転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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三話という名の番外編ですね。寒くてキーボード打つ手が震えるぅぅぅ!!


第三話 妖怪との、和平です!

始業式に部活動も終えて晩ご飯を食べていた俺達は両親に軽い報告事項が在った

 

「あらそう、九重ちゃんがまた家に来るのね」

 

報告の内容は今まさに母さんの言った通りで何でも三大勢力のトップ陣と日本の神々に関東と関西の妖怪のトップに五大宗家の方々を交えた話し合いのようだ

 

そう言えば元旦の折に天照様がそんな感じの事をチラッと言っていたな

 

それでその間、八坂さんが折角駒王町の近くまで来るので九重を遊びに行かせようという事らしい。流石に九重がそんな会談に出席する訳にもいかないし、京都で大人しく待っているという手も有るが『折角なので』という事だ

 

九重は基本京都で離れているのでちょっとした機会でも出会うのも良いだろう

 

『D×D』のメンバーの実力も向上しているから安全面も中々だしね

 

「・・・前は八坂さんの手前自重したけど、今度は九重ちゃんのあのモフモフ尻尾をモフモフ出来るかしら?」

 

・・・母よ。永遠に自重してて下さい

 

そうツッコんでいると聞きなれない声が耳を打った

 

「ほぅ。お前さんの婚約者だとは聞いていたが西の姫の娘さんが来るのかい?」

 

和服を着た後頭部の長い禿げ頭のお爺さんが一緒に晩飯を食いながらそう話に割り込んで来る

 

なんだか見てると頭がボンヤリしてくる好々爺って感じだ

 

「お、こいつぁ中々美味いな。偶にはこういう洋食ってのも良いもんだ」

 

因みに今日の晩御飯はエビフライ定食をイメージして頂ければ概ね合っている

 

爺さんは自家製タルタルソースの掛かったエビフライに噛り付いている

 

そしてそこにレイヴェルがお茶を用意してお爺さんに出してあげた

 

「ふふふ、私と白音もお義母様の料理の手伝いをしましたのよ。最近ではこういった家庭料理も慣れてきましたわ。前は貴族としての高級スイーツなどがメインでしたから」

 

「レイヴェルはそれでも下地がしっかりしてたから良い。私なんて最初は玉子を割ろうとしてボールごと潰してた位だから」

 

ボールごと潰すって黄身ごとってレベルじゃねぇ・・・どこの日常の力加減に苦心するスーパーマンだよ?慣れない料理で無駄に気合が入ったせいか?

 

「ふふ、私は二人がお料理を手伝ってくれてとっても助かってるし、何よりイッキのこんなに可愛いお嫁さん達と料理するのが楽しいわよ?」

 

「カッカッカ!仲が良いようで何よりじゃの。黒歌は料理の手伝いはせんのか?」

 

「私は、ほらっ!食べるのが専門だし?そ、そんな事よりも肩凝ってないかにゃ~?ほらほら、良かったら揉んで上げるにゃ!」

 

誤魔化したと云うより逃げたな黒歌の奴め

 

「なんじゃ、そんな事では男に愛想を尽かされるぞぃ?なんだかんだ言っても好きな女の料理ってのは格別なもんじゃからの。兄ちゃんもそう思うじゃろ?」

 

黒歌に肩を揉まれながら爺さんが今度は俺に話題を振って来た

 

「ええ、確かに一度くらいは黒歌のちゃんとした手料理も食べてみたいって気持ちは有りますね」

 

一瞬だけソーナ会長とサジの姿が頭に浮かんだのを振り払って答えると「じゃろう?」と返される

 

黒歌が飯マズキャラじゃないのは分かってるんだし、やっぱり好きな女性の手料理には男は羨望を抱くものだ

 

「・・・・・って!イヤっ、違げぇぇぇぇぇぇぇ!!?アンタ誰だよ爺さん!!」

 

そうだよ!初めて見るよこの爺さん!?なに普通にご相伴に預かってんの!?黒歌とか肩揉んでるし、普段のキャラは何処に行った!?

 

待て、落ち着け。さっきは初めて見たと言ったしそれは事実だけどその姿自体は知識に有る

 

俺が目の前の爺さんの正体に行きついた辺りで黒歌も叫び声が切っ掛けになったのか自分が肩を揉んでる相手を見て"ピシッ"と固まった

 

「にゃ、にゃにゃにゃにゃんでこんな所に居るのかにゃ!?」

 

「お?何だ何だ?術が解けちまったか。参曲(まがり)にも此方から干渉すればバレるだろうと言われてたが本当に儂の術を破るとはの」

 

目の前の人物が術を解いたのか両親に白音にレイヴェルも正気に戻ったらしく、一瞬で警戒態勢に移って両親を背後に庇う

 

「誰ですか!貴方は!?」

 

「一体何時の間に!?」

 

まぁ警戒は当然だけど取り合えず二人を諫める事にするか

 

「白音、レイヴェルも落ち着いてくれ―――確認ですが関東の妖怪の頭目の『ぬらりひょん』様ですよね?」

 

不法侵入してきた相手だがこの妖怪の特性(・・)を考えると言っても無駄だろう。ある意味で存在意義みたいなもんだし

 

―――ぬらりひょん。勝手に他人の家に上がり込んで茶を啜ったりする妖怪。百鬼夜行を率いる妖怪の総大将だ・・・若い頃は禿げ頭じゃなくてロキみたいな感じだったのかな?

 

最も夜の運動会で黒歌達の裸を覗いたとか言ったならその時は○○○○(自主規制)して貰うけどね

 

「ほっ、若いのに立ち回りの良さは中々じゃの。成程、参曲(まがり)が気に入りそうな奴じゃわい。ただ若いうちはもっと勢いで突っ走っても良いと思うんじゃがな。そっちは赤龍帝の坊やに期待するか」

 

ただ若いだけじゃなくて済みませんねぇ!俺の精神年齢って若干あやふやなんだよ!

 

まぁ別に前世で枯れた爺さんだった訳じゃないけどさ!

