っても殴っても前へと踏み込んでくる億春の気迫により、肩や頭にしか攻撃が上手く入らない。

若さゆえの猪突猛進が、百戦錬磨の老獪なテクニックを抑え込んでいる形だ。

 

「脳筋のバカだと思ったが・・・嫌いじゃねえな」

「うるせぇ!のらりくらりと避けやがって!さっさと、どきやがれぇ!!」

 

億春としては手早く一夏と千冬を殺して自分自身を確立させたい。

それを邪魔する忍の存在は地獄の門番さながら、超えるべき壁となっていた。

双方ともにピーカーブースタイル、内へ内へと入り込もうとする億春と、ある程度の距離を離して打ち合いたい忍。

白と黒の肉弾戦。削り合うように振るわれる腕と腕。

合金製の装甲の打撃合戦はがつりがつりと金属音を立てながら激しさを増す。

 

「隙だ、一夏ぁ!!」

攻めきれず、退かずの戦いを続けていた一夏と京秋であったが、やがて京秋は一夏の大振りの間隙を縫って顔面を掴むと、アリーナのバリアへと白虎を叩きつけてこすりつける様に上昇していく。

「ぐっああああああああ!!」

「い・・・一夏っ!」

摩擦にて生じる衝撃と熱に悲鳴をあげる一夏。

その声にようやく我へと返る箒。

考えている場合じゃない、今守るべきは一夏だ。

父の事も、母の事も、後で皆に相談して決めるべき事だろう。

自分の判断の遅さが一夏を傷つけた、それを悔いながら京秋へブーストしていく箒だが。

 

「はっ、逆らうか箒!!」

 

通常の人間よりも視界が広いのだろう、京秋は勢いよく一夏を放りだすと朱雀へ荷電粒子砲を三発放ち、迷いからか動きに精彩を欠いた箒はその全弾を真正面から受けてしまう。

「うっ、あああああっ!」

「箒っ!」

土煙をたててグラウンドへ落下した箒へ、追撃の荷電粒子砲の雨が降り注ぐ。

度重なる戦闘でバリア残量を損耗していた箒はそれでISを解除させられ、それでも攻撃をやめない京秋。

生身の箒を庇いに入る一夏。

「ぐああああああっ!!」

一夏もまた、戦い続けて大きく損傷していたところの直撃である。

あっという間にISを解かれ、ようやくそこで京秋が手を止める。

腕から煙る白煙へふっと息を吹きかけた京秋は、満足気に醜悪な笑顔を浮かべると今度は上昇し、天蓋へ退避させられていたシリーズ―――マドカの仲間であるエレンやナユタ達へと荷電粒子砲を向ける。

 

「なぁ、一夏。お前は優しい奴だよなぁ?なら、目の前でこうしてお前の妹共を殺されたら、辛いだろう?」

「な、何をっ!やめろ!!」

「何人死んだところでお前は泣くかなぁ!?」

 

そこかしこを血で染めながら制止する一夏、顔色を青く染める箒。

コンマ1秒でチャージを終える粒子砲、戸惑いがちに身を固めるシリーズの少女達。

「ひっ―――」

 

無慈悲に放たれた灼熱の弾丸は、弧を描いて少女達の中心で大きく爆発を起こした。

 

とどろく悲鳴、飛び散る人体、流れる血。

 

戦いを見守っていただけの彼女達は、あろうことか味方側のISによってその命を絶たれてしまったのである。

「あ、ああっ・・・!」

その光景に瞳孔を開き、震えるマドカ。

ダーシャやミーアと戦っていたシリーズの少女たちもまた、そんな仲間達の死に次第に戦意を失っていく。

 

