転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第五話 黒歌の過去

修学旅行が終わってから俺と黒歌の二人は基本的に週末に参曲(まがり)様のもとへ赴き、修行を付けてもらう事となった

 

俺の仙術の練度だが、参曲(まがり)様から見ても俺は自分自身の気を操ることに関しては基礎がしっかりしていると褒められたが、それ以外の他の生物の気を感じるのはそこそこで自然そのものの気を感じるのはまだまだと言われたな

 

「まったく、どんな歪な修行をしたらそうなるんだい?」

 

そんな事を言われたので教えを受ける以上は必要な事だと思い、【一刀修羅】を実演付きで説明することなった。なぜかますます呆れられた気がするが・・・

 

「まぁいい、歪とはいったけど間違った修行をしている訳じゃないようだからね―――とは言え、バランスが良いに越したことは無い。あんたはその【一刀修羅】とやらの修行は続けな。その代わりあたしは自然の気を感じ、操るための修行を中心に見てやるさね」

 

「はい!宜しくお願いします!」

 

・・・とそんな風に元気よく返事した初日の自分をぶん殴ってやりたい―――その後俺は自然を感じるという修行のために滝に打たれ(冬)、寒中水泳をし、土に埋められ、岩を抱き、マグマのそばで焚火をしながら座禅をし、ノーパラシュートスカイダイビングをさせられた・・・マジであの方容赦ねぇ!

 

黒歌の方はまだ覚えたてだったらしい空間を操る術の練度を高めつつ、時間を操る術の修行をしているようだ

 

空間は結界術の応用で何とかなったようだが時間の方は数段と難易度が上がるようで「『4次元時空は、重力だけが伝播できる5次元時空中の膜のような4次元断面である』って何を言ってるのにゃ~!?」というように頭を抱えている光景がしばしば見られた。うん、俺も解らん!

 

修行の方はそんな感じで順調?に進んでいった

 

 

 

 

 

「・・・とまぁ、こっちはそんな感じで今日も参曲(まがり)様に上空5000mから突き落とされたよ」

 

≪う・・・うむ、イッキも黒歌殿も頑張っているようで何よりじゃの―――しかし参曲(まがり)殿はそれほどまでに厳しいお方であったとは・・・≫

 

所変わって今は自分の部屋で管狐のイヅナに向かって話しかけている処だ

 

イヅナの分身はあくまでも同一体という特性から瞬時に他の分身と情報を共有でき、その応用で電話の真似事もできるのだ

 

京都に置いて来たイヅナの分身は基本的に九重(くのう)が持っているようで週に何度か他愛のない内容のやり取りをしている

 

≪ではイッキ、また今度なのじゃ!≫

 

九重(くのう)の俺の呼び方は『イッキ』となったようだ。何でも「今の時代『ふれんどり~』が大事」と八坂さんに言われたらしい・・・もしかしてあの人愉悦部の素質あるんじゃないか?

 

「うん、またな。お休み、九重」

 

そう言ってからイヅナの通信を切る

 

「やっと終わったかにゃ?」

 

すると黒歌が後ろから首に手を回して抱き着いて来た!

 

修学旅行が終わってからこうして黒歌のスキンシップが増えてきた気がする

 

すごく柔らかいものが頭に当たってる!しかし土蜘蛛の一件で黒歌の好感度は上がったと思うのだが「遺伝子を提供してくれ」というスタンスは変わってなかったのでコレでは手が出せない

 

黒歌としては構わないのだろうが、やっぱり男としてまずは好きになって欲しいと思うのだ―――黒歌との体を求めるだけの爛れた男女の関係・・・うん。言葉に表して想像するとヤバいぐらいに淫靡に聞こえる

 

・・・そんな彼女の誘惑を耐える生活を続けて一年ほどたった

 

正月やお盆、節分など、イベントのある時などは九重(くのう)の所にも遊びに行った・・・と云うか『えんきょりれんあいは破局するしかないのか?』などと涙声で言われたら会いに行かない選択肢はなかった。てか子供になに教えてんだ!あの愉悦部!

 

そんな中、ふと黒歌が思い出したように聞いて来た

 

「そういえばイッキってどこの学校を受験したのかにゃ?」

 

「駒王学園」

 

「に゛ゃっ!?」

 

そう答えると黒歌はプレイしていたモンスターをハントするゲームのコントローラーを落としてしまった―――あっ、ラージ○ンに殺された・・・

 

「な・・・何であんな悪魔や人外の巣窟を受験しているのにゃ!?」

 

「いや何でって家から一番近いし、学力も問題ないし、悪魔たちがいるって言っても特に問題は起きてないって言ったのは黒歌自身じゃないか」

 

はい、嘘です、すみません―――いや、言ったことに嘘はないけど原作の舞台に憧れてというのが一番の理由です

 