 

てかオカルト研究部の人達って『取り敢えず一当てしてから考える』とか『一当てしながら考える』という猪突猛進タイプばっかなんだよ

 

主人公組らしいっちゃらしいけど実際隣で戦うとハラハラするからな

 

俺は多少時間が掛かっても敵の最後の一人まで闇討ち完封出来ればベストって考えだからなぁ

 

その点で云えば目の前に居るぬらりひょんのステルス能力とか羨ましいったらないな

 

さっきは彼の方からこっちの意識に干渉してきたから気付けたけど、その前のただ隠れてた時点ではマジで気付かなかったし

 

参曲(まがり)様が俺なら気付くと言っていたなら魂感知レベルの感知能力が有れば破れるって事だよな?・・・全力で感知能力に集中している時ならステルス中でも気づけたか?

 

そうでなくとも魔王クラスの実力が有れば違和感は感じられるだろうけど、それ以下だと『親しい相手』と認識して実質尋問し放題

 

潜入と情報収集の能力が反則級だろ、コレ

 

「さて、バレた以上は儂が此処に来た理由とかを話しても良いんだが、折角の料理を冷ましちゃ悪い。ほれ、黒歌も畏まった挨拶とかは後だ。座れ座れ」

 

中断させたのは自分のクセしてなんてふてぶてしい爺さんだ

 

もしかしなくても久しぶりの洋食をがっつきたいだけじゃねぇのか?

 

「にゃ・・・にゃんでこんな事に・・・」

 

黒歌は黒歌で物凄く気まずそうにしながらもぬらりひょんの言う事には逆らえないのか大人しく元の席に座る

 

そうして何時もの晩御飯は突然の特別ゲストを迎え入れた状態で再開したのだった

 

 

 

 

 

 

突如として訪れた東の妖怪の総大将との会食

 

そこに漂う空気は当然重苦しいものとなる・・・

 

 

 

 

 

「いや~。すみませんねぇ。丁度今日本酒は切らしてしまってまして」

 

「いやいや、気を使わんで下さっても良いですよ。確かに日本酒は一番よく飲むんじゃが、別に酒なら大抵はイケますからな・・・寧ろ何かと献上品とかで日本の酒はよう貰うんで専用の蔵まで用意しとるくらいじゃからの。今日突然押しかけた詫びに後日何本か上物を贈くるよう部下に言っときますわぃ。妖怪には酒鬼ってぇ酒造り専門の奴も居ますでな。アイツの酒は美味いですぞ」

 

「それは是非とも飲んでみたいものですな」

 

「もう!アナタったらがっつき過ぎよ。普段そこまで飲むタイプでも無いでしょう?」

 

「そうは言っても酒造りの妖怪の造った酒なんて聴いたら年甲斐もなくはしゃぎたくもなるさ」

 

「う~ん。気持ちは分からなくもないんだけどねぇ・・・」

 

「ほっほ!奥さん相手なら鍛冶屋の手がけた一級の調理器具とかの方が良かったかの?」

 

「あら、それならこの間アザゼル教諭に金属から幽霊まで斬れちゃう『閃光と暗黒(ブレイザー・シャイニング・オア)の龍絶包丁(・ダークネス・キッチンナイフ)』やどんなに煮詰めても焦げ付いたりしない『灼熱と凍結(ディザスター・オブ・バーニング・)の龍滅鍋(オア・フリーズ・ポット)』。それとミクロの汚れまで落としてに乾燥まで出来ちゃう『激流と乾き(フォール・オブ・レイジングストーム)の龍墜箱(・オア・ドライ・ボックス)』まで頂いてしまっているので被っちゃいますわね・・・その、お酒には余り辛口過ぎないのも混ぜて貰っても良いですか?」

 

「なんだい。結局母さんも興味が有るんじゃないか」

 

「ええじゃないか。うちの若い女子衆も好きな甘めの酒も混ぜときますからの」

 

「あら、有難うございます」

 

 

・・・訳でも無かったらしい

 

お酒の話とかには割り込めないから様子を見てたけど滅茶苦茶話しが弾んでいる・・・ってか何時の間にか家のキッチンが人工神器に侵されていってるんだけど!?

 

因みに『激流と乾き(フォール・オブ・レイジングストーム)の龍墜箱(・オア・ドライ・ボックス)』の洗濯機版である『激流と乾き(フォール・オブ・レイジングストーム)の龍墜槽(・オア・ドライ・タンク)』も有るらしい―――名前が紛らわし過ぎるわ!

 

と云うか両親とも八坂さんやアザゼル先生や天照様や新年の挨拶では他に冥界までフェニックス卿と出会ったりしてたからか感覚麻痺してますよね!今目の前に居る朗らかな雰囲気出しているのは妖怪の中でもトップ3に入っても可笑しくない方ですよ!

 

『D×D』のメンバーほぼ全員に言える事だけども俺の両親もその余波を受けたのか

 

そうして両親との話も一段落したのか今度は黒歌に話題を振って来た

 

「そういや黒歌は実際如何なんだ?」

 

話し掛けられた黒歌は椅子に座りながらも姿勢を正して軽く頭を下げながらも返答する

 

「はい。お陰様で妹とも無事に再会出来ました。こうして今を無事に過ごせているのも『はぐれ』となったばかりの私を追手から匿って頂いたことに「ああ、違う違う」・・・にゃん?」

 

黒歌には非常に珍しく畏まった言動で感謝の意を伝えていると当の本人から待ったが掛かった

 

そしてぬらりひょんはよくアザゼル先生が浮かべている人を揶揄うような表情を見せる

 

「まっ、感謝の言葉は貰っておくが、堅苦しいのは後つったろ―――儂が今訊いてるのはお前さんの『ぼーいふれんど』に手料理を作ってやらねぇのか?って事だ」

 

それを聞いた黒歌は力が抜けたように肩を落とす

 

そう言えば俺が『黒歌の手料理を食べてみたい』と言ったその返事は貰って無かったな

 

「そ・・・そんなの態々訊くような事かにゃ?」

 

まぁ今はただの会食の時間なんだから良いんじゃないか?

