握りつぶされて汁の滴るその実を見て全員が未だに動けない中、俺は空気を換える為に異空間から一つのグラスを取り出してその汁を注いでいく
「イッセー、出来立て搾りたてのリンゴジュースだけど、飲むか?」
声も出ないイッセーは必死に首を横にブンブン振って否定する
「他の皆は?」
一応イッセー以外にも話を向けたけど皆揃って首を横に振ったな。すんげぇシンクロしながら否定してるぞ。首を振る速度まで一緒だ
そこにリゼヴィムが動揺を隠しきれない声でツッコミを入れてきた。先程俺に真っ直ぐに突きつけたその指先はブルブルと震えている
「お、お、お、お、お前自分が何をしてたのか判ってんのか!?アダムとイヴが口にした伝説の果実なんだぞ!」
「いや知ってるよ。クリスチャンでなくても今の情報化社会に生きてれば一度は聞いた事が有る程度には有名だもんな―――その価値プライスレス!」
お金に代えられない価値がソレにはあるんだろう。奇しくも完全復活した知恵の実と生命の実とか天界側からしたら神器じゃない元々の聖杯や聖骸布、聖槍などの
「分かってんじゃねぇか!いや、解ってるけどやっぱ判ってねぇよ!」
「どうした?言ってる事が支離滅裂過ぎるぞ?敵の手に渡るくらいなら潰す方が良いってだけだ―――ほら、ミカエル様を見てみろよ。天使長のあの人がずっとニコニコ笑顔のままなんだぞ?・・・きっと俺の判断を世界を守る為の英断だと認めてくれたに違いない!」
ミカエルさん俺が実を握り潰してから一人だけ微動だにせずに変わらぬ笑みを浮かべたままだしな
「アレはフリーズしてるって言うんだよ!?一番近くで聖書の神に仕えていた天使長だからな。未だに認識が現実に追いついてないだけだ!」
やだ、ミカエルさんの事を気に掛けて上げるだなんてリリン君ったら優しい
「リゼヴィム、実、とる?」
リリスがリゼヴィムに訊くけど当のリゼヴィムは頭を掻きむしっている
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!もう知恵の実からオーラも何も感じねぇじゃねぇか!干からびてるだけならまだ聖杯で活力与えてやれば如何にかなったがアレ、本当に直るのか?」
リゼヴィムの顔に疑念が浮かんでいる。流石に魂なんて宿ってる訳でもないと復元は難しいのか
まぁもしも潰れた欠片からでも復元出来るなら知恵の実や生命の実を半分に割って聖杯で復元しての繰り返しで無限増殖バグすら可能だからな
それでもリリスに狙われても困るし、もう一手必要か
「ふぅむ。リンゴジュースは皆に不評だったみたいだし、此処は一つ焼きリンゴにするか」
俺は実を持っている右手を狐火で包み込む
周囲に甘くて芳ばしい香りが漂い始めた
「グフゥゥゥッ!!」
「キャー!ミカエル様、お気を確かにぃぃぃ!」
「はうぅぅ・・・」
「ヴっ、眩暈が・・・ふふふ、如何やら白昼夢を見ていたようだ。酷い悪夢だったな・・・」
「アーシアァァァ!!しっかりしろォォォ!ゼノヴィアも現実から目を背けるなぁぁぁ!」
俺が簡単手のひらクッキングし始めたらミカエルさんと教会トリオにイッセーが騒がしい
―――イリナさんは目の前で気をやった上司の心配が幸い(?)勝ったみたいだけどな
少し味方に被害が出たけどリゼヴィムにさっさとお帰り頂く為に追い打ちを掛けていくスタイルだ
「そう言えばリゼヴィム。さっきまでのカリスマスタイルはもう良いのか?」
魔王の息子ムーヴしてたはずだよな?