「うにゃ~、そんな事も言ったっけ私?ねぇ、今からでも志望校変える気はないのかにゃ?」

 

「いやいや急になんで?」

 

「か・・・勘・・・かにゃ?」

 

すごく目が泳いでる・・・今まで見た中で一番動揺してるかもしれん

 

理由は十中八九妹の事だと分かるが思わずジト目になってしまった。それを見た彼女が何を勘違いしたのか「うう、分かったにゃ、もうここまで来たら白状するにゃ・・・」とこの町に来た詳しい理由を語り始めた

 

両親(特に父親)は問題のある人達で早くに亡くした事

 

白音という名の妹を守り育てるために父親と関係のあった上級悪魔ナベリウスの眷属に『妹には手を出さない』との契約の元転生悪魔となった事

 

周囲の眷属やその家族が妙な実験に付き合わされて不審死を繰り返していたこと

 

主となった上級悪魔がまだ幼かった彼女の妹に死の危険と契約を無視して仙術を無理やり覚えさせようとした事

 

主を殺し、妹を連れて逃げようとしたけど不自然なほどに早く追手が差し向けられ妹と離れ離れになった事

 

自分と別れた後で妹は迫害を受け処分されそうになったと知り、負い目を感じている事

 

この町に来たのはグレモリー眷属となった妹が危険な目に合わないか、無体を強いられていないか確認のために来た事

 

妹が今は塔城小猫と名乗り、駒王学園の中等部に通っているので妹が高校に進学したら何処かから自分の存在がばれてしまうのではないかと危惧した事

 

・・・確かに自分はその事実を知っていた。だがやはり本人が何処か暗い顔をしながら告げるその言葉は文章だけでは伝わらない“重み”があった

 

「にゃははは、私も大概色々と空回ってるにゃ。そもそもがろくでなしの父親が所属していた組織を頼ってしまったのが間違いの始まりだったにゃ」

 

彼女は何処か渇いた笑みを浮かべてそう自嘲する

 

「でも、それは仕方ない部分も有るんじゃないか?子供のころなら何であれ周囲の大人に頼ろうとするのは当然と言えるし、常に最良の選択肢を選んで生きるなんて神様や魔王にも不可能だろう」

 

「そうかもね・・・それでも私が白音を守れなかった事には変わりないにゃ・・・」

 

「それは違う!」

 

そう、それは違うのだ

 

「何が違うって言うにゃ?」

 

「だって黒歌は今もこうして妹さんの事を守ってるじゃないか」

 

「にゃ?」

 

ああもう!本気で分かってないかのように首を傾げてやがるな!

 

「確かに望んだ通りとはいかなかったのかも知れないけど、黒歌がその主を殺さなかったら妹さんは仙術で死んでたか、怪しい実験で死んでたかも知れないし、妹さんを引き取ったグレモリー眷属がもしも最低な人たちだったらと考えれば黒歌がこの町に来た意味は十分にあったと言える!」

 

「けど!結局意味は無かったにゃ!」

 

「それは結果論だろう?絶対に意味はあったさ!」

 

そうしてしばらくお互いに睨み合っていると黒歌の方が先にこれ以上は不毛と思ったのか「はぁ、もう分かったにゃ降参するから今日はもう寝るにゃ」と言いつつベッドに包まってしまった

 

「黒歌~?」

 

「・・・・・・・・・・・・・・・」

 

呼んでも返事をしない。如何やらふて寝を決め込むようなので仕方なく自分も床で毛布に包まって眠りについた―――意識が落ちる寸前小さく「ありがとにゃ」と聞こえた気がした

 

 

 

 

 

 

そうこうしている内に年も明け(京都の神社で合格祈願もした)駒王学園に関しては妹の白音が高等部に入学するのに合わせて黒歌の気配を消す術を掛けるということで話をまとめた

 

エロ馬鹿3人組は鬼気迫る形相で受験勉強をしている―――女子の比率が高い駒王学園なら夢のハーレムが待っていると信じているらしい

 

エロに飢えているのかエロトークしつつも勉強をしている・・・器用な事だ

 

そうして受験勉強しつつも修行も行い晴れて念願の駒王学園に合格!

 

4月に入り、ついに駒王学園に入学してから数日がたった。どれだけ関わるかは分からないが来年は大変な年になるだろう・・・そう思っていると後ろから声を掛けられた

 

「いきなりすみません。貴方はひょっとして猫を飼ってたり『黒歌』という人の知り合いだったりしませんか?」

 

塔城小猫がそこにいた―――何でここ(高等部)にいるの!?

 

どうやら俺を取り巻く波乱は一年も待ってはくれなかったらしい




そろそろ原作に入れそうですね。ここまで長かったような短かったような不思議な感じです

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