 

それに黒歌には悪いが俺も今回はぬらりひょん様の味方をしたい

 

黒歌の意思は尊重するけど、希望を述べるくらいはさせて貰うぞ

 

「黒歌。今度の学校の昼の弁当だけど、黒歌に頼んで良いか?」

 

いきなり朝食や夕食などで家族全員に盛大に振舞えってのもあれだしね

 

「にゃ!?イッキまで・・・そんなに食べてみたいのかにゃ?」

 

当然。勿論白音やレイヴェルが作ってくれる弁当も良いけど、どうせなら全員分の料理をコンプリートしたいものなのだ

 

「姉様。その日は早朝訓練は少し早めに切り上げましょう」

 

「レトルト品だけでお茶を濁すなんて事が無いように、私と白音も同行させて頂きますわ」

 

如何やら白音とレイヴェルが監督してくれるようだが、黒歌はこういう処は信用無いのな

 

「うぅぅ・・・分かったわよ。ちゃんと作るから!」

 

「カッカッカ!あの面倒くさがりのお前さんがアッサリと折れるとはの―――男に妹、それに家族と、良い意味で首輪が付いたじゃねぇか」

 

笑われた黒歌も相手が相手なので下手に言い返す事も出来ずに軽くそっぽを向く程度の抗議しか出来ないみたいだ

 

そんな隣の席で何時もより少し頭の位置の低い黒歌の頭を撫でる

 

サラサラの髪とフワフワの猫耳の感触が心地良い

 

「にゃっ、にゃにすんのよイッキ!」

 

「いや~。普段揶揄う側の黒歌が揶揄われている姿が新鮮でつい・・・」

 

それに文句は言いつつも手を払ったりはしてないしな

 

とは言えやり過ぎれば後が怖いので程々で止めておく

 

それから晩御飯も食べ終わったので皿の片づけなどは流石に今回は母さんに任せて家の中の和室に移動することにした

 

無駄に広い家な上に俺達も日本人なのを配慮してか和室も普通に家の中に在るからな

 

まぁ神の子を見張る者(グリゴリ)の変人達が建てただけあって壁に掛かってる掛け軸の後ろに秘密の階段とか見たような気がしないでもないけど、一々気にしてたらキリがない

 

「さて、数年ぶりじゃな。黒歌」

 

出会ってから色々機会が潰れて、漸く挨拶に漕ぎつけられた黒歌が正座からそのまま頭を下げる

 

「お久し振りです、頭領。ご壮健なようで何よりです。白音、ご挨拶なさい」

 

「はい。お初にお目にかかります。塔城黒歌の妹、塔城白音と申します」

 

白音はグレモリー眷属としてマナーは普段から普通に良い方だから見ていて違和感が無いな

 

「妹の方が母親とよく似てるようだな。つっても藤舞(ふじまい)は術者としては優秀だったが猫魈(ねこしょう)の割に余り戦闘は得意じゃ無かったがな」

 

へぇ、黒歌と白音の母親の名前は初めて聞いたな。完全な後方支援系だったのか性格的に戦いが苦手だったのかは分からんけど基本近接でガチ殴りする白音とはその辺りは違うんだろう

 

「まっ、姉妹で性格は違っても惚れた男は一緒だったみたいだがな」

 

ぬらりひょんに話の水を向けられたのでまだ挨拶していなかった俺とレイヴェルも挨拶する事にする。黒歌達程頭を深々と下げる必要はないかな?

 

関東に所属してる訳でもない上に俺の家でアポ無し訪問だしな・・・参曲(まがり)様相手?速攻で五体投地に移行しますが、何か?

 

「有間一輝です。参曲(まがり)様にはとても良くして頂いております」

 

思い出される修行の日々

 

ノーロープバンジーや寒中水泳。土に埋められたり山奥に放り込まれたり、毒キノコ食わされたりとかもしたなぁ

 

「レイヴェル・フェニックスですわ。名高き百鬼夜行の主にお目に掛かれて光栄です」

 

「こいつぁ名乗りが遅れて申し訳ないねぇ。関東一円の妖怪共を束ねているぬらりひょんって者だ。そっちの黒歌とは母親が昔は俺の組に居た縁でね。保護してやったって訳だ」

 

主を殺して『はぐれ』となったばかりの黒歌には悪魔側から追手が差し向けられたようだし、当時から最上級クラスの力のあった彼女を追うならそれなりの実力と数を備えた奴らだったろうからな。追手を巻くにしても一度完全に雲隠れしないとオチオチ眠る事も出来なかったんだろうし、白音を探す事も難しかったんだろう

 

幸いにして白音はリアス部長の眷属になれた訳だけど

 

「さて、儂が此処に居る理由が気になってると思うが明日、何が在るか知ってるかい?」

 

「はい。八坂さんの話だと関東と関西の妖の長と三大勢力のトップ陣に五大宗家、それに日本の神々の間で会談が開かれるとか」

 

九重が家に来るのもその関係だからな

 

「そうだ。そんでもってその会談の内容は和平についてだな。元々儂ん所は和平を態々結ぶつもりは無かったんだ。別に特に敵対してる訳でも無かったからメリットってもんが少なくてな。だが例のテロリスト集団のせいで儂たちの方にも被害がそれなりに出始めてな。情報や技術で後れを取らない為にも形だけでも和平に応じた方が良いってぇ意見が強くなった」

 

成程、和平によるメリットよりも結ばない時のデメリットが無視できなくなってきた感じか

 

「大体よぉ。和平を推し進めてる三大勢力に既に和平に応じた八坂の姫さんやこの国の神さんに囲まれた和平への誘いの会談とかヒデェ布陣だとは思わねぇか?もっと爺ぃを労りやがれ」

 

いやいや、その程度の圧迫面接なんて慣れたものでしょうに

 

関東の妖怪の長がそれくらいで参るような精神をしているとは思えないぞ

 

「で、実質既に和平の話自体はほぼ固まってんだが、儂の組織も一枚岩じゃぁねぇ。和平に対して異を唱えてる奴らが居てな。ただ気に喰わねぇからって理由なら適当に諫めてそれで終わりにしても良かったんだが、実は儂の所は少し前に五大宗家の『姫島』と『神器持ち』の関わる騒動で結構被害が出ちまってな。その上で同盟の象徴たるお前さんら『D×D』には神器持ちも多ければ『姫島』に関わる者も居るだろう?若い奴らが同盟に反対してる一番の理由がそれなんだよ」

