ーSide.???
ピーッピー、ピーーー!
……松風天馬とフィリア・サンディーロの衝突。
新しい必殺タクティクスで突破口を見出せた雷門だったけど、フィリア・サンディーロの
ーーーまさか、こんなところであの力を目にするなんて。
結果的に、更に動きの良くなったブレイブニールに必殺タクティクスを封じられ、相手陣内に孤立する松風天馬。
フィリア・サンディーロと一対一となり、化身アームドを発動させながら攻める。
『ーーー諦めなければ、なんとかなるんだッ!』
なんとかなる……とてもそんな状況じゃないのは、見てる観客からしても明らか。
ーーーなのに。
「………凄い」
思わず、私はそう呟いた。
松風天馬の得意とするドリブルも、必殺技も、それらを化身アームドした状態でありながらも、フィリア・サンディーロを抜くことは出来ない。
ただ、
信じ難い事だけど、彼はこの攻防の中で、秒刻みに進化している。あのどうしようもないフィリア・サンディーロの力を前に、少しずつ対応しつつある。
器用ーーー試合前の私は、彼にそのような評価をした。
けど、違う。器用なんて、これはそんな低次元の話じゃない。
ーーー異質。
そう、サッカープレイヤーとして、彼はあまりにも異質だ。
ーーーお前となんて、一緒にプレーできる訳ないだろ。
ーーー異質なんだよ、お前。お前のサッカーに付いていくなんて、無理に決まってるだろ。
ーーー。
試合は二人の蹴りの衝撃により、膠着状態にあった。
力は拮抗しているーーー。
側からはそう見えるけど、未だ松風天馬は
僅かではあるけど、フィリア・サンディーロの方が力は上だ。
このままでは負ける。そう判断した時ーーー。
『ーーーッ、はぁぁぁぁぁああああッ!!』
『ッ!?』
バァンッ。
松風天馬の蹴りの力が急に高まり、ボールに掛かる力の均衡が崩れる。
ボールは弾かれ、二人のはるか上空まで上がった瞬間、試合は終了。
4ー2。
後半押していたように見えたけど、結果的には敗北。
……せめて後10分、時間があれば、今の松風天馬なら追い付くことが出来たのではないか?
今の彼を見てるとそう感じるけど、どの道たらればの話だ。
スタジアムは両チームの健闘を称え、拍手で溢れ返っている。
しかし私はそんな中、松風天馬というサッカープレイヤーに目線を外せないでいた。
彼ならば、きっとーーー。
ーSide out.???
◇◇◇
ーSide.松風天馬
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……っ」
ーーー終わった。
新必殺タクティクス、そして二度の化身アームド。
完全に息が上がった俺は、その場で膝に手を置き、整えるように息を吐き出す。
4ー2。
結果、そして内容を見ても、明らかに完敗だ。俺達のサッカーはまだ、世界のトッププレイヤーには通用しない。
悔しさ……は勿論ある。
けどそれ以上に、楽しかった。世界のトップクラスのサッカーというのを、肌で感じる事が出来た。
今はまだまだだけど、いずれはーーー。
「お疲れ様、松風さん。とても良い試合だったわ」
「フィリア……ありがとう。俺達もその、楽しかったです」
その場で息を整える俺に近づくフィリア……その後ろには、GKのジャンカルもいた。
フィリアは手を差し出して来る。
俺はその手を取りつつそう告げると、フィリアの顔は真っ赤に染まった。
「や、やっぱり聞こえてたのね……。ごめんなさい、プレー中に」
「あ、いや……っ、俺もあの時はその、とても充実しててーーー全く、同じ事考えてました」
「充実……そうね。私もとても充実していたわ。最近、こんな試合をした記憶が無かったから、余計に……ね」
フィリアは微笑みながら、そう語る。
「ねぇ、松風さん。貴方の事、"テンマ"って呼んでも良いかしら?貴方も、試合の時みたいにフランクに接してもらって大丈夫よ?」
「え?あ、はい!もちろん!」
ふふっ、とこれまた楽しそうにそう口にする。
