インフィニット・ストラトス リビルドワールド   作:しびれあくせる

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白騎士事件の真相

篠ノ之 柳韻がエデンの幹部であるという事が発覚したのは、束が15の時だった。

当時、インフィニット・ストラトスの雛型であるインフィニット・アストロノーツの開発が終盤に近づいたころ―――なんとはなしに父の書斎へ忍び込んだ束は偶然にもPCからある計画を目にした。

 

プロジェクト・リビルドワールド。

 

男性の支配による現状の地球構造の改革―――はじめは鼻で笑ってしまうような稚拙な考えだと思った束であったが、その計画の進捗が現実味を帯びている事に気付くのにさほど時間はかからなかった。

裏取りもすぐに取れた。

このバカげた計画に実際に振り込まれている費用、人員、秘匿性。

既存の兵器を軽く上回る戦闘兵器・ゴーレム。

その生産数・・・約2000。

倫理ではなく、力づくで女性を排除し、管理しようという構想。

全てが・・・時間をかけて計画された、男尊女卑を極めるための目論見。

 

それを発案したのは父、篠ノ之 柳韻。

承認者は―――エデン総帥、バラード・エデュケンシス。

 

束はその計画を知ったという証拠を隠滅すると、すぐに鶴守家の研究所へと向かった。

らしくもなく焦っていた。

彼女にとっては、この世界がどうなろうと知った事ではないのに。

たとえ自分に優しくなく、不要だと思える世界でも―――この世界には、大切な人がいる。

 

全てを受け容れてくれた豪が。

正しさを教えてくれたレオンが。

優しさを与えてくれた愛奈が。

愛しい弟であり義息子である、綾が。

 

自分がいてもいい、家族という空間が。

 

彼らが住む世界をそんな混沌に墜としてはならない、束はそう思った。

だから留守中だった豪の承認を得る暇もなく、ロールアウト間際の白虎と朱雀のコアを拝借し、エデンという組織に、ゴーレムという兵器に対抗できる戦闘用の機体を開発せざるを得なかった。

かくして、自分の秘密研究室での戦闘用マルチフォーム・スーツ、インフィニット・ストラトスの作成に取り掛かったのだ。

 

そうして組み上げたのが白虎のコアを流用して作成した史上初のIS、白騎士。

本来、朱雀のコアを使いもう一機作成するつもりであったのだが、その時点で束の元へエデンからの使者が通信を入れてきた。

あろうことか、それは束の父、柳韻であった―――。

父は言う。

 

『余計な真似はするな。もし我々に反抗するのであれば、今から1時間後に日本全国へミサイルを掃射する』

 

それが本気である事はすぐにわかった。

束の側からも、世界のあらゆる軍事基地がハッキングを受け、日本中のネットワークが高付加となり遮断されつつある事を。

束は天災と呼ばれるレベルの異常な頭脳と、その思考を実現できるほどの能力を持っている。

それでも、エデンの作り上げてきた組織力というものに一歩及ばずにいたのだ。

後手に回ってしまった束へと、投降を迫る父。

 

諦められない束は研究室を飛び出すと、偶然自分を探しに来た千冬を発見する。

今は自分がどうにかしてミサイルの発射を止めるしかない、もし発射されてしまった場合の保険として、白騎士を使用可能(アクティブ)にしておく必要がある―――。

束は出来る限りの平静を装って、戸惑う千冬へ白騎士を託した。

もし朱雀のコアを使用した機体が―――のちに紅椿と名付ける機体の試作型が完成していたならば、一緒に出撃する事も出来たのに。

それだけが悔いであったが、今はそんな事を言っていられない。

 

果たして、いくつかの軍事基地のミサイル発射は阻止できたものの、全ての発射をどうにかする事は叶わず。

測定できる限りで2000発近いミサイルが日本各地を目掛けて発射されてしまった。

後は千冬を信じるしかない―――不慣れな動きで発進していく白騎士を見送る束。

 

結果として、千冬が撃墜したスコアは1983発のミサイル。

 

残りの17発超が北海道北部へと落下し、偶然そこにいた綾の父母を含めた500人が犠牲となったのである―――。

 

束は即座にミサイルを撃破する白騎士の映像を世界中へと配信し、エデンという組織の計画に先んじてインフィニット・ストラトスという存在を公開する事で、ゴーレムによる力による支配へのカウンターとしたのだ。