 

「朱乃先輩はとっても優しい人です!それに幼い頃にその『姫島』から追放されているんですよ!それなのに敵意を向けるって言うんですか!」

 

反対派のその理由を聴いた白音が険しい表情で立ち上がって声を荒げた

 

グレモリー眷属はリアス先輩の影響なのか元々の本人の資質なのか兎に角仲間を大切するからそう言う理不尽には過敏に反応するんだろう

 

俺としても勿論納得のいかない理由だしな

 

そんな白音の叫びと俺達の目線が一段冷え込んだのを見てぬらりひょん様は愉快気に笑う

 

「ほっ、真っ直ぐな瞳をしとるの―――確かにちっこい嬢ちゃんの言う通りだ。お前さんの言い分は実に正しい。だがの、大切なもんが傷つけられた時、どうしてもソイツの眼は憎しみってぇ色眼鏡が掛かっちまうのさ・・・まぁ、反対しとる奴らも幸い頭では解っているが心が納得出来てねぇって感じでな。要するに和平の前に不満をぶちまける場が欲しいのさ。完全に憎しみやら嫌悪やらで心が満たされてたなら頭での理解も拒否ってるだろうがよ」

 

そこで彼は俺達の顔を見渡しながらニヤリと笑う

 

「そんで本格的に会談をする前に通信で堕天使の元総督に『だったら若い奴ら同士でどつき合わせれば良い』ってぇ意見を出されてな。儂としても一度『D×D』とやらについてはこの目で見極めたかったんでその話に乗ったって訳だ」

 

アザゼル先生ェ・・・なに勝手俺達を売り飛ばしてるんですか

 

でも確かにトップの一存で反対派の意見を封殺してしまったら絶対後々問題を残してしまうからな

 

例え和平自体はほぼ確定だろうとその人(?)達の気持ちも出来るだけ汲んでやって禍根を絶ちたいって感じか

 

「でもその話、俺達にしてしまって良かったんですか?」

 

「まっ、気付かれずにじっくり観察出来たらそれが良かったんだがな。お前さんや黒歌なら俺の存在に下手したら気づきかねねぇし、二人の事は参曲(まがり)から聞いてるから今更なんだよ。そっちのお嬢ちゃんたちも少ししか見られなかったが、少なくとも邪悪の類のではなかろうよ。先にこっちに来たのは魔王ん所の姫さんと赤龍帝の家を見物してる時に俺の存在が気付かれないようにって配慮だ。なんでも寝る前に【一刀修羅】とやらで最後の修行してんだろ?儂の隠形も流石にそれだとバレるだろうからな」

 

【一刀修羅】で瞑想してる事は参曲(まがり)様も知っているから彼が俺達とイッセーの家に行くと知って忠告したんだろうな

 

確かにそうなってたら下手すれば一気に駒王町全体が厳戒態勢とかに移行してたかも知れん

 

・・・コッソリ来るなよとも言えるけど抜き打ちで見るからこそ見定められる処も有るだろうから、なんとも言えんな。そもそもコッソリと言っても上の許可は下りてる状態な訳だし・・・現場の俺らとしては納得し難いけど

 

「・・・要するに見て見ぬふりをして欲しいって話ですか」

 

『これからイッセーの家にも不法侵入するけど宜しくね』って事ですね

 

アザゼル先生やあと多分サーゼクスさんとかが許可を出してるんだろうけど不法侵入に変わりはないからな・・・細かい事言い始めたらキリがないけど

 

そんな訳でぬらりひょんがイッセーの家に向かうのを見送ったら黒歌がその場で畳に気が抜けたように仰向けに倒れ込んだ

 

「うにゃ~。やぁぁぁっと居なくなったにゃ~。ホント、来るなら来るって事前に言っといてよ。知ってたらその間適当に暇を潰してたのに」

 

「おいおい、一応恩人なんだろ?」

 

完全に面倒が過ぎ去ったって態度じゃないか

 

「だからこそよ。気が抜けなくて肩が凝っちゃうわ」

 

仰向け状態の黒歌が右手で左肩を揉んでいるけど豊満な胸が腕に当たってユッサユッサと揺れている。男のサガとしてとても気にはなるが、それを何とか意識から追い出した

 

あの高性能ステルス能力の持ち主であるぬらりひょんがひょっこり帰って来る可能性も有るしな

 

「でも黒歌は参曲(まがり)様相手でもそこまで畏まった態度は取って無いよな?」

 

話題と言うか意識を逸らす為に疑問に思った事を聴く

 

猫妖怪の長老である参曲(まがり)様とか同じ猫妖怪で色々世話になった黒歌ならそれこそぬらりひょん相手以上の態度を取っても可笑しくはないはずだが、そんな姿は見た事ない

 

「あ~、三毛ばあさんは私が小さい時からなんだかんだで見知った相手ではあるからね。殆ど交流も無しに一方的に恩だけ有る頭領相手だと砕けた態度も取り辛いのよ」

 

成程、ぬらりひょん相手だとどこまで距離感を縮めて良いのか、情報が足りてないのか

 

「―――いえ、そもそも黒歌姉様はぬらりひょん様以外の目上の立場の方にももう少し礼節を持って接して欲しいです」

 

「魔王様方を始め、私達が出会う権力者が基本フレンドリーな性格をしているので何とかなっていますが、今後はそう言った事に厳しい方々も集まるパーティーなどにも招待される機会も有ると思いますのよ?」

 

「大丈夫よ。その時は堅苦しそうなパーティーなら欠席するか壁の花を決め込んで只管料理に舌鼓でも打っておくからにゃ」

 

礼儀に時間を使うくらいなら食欲に当てて乗り切ろうって腹ですか

 

確かに黒歌なら面倒な相手が近づいてきたとしても事前に察知して煙に巻くとか出来るだろうな

 

その後、俺達はその日はもう寝る事にした

 