「誰のせいだと思ってやがる!だあああああ!!貴様が絡むと碌な事ねぇ・・・これ以上此処に居ても不毛なだけだし、クロウ!リリス!さっさと帰るぞ。飲まなきゃやってられねぇ!」
話の途中でやって来ていたクロウ・クルワッハとリリスに退くように命じるリゼヴィムだがクロウ・クルワッハは腕を組んだまま動こうとしなかった
「クロウ?」
「・・・・・・・・・」
名前を呼ばれても黙ったままのクロウ・クルワッハがリゼヴィムと一緒に行く気が無いと分かったのか深くため息を吐く
「まっ、お前さんらは何時か離れるとは思ってたよ」
そうある種の理解を示してる感じだけど離れる原因の大半がリゼヴィムの小者っぷりのせいだと思うのは俺だけだろうか?
クロウ・クルワッハは留まるとしてもリリスはまだ情緒などが育っていないから普通にリゼヴィムに付いて行くようだけど、折角クリスマスも近いしな
「リリス!」
既にリゼヴィムと此方に背を向けて歩き出していたリリスに声を掛けると立ち止まって振り向いてくれたので、異空間からチョコレート菓子の箱を取り出してリリスに投げる
「少し早いけどクリスマスプレゼントだ」
「・・・ありがとう?」
相変わらず疑問形かい!
まぁリリスは0歳児なんだから十分子供の範疇だしクリスマスプレゼントを渡しても良いだろう
いや、オーフィスにも渡すけどね
「―――行くぞ、リリス」
リゼヴィムが微妙な表情で俺の渡した菓子箱を見てるけどリリスから無理矢理取り上げてリリスの不興を買う事は避けたみたいだな
短くセリフを切って小さくなっていく背中に大きく声を掛ける
「食べ終わったらちゃんとゴミはゴミ箱に捨てるんだぞ~!」
最後にリリスに教育を施して天界での激闘は幕を閉じたのだった
▽
リゼヴィム達が立ち去ってから俺はとても青い顔をしているミカエルさんの下へ近づいて行く
「・・・イッキさん。色々と言いたいことは有りますが、リリンに知恵の実が渡らなかった事は僥倖と言えるでしょう。よ、良くやって?くれました」
最後のお礼の一言が声が震えてますよ
他の皆も俺を若干咎めるような視線を向けて来るしな
俺はそんな空気を払拭させる為に少々ふざけて恭しい感じの礼を取る
「ミカエル様。此度の戦いでは天界にも少なくない量の被害が出た事でしょう。復興の手助けも天使でも信徒でもない我々では幾らこのID(レプリカ天使の輪)が在ると言っても大量の人員を裂く事も難しいはず。ですが折角聖夜祭を目前に控えた今、天使たちにも心躍るイベントが有っても良いと思うのですが、如何でしょうか?」
急に態度を変えた俺の様子に皆は訝し気な気配を漂わせているがミカエルさんだけは俺との付き合いの短さも有ってか素直に頷いてくれた
「確かに一理有りますね。ですが今は天界の復旧作業やクリスマス自体も我々教会陣営は表も裏も忙しいですし、それが終われば新年となります―――大々的な催しは例え出来たとしても大分先になるでしょう」
確かにミカエルさんの言う通りだろう・・・だけど
「つきましては此方をお受け取り下さい。此度の戦の戦果でございます」
そう言って俺は異空間から
「―――は?」
おお、天使長様が口をポカンと開けて少々間抜k・・・だらしのない・・・気の抜けた表情になったな。毎度の事だけど録画装置で録画もしているし、リゼヴィムの間抜け顔と併せてアザゼル先生へのクリスマスプレゼントは決定だろう
―――
だから『僕は悪く無い。だって僕は悪く無いんだから!』
ちょっと
「では、貴方が今持ってる潰して焼いたその実は一体・・・?」
「ああ、これですか?これはバアル家の特産品のリンゴですね。サイラオーグさんとは仲が良いので時折郵送されてくるんですよ。俺は一度たりとも潰したこの実を『知恵の実』と言った覚えは有りませんよ?【一刀羅刹】で知恵の実を掠め取った後でその実は袖に隠して取り出したこのリンゴの表面を知恵の実の幻術で覆ってからリゼヴィムに見せつけたんです」
冬用コートの袖の中なら十分果実の一つくらいは隠せるのだ
「見せつけた偽物の実とほぼ同じ位置に本物の実があれば漂うオーラからも偽物の実を本物だと誤認するでしょうからね。後は潰すのと同時に袖の中に隠した知恵の実を異空間に隠せばまるで知恵の実が潰されて使い物にならなくなったかのように見えるという寸法です―――幻術と手品の合わせ技って感じですね」
表の
二つが合わされば大悪魔リリンも間抜け面を晒すのさ
幻術も必要最小限の力しか使って無いからそっちから違和感を感じるのも難しいだろう
ただのリンゴを潰されて絶叫を上げるリゼヴィムを見て嗤いを堪えるのは結構大変だったがな!