その後ろでは、ジャンカルがとても驚いた様子でいた事に気付く。
……その後、何故か鋭い視線をこちらに向けていた事にも。
「じゃあーーーテンマ。また試合しましょうね。今度は、もっと大きな舞台で」
「はい…あ、いやーーーうん、やろう!今度は絶対、負けないから!」
俺とフィリアは、改めて握手を交わす。
それと同時に、スタジアム全体が拍手で溢れ返る。
こうして、俺達の初めての海外チームとの試合は、敗北という形で終わりを告げた。
ただーーー俺とフィリアは、この時の約束の機会が近いうちに訪れる事を、今はまだ知らなかった。
ーSide out.松風天馬
◇◇◇
ーSide.フィリア・サンディーロ
「えらく気に入った様だな。あの松風天馬とかいう小さなキャプテンの事を」
日本のチーム、雷門との試合が終わり、宿泊予定のホテルに向かうバスの中、試合の余韻に浸っていた私に、隣に座るジャンカルがそのように口にする。
「気に入った……そうね。彼は強いわ。サッカーの技術云々の前に、心の在り方が。あの純粋なサッカーへの強い想いの気持ちが、彼をあそこまで強くさせた」
試合終了後の彼は、試合前の彼よりも圧倒的に違う。
そしてそれは、私も同じーーー。
「フィディオさんがよく言ってたじゃない。本当に強くなりたいのであれば、自らの力を全て出し切り、互いに成長し合える唯一無二の存在ーーー
「……フィリアにとっての
「そうね……。今日の試合は、お互いが成長し合えた場だった。
もしかしたら、フィディオさんの狙いはそこだったのかもしれない。
正直に言えば、本国でプレーしていた時の私達は、何処か停滞傾向にあった。
各大会での優勝……圧倒的というわけではなかったし、強敵ともいえるチームは他にも存在する。
ただ、その中でも選手個人で見ると、強敵といえるのは本当に片手で数える程だ。チーム全体が高いレベルである事は、実はそうそう無い。
そんな中で決まった、FFI優勝国である日本で一番強いチームとの試合。
今回の相手は、チーム全体が高い水準のレベルにあり、その中でも世界で通用する輝きを持つ選手が何人かいた。
そして、その中でもテンマは、一層の輝きを見せていた。今はまだ発展途上でも、次に会った時はーーー。
「それに、今日個人シュートで私達のゴールを奪ったのは、紛れもなく彼じゃない。直に彼のシュートを目の当たりにした貴方なら、分かってくれると思っていたのだけど」
「………分かりたくもないな」
不機嫌そうにそう呟いた彼は、拗ねるように私から視線を外し窓の景色を眺めた。
……試合が終わってからというもの、ずっとこんな感じだ。
一体、何故ずっと不機嫌でいるのか。
「……まあ、いっか」
私も目を閉じつつ、そのように自己完結させる。
ーーー明日には、イタリアに帰国する。
今度また試合する時の為に、私ももっと強くなりたい。
サッカーを始めてからというもの、こんな気持ちは初めて……だからこそーーー楽しくもある。
ホテルまでの道のり。
私は初めての、不思議な感情に心地良さを感じつつ、そのまま眠りについた。
ーSide out.フィリア・サンディーロ
◇◇◇
ーSide.松風天馬
「霧野、剣城をマークだ!車田さんは倉間をお願いします!天馬は俺が!」
「ああ、わかった!」
「頼んだぞ!」
「行きますよ!神童センパイ!」
フィリア達との試合から、早二週間。
今日も俺達雷門は、練習に明け暮れている。
あの試合で、色々と課題が見つかった俺達の練習は、少しずつ変化が見られた。
今の神童センパイの指示もそう。
以前はどちらかというと、司令塔としてオフェンスに重視した指示だったのに対し、この二週間はディフェンス面にも指示の傾向が見られる。
神童センパイ自身もディフェンス技を習得した事で、雷門の守りは更に強固なモノとなった。
その証拠と言ってはアレだけど、四日前に行なった新雲学園との練習試合では、太陽を中心としたあのオフェンス相手に、4ー1と得点を1点に抑え俺達雷門が勝利した。