明日は九重も来るし、ぬらりひょんの言の通りなら反対派の妖と一戦交える事にもなりそうだったからな・・・黒歌は寝る前に部屋に強力な結界を張ってたけど、まぁ気持ちは分かる

 

好き好んで親しいとも言えない相手に寝顔を見られたいとは思わないので自然と俺達も結界を重ね掛けしてから眠りにつくのだった

 

 

 

 

翌朝、始業式が金曜だったから今日は休日で、朝食を食べた後に俺の家にイッセー達もこれから来る九重を迎える為に集合している。先程リアス先輩から九重が来た後で少し話が有ると言われたけど、多分ぬらりひょんに化かされたりしたのだろう

 

九重も妖怪の姫だけ有って当然妖怪には詳しいから意見を訊きたいってところか

 

そんな事を思ってると地下の転移部屋の常設してある巨大な魔法陣の上に赤い鳥居が出現し、九重が現れた。九重の左右には御付きの狐の妖怪がお土産だと思われる風呂敷を手に持っている

 

「正月ぶりじゃな、皆の衆!思ったよりも早く再会出来て嬉しく思うぞ!」

 

確かにまだ冬休みが終わったばかりだからそんなに日にちは経ってないし、中でも俺は冬休みの終わりまで出来るだけ特製の回復陣を使った【一刀餓鬼】の修行で京都にお邪魔してたから他の皆よりも更に離れてた日数は少ないんだよな

 

【一刀餓鬼】の制御も10秒までなら問題無く制御出来るようになったし、5秒でもそこまで酷い怪我を負う訳でも無くなったので6~7秒までなら圧縮強化も制御出来てるはずだ

 

【一刀羅刹】を使っても修行を始める前の三分一程度には怪我も抑え込めるんじゃないだろうか?

 

それはさておき九重は皆と正月に再会しているのだが一人だけ例外も居た

 

「九重、九重」

 

「フィス殿!久しぶりじゃのう!正月は会えなかったが元気そうで何よりじゃ!今年も如何かよろしく頼むぞ!」

 

オーフィスは基本としては各勢力のトップでも一部の方々しか此処に居る事を知らないから流石に人目に付き過ぎる元旦の神社とかに連れて行く訳にもいかなかったからな

 

直接会うのは前回のオーフィスのお社を建てた時以来と言える

 

二人で手を取り合ってはしゃいでる姿は実に微笑ましい

 

「前はお雑煮が気に入ったと言っておったが、今も食べておるのか?」

 

「ん、お餅が無くなるまでは食べる」

 

まぁイヅナ通信で九重と連絡する時はオーフィスも呼んでいるので会話自体は久しぶりと言う程でも無いのだが

 

因みにだがルフェイは現在はヴァーリチームとして行動中のようだ

 

きっと今もアグレアスの捜索を行っているのだろう

 

ヴァーリチームで一番そういう危機察知とかじゃない単純なモノ探し的な能力に長けているのはルフェイだろうからな

 

そうして九重の持ってきた京都の色んなお菓子のお土産を置いてお付きの妖怪さん達が帰ってからリアス先輩が一つの話題というか相談を切り出してきた

 

オーフィスと黒歌?既に全力で甘味を愉しんでますよ?まぁ量は有るから直ぐに無くなったりはしないだろうが

 

話の内容は昨夜にイッセーと教会トリオが見知らぬお爺さんを御持て成しするという不思議体験をしたらしく、その上その時は思考に霞が掛かったような夢心地で気が付いたら朝になっていたと言う。当初は変な夢を見ただけかとも疑ったそうだが確認してみれば夢の中に居た4人全員が同じ夢を見ていたらしく、これは只事では済ませられないとしたそうだ・・・うん。間違いなくぬらりひょんです。知ってた

 

「う、う~む。私の知り得る限りでは『D×D』たるお主らを化かす事が出来て且つそのような現象を引き起こせるとしたら一人だけなのじゃが・・・いやしかしイッキと赤龍帝の家に集うのは超常の存在の中でも実力者ばかり、この場に溜まる力場が幻覚を見せたという可能性も有るにはあるがそこまでピンポイントとなるとやはり・・・」

 

九重も一組織のトップが突撃訪問してきたのだとは考えたくないのか悩まし気な声で考え込んでいるが、やはり状況が状況な為か殆ど確信してしまっているようだ

 

あんまり悩ませてもアレなのでネタばらしタイムといくか

 

これ以上は引き延ばせないだろうしな

 

「そろそろ潮時ではありませんか?ぬらりひょん様?」

 

俺は誰も居ない部屋の隅を見つめて問い掛ける

 

「ほっほ、今度は此方から話し掛けた訳でもないのによう気付いたのう」

 

「『居る』という前提で気配感知に全霊を傾ければ違和感は感じ取れたので」

 

ステルス状態を解除したぬらりひょんが急に現れた事で皆が警戒態勢に移行した

 

とは言え俺の方から話し掛けたからか身構えつつ成り行きを見守ってるって感じだが

 

「なあ!・・・あ、あなた様は、やはり、そうであったのですか」

 

九重が震えた声でぬらりひょんを凝視する

 

「おう、西の姫さんの娘さんだな?直接会うのは初めてだねぇ」

 

東の妖怪の頭領に話し掛けられた九重はその場で姿勢を正して頭を下げた

 

「―――ぬらりひょん殿。お初にお目にかかりまする」

 

「ぬらりひょん・・・やはりそうだったのね」

 

「ええ、リアス。伝え聞いた特徴と合致するとしたらこの方くらいですからね―――と云うかイッキ君はあの様子だと既に知っていたみたいですけど、これはお仕置きが必要かしら?」

 

二大お姉様方は『ぬらりひょん』と聞いて予想が合ってた事で得心がいったという面持ちだったがなんか朱乃先輩に俺も共犯扱いされてるんだけど!?