「いや、ソレ俺達も騙されて・・・もうどうでも良いや・・・」
イッセーが文句を言おうとしたようだが途中で諦めたのか疲れたように肩を落とした
時には言いたい事を飲みこむのも処世術の一つですよ?
「さてミカエル様。そういう訳ですが、受け取って頂けますか?」
「・・・分かりました。決してクリフォトの手に渡らぬよう第六天か第七天に保管する事としましょう。貴方のお陰で聖十字架も天界の下に来ましたし、また借りが出来てしまいましたね」
日本人なら「いえいえ、そんな」とか言って遠慮するのかも知れないけど、将来的にお偉いさん方との交流が仕事の一つになるかも知れない身としてはどんどん恩を売って行きたい処だな
取り敢えず今は「恐縮です」とだけ答えておいた
「『D×D』皆さんも良く戦ってくれました。天界を代表してお礼を申し上げます。貴方も天帝殿の使いとしての御助力に感謝します」
ミカエルさんが俺達と曹操に感謝の意を示し、お礼を言われた曹操は可笑しそうに肩を竦める
「フッ、俺はイエスを貫いた槍を持った咎人なのだがな。天使長殿は寛大なようだ」
「イエスは自らを貫いたその槍に祝福を与えました。その槍を持ち、敵対する意思も無いのであらば無碍に出来るはずも有りません」
神の祝福か・・・さっきはその祝福で酷い事になってたけど、
「そうか―――しかし俺が余り此処に長居しても仕方ない。俺はまた煉獄から冥府に降りるとするよ。ジークフリートにもさっさと帰って来て修行の相手をしろと天界に来る前にせっつかれているものでね。今のジークフリートを放置し過ぎると色々面倒なんだ・・・全く、此方も天帝の使いで各地のテロリスト共と戦って偶の休みは修行漬け・・・まさか
いや、知らんがな・・・と云うかジークフリートが死んで無いのは知ってたけどそれ程修行に身を入れてるなんてどんな心境の変化が有ったんだ?
手のひらを後ろ手にヒラヒラとさせながら遠ざかっていく曹操を見届けた後にミカエルさんは自身の眷属であるイリナさんにも改めて労いの言葉を掛ける
「イリナ。よくぞ天界の為に戦ってくれました。此処に向かう途中でも貴女のオートクレールの優しく力強い波動は感じ取れましたよ。流石は私の『
「はい、有難う御座います!・・・あの、ミカエル様。不躾かも知れませんが一つお聞きしても宜しいでしょうか?」
「ええ、構いませんよ」
「何故私を『A』に選ばれたのですか?」
ミカエルさんが快諾してイリナさんが自分が『A』の役を与えられた理由を問う
確かにトランプに置いて『A』と云うのは単純に強かったり特別な意味合いを持たされる事が多い。そんなある意味ではジョーカーに迫る程の役を何故自分に与えたのか疑問だったのだろう
転生前なんかはイリナさんは実力的に精々優秀の域を出ないものだったからな
「そうですね。人間界でトランプの箱を開けた時、一番上に在るのはどのカードですか?」
「えっと・・・」
「スペードの『A』」
一瞬答えに詰まったイリナさんの代わりに白音が答えを言うとミカエルさんは頷いて指を1本立てて詳しい理由を語る
「その通りです。転生天使・・・『
「はい!これからも精一杯務めさせて頂きます!」
ミカエルさんが自分をそれ程評価してくれていた事に感動したイリナさんは元気よく答える
良く見れば感極まってるのか目から涙が零れているな
尊敬する上司であるミカエルさんが何よりも自分の内面性をこそ評価してくれていたと考えればそりゃあ嬉し涙の一つや二つ流すだろう
その後、クロウ・クルワッハはイッセーに『ドラゴンとして闘え』と場を読まずに迫るが『疲れるから今は無理』という言葉に取り敢えずの矛を収めて去っていった