「くぅううっ・・・!え、エレン!エレンっ!?」

「うぐっ・・・うああっ・・・!」

咄嗟にナユタへ覆いかぶさるように庇ったエレンは、生きてはいるものの背中に大きく火傷を負い、痛みに悶絶していた。

その向こうでは、先程まで一緒に話していたアスカが、コルデが、ヒルダが。

いや、彼女達だったものが。

千切れた腕や頭だけが転がり、蒸発した血液がむせ返る様な嫌な臭いを発するだけとなっていた。

「こ、こんな、こんなことって・・・!!」

同じ顔をもったきょうだいの死に、絶望が、悲しみが、痛みが苦しみが、ナユタとエレンを襲う。

 

ぼろぼろと涙を流して恐れるナユタ。

近づく死の気配に息を細くしていくエレン。

そして、悲しみの中に怒りを爆発させたマドカが、勢いを増して京秋へとイグニッションブーストで襲い掛かる。

 

「おまえっ・・・!!どうして、こんな!!」

 

叫びながら振るわれたビームセイバーは容易くかわされ、反撃の零落白夜が黒騎士へと突き刺さる。

「く、くそぉ、くそぉぉっ・・・!」

悔し涙を流しながら意識を断ち切られるマドカ。

そして。

「たかがシリーズの裏切り者が、俺に逆らうんじゃない」

ISを解除したマドカへと、出来上がった作品に興味を示さぬ芸術家のように。

冷酷な視線を向けた京秋は―――荷電粒子砲のターゲットをロックした。

 

放たれる光弾。

 

その業火は―――高速でマドカを庇いに入ったジョーカーの背中へと直撃した。

 

「ぐっ―――!!」

ぐらりと揺れる忍。

スコール、億春と連戦のダメージが祟っているのか、ジョーカーのバリア残量がレッドゾーンへと到達する。

「ははっ!楽しいな!エデンを裏切って歯向かい続けたお前が、そんなゴミを庇って死ぬのか!!」

笑いながら弾丸を撃ち続ける京秋。

意識を失ったマドカを守るために動けない忍。

 

散々煮え湯を飲まされた形の億春も京秋に続き、右肩のキャノン砲をジョーカーへと向ける。

「終わりだ・・・カスども!!」

「くそがっ・・・!」

マドカを抱いている以上、下手に電撃を放出できない忍は―――その攻撃もモロに食らう羽目となり、数十メートルを吹き飛んでISを解除させられてしまう。

「マド、カ・・・」

顔面の人工皮膚が破れ、中の機械をいくらか露出させながらもマドカがまだ生きている事を確認した忍は、そのまま立ち上がる事叶わずに倒れ伏したのであった。

 

「ちく、しょうっ・・・ちくしょおおおおおっ!!!」

慟哭する一夏。

結果的に何もしてやることが出来なかった箒の中に後悔が渦巻く。

 

 

ラウラもまた―――。

 

グングニールを起動して尚、加速を続けるアドルフの反応速度についていけず、ついにゼロ距離を取られ零落白夜のマシンガンで撃ち抜かれてしまう。

「うああああああぁっ!!」

悲鳴と共にISが解かれるラウラ。

パイルバンカーを構えて地へ降り立つアドルフのゲーティア。

「素晴らしかったよ、ねえさん・・・さあ、これで終わりだね」

「くっ・・・うぅっ・・・!」

強化人間ならではの再生能力なのか、零落白夜で撃たれて尚すぐに意識を取り戻したラウラは、立ち上がり痺れる身体を引きずるように後ずさる。

ひゅー、ひゅーとか細い呼吸で肩を上下させつつ、アドルフを見上げるその両目は赤く、希望を失うことは無い。

 

「ああ、最後までそんな瞳で僕を見てくれるんだね。嬉しいよねえさん。これからは僕の中で生きて、一緒ににいさんを殺しに行こうね」

「まったく・・・どこまでも病んだ弟だ」

 

苦笑いしながら、洒落たセリフを返そうとするラウラであるがもはやその声色も頼りない。

やがて尻もちをついたラウラへとバンカーを振りかぶるアドルフ。

 