 

「朱乃先輩。お仕置きは是非ともアザゼル先生にお願いします!」

 

「そう・・・またアザゼルが絡んでいるのね」

 

一応昨夜連絡を入れたけどサーゼクスさんも許可を出してたみたいなのでそっちも折檻して良いですよ?・・・リアス先輩のお仕置きとかサーゼクスさんなら笑顔で受け入れそうだけど

 

取り敢えず手頃に生贄として扱えるアザゼル先生にヘイトを向けておいたので問題はないはずだ

 

それからぬらりひょんにより昨日の夜に聞いたのと似たような説明がなされる

 

「―――まっ、そういう訳で同盟を結ぶ為の最後の一手にお前さんらにも協力して貰いてぇのよ。儂自身としちゃ昨日からお前らの生活ぶりを見させてもらったから同盟ってぇ形でも良いとは思ってんだがな。やっぱ戦ってる姿も見ておきてぇ」

 

「そう言う事情でしたら我々も協力させて頂きます。それで、『D×D』を見極めたいとの事でしたが招集できるメンバーは全員集めた方が宜しいのですか?」

 

「いんや、代表だけで構わねぇ。具体的にはそこの姫島出身の嬢ちゃんとその上司で魔王の妹であるアンタ。後は知名度の高い神器使いって事で赤龍帝の坊主。最後に西の妖怪共の総大将の娘との婚約者であるそっちの坊主もだな」

 

まぁ納得の人選か―――例えばイリナさんやゼノヴィアやロスヴァイセさんとか神器持ちでもなければ妖怪とも接点が薄いからな

 

黒歌や白音なんかは元を辿れば関東の妖怪だし・・・白音はそこら辺微妙だけどな

 

 

 

 

あれから場所を移して俺達は地下のトレーニングルームに来ていた

 

『D×D』結成からこの地下トレーニングルームも各方面の技術を使って強度は増しているのでちょっとした模擬戦程度ならば壊れたりはしない

 

指名された俺達以外のメンバーは遠くで一応結界を張った状態で観戦モードだ

 

九重とオーフィスはそれぞれ腕にイリナさんの使い魔の八白とアーシアさんの使い魔のラッセーを抱いているのが何とも微笑ましい・・・八岐大蛇はちょっと微妙だけど

 

あの二匹って将来新たな龍王になったりするのかな?その場合七大龍王になる訳だが仮にそうなるとしても順当に考えるなら百年単位で先の話になるかな?

 

「さて、では呼ばせて貰うとするかの」

 

ぬらりひょんが手に持った杖で"トン"と地面を叩くと彼の両脇に"ドロン"と紫色の煙が発生しそこから2体の妖怪が現れる

 

「東の妖怪。鎌鼬の列座(れつざ)と申します」

 

「同じく、雷獣の雲辺(くもわたり)でございまする」

 

現れたのは両腕に鎌のようなモノを生やした人間大の大きさのイタチと体の周囲に雷撃と雲を纏わせた犬の妖怪だった

 

丁寧な挨拶とは裏腹に敵意を滲ませた目をしている

 

「さてお前ら、場は整えてやった。後はお前ら自身の目で見極めろ」

 

「「はっ!」」

 

「つっても流石にあいつ等全員相手にするのはキツイだろうし儂も爺なりに運動するか・・・おい、赤龍帝の坊主。お前さんの相手は儂がしてやるよ。列座と雲辺はあっちのお姫様達と闘りな」

 

「あの・・・俺は?」

 

俺だけ言及されてないんですけど?

 

「慌てなさんな。お前さんの相手は―――「私さね」」

 

訝しんでいるとぬらりひょんのセリフを引き継ぐ形で聞き覚えのある声が聞こえてきた

 

「にゃぁぁぁ!?三毛ばあさん!?」

 

「何時の間に・・・」

 

白音の言うように何時の間にか観客である皆の後ろに七本の尻尾を持った三毛猫の参曲(まがり)様が鎮座していた。近く居た黒歌も気付けなかったのかよ

 

「全く、黒歌。今のアンタなら私の存在に気付けたはずだよ。ちょいと気を緩めすぎなんじゃないのかい?―――そっちが白音だね?まっ、挨拶は後にしようか」

 

そう言ってその場から消えた参曲(まがり)様は次の瞬間俺の眼の前に現れる

 

いや~。俺も気付かなかったし参曲(まがり)様の採点基準高すぎじゃないですかね?

 

「直接会うのは久しぶりだねぇ。元気に暴れてるようで何よりだよ」

 

元気に暴れてるってそこだけ聞くと不良学生みたいなんですけど・・・

 

「お久し振りです。参曲(まがり)様。本日は何故此処に?」

 

参曲(まがり)様が反対派の一員であるとか考えにくいんだが・・・

 

「なに、頭領がこの家に行くってんでついでにアンタら二人とあっちの妹猫に会っておこうと思ってねぇ。順調に力を伸ばしていってるようで何よりだよ―――白音と言ったか。あの娘も既に一端の猫又・・・いや、猫魈(ねこしょう)になってるようだね」

 

やっぱり三又になって初めて一人前なのかな?

 

てか参曲(まがり)様がこの場に居るのはただの『ついで』かよ!

 

イヤ、出会えた事自体は嬉しいとも感じるんだけどね!

 

「イッキが畏まってるって事は大物なんですよね?」

 

「800年は生きているとされる猫妖怪の長老よ。イッキと黒歌の仙術の師でもあるわ」

 

「イッキと黒歌さんの師匠!?どんだけ最強なんですか!」

 

少し離れた場所でイッセーの疑問にリアス先輩が答えている

 

リアス先輩には俺の師がこの方だって事は両親に裏の事がバレた時に知られてるからな

 

そんで参曲(まがり)様の実力か。以前出会った時はまるで敵わなかったけど今ならオーラ量『だけ』なら同等以上は有ると思う・・・ただ総合力ではボロ負けだろうな

 

長期戦に持ち込んだ時点でアウト。短期決戦の力押しならワンチャン有るかもって感じか

 

と言っても今回はちょっとした模擬戦みたいな感じだからその手は使えないし、アレ?これ俺に勝ち目無くねぇ?

 

格上相手でも下す方法とか色々有ると言っても基本は参曲(まがり)様の教えが下地になってるから手の内ほぼバレてるよね?