俺との戦いでも全力が出せない相手という理由で途中で切り上げた彼ならば納得のいく理由だ
残るは八重垣さんの処遇だな
「あの!ミカエル様!如何か八重垣さんに寛大な処置をお願いします。彼がやった事は如何あれ許される事ではありません。罰するなとは言いませんが彼を殺したりする事だけは如何か!」
「ミカエル様。私からもお願いします。彼の動機は元を辿ればあの時駒王町に居た我々の罪でもあります・・・私は信頼に足る部下であった彼を二度も教会の下で処刑するなど耐えられません」
「わ、私もお願いします!此処でこの人が死んじゃったら何のためにオートクレールで彼の心を救えたのか分からなくなっちゃいます」
イッセーがミカエルさんに八重垣さんの減刑と云うか死罪だけでも回避するように頼むとトウジさんとイリナさんもイッセーの隣に並んで揃って頭を下げる
それに対してミカエルさんは困ったような部下の優しい心が嬉しいような表情を浮かべる・・・組織のトップとしては頭の痛い問題だよな
当時の駒王町に居た教会のエクソシストの人達は心の均衡を崩して隠居するか『褒美』を得て教会の要職に就いているかだ
前者は誤魔化しがまだ利いても後者はかなり無理がある
それに殺されているのはバアル家現当主のお知り合いも含まれる
バアルの当主は八重垣さんが生きてると知ったら天界で幽閉するみたいな事を伝えても『そのような生ぬるい処罰など在り得るか!此方に引き渡せ!我々が直々に処刑してくれよう!』とか喚くんだろうな。勿論適当に交渉を続けつつ決して渡さないというスタンスを取る事も出来るしそれが無難なんだろうけど不毛な遣り取りが続くと考えると天界としてはクソ面倒臭いだろう・・・バアル家の交渉役とかが出張って来るなら天界側もそれなりの地位の者を出さないといけないだろうしね
「ミカエル様。彼が生きてるとバアル家が騒ぎそうという事なら一つ案が有るのですが」
ミカエルさんが『万事私に任せて下さい』とか苦労を背負う前に打開策を提示する
「おや、それは有難いですが如何するのですか?」
「そうですね。実践した方が早いでしょう」
俺は八重垣さんに近づいてその胸に手を当てる
「え・・・何を・・・」
俺とは初対面だけどさっきまでの知恵の実騒動を見ていた彼の顔が引きつっている
「動かないで下さいね。リラックスして下さ~い」
俺は出来るだけ相手の緊張が解れる様に優しく声を掛ける・・・何故更に引き攣る?
「八重垣さん、クイズを出しましょうか。聖書の一節についてです―――『永遠の安息は』?」
「『死の中でこそ与えられる』・・・?」
瞬間に俺は彼の心臓に『第六秘剣・毒蛾の太刀』の衝撃を叩き込む
「グブッ!?」
心停止した彼はそのまま気絶して斃れこんだ
「イッキィィィィ!!?今ので大体分かったけど本当にもう止めたげてよ!八重垣さん俺達との和解から白音ちゃんに顔面ライダーキック受けたばっかりなんだよ!?その人が何したって言うんだよ。扱いが雑過ぎるだろうが!なに?八重垣さんって不幸の星の下にでも生まれてきたの!?」
おお!この状況で先にツッコミから入るとはイッセーも大分俺の性格とスキルを把握してきたな
「ミカエル様。心停止から15分も経てば人間は基本死にますので、それを見届けた上でバアル家の方には『下手人は天界で死亡が確認された』と伝えて頂こうというのが案なのですが、如何でしょうか?」
斃れて白目剥いてる八重垣さんの血流を操作しながら問い掛ける
「・・・ええ、確かに嘘は吐かないで済みますね。リアスさんは宜しいですか?」
悪魔陣営であり、バアル家との繋がりも強いリアス部長にミカエルさんが確認を入れるとリアス部長は溜息の後に頷いた