「後は・・・まかせたぞ、綾・・・」

 

もはや戦える者の残っていない戦場で、勝鬨を上げるかのように―――。

 

 

一筋の光が煌めく。

 

ゲーティアの左腕が溶解する。

「?!」

驚きに振り返るアドルフ。

ISのバリアを貫通して強化合金製のゲーティアを貫くなど、一体誰に、どんな武器を使われたのか。

 

思いもすまい、ゲーティアの左腕を墜としたその砲撃が、IS学園格納庫から―――遮蔽物の向こう側から狙い撃ったバスター・ライフルの一撃である事を。

 

10分は既に経過していた。

 

完成した機体の初射撃にて綾は、新たなアマデウスは、ラウラの窮地を救ったのだ。

 

「やれやれ―――僕の出番を盛り上げ過ぎではありませんかね」

 

つい、と眼鏡の弦を押し上げつつ言う綾は、ゆっくりとピットに上がっていく。

 

その様子を見ていた京秋と億春も動けない、なぜなら。

突如として影を差した空を見上げ、そこに存在する飛行船に目を奪われていたから。

「あれは!?」

「まさか・・・!」

 

一夏と箒も気付く、飛行船に刻まれたエンブレム。

それが束オリジナルの抽象マークである事を知っていたから。

「束、さん?!」

「姉さん・・・!?」

 

簪が退避している今、高ステルスの飛行船の接近を感知出来る者はいなかった。

その飛行船の下方ハッチがゆっくりと開き、そこから二人の女性が飛び降りる。

一人は箒の姉、エデンやIS連合からその身柄を追われていた天災科学者・篠ノ之 束。

もう一人はその義娘にして束の身の回りの世話を務める少女、クロエ・クロニクル。

 

「いっくよ、くーちゃん!」

「はい・・・!扉を開け、ホライゾン・スターロード!!」

 

IS待機状態である黒鍵を光らせ、クロエが身に纏うはミッドナイトブルーの全身装甲(フルスキン)IS。

束が開発した四凶最後の一機、饕餮(とうてつ)

羊の身体に人の顔を持つとされるその機体の名は地平線の星座(ホライゾン・スターロード)

クロエ専用にセッティングされた機体は両手に大型の鍵を模した剣・キーブレードを装備しており、女性らしいボディライン、ゴスロリ風の腰部スラスターに天使の羽を模した背部ブースター。

フェイスカバーはリベリオンやジョーカーと良く似るものとなっている。

 

「天高く舞え、紅椿(あかつばき)真打(しんうち)!!」

 

そして束が満を持して自身の身に着けるのは、かつて箒へ送ろうとした紅椿の完成型。

ベースは紅椿と同じながら、より流線形にデザインを変え、椿の花を模したバーニアパック、同様に椿をモチーフとしたフィン付きのビットを装備。

武装は箒と同じ二刀の刀、雨月・真打と空裂・真打。

さらに背部には一本のバスター・ランチャーがフレキシブルアームにて固定されている。

 

―――バイザーをオンにして、カタパルトに両足を乗せた綾は、各部機能をチェックしつつ戦場と束たちを交互に見て、表情を引き締める。

 

散弾、速射弾、榴弾を選べるトルキッシュマーチは腰部に。

両手にはそれぞれ、長時間の放出が可能なフェルミオン砲、バスター・ライフルと、射程を犠牲に威力を増し小型化したバスターキャノン、バスター・マグナムを装備。

両腕にはマニュピレータを覆える展開装甲が内蔵され、その掌に陽電粒子をチャージする事の出来る格闘戦用溶断マニュピレータ【魔笛(ツァーバフロテ)】。

背部には更に威力と安定性を高めたバスター・ランチャー【アイネ・クライネ・ナハト・ムジーク・カスタム】の他に、合体・分離戦法が可能なフライトリフター【アヴェ・ヴェルム・コルプス】。

