日の光が瞼の奥に差し込んでくる―――ボンヤリとした頭で朝なんだなと思いながらも『とてもいい匂いのする柔らかい枕』に顔をうずめる。もう少し寝ていたい・・・と
「ぅにゃ・・・にゃ~ん」
すると直ぐ耳元で脳髄を焼くような甘い声がした
「・・・・・・はぇ!?」
すごくマヌケな声を上げながらも顔を離し目を開けるとそこには黒歌がいた。白くて薄い生地の肌色が透けて見える白装束であり、位置的に彼女の胸の谷間に思いっきり埋もれていたらしい
それを意識した瞬間頭の中まで真っ赤になって思考が停止した。土蜘蛛戦で黒歌が殴り飛ばされた時とは違う血の昇り方だ・・・えっナニコレどうしたらいいの!?
ああそうだよ!前世でも彼女いなかったよ!こういう時にどうしたらいいのか分からないんだよ!いや違うよ!?告白はされた事もあったから完全にモテなかった訳じゃないからね?って誰に言い訳してんだ俺は!?
思考が明後日の方向に飛んでいきながらも体の方は金縛りにあったかのように動かない
全力で目を見開きながらも視線は黒歌の顔と胸を行ったり来たりしながらも、どうすればいいのかと思っていると部屋の扉が開いて
そうして俺と黒歌の様子を観ると呆れたように息を吐く
「なんだい、いきなり気が乱れたから何かと思ってきてみれば発情してただけかい―――とはいえこっちも話があるからね。1時間後にまた来るからその時までに終わらせておいてくれ」
そう言いつつさっさと部屋から出ていこうとする
「待ったぁぁぁぁぁぁぁっ!待ってください
「うう~ん、うるさいにゃっ!」
思いっきり叫んだせいで黒歌も起きてしまったようで、そんな彼女の様子を改めて見る
普段と違う下ろしている髪!はだけ掛けてる着物!寝ぼけ目を猫手で擦る仕草!ヤバいナニコレ最終兵器か!?
「く・・・黒歌さん?なにゆえ同じ布団で寝ていらっしゃったのでしょうか?」
思わず敬語が出てしまった―――どうやらまだ混乱しているらしい
「うにゃ~?イッキったらそんなに赤くなりながら顔を逸らしちゃってどうしたのかにゃ?人と話すときは相手を見て話しなさいって教わらなかったのかにゃ~?」
そう言いつつ前屈みに近寄ってくる―――畜生!どんな時も悪戯心を忘れない奴だな!
「黒歌、誘惑するのもいいけど後にしな。起きたんなら朝食を用意させるからね。その後で八坂の姫が今回の一件であんたらを巻き込んだ事に対して話があるみたいだから、そのつもりで準備しとくんだよ」
そう言い残し
「う~ん、ちょっと白けちゃったにゃ」
「うん、それはいいからちゃんとした服着てくれない?」
まぁ何時もの服も『ちゃんとした』とは言い難いけど流石に見慣れたしな・・・
そして黒歌が着替えてから(全力で部屋の外に退避した)もう一度一緒に寝ていた件を聞いてみたら「イッキの治療のためだにゃん♪」と返された
「私も結界が解けて直ぐに起きたんだけど、イッキは両腕両足の骨折の上全身の出血に筋肉断裂で血まみれだったにゃ。それで三毛ばあさんも居たから直ぐにこの屋敷に連れてきてもらって薬湯を飲ませたんだにゃ」
成程、薬湯ですか。まぁこの世界の薬湯なら十二分にすごいものなんだろうけど・・・
「でも薬湯だけじゃ完全回復に二日はかかりそうだったから私の仙術の治療も合わせてやる事にしたのにゃ♪」
あの薄い白装束の理由はそれか!アニメで塔城小猫が一誠を仙術で治療していた時もあんな恰好だった気がする
「でも、私からも聞きたいことがあるにゃ。何であんなにボロボロだったのかにゃ?到底普通の怪我とは思えなかったにゃ」
あ~、そうだよな。体の内側から破裂しかけてるような怪我だったはずだし、土蜘蛛にやられたとは流石に考えづらいか・・・
「あれは【一刀修羅】の応用技の反動だよ。前に【一刀修羅】の事は話したよな?」
