「そうか。感情を喰う鬼か。」
「はい。そして、集めた感情を操っていた。」
いつも通りに防衛省に報告に来ていた。
「ということは、物理だけでは対応しきれないな。」
確かにその通りだ。
「それでは、研究してくれるね?」
「一つ、きいても良いですか?」
僕は彼を呼び止めた。
「なんなんだい?」
「前から思ってたことなんですけど。研究者でチームを組んだらダメなんですか?ほら、僕一人のみには重すぎて。」
僕は眉毛が一瞬引きつったのを見逃さなかった。
「そうか。考慮しておこう。」
その曖昧な言葉には、これ以上きくなという暗黙の威圧が潜んでいた。
{同施設、地下にて}
「行ったか?」
「はい、帰りましたよ。全く、鋭すぎて困りものですよ。あいつは気づいているかも知れません。」
和人と同い年ぐらいの少女が、笑いもせずに答えた。
「いいわ。どうせもうすぐ終わるんでしょう?そしたらご対面するじゃ無いの。」
「それでも、体裁は守っていただきます。あなたは、人間でありながら人間では無い、「強化人間」なのですから。」
少女は、モニターを見上げながらいった。「ええ、分かってるわ。」
そのモニターには、おかしなボトルと、そしてドライバー。
「皮肉なものね。「GOD」だなんて。」
{同時刻、喫茶&レストラン カシムラコーヒーにて}
「和人ってさあ、変な人だよね。」
唐突に、ナナがそう言った。
「ナナには言われたくは無い。」
心を込めて、僕はそう返した。
「え~、だってさあ、政府が嫌いなくせに頻繁に出入りするじゃん?」
「しなくちゃならないんだよ。誰かさんのせいでな。」
「擁護法がいやだー、て言うけど、守られてるのも事実だし。」
「ああ、そうだ。確かに守られている。それでも、縛りの方が大きいッつってんだよ。」
僕は振り向きもせずに返した。料理が追いつかなくてそれどころでは無い。
「{あ~あ、擁護法も政府も鬼みたいにドッカーンと爆発すれば良いのに}とか思ってるでしょ。」
え?
「何で、鬼が爆発するって分かるんだ?」
「あー、カズ君動画とか見なさそうだもんね。ほら、これ。」
そう言って二人の間にスマホを置く。十秒足らずの、短い動画だった。
情鬼が、爆発する。監視カメラに写っていたそうだ。
「この人の温室、野菜も果物も飛んで行っちゃったって。どうして竜巻なんか起こしたんだろ?」
「・・・。」
僕は、黙っていた。
(大人なんか、消えれば良い。金持ちなんか、いなくなれば良い。一度甘い汁を吸った人間は、その幹から離れようとしない。太った{既得権益者}どもには、苦痛にゆがむ顔がお似合いさ。)
僕は、ふと考えた。
(こんなにこの世が嫌いでも、何で人を助けるのか?それとも、僕は鬼を殺したいだけなんだろうか?)
いくら考えても答えは出なさそうだったので、その問いをやめた。
「爆発する。外傷によって爆発、空気。多分メタン。」
パソコンとにらみ合っていると、後ろから背中をどつかれた。
「なーに、それ。呪文?」
当然というか、地下室に来たのはナナだった。
「ノックくらいしろよ。」
本当に、こいつは礼儀がなっていない。
「何、千本ノック!?やったろか?」
「そのノックじゃねえし。やめろよなお前。こっちは忙しいんだから。」
「まーた、政府のことでしょ。」
その通りなのだが、何故か認めることが癪に障ったので、代わりに「ナナはのんきで良いね」と返した。
「もっちろん!店も終わったし、やることナシ!どこかのお兄さんとは違うのですよ。」
そう言ってケラケラと笑うナナ。
「今検証中だからちょっと待て。」
鬼の爆発は、おそらくメタンによるものだ。そうすれば、爆発も桁外れのエネルギーも説明がつく。ただ、メタンだけじゃ無い可能性もあるが、普通の生き物よりは多いはずだ。それを元にすれば、きっと探知機が作れる。効果は使ってみるまで分からないが。
ピピーン、ピピーンといかにもレーダーという音が鳴る。その中に、赤い点が映る。
ビィー、ビィーと音が急に激しくなった。
「しゃあ、実験成功!」
僕は疲れたからだと頭を休めようとした。しかし。
「これって、鬼がいるっていうこと?」
仮眠はもうしばらくあとになりそうだ。
「串刺しにしてしまえ~!」
そう言いながら、あちこちに針を飛ばす鬼。ハリネズミみたいな見た目だ。
「何やってんだよ鬼さん。」
僕は変身しながら話しかけた。
「来たな。お前が噂の男か。」
こちらに向けて、針を飛ばす準備をしている。
「そうだよ。仮面ライダーマス。あんたは?」
とげを飛ばしながらしゃべる。「我は棘鬼!針の鬼なり!」
飛んでくる棘をかわしながら、腹に蹴りを入れる。
「ガードがあまいぞ。。もう一発いれてやる。」
僕はそう言ってかけだした。腹に、みぞおちに、パンチが数発飛んでいく。
「おごお!」と棘鬼が声を上げる。そこで、僕は思いっきり蹴っ飛ばした。
「楽勝楽勝」僕は言いながら飛びかかろうとした。
すると棘鬼は、背中をこちらに向けて丸まった。防御なのだろう、確かに触ったらいたそうだ。
「ウエポン!グラフ!」
それを左手でとる。
「ディビジョン!ランチャー!」
僕はミサイルを飛ばした。それを針が迎撃する。
どうやら銃口を狙っているようだ。自爆させて楽に勝とう、ということなのだろう。鬼のくせにせこいことだ。
「マルティプリケーション!ダガー!」
「は!」僕は針を打ち落としながら、棘鬼めがけて走って行った。
「そうはさせん!」針が一段と大きくなる。
「ぬおりゃあ!」棘鬼が回り出す。あちこちに針を飛ばし始めた。
「ぐ・・・」なんとかかわすので手一杯だ。針は抜けても抜けても、すぐにまた新しい針が生えてくる。
「プラス!シールド!」
僕はダメージ覚悟の突進をした。
「おらあ!」棘鬼が転んで、動きが止まる。
「食らえ!」盾を下にして、ジャンピングプレスをした。針が数本折れるが、すぐに戻る。
「ぬあああなめるなぁ!」棘鬼が腕を針でぐるぐる巻きにして殴りに来る。
「おっと」盾ではじいて、カウンターのパンチを入れる。
「くうう」威嚇する猫のように、背中を丸めて突き上げる。
「おらあ!」は利がそこら中を飛び交う。面制圧しようとしているようだ。
「効かねえよ」盾で身を守りながら言った。
「だろうな」棘鬼はそう言うと地面を殴った。下のコンクリートが巨大な針になって盛り上がる。
「ぐあっ!」なんとかよけはしたものの、こすれた部分が熱い。
「なかなかすげー能力を持ってるじゃんか。」なんとか対策しなければならないだろう。
その時、棘鬼が急いで何かを古めかしい箱から取り出し、口に入れた。
そして、「ぬん!」と棘鬼が一言発した。一瞬、背中が緑色に光る。
すると針が鞭のように伸びて、こちらを刺そうと次々襲ってくる。
前にもこんなことがあったような。まさか!