「・・・そうですね。天界側と古き悪魔筆頭のバアル家の諍いの種を残しても良い事は在りませんし、私は黙認致しますわ」
ミカエルさんも「ではそう言う事で」と了承してくれた。流石に八重垣さんもコレから先は監禁・軟禁生活だろうし大丈夫だろう
直接彼の顔を知る人は
「それにしてもイッキ・・・そこまで大王派を警戒しなきゃならないのか?」
「大王派と云うか古き悪魔の思考を持つ奴らだな。少なくとも今まで古き悪魔たちって俺らの足を引っ張る事しかしてないから良い印象を持てって方が難しいさ―――具体的に上げていこうか?今回の件は教会も絡んだ事だから置いとくとして(『王の駒』は無視)旧魔王派と古き悪魔はかなり癒着してたから間接的に三大勢力の和平会談テロ。ディオドラの時の各国のVIPを狙ったテロとこの二つを支援してる奴らはそれなりに居ただろう。冥界の魔獣騒動の時も血筋優先の悪魔は民を見捨てて逃げの一手でクリフォトの前ルシファーの息子の『血』に傾倒して新たに合流したのも大半は古き悪魔だろうしな・・・うん。良い所が見つからんわ」
そこまで言い切るとリアス部長から待ったが掛かった
「ちょっとイッキ・・・なんで貴方が魔獣騒動の時に逃げ出した貴族が居る事を知ってるのよ?その事は冥界のニュースにはならなかったはずよ?旧魔王派の残党が暴れたのは周知の事実だけど」
「あ、やっぱ保身に走った奴らが居たんですね」
そう返すとガックリと肩を落としてしまった
「憶測をよくそこまで平然と言い放てるわね」
分厚い面の皮を被って相手の腹を探るスキルはこれからの俺達には必要な物ですよ?
リアス部長も貴族でその辺りには理解があるのか素直に引き下がってくれた
すると此方に駆けて来る影が一つ
「皆さ~ん!お怪我は有りませんか~?」
四大セラフのガブリエルさんだ。如何やら丁度人間界に出張ってて戦いの最中は締め出されてしまっていたらしい
彼女の姿を見たイッセーは素早く目にオーラを集中させた
「おお!おおおおおお!!あ、アレが天界一の美女天使様の美しすぎるおっぱいイイイ!!」
イッセーが涙を流して喜ぶと同時にイッセーの周囲に堕天防止用の天使文字と警告音が鳴り響く
あ~、確か『透過』の力だったっけ?
『相棒オオオオ!!折角俺がアルビオンと神器の深奥に潜り潜ってようやっと取り戻した俺の生前の第三の力なんだぞ!最初に使う内容がそれで良いのか!?』
「良いに決まってんだろ!俺が
『そんな処で認められても嬉しくないわ、戯けええええ!!』
その後、取り敢えずシステムに悪影響がこれ以上出ないように白音と俺がイッセーの側頭部を挟み込む形でツープラトンパンチを打ち込んで気絶したイッセーを引きずり、俺達は天界を後にした
▽
今日は来るクリスマス当日!世間じゃ前日であるイブの方が盛り上がってる気もするが、俺達はイブの夜の帳が降りてから次の日のクリスマスの朝までに駒王町中を駆け回った
トウジさんはまた八岐大蛇の毒を喰らってたので流石に大事を取ってドクター・ストップが掛かっていたので代わりにイリナさんが父親の分まで張り切っていたな
時間に追われる中でサイラオーグさんとか地上を爆走してたし、黒歌とかトナカイに時間加速の術を掛けて早送りトナカイという風情をぶち壊す手法も取っていたがそれに文句を付ける人は居なかった。何せ数が数だしやはりクリスマスプレゼントは朝に皆が起き出す前に配達し終えたかったからだ―――次元収納式サンタのプレゼント袋持ってサンタの格好をした俺達は朝日が昇る前になんとかミッションを終えて教会に戻って来た時は疲れた笑顔を浮かべる人か逆に変なテンションになってしまってる人かの二択状態だったくらいだ
その上イブも当日も教会も悪魔業も普通に忙しいとくればね