あえて、これが女性にしか使えないというリミッターを備える事も忘れずに。

 

世界各地へプロモーションを行った束はいくつかの国と契約を結び、簡易量産したコアを一定量配布し、ゴーレムに対してアドバンテージを得られるほどの戦力を得るよう画策した。

結果として女尊男卑という歪んだ思想が蔓延する事となったのだが、束がこうしていなければ地球は男のみによって管理される惑星となっていただろう。

それだけギリギリの戦いだった。

それだけ、インフィニット・ストラトスという存在はエデンの計画の邪魔となったのだ。

 

だが、それでエデンは終わらなかった。

形成されたIS世界連合のトップに、エデンの総帥たるバラード・エデュケンシスが座ったのである。

更に連合は束の家族を保護プログラムの名目で軟禁し、ISコアを量産しなければ彼女達を殺すと脅しかけてきたのだ。

 

何を白々しいと束は思った。

自分にとっての家族はいまや豪と綾だけだ、レオンと愛奈を殺したお前たちが何を言う。

 

それに、父はもともとそちら側ではないか。

そんなものでわたしを脅せるとでも思っているのか―――。

 

だが、モニターに映る妹・・・箒の泣き顔を見た瞬間、その姿が両親を喪った綾と重なってしまった。

豪や綾に何も言わず、すべてを滅茶苦茶にしてしまった一因を担っているという負い目から、束はおとなしくコアの量産を行う事とした。

織斑 千冬を専属バックアップさせてもらう事、IS学園を設立させる事を条件に。

また、せめてもの抵抗として、ISが反応できる人間として綾が設定されている箇所はそのままに、彼女自身が認めた少年である織斑 一夏もISを使えるように仕込みを入れ。

いつか成長した彼ら二人が、インフィニット・ストラトスと共に世界を守ってくれるようにと願いを込めて。

 

数年が経過し、コアの生産量が1000を超えたある日、研究室にいた束はエデンのエージェントに強襲された。

第二世代まで研究の進んだインフィニット・ストラトスの世界において束は用済みと判断されたのだ。

鍵は隠し、箱は暮桜と共に千冬へ送ってある。

ならこの辺りが潮時かと判断した束は、箒の事が頭にちらつきながらも脱走し、姿をくらませることとなる。

悔やむべくは、突然の襲撃で零落白夜のデータを消せずに残してしまった事。

いつかこの能力が量産化されてしまう事を想定しつつ、束は準備していた自身の空中要塞へと立てこもり、逃亡生活を強いられることとなるのである。

 

束がいなくなった事で用済みとなった母は、IS学園を視察に来た千冬と交戦させられ命を落としたが、まだ年若かった箒はあえて放置に近い扱いをされる事で束を釣る餌とされた。

 

逃亡の最中で束はクロエを拾い、忍と出会い、白虎と朱雀を自分流に完成させて白式及び赤雷というカモフラージュを施して一夏と箒へと送る。

 

そして、ジョーカーとホライゾン・スターロード、紅椿と紅椿・真打を作り、今に至るというわけである。

 

以上―――これが、束から見た白騎士事件以降の顛末である。

 

 

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地下室から格納庫へと戻ってきた束たちを出迎えたのは、破損した顔の合成皮膚を隠すかのように包帯で覆った忍と、シャルロット、レティシアであった。

「暮桜は回収できたのか」

開口一番、忍からの問いかけに左手の薬指を掲げる束と豪。

「わたしたち結婚しました~☆」

「・・・・・・・・・」

何を言っているのか理解出来ずに、咥えた煙草をポトリと落とす忍。

この状況下で何ふざけてんだと口にしようとするも、どこか疲れ切った様子の綾と箒を見るに、冗談でもなんでもない事がわかってしまう忍。

 

「えぇっ!?ホント!?はっかせ、おめでとー!!」

何の違和感もなく受け入れるレティシア。

「け、結婚って・・・え、エッチなことしたんですか!?」

なんかズレた事を言う思春期シャルロット。

ラウラとクロエを交えてわいわいと束と豪を祝福にかかる一同。

 