「うん、『一分で全力を出し切る』能力だって聞いたにゃ」
「黒歌が殴り飛ばされて最初は【一刀修羅】を使ったんだけど土蜘蛛にはほとんどダメージを与えられなくてね、黒歌を見捨てて逃げるなんてできないから一か八か【一刀修羅】の残り時間を一撃に込めたんだ」
「・・・それで、ああなったのかにゃ?」
「【一刀羅刹】、肉体の耐久力の強化と筋力の強化を上手くすればあんなダメージは負わない・・・と思うんだけど、今回使ってみて分かった。『アレ』にそんな細かい制御は無理だ」
修行すればいけるかもしれないが何百回と発動しなければならないだろう―――怪我も体力・魔力も回復できるフェニックスの涙を1000本用意しろって話である・・・不可能だな
「そう・・・・・まぁ何はともあれお礼を言っておくにゃん♪私だけだったら確実に死んでたと思うしね」
「こっちこそ有難う、ああして寝てたって事はほとんど一晩掛けて治療してくれたんだろう?」
そうこうしているうちに朝食の用意が出来たと侍女の方(狐耳)がやってきたので一旦切り上げて朝食をとり、その後八坂の姫が待つという部屋に案内された
朝ではあるが屋敷の奥で締め切っているため部屋は暗く、蒼く光る
そしてその部屋の奥に九本の尾を持った狐耳の美女がいた。アニメでも見たがあの方が八坂姫だろう・・・しかし黒歌のように大胆に肩や胸元を露出させてるのはどうなんだ?妖怪の女性のなかではあの格好(花魁スタイル)が今のトレンドなのだろうか?
他にも
だが何気に一番驚いたのは八坂姫のとなりにいる子供だ。八坂姫と同じ金髪狐耳に尻尾が六本生えている―――どう見ても『
小学校低学年くらいか?此方に興味深々といった感じだ。そんなことを思っていると八坂姫が話を切り出した
「よくお出で下さいました。私が裏の京都を取り纏めている八坂と申します。こちらは娘の
「は・・・初めましてなのじゃ!
原作の3年前とあって
「初めまして、
「黒歌にゃ、まっ、元々そっちが巻き込んだんだけどね」
く・・・黒歌さ~ん!?そのセリフと態度は今ここで必要だった!?黒歌が誰かに頭を下げてへりくだる姿は想像できないけどせめて無難な対応をして!ほらっ!お付きの天狗の人とかすごく睨んでるから!
「黒歌、あんまり失礼な態度を取るなら『ぬらりひょん』を呼ぼうか?」
「うげっ!そんなことで関東の総大将を呼ばないで欲しいにゃん―――分かったにゃ」
黒歌が理解を示しただと!すげーな『ぬらりひょん』、ていうか知り合いだったのか!
「良いのですよ、今回は私共がお礼と謝罪をする側です。礼儀を求める気はありません」
八坂姫がそういうと天狗の人も睨むのはやめてくれた・・・もっともまだ目つきは鋭いが
「ハァ、あんまりこの黒猫を甘やかさないで欲しいね」
ため息を吐きつつも
「それでは改めて
そう言って八坂姫とそれにつられて
「いいえ、巻き込まれたのは事故のようなものでしたし、
というか一般人としてはお偉いさん(美女&美少女)に頭を下げられる方が心臓に悪いと心の中で思っていると「有難うございます」と二人は頭を上げてきた
「とは言え感謝の意を伝えてそれで終わりという訳にもございません。あなた自身の大怪我もそうですが、もしも『土蜘蛛』があのまま暴れていたらどれだけの被害が出たか分かりませんでした。精鋭を送り込むはずだったとはいえ、それで確実に勝てると言えるほど甘い相手ではありませんでしたから・・・」
「そうだねぇ、うち(関東)としても此方の不手際を人間に清算してもらった形になるからね。八坂の姫とは別にこっちも謝礼を出さないとメンツが立たないんだよ」
二人はそう言ってくるがつまりは関東と関西の妖怪組織から土蜘蛛討伐の報酬が貰えるって事か?・・・やばくね!?