 

「お手柔らかにお願いします」

 

結局そう言うのが精一杯だった

 

 

 

 

[3人称 side]

 

 

関東の妖怪と今回の『D×D』の代表者のマッチングが決定してそれぞれが邪魔にならないように距離を取る

 

3組の中でイッセーは通常の赤龍帝の鎧を装着して拳を構えつつ自分から攻めるべきか出方を窺うべきか迷っていた

 

「(見た目完全に爺さんだもんなぁ。見た目で判断しちゃダメって事くらい解るけどやっぱ少しやり難いぜ。てかこの爺さんもイッキが相手をしてる参曲(まがり)とかって猫又と一緒でこっちに特に敵意が有る訳でも無いんだし―――いや、この爺さんは俺達を見極めようとしている事に違いは無いんだから此処は普段の俺らしくいきますか!)」

 

数秒で迷いを抑えて方針を決めたイッセーが背中のブースターを噴かせてぬらりひょんに突撃しようと前傾姿勢となった瞬間、イッセーの視界に映っていたぬらりひょんの姿が消え去った

 

「消えた!―――クソ!何処だ!?」

 

単純なスピードで視界から消えたにしては余りに予備動作が無かった為、イッセーは彼が消えたのは『D×D』の中では特に黒歌が多用する幻術の類だと判断して周囲に気を配る

 

「ほっ、赤龍帝の坊主は裏側に足を踏み入れたばかりで搦め手に弱いってのは本当みてぇだな」

 

声が聞こえてきたのはイッセーの目の前どころかすぐ下からだった

 

構えていた拳にぶつかりそうなくらいで身長差が無かったならお互いの鼻がくっつきそうな距離と言えるだろう

 

「なっ!?」

 

「ほれ、ビビるんじゃねぇよ」

 

驚いてバックステップで距離を開けようとしたイッセーよりも早く小柄な老人の放つローリングソバットがイッセーの全身鎧の脇腹部分にぶち当たって吹き飛ばされた

 

「ガッ!畜生、やっぱり幻術か!」

 

「幻術?バカ言うねぇ。そんなもん使ってねぇよ」

 

「え?」

 

「今のは単に気配を消して動いただけだ」

 

実際に姿を消したりした訳では無く気配を絶った結果としてイッセーが認識出来なくなっただけだとぬらりひょんは語る

 

「儂の力が他人の家で呑気に茶を啜るだけのもんだと思ってたのか?それだけじゃあ妖怪の総大将は名乗れねぇよ」

 

ぬらりひょんの戦い方は如何な相手であろうと全ての攻撃を『不意打ち』で仕掛ける事が出来ると言うある意味では究極の先の先の型なのだ

 

それから暫くはぬらりひょんに翻弄され続けるイッセーだった

 

 

 

 

所変わってリアスと朱乃も鎌鼬の列座(れつざ)と雷獣の雲辺(くもわたり)との戦いが始まろうとしていた

 

「それでは此方も始めると致しましょうか」

 

「これは元より我らの仕掛けた戦い。先手は頂かせて貰いますぞ!」

 

その言葉と共に雲辺が雷獣の名に恥じない雷撃を全身から放ちリアスと朱乃を襲う

 

「舐めないで頂戴!」

 

対応したのはリアスだ

 

迫りくる雷撃に対して前方の地面を魔法で何本もの避雷針状に変える事で雷撃を誘導したのだ

 

「私が何時も誰と模擬戦をしていると思っているのかしら?雷の対処法はまだまだ有るわよ!」

 

そう言いつつ隆起した地面を素早く元に戻すとリアスの隣で雷光を溜めていた朱乃が開いた隙間からその強力な雷を放った

 

「そのセリフ。そっくり返してやろう!」

 

雷光を見て前に出たのは鎌鼬の列座(れつざ)だ。彼は自身の持つ鎌で前方の空間を一瞬で滅多切りにすると素早く後ろに下がる

 

そして朱乃が放った雷光がその場所を通り過ぎようとするとその場で弾かれたかのようにスパークを起こして雷光は消失した

 

「雷は大気の影響を良く受ける。そこをかき乱してやればこの通りだ」

 

お互いに相棒が雷の使い手だからこそ対処にも慣れているのだ

 

雷の規模を極大と呼べるものに引き上げればまた別の対処が必要だろうがコレは殺し合いではない

 

一手一手じっくりと相手の攻撃を捌きながらよく観る事が重要なのだから

 

「次は此方から行かせて貰う!」

 

「ええ、来なさい!」

 

そのまま4人の居る場所は激しい爆炎に包まれていった

 

 

[三人称 side out]

 

 

 

「うおおおおおおおおっ!?」

 

は~い。イッセーとリアス先輩と朱乃先輩と違ってぶっちゃけ和平と関係無い戦いを演じている訳なんですけど既にメッチャ劣勢に追い込まれてます

 

「ほらほら、身体操作系に関しちゃそのまま精進を続けろとしか言わないからね。折角だから遠隔系を鍛えて上げるよ」

 

はい。そんな訳で師匠の言に反論できる訳も無く絶賛相手の土俵で戦っておる次第です

 

接近戦に持ち込んで猛攻すればワンチャンとか思ってた過去の自分に無駄な希望を持つなと言ってやりたい。師匠命令という番外の一手で俺の得意分野は封殺されました

 

・・・さっきから参曲(まがり)様の術の発動が自然過ぎて碌にタイミングも掴めないから結局幻術で翻弄されてたとは思うけどね!

 

達人の抜刀術は速さよりも間合いとタイミングを支配するとかそんな風に感じるわ!

 

参曲(まがり)様が凄いのは元から解ってたから砂粒数個だけ操って俺の眼球にぶち当てて隙を作るとか訳の分からないレベルの省エネ戦法とかねじ込まないでくれません!?ご丁寧に砂粒に強化とか施してるし―――勉強になりますけどさぁ!

 

「自分の心臓すらも操作可能なイッキ先輩は身体操作なら似たような領域だと思います」

 

遠くに居る白音の声が聞こえる

 

ツッコミなのかフォローなのか分からないけどもう白音は猫又とかじゃなくて相手の心を読むさとり妖怪を名乗っても許されるんじゃないだろうか?