空気の読めない歓迎ムードとなった一画、こうなると話が進まないと吸殻を踏み潰した忍は、千冬へと視線を向ける。

「で?」

「あ、ああすまん。あまりにも高速な展開で私も我を失っていた・・・」

一夏と共に呆けていた千冬が首を振って正気に還ると、至極淡々と情報の交換を始めた。

 

「暮桜は束が回収した。地下には箒の母の亡骸がそのままになっている・・・後で回収して、埋葬せねばならん」

「こっちは来賓のパニックを教師共が抑えるのにも限界が来てる。あげくに1時間後くらいにIS連合からの立ち入り検査が行われるらしい。逃げるなら今のうちだな」

「やはりか・・・ただ、束はこれから行く場所があるという。何人かうちの人員を借りたい様子だが?」

「ならおれとてめえは残留組だな。やってくるエデンの高官どもをやり過ごせるのは実質おれたち二人しかいねえ」

 

端的に状況の共有を済ませた忍と千冬。

そこへ簪とマドカがやってくる。

「私も残ります。姉さんが重傷を負ってる事もあるし、生徒会と協力して生徒達の説明責任を果たすつもりです」

(わたし)も残る。しのぶが心配だし、それに―――」

「ああ、生き残った姉妹たち、亡くなった姉妹たち。エデンに引き渡すわけにはいかん」

「ねえさま・・・!」

マドカの頭を優しくなでやる千冬。

織斑 京秋に殺されてしまったシリーズという織斑計画の少女達。

生き残ったのはナユタとエレンを含めて数人、既に戦意を失って別室にて保護してある。

重傷を負ったエレンは緊急治療室にて治癒を進めている。

助かるかどうかは五分五分だ。

 

「亡国機業の連中はどうしている?」

「スコール・ミューゼルには逃げられた。奴は改造人間だ、目を覚ましたところで今のIS学園じゃ捕まえておく場所も余裕もないから仕方ねえが、レイン・ミューゼルとフォルテ・サファイアは拘束して生徒会が詰問している。モルドスライムに取り込まれていた十数名はいまだ意識不明だ」

「あの草薙 葵という女はどうした」

「条件付きで協力するだとよ」

「条件・・・?」

そこまで話したところで、殺気を感じて振り返る千冬。

 

振り返った先には、鎖と手錠で雁字搦めに拘束されてパイプ椅子に座り、口だけで器用に忍から譲ってもらった煙草を吹かす短髪の喪服美女―――亡国機業 地の一族当主・草薙 葵の姿があった。

唖然とする千冬へと葵は白煙を吐き出しながら言う。

「貴殿との戦い、心より楽しめたぞ・・・織斑 千冬。またあのような戦いが出来るのであれば、我の知る亡国機業およびエデンの情報をくれてやっても良い」

「なんだと・・・?」

にやつく葵へ構えながら向き直る千冬。

千冬との戦いで重傷を負い、刀を没収されたといえど亡国機業の一員、何を考えているか分からない、が。

 

「なんでも、てめえとまた一騎打ち出来るなら協力してやるとの事だ。安い犠牲だな」

「架神、お前なぁ!!」

「実戦での勘を取り戻すには丁度いいだろう」

 

我関せずといった風に二本目の煙草を吹かす忍。

とはいえ、葵がただのバトルマニアで千冬との再戦を熱望しているという事だけは理解出来てしまう。

戦って分かった事だが、この女はそういう単純な女なのだろう。

楽しい戦いが出来れば陣営などどうでもいいのだ。

分かっていてもとてつもなく肝を冷やした相手である、出来ればあのような命のやり取りは御免被りたい千冬はしかし、提供されるであろう情報の価値を考えるとやむを得ないとも思えてしまう。

 

舌打ちをひとつ、苛立ったように忍からクールを奪い取った千冬はおもいきり煙を吸い込むと咳き込み、水が湛えられたペール缶へ放り込んでやると葵をきっと睨み、

「・・・言っておくがしばらくは拘束しておくし、刀は返さんぞ」

「承知しているとも。人を殺すにはペンの一本でもあれば十分だ」

「手首斬り墜とさないと駄目かこの女」

言いながらもダメージが大きいのかそれ以上は何も言わない葵。

そのやり取りを見ていた簪はあわわと戦慄し、

「お、織斑先生がしのぶさんと間接キスした・・・!ずるい・・・!」

「それくらいでオタオタしてんじゃねえよ」

まだまだ男女経験のない簪の額を指ではじく忍。

千冬はと言えば手近にあったペットボトルの水でうがいをすると一言。

「・・・口の中気持ち悪い。二度と吸わん」

そう決意したのであった。

 