教会勢は徹夜明けからそのまま表の仕事に入り、リアス部長達は夜にまた駆り出されるので速攻昼過ぎまで眠る事になった
リアス部長達は夜の仕事の前に如何に仕事をサクサク終わらせるかの(そうでないと捌き切れないらしい)ミーティングも有るそうだから頭が下がる思いだよ
しかし逆を言えばプレゼント配りが終わった今、教会所属でも無ければ悪魔の契約の仕事も無い俺、黒歌、レイヴェルは時間が余ってるという事だ
夜遅くになるだろうがグレモリー眷属とシトリー眷属の仕事が終わったなら小規模なプチパーティーを開く予定なのでそれまでの時間を如何やって潰すのかと云えば俺と黒歌は絶賛デート中だったりする。折角クリスマスという絶好のデート日和なんだしね
白音とレイヴェルとは既にキチンとしたデートを済ませてあるので今回は黒歌という訳だ・・・勿論プチパーティー中やその後では白音とレイヴェルも可愛がるけどな
レイヴェルも「流石に此処でお二人に付いて行くなんて野暮な真似は出来ませんわ」と送り出してくれたからな・・・来年のクリスマスは何とか全員との時間を確保したいけど、昨日の忙しさを考えると難しいか?悩みどころだ
そんなこんなで今俺達は何時もの駒王町のショッピングモールとはまた別に都会の方の大型モールに来ていた。幾らクリスマス仕様とはいえ自分の町だと流石に目新しさを感じ辛いので普段来ない場所まで足を運んでみた形だったりする
因みに黒歌の格好は着物姿ではなく、ブーツにタイツにスカートとセーターでデザイン的には大学生のお姉さん風だな
髪型もそれに合わせて片方の耳の後ろ辺りで編み込んだテールタイプだ
何時もと違った色気がグッとくる
そんな思いが伝わったのか隣を歩いていた黒歌が正面に回って笑みを向けて来る
「そんなに見つめて如何したの?襲いたくなっちゃった?」
「否定はしないけど今からホテルへGO!とか流石にしないからな?」
「あらら、残念。どうせ今晩はイッキに白音とレイヴェルも一緒に美味しく頂かれちゃうんだからその前にイッキの情欲を一身に浴びてみたかったんだけどにゃ~」
相変わらずのエロ猫っぷりである
それでも流石に周囲に他の人が居ない瞬間を狙って発言してくれているので遠巻きの嫉妬の視線は感じるが殺意を覚える視線までは感じない
如何やら黒歌も少しだけ気遣いを覚えてくれたみたいだな・・・欲望は駄々洩れだけど
「だってぇ、私達イッキの相手をして全員揃って力尽きるのよ?もしもそんなイッキの相手を私一人で務めたらと思うと妄想で涎が止まらなくなりそうにゃ~♪」
訂正。駄々洩れどころかひっくり返す勢いだった
しかし言わせて欲しい。幾ら相手が3人居ると言っても彼女より先にダウンするというのは男のプライド的に赦せないのだ
そして凄く頑張ってる果てに抜き足などの技すらも会得してるのだから何とも言えないな
イッセーじゃないけど俺もコッソリ女体でパワーアップを果たしていたと考えるとね
取り敢えず目の前で口元がだらしなく歪みかけている黒歌に軽いチョップを入れて現実に引き戻しつつ駒王町のショッピングモールでは見かけない物とかを購入したりゲームセンターで思考加速の反則気味の技を使って『太鼓の鉄人』をペアで満点を叩き出したりしてランキングを荒らし回ったりしていった・・・大人気ない?いやいや、俺達まだ成人前の子供ですから
それに術とか使ってる訳じゃないしね
ただ暫く遊んでると
「スゲェあの二人!出てきたゾンビの頭が全部一瞬で弾けたぜ!」
「ああ!しかも
「どっちがどの敵を狙うかまで計算してるって事だよな」
「息ピッタリかよ。カップルなんだろ?男の方もゾンビと一緒に弾けちまえ」
一緒に弾けろって何気にヒデェ野次も飛んでるな