「一応聞いておくけど謝礼と言われて何か欲しいものとか思いつくかい?無ければ此方で決めたものになるけどね」
謝礼・・・といきなり言われてもな・・・
「自分は特に・・・黒歌はどうだ?」
「別にこれといったものは無いかにゃ~?」
そう答えると
「な・・・なにいってるのにゃ!?」
驚く黒歌をよそに
「あんたが一般人なのはそこの黒猫から聞いて知ってるからね。時間をみて転移の術で出向いてもらう事になるけど・・・どうだい?勿論そこの黒猫も一緒に鍛えてやるよ」
これは・・・願ってもない機会じゃないか?
「是非ともお願いします」
「そうかい、で?あんたはどうするね?」
「・・・いいにゃ、私もあの『土蜘蛛』ってのにやられっぱなしは性に合わないにゃ」
「なら、決まりだね」
黒歌も了承したようだ。次にそれを見ていた八坂姫が話し始める
「では次に京からの謝礼として・・・」
八坂姫はそこで一旦言葉を区切り若干目を細めた・・・ヤバい、あの目は黒歌が悪戯をする時と同じ種類の目だ。そう思っていると隣に座っていた
「なっ!?」
「に゛ゃっ!?」
「八坂様!?」
「母上!?」
「おやまぁ」
待て待て待て!
「母上!?何を!?」
突然の婚約話に
「人の身で『土蜘蛛』を倒した人間に興味があるから会ってみたいと言ったのはお主じゃろう?
「そ・・・そ・・・そういうものなのか?人となりについてはこれから知っていけばよいのか?」
「そうそう、先も言ったようにあくまでも婚約じゃ。そこまで難しく考える必要はないぞ?」
「う・・・うむ・・・」
なんか向こうで勝手にすごいことが決まりかけてるぅぅぅ!?いや!?これは八坂姫の悪戯のはずだ!悪戯で終わらせなければいけない話だ!
「や・・・八坂様?娘さんを揶揄うのはそのあt・・・ムグっ!」
この人妖術で俺の口をふさぎやがったな!
「ほれ、
八坂姫は娘をこちらに向けてその背中を"トンっ"と押しやった
トテトテと
そう言って緊張と気恥ずかしさを誤魔化す為か勢いよく頭を下げてきた
口はもう動くようになっている・・・がどうするんだコレ、この雰囲気で「その報酬は無しで」って言うの!?どんな鬼畜だよ!?そう思い助けを求めるように周囲を見渡す
八坂姫・・・すごく楽しそうだ
天狗の人・・・『うちの大事な姫様に恥かかすなよ、あぁん!?』的な目で見てくる
黒歌・・・ジト目でこっちを見てくる―――少し不機嫌そうに見えるのは俺の気のせいか?
ダメだ、この状況を何とかしてくれそうな人がいない!そう思っていると頭を下げたままだった
「だ・・・ダメじゃないよ?宜しく
気が付けば上ずった声でそう答えていた
そうすると
―――どうしてこうなった?