 

さておき、誰が束と行き、誰が残るかという話だが。

 

「お爺様が束さんと行動を共にするというのなら僕も行きましょう。ラウラ、ついてきてくれますね?」

「当然だ。おまえの居るところにわたし在りだぞ」

いつものように、こつんと拳を当て合う兄妹。

「俺も行く。今は少しでも実戦で経験を積んでおきたい」

「私もだ。それに、姉さんともう少し話がしたい」

続く一夏と箒。

四獣組、チェックインである。

 

「博士が行くならうちも行くけど、行先はどこなん?」

レティシアが束に問いかけると、束は彼女に興味が無いのか淡々と、

「イギリス」

とだけ答えた。

それを聞いて綾は気絶したまま格納庫の簡易ベッドで眠っているセシリアを見やり、

「・・・連れていかなかったらセラは文句言うでしょうね・・・」

「うむ、連れていくか」

頷くラウラ。

愛国心強いイギリス人のセシリアを置いていけば、後でどんな雷が落ちるか分からないのだ。

「ボゥイも連れていくぞ。運びながら状態チェックする必要がある」

「ならボクも行きます!ボクはボゥイについていてあげたいんです!」

豪の言葉に手を上げるのはシャルロット。

今や彼と一番心が繋がっているのは彼女だろう、豪も拒否はしない。

 

「鈴はどうする?寝てるけど・・・」

一夏が言いつつ、セシリアの隣のベッドで眠る鈴へと視線を向けると。

彼女は眠ったまま手を上げていた。

意識はなくとも置いていかれるのは嫌なようである。

一夏は箒と顔を合わせて軽く笑うと、

「わかったよ。じゃあ一緒に行こうぜ、鈴」

「・・・んー・・・」

掲げられた手を取ってやると、寝言で返事をする鈴である。

 

簪のメイドである本音は仕方なしに置いていくことに。

 

「ではまとめますか。束さんと一緒に行くのは僕、一夏、箒、セラ、鈴音、シャロ、ラウラ。後はシューマッハとレティシアさんですね」

「ぶっちゃけいつものメンツだな」

「その方がやりやすいだろ?」

ラウラの茶々に一夏が口を挟み、違いないと頷く箒。

 

それなりの所帯となるが、束の飛行船の大きさを見れば問題はないだろう。

 

「話がまとまったら早くいこっか~!くーちゃん、飛行船をアリーナに降ろしてくれる~?」

「かしこまりました、束様」

束に乞われ、遠隔操作で飛行船の高度を下げさせるクロエ。

時間が惜しい今、束はせかすように豪と綾の背中を押していく。

レティシアとシャルロットは簡易ベッドの上で眠るボゥイをそのまま押し、ラウラは鈴を、一夏はセシリアを背負って後を追う。

箒は千冬を振り返ると、

「千冬さん・・・母さんのこと」

「ああ、こちらでやっておく。気にするなというのは無理かもしれんが、行ってくるがいい」

「はい・・・お願いします」

ぺこりと頭を下げ、小走りに後を追っていく箒。

 

格納庫から出ていく彼らを見送った千冬は、忍や簪を振り返ると、

「さて、ここからが大変だぞ。エデンをやり過ごし、IS学園を存続させる事。我々の役目はそれに全力をもってとりかかる、いいな?」

「はい」

「ふん・・・」

素直に頷く簪、三本目の煙草に火を点ける忍、そんな義父を心配そうに見上げるマドカ。

 

「ふふ。いざとなれば全員斬り殺せばいいのだろう?容易い」

「お前は黙って全部吐け」

 

まとめるかのように口を開いた葵を封殺する千冬。

 

なにはともあれ―――。

各々が、やれるだけのことをやるだけの事。

矢継ぎ早に迫る状況に、人間はただ翻弄されるだけなのだが。

その荒波をどう泳ぎ切るかは、またその人間次第なのである。

 

イギリス、そしてIS学園。

 

新たな戦いが、始まろうとしていた。

 

 




はいここでタイトル回収ー。
ようやく終盤に差し掛かってきた感ありますね。
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