しかしこの程度では白音と一緒に行った遊園地の射的ゲームという名のサバゲーに比べたら温過ぎるぜ・・・あの遊園地が可笑しいだけか
それからアクセサリーショップを見ていると黒歌が質問してきた
「ねぇ、子供たちへのプレゼントって事で私達も駆け回った訳だけど、九重には何か贈ったのかにゃ?私達はこの後のパーティーでプレゼント廻しゲームする予定だけど」
プレゼント廻しとはオカ研メンバーとシトリー眷属の皆で事前にそれぞれが秘密裡にプレゼントを用意して完全ランダムで他の皆に配るビックリ箱的なちょっとしたお遊びだ
無難なプレゼントを選んでも良いし、ネタに走っても良い
確率は低いが自分が選んだプレゼントを自分が引き当てるなんて事もあるけどな
因みに俺は『痛撃!』・・・ではなく『衝撃!ハリセン君』を入れておいた
痛い訳でなく手元のスイッチを押しながら叩けば黒歌の重力魔法が発動し、相手を叩いた方向に十数メートルホームラン出来る代物だ
吹き飛ばされる事自体にダメージは殆ど無いけど普通の人間相手には使わないようにしないといけないが、基本悪魔やら天使やらが大半を占めているから大丈夫だろう
後のプチパーティーでリゼヴィムやミカエルさんがただのリンゴを潰されて絶叫したりしてる映像を見て腹筋崩壊でテンション上がりまくってウザい絡みをしていたアザゼル先生がロスヴァイセさんにハリセンホームランを受けて吹き飛ばされていたが、些細な事だろう
「九重には雪の結晶をあしらった
え?キーホルダーに俺が入ってないって?オール・エヴィルの格好を象徴するのってボロ布だよ?それを如何プレゼントに組み込めってんだ・・・奇形の短双剣のキーホルダーとかも売ってないし
冥界だとリアルフィギアとかは売ってるけど自分のフィギアを相手にプレゼントするような勇気は俺は持ち合わせていないのだ・・・どんなナルシストだよ
夕食は見晴らしの良い展望レストランに行ったり暗くなった外に出て街のイルミネーションやストリートライブの音に耳を傾けたりしていき、そろそろ皆の悪魔のお仕事が終わるであろう時間が迫って来た。今はひと気のない公園のベンチで自販機で売っていたココアで体を温めている処だ
黒歌も流石に外は寒いのか新しく買ったコートを羽織っている
「ねぇイッキ、はいコレ♪」
呼ばれて黒歌の方を見ると首にマフラーを掛けられた
黒歌も同じマフラーをしていてカップル用の長いやつとかじゃない一人用の普通のマフラーを二人で首に巻いてる状態だから若干引っ張られて自然と顔が近くなってしまう
黒歌はそのまま至近距離で此方を見上げて来る
「にゃはは、どう?暖かい?」
クッソ、普段はガサツな感じなのにこういう時だけ乙女モードに切り替わるとか狙ってんじゃないかと疑いたくなってしまう
「そうだな。熱いくらいだ・・・でも手放したくは無いかな」
ちょっと顔に熱が昇ってるし、至近距離で見つめ合うと如何しても心臓が早鐘を打つからな
かと言って離れたいとは微塵も思わない
「あら?そういう返しするのね」
「何だ?極めて物理的な暖かさの感想が良かったか?」
体温的な意味で・・・俺も頑張れば漫画の名医みたいな感じに相手の額に指を置くだけで温度計の真似事とか出来るようになるかな?
「う~ん。流石にそれは勘弁にゃ」
「デートの時くらいは多少ロマンチシズムな面も出していくさ・・・流石に『キミの瞳に乾杯』とか言う突き抜けた臭いセリフは勘弁して欲しいけどな」
「にゃははは♪もしもイッキがさっきの展望レストランでそんな事言い始めてたらお腹抱えて笑い転げてた処にゃ♪」
まぁそうだよな。そんなドラマなセリフを実際に言える奴なんて・・・祐斗ならイケるか?