 

仕方ない。せめてオーラ量だけでも上回らないとやってられない

 

そう思った俺は世界の邪気を取り込んで『邪人モード』を発動させる

 

「へぇ、まるで地獄の釜が目の前で開いたかのようだよ。私達猫又には効果が薄いけどね」

 

参曲(まがり)様は薄く蒼み掛かった炎を身に纏う。黒歌や白音も使う浄化の炎だ

 

浄化の力や聖なる力であんな風に身を守られると邪気の各種追加効果は望めないんだよな

 

勿論明らかに格下なら邪気の浸食が上回るけど目の前の七尾とかいう猫又の限界突破し過ぎなお方には通じないだろうから単純にオーラ量の嵩増し程度の認識でいかないといけない

 

しかし俺と参曲(まがり)様の間に二つの影が立ち塞がった

 

「おのれ!なんたる醜悪な瘴気だ!これが『D×D』とやらの本性か!」

 

参曲(まがり)殿!御下がりくだされ!ここは我らが!!」

 

リアス先輩に朱乃先輩と戦ってたはずの妖怪たちだった

 

なんか既に物凄い決意と覚悟を秘めた決死の瞳をしてるんですけどもしかして俺の所為で和平がご破算になったりしないよね?

 

一瞬不安になったが参曲(まがり)様がその尻尾を伸ばして二体の首に巻き付ける

 

「ほら、あの子の力の事は新聞にも載ってただろう。バカ晒してないで向こうのお嬢ちゃん達と続きをやってきな」

 

そう言うと尻尾をぶん回して先輩方の居る場所に放り投げて顔面から地面に落とす。アレは痛い

 

その後は他の二組の決着が着くまでの間、特にイヅナの妖力を核にした狐火や闘気弾とかの練度が低いとダメ出しされつつ翻弄され続けたのだった

 

 

 

 

「「くあぁぁぁ!敗けたあああああ!!」」

 

俺とイッセーの声が重なる

 

結局イッセーもぬらりひょんに「ほれほれ、こっちじゃこっち」とか「よぼよぼの爺相手じゃから手加減してくれとるのか?全く優しいのぅ」とか終始煽られまくってたからな

 

お前みたいなよぼよぼ爺が居るか!

 

やっぱり完全なテクニック勝負に持ち込まれると向こうが一枚上手だ

 

パワータイプのイッセーなら尚更だろう

 

だからと言って本気のパワーを解放したら地上が吹き飛ぶからな

 

「赤龍帝の坊主はまだまだ我武者羅過ぎるが、その分拳に真っ直ぐな想いが籠っててこっちとしちゃあ色々伝わってくるもんが有ったぜ―――お前らは如何だ?」

 

総大将に所感を問われた二人は姿勢を正して頭を下げる

 

「はっ、彼らに悪意が無い事は手合わせして十分に感じました」

 

「今後は同盟の件で口出しする事は一切致しませぬ」

 

リアス先輩と朱乃先輩とは俺やイッセーと違って結構接戦を繰り広げたのか両者服やら毛やらが焦げ付いてるみたいだな

 

だからこそなのか悪意が無い事を知れたという事以外にも本気のぶつかり合いが出来てスッキリしたというような表情が見え隠れしている

 

その後また覚悟を決めたような顔になって「ご迷惑をお掛けした。罰するならどうか我々のみに」みたいな事を言われたが元よりそんなつもりは無かったので「これから宜しく」と言った感じにお茶を濁した。てか此処で厳罰とか下したらこの二人以外の反対派がまた台頭して来そうだ

 

「さて、黒歌」

 

「にゃ、にゃによ。三毛ばあさん。もう用事も済んだのなら帰ったら良いじゃないの」

 

参曲(まがり)様に名前を呼ばれた黒歌が一歩後ずさる

 

「今度白音にも稽古を付けて上げるから黒歌も一緒に来な」

 

「ええ、別に稽古なんて望んでないって・・・」

 

「姉様!是非稽古を付けて貰いましょう!宜しくお願いします。参曲(まがり)様!」

 

黒歌のセリフを途中で遮って勢いよく頭を下げる白音―――まだまだ実力不足だと思っている白音は食いつきが良いな

 

参曲(まがり)様は白音に了承を返すと軽く跳躍して俺の肩に乗って話し掛ける

 

「アンタは八坂の姫の所で【一刀修羅】の修行をしてるんだからその後だね。後ついでに妖力の扱いももっと慣れておきな」

 

先に今やってる修行を片付けろって事ですね

 

そして最後に参曲(まがり)様は耳元で周りに聞こえないように囁いてきた

 

「(黒歌と白音、それと向こうのあの娘は不死鳥かね。随分交わってるみたいだけど子供が出来たならちゃんと一度は見せに来るんだよ)」

 

「え゛っ」

 

バレてる!超バレてる!?

 

「(さっさと孕ませてしまえって前にも言っただろう?まっ、その辺りの事は心配しなくても良くなったみたいだし、それを確認出来たのが今日一番の収穫さね)」

 

言いたい事だけ言い終えると参曲(まがり)様は俺の肩から降りてしまった

 

「よし、それじゃあこれから会談に向かうぞ。邪魔したな」

 

そう言ってぬらりひょん一行は予定されていた会談へと赴いて行った

 

後日、迷惑料として色んな貴重品やサーゼクスさんからは超高級カタログなどがあの場に居たメンバー全員に贈られた・・・このカタログ普通にフェラーリとか世界一周旅行とか載ってるんですけど俺達には使えないよね

 

ぬらりひょん一行を見送った後、九重が近づいて来た

 

「イッキよ。最後に参曲(まがり)殿に何を言われておったのじゃ?」

 

「あ、ええっと・・・お嫁さんを大切にしなさい?」

 

間違ってはいないよね?

 

「おお!そう言う事であれば参曲(まがり)殿の心配は杞憂じゃの。イッキ、フィス殿。今日は時間一杯遊ぶのじゃ!」

 

「お~」

 

子供特有の邪気の無さが有難い。心が癒されるぜ

 

そうしてその日の午後に八坂さんが九重を迎えに来るまで、俺達は久しぶりに遊び倒したのだった

 




原作通りでも良かったんですが、ちょっとバトルシーン追加してみました
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