そして、俺自身もーーー。
『アインザッツ!』
対峙する神童センパイが、両手で空を切るように払いクロスさせ、奏でる音を聴くように目を閉じる。
俺はその目を閉じたタイミングで、ボールを軽く蹴り空中に上げる。
そして神童センパイが目を開け、ボールをカットしようと接近して来るタイミングでスピードを上げ、ループするように落ちてきたボールを確保して抜き去った。
「なっ……!」
「通さないよ!天馬君!」
神童センパイを抜き、狩屋が即座にフォローに入る……けど。
必殺技に入られる前に、目線と脚の動きで左右に揺さ振りを掛ける。
フェイントも挟みつつ、狩屋の脚が大きく開いた所を股抜きで抜き去った。
「やっ…ば!」
『ゴッド…ウィンド!!』
『はぁっ!ーーーぶっ飛びパンチッ!!』
狩屋を退け、キーパーの信助と一対一となる。
俺のゴッドウィンドに対し、信助はぶっ飛びパンチで対応する。
しかし、神風の勢いにサイドからのパンチングでは捌く事が出来ず、ボールはそのままゴールに突き刺さった。
「……やられたな」
「……スピードも相手を抜くドリブル技術も、あの試合からまた格段に上手くなったな」
俺が倒れている信助に手を貸していると、神童センパイと剣城がそんな事を口にする。
「ホント凄いよ、天馬!この前の新雲学園との練習試合もドリブル技使わないで、相手を何人も抜いてたしさ!スピードもまた速くなったよね!」
「そ、そんな事ないよっ!俺なんてまだまださ。……今のままじゃ、まだフィリアを抜く事は出来ないし、もっと…もっと上手くならないと……」
……フィリアと一対一になった、あの最後の攻防。
あの時のどんどんスピードが増していく感覚ーーー正直今の俺は、あの時のスピードには全然追い付いていない。
その上、俺のドリブル技術がまだ未熟だったから、あの時はスピードを活かしきれなかった。
あの加速していくスピード、そしてそれを活かせる技術があれば、フィリアを抜く為のーーー新しい必殺技に繋がるかもしれない。
そう思ってこの二週間は、極力ドリブル技を使わずに練習してきたけど、なかなか上手くいかない。
「僕も負けてられないなぁ……。あのジャンカルってゴールキーパーの動きは、きっと僕にも応用が効くと思うんだよね。あの体の使い方、足腰のバネの活かし方……あの試合で、どれも凄く勉強になった気がするよ」
「俺もあの試合のフィリアの動きは、同じFWとして参考になる部分が多かった。今まではパワー寄りに作り上げた必殺技が多かったからな……一度基本に立ち返ってみるのもいいかもしれない」
信助も剣城も、あの試合で学んだ事を活かそうと色々と考えている。
もちろん、信助や剣城だけじゃない。
他の皆も、それぞれの思惑でこの二週間の練習を行なっているのは、側から見てもわかる。
ーーー雷門は、まだまだ強くなる。
フィリア……俺、頑張るよ。
この凄いチームのキャプテンとして、いつかきっと、フィリアのチームともう一度サッカーが出来るように。
あの時の続きが、出来るようにーーー。
「さあ、皆!もう一本いきましょう!!」
ーーーもっともっと、強く。
どうも、喋る盾です。
今回でブレイブニール編は完全に終わりです。次回からは本格的に、イナズマジャパン結成編となります。(今回で1つのまとまり方として良い感じに終われたので、もしかしたら次話投稿と同時に1章をブレイブニール編という形に変更になるかもしれません(汗))
今回は主にブレイブニール戦のその後のまとめ的な話なので、特にいつもの様な説明もない……かと思います。関係性などについては、今後本編で詳しく書けていけたらと考えてます。
次回の投稿について、既にとあるオリキャラが出る事は確定しているのですが、まだビジュアル等が完全に定まっていないので、完全に決まり次第投稿させて頂く予定です(流石に半年も掛からないかと思いますが(笑))
それでは、また次回に。