「伸鬼の能力か。誰からもらった?」
棘鬼は愉快そうに笑っている。
「教えても良いが、奴にそんな力は無い。借り物の力に過ぎんよ。」
針が、足下に刺さる。飛び退いてよける。
「ああそうかい。」
何度か蹴りを食らわそうとしたが、そのたびに針がこちらを止める。近づこうにも近づけない。しっかり守られているので、攻撃するとこちらもダメージを負う。
単の棘鬼なら楽勝だった。しかし、針が伸びるとなると厄介だ。さて、どうしたものか。
「ベリエヴォル」
僕はレバーを起こしてyの四角を外した。ベルトが「インコレクト!」と叫ぶ。
そして、そこに代わりに「a」の四角をいれる。
レバーをたたいて、真ん中をまわす。スラッシュが出てくる。
「アンサード!」ベルトが叫ぶ。僕はレバーを再び倒した。
「マス!レイシャー!」
僕は確かめるように右手を数回ほど開閉した。
「さーて、テストの時間だ。」
僕は、殴りに行った。そのたびに、棘がそれを防ぐ。
「どうだ、頑丈だろう?」自慢げに棘鬼が言った。
「そうだな。」僕は武器を取り出した。
「マイナス!ソード!」
「よけれるか?」
僕は斬擊を飛ばした。針を地面に刺して伸ばすことで、棘鬼が浮いた。
「何だって?」
棘鬼がそういったときだった。斬擊が当たったかのように、吹っ飛んだ。
「どういうことだ?」棘鬼はこちらを見ながら行った。
「1度に2回切れるんだよ。曲線が二つだからな。タネが分かれば、どうと言うこと無いだろ?」
傷口が、みるみる治っていく。
「消えてしまえ。」針が複雑に絡み合って、こちらに向かってくる。
「プラス!シールド!」僕はそれをいなす。
「お返しするぞ」僕は、棘鬼に向かっていった。
後ろから、針が戻ってきて、体を縛られる。
「よけるなよ」そう言うと棘鬼は拳をかまえた。
「鬼砲!」叫びながら、腕を前に突き出す。光線が飛び出す。
「惜しかったな。お前如き、一撃あれば十分なんだよ。」
「ああ、本当に惜しかったな。」煙の中から現れた僕を見て、驚いている。
「僕は、光線をこのシールドで取り込んだのさ。」
右手に力を込める。すると、薄く発光を始める。
「この形態は、ダメージを受ければ受けるほど攻撃力が上がるのさ。」
「まさか、それでわざと受けてー」
「当たり前だろ。お前如き、一撃あれば十分なんだよ。」
僕は、思いっきり腕を前に突き出した。光線が飛び出して棘鬼を襲う。
「ぬうう!」棘鬼が、鬼砲を撃ってこちらの攻撃をそらした。
「当たれば、の話だろう?」
「ああ。」僕はボタンを押した。「そうだな。」
「ファイナルアンサー!」
十字が現れて、その近くにブーメランのような二本の曲線が現れる。
「今からお前をブッタ切る。」
十字の中心に狙いをすます。
「コレクト!」
僕は右手の曲線を投げた。斜めの風穴が出来る。続いて左手の曲線を投げる。曲線は交差して、「X」のあとがつく。
「ぐ、うう。うああ~!」
水晶を覗いている人影が、怪しく笑う。
「うん。やはり棘鬼をあてた甲斐はあったね。まだ形態を隠し持っていた。」
人影が水晶をなでる。
「さあて、次はどう出ようか。それとも、{どう出るか}、かな?」
フフッと笑い声が漏れる。
「それにしても、」
人影は続けた。
「我ながら、私は性格が悪いなあ。なあ、「和人」。フフッ。」
人影はそばの写真の表面をなでた。そこには、小さな和人と、ある男が映り込んでいた。
「・・・全くだ。」もう一つの人影は、その場を離れ、召喚陣のような物があるところに行った。
「どこへ行く気だ?」
「少し、憂さ晴らしをしてくるだけですよ。」人影の姿が、一瞬にして消えた。
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