疑似人格たるアマデウスが操縦する事でその上に乗る事も可能であり、これによって接近戦の馬力やバスター兵器の命中率を向上させる事が出来る。

脚部スラスターにはシールドが組み込まれており、足を使った防御が可能。

ISという兵器での戦いを研究し尽くした綾が考えた、最強の移動砲台。

その名を四神の一角、コードネーム【応龍】。

通称は。

 

「鶴守 綾!バハムート・ノア、出るっ!!」

 

レールカタパルトが磁力により凄まじい速度で綾の機体、バハムート・ノアを撃ち出す。

バハムートとは大地をその背で支える龍魚、バハムート・ノアはそれをノアの箱舟に見立てたネーミングである。

全てを背負い、全てを繋ぎ、全てを守ると決めた綾の決意が、その名に詰まっている。

 

ほぼ音速で加速しながらもまるで安定感を失わない飛行でアリーナ中央へと位置した綾は、やってきた束と視線をかわすと頷き合い、ホワイト・テイルとホワイト・ブレスを薙ぎ払うようにバスター・ライフルを放出する。

 

「うおおっ!?」

「なにっ!?」

 

その威力はスタジアムの観客保護用バリアを容易く突き破るほど。

驚きに散開した億春にはクロエが、京秋には束がそれぞれ立ちはだかる。

 

「あなたの相手は(せつ)がします」

「てめぇ、ナメやがって!!」

「これ以上いっくんと箒ちゃんに手はださせないよ」

「・・・口だけでがっかりさせないでくれよ?束さん」

 

アドルフは歓喜した。

データにない機体を準備してきた綾が、自分のためにバハムート・ノアをこしらえたものと考えたのだ。

「間に合ったか・・・綾」

安堵し、かくりと肩を落として脱力するラウラ。

綾を見上げるアドルフは嬉しそうにスラスターを吹かし、

「ねえさん、後で殺してあげるから待っていて。僕、にいさんのところに行かなきゃ!」

「ああ、行ってくるがいい。派手な兄弟喧嘩になりそうだ」

言い終えると、糸が切れた人形のように気を失うラウラ。

その言葉を聞いて綾の目の前まで飛んでくるアドルフ。

 

ついに対峙した綾とアドルフ、同じ一族の遺伝子を継ぐ者、同じ顔、同じ眼差し。

「逢いたかったよ・・・にいさん!!」

「僕もさ、愛しい弟よ」

父の遺言に従い、救うため銃を向ける兄。

愛憎を抑えきれずに、殺すため銃を掲げる弟。

 

「さあ、殺してあげるよにいいぃぃぃいいいさんっっ!!!」

「救ってあげようとも、アドルフッ!!!」

 

亡国機業の襲撃から始まり、二時間以上にも及ぶ激戦の数々。

それもついに最終章の幕があがったようである。

 

箒に肩を貸しながらラウラを助け起こしに行く一夏は、ようやくやってきた親友の姿に安堵し、祈りを捧げていた。

「頼んだ、リョウ。俺は、おまえを信じてる」

 




ゆめよおーどーれ!こーのーほしのもーとーで!

いやぁ・・・初の死人が出ました。
まぁこのくらいなら残酷な描写タグいらないよね!ね!?

綾の新機体の名前はモーツァルト寄りにするか応龍寄りにするかで悩みました。
結局思いつかないから応龍寄りにしましたけど。

誰か!オラにネーミングセンスをわけてくれー!

後は地味に優遇されてるのはクロエね。
黒鍵ってwiki読んでもあんまり意味わからんってのもあって、
いいや四凶をあげちゃえってなりました。束の関係者だし。

そして紅椿復活!紅椿復活!
こういう面倒臭い設定かつチート機体は自分で使えよという考えのもと束の専用機となりました。
ちょっと細かいところ分かりやすくしたり調整しただけで、あとは束スペックと合わせて最強格。ヤバいですね☆
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