その後一度
・・・俺としてはもうどうでもいいから早く話を終わらせてくれという気分だ
「報酬はこちらじゃ」
八坂姫がそう言いつつ竹筒を渡してきたのでそれを受け取る
「これは?」
「それは管狐の竹筒じゃ、管狐は知っておるかの?」
「陰陽師などが使役する低級霊の使い魔のようなもの・・・という程度ですが」
「うむ、大体あっておる。だがその管狐は少し特別性でな。通常の管狐は低級霊の域をでないのじゃが、それは持ち主の生命力(オーラ)の力強さに呼応して力が高まるのじゃ―――今のお主でも十分通常の使い魔よりは強くなるはずじゃ」
おお!なるほど、これはいいものだ。しかし、気になることもある
「あの、管狐って大量にいるってイメージなんですがエサとかどうすればいいんでしょうか?」
そう!俺の知識が正しければ管狐とは勝手に増えて増えて増えまくって最終的に術者の富を食い荒らす妖怪だったはずだ
「心配は無用じゃ、特別性というたじゃろ?その中に居るのは一匹だけ、それが最大75匹までに分身するのじゃ、エサも術者の気でも普通のエサでも何でもよい雑食性じゃ」
雑食って・・・いやまぁ有り難いけど
「有り難く頂戴いたします」
術者の気でも良いと言うなら俺の財布を圧迫する事も無いだろう・・・ただでさえ黒歌に貢がされてるってのにこれ以上の出費は普通に無理だ
「うむ、早速なのじゃが良ければ一匹分身を置いていかんか?何かあれば連絡も取れるしの」
そう提案され断る理由もなかったのでその場で竹筒の蓋を開ける
すると掌より少し大きいくらいの狐が現れた・・・管狐よろしく手足は無い様だな
「えっと名前は・・・安直だけど『イヅナ』で!よし!イヅナ一匹分身してくれ、あとの指示は八坂様に従ってくれ・・・変な命令は聞かなくていいからな?」
そう言うと「くぉっ!」と鳴いて分身し八坂姫の掌の上に降り立った
「これで話はひと段落じゃな、後はお主をホテルに送るとしよう」
八坂姫がそう言うと俺の中に一気に焦りが生まれてきた
「そうじゃん!学校!どうすんの!?俺途中から行方不明になってんじゃん!?」
下手したらコレ警察沙汰とかに発展してない!?
「心配しなくともよい。すでに手を回してあるでの―――"京都で偶然出会った知り合いの家に泊まった"と暗示をかけておいたから普通に戻ればよい」
おおう・・・暗示すげぇな。無茶苦茶言ってるけど原作でも一誠の両親に『裸で抱き合って添い寝するのは普通の文化』とかやってたし、それに比べたらましなのか?
そうして八坂様達にホテルの近くに転移で送られ黒歌と一緒にホテルに帰った
途中までは不機嫌な様子だった黒歌だが別れ際に八坂姫になにやら耳打ちされてから機嫌は直ったみたいだ。それと幸い学校のみんなは朝食を食べている最中だったみたいで黒歌と一緒だったところは見られなかったようだ
部屋に戻って待機していると3人組が部屋に帰ってきた・・・全身ボッコボコにされて・・・
「ようお前ら・・・一応聞くけどその怪我どうした?」
「ふっ!名誉の負傷さ」
そんな気高いものであればいいな松田
「俺たちは
元浜が
「ああ、その後
後悔は無くとも反省しろよ一誠
後で女子達には「あの変態3人組を抑えられる君がどうして知り合いの家に泊まったりしたの!?」と涙ながらに訴えられたが・・・解せぬ
その後ホテルを出てお土産屋で適当に買い物をし、そこで男子の皆で仲良く木刀を買った(元々買う気はなかったが『洞爺湖』と書かれた木刀を見て衝動買いした)
それを最後に新幹線に乗り込み家路につき、初めての修学旅行を終えたのだった
作中でもいいましたが「どうしてこうなった?」
ダメですね。最初は九重は軽く挨拶をしてそれでお終いのチョイ役で出したはずだったのに書いてるうちに婚約者となりました。・・・マジでどうしてこうなった?
行き当たりばったりで書いてると何時かどこかでどん詰まるんじゃないかと不安です