その後なんだか可笑しくなって二人でひとしきり笑い合った
きっと黒歌も臭いセリフやシチュエーションが頭の中を駆け巡ったのだろう
「黒歌」
落ち着いてから黒歌に声を掛ける
「にゃ?・・・ッ!」
名前を呼んで此方を向いた黒歌にキスをした
「帰ろうか。まだパーティーは残ってる」
「そうね―――よ~し!ケーキとか喰いまくってやるにゃ~!!」
一応晩飯は食べたんだけどまだ食うのか
そうして俺達はイッセーの家で開かれたクリスマス企画のお疲れ様パーティーに足を向けた
なお、お菓子は兎も角ケーキは祐斗が気合を入れて焼いておいたらしく、それはとても美味しかったのだがソーナ会長も眷属にも気付かれないように秘密裡にケーキをサプライズで用意していたらしく、サジがたった一人でホールケーキ(激マズ)に突撃するという今年一番の勇気を魅せて後日、丸一日寝込んだようだ
―――例え美味しかったとしてもホールケーキ一個とかいうフードファイトをすればそりゃ寝込むだろうさ。逆に良く食えたな
それとリアス部長と朱乃先輩からオカルト研究部の次期部長はアーシアさんで副部長は祐斗が選ばれた事が発表され、リアス部長達はその任を降りる事となった
リアス部長達の呼び方を如何するかなんて話も出たけど普通に『リアス先輩』じゃいかんのか?まぁその辺りの心境は個々人に任せて大丈夫だろう
最後に深夜に寝る時になんだかんだで皆疲れてるし普通に寝るのかと思ってもいたが黒歌達がミニスカサンタ衣装で突撃してきたので『性なる夜』を堪能する事となった
日付が変わってる?そんな些細なことなど三人の可愛さを前にしたら如何でも良いのです
[Boss side]
≪アザゼル、ホットラインを繋げたのは他でもない。アグレアスについてそちらにも伝えた方が良いと思ったからなんだよ≫
≪やっぱり何か問題が起こってたか。それであの空中都市様にはどんな秘密が在るってんだ?≫
≪うむ。アグレアス内の遺跡には『
≪成程、確か『
≪ああ、だが我々悪魔にとって『
≪『アグレアスをみすみす奪われた現魔王政権なんかに任せておけない』って悪魔どもがここぞとばかりに政治の主権を握りに来るかもな―――やだぜぇ?お前ら現魔王の代わりに腐った貴族と交渉を重ねて行くとか、同盟を結んでる他の神話勢力が悪魔陣営だけ切り捨てて結果戦争とかよ≫
≪はは、最悪でもそうは為らないように頑張るしかないさ≫
≪とはいえリゼヴィムがそんな問題が表面化するのに時間の掛かる事だけを狙ってアグレアスを奪ったとは考えにくいな。アイツの目的はこの世界の混乱ではなく異世界への侵略だ。もっと即物的な理由が有ったと考えるべきだろう≫
≪やはりそう思うか。アグレアスに秘められたナニカ、聖杯、生命の実。少しずつリゼヴィムの下にキーなる物が揃いつつある。このまま放って置けば
≪イッキの奴が聖十字架の奪取と知恵の実がクリフォトに渡るのを阻止した分、猶予は伸びてるだろうが元々聖杯一つでも時間を掛ければ復活まで行きつくだろうからな。気が抜けねぇよ・・・ぶはっ!知恵の実の事を考えてたら思い出し笑いが!だ、ダメだ。まだ腹が痛てぇ!≫
≪・・・あの映像は私も視たけどイッキ君は相変わらずのようだね≫
≪ああ、毎度毎度何かしらやらかしてくれる奴だよ。イッセーが予測も付かない奇跡を起こす奴ならイッキは考えも付かないやらかしをしてくれる奴だ。言われてみればその通りでも、それを即座に実行に移すあのバカのお陰で今の処リゼヴィムの企みは全て中途半端に終わってるからな≫
≪案外イッキ君ならトライヘキサが復活しても想像も付かない方向から事態を解決してくれるかも知れないね≫
≪ああ、だが流石にそれをアテにする訳にもいかん。各勢力の神々も秘密裡に後任を決めてるだろうし例の結界もロスヴァイセの論文を基礎にしたものの理論が大凡固まりつつある。本当に最後の最後に如何しようもなくなったなら尻ぬぐいは若い奴らじゃなくて俺達大人が担わないとな≫
[Boss side out]
18巻も終わりですね。やっと黒歌ともデート出来ました。少しあっさりめに書きましたが二人の距離感ならこんな感じかなと思ったので
次回は総選挙のデュランダルですね