俺とクリスタルディさんの戦いが終わって俺自身は一歩下がった位置で待機している
シトリー眷属と『
そんな中でクリスタルディさんは先程までは余り使用していなかった『夢幻』や『透明』、『祝福』といった能力もフルに使って祐斗たちの攻撃を捌いて行く
有刺鉄線や電流ロープに囲まれたプロレスのデスマッチな試合みたいな感じだ・・・あれより数倍以上は危険だけどな
それでも先程までの俺とクリスタルディさんの戦いである程度動きに慣れたのかそれなりに戦闘は安定している
だがやはり今の祐斗やイリナさんでは地力が足りてないようで俺との戦いの時には使用を控えていた各形態の能力で徐々に劣勢になっていく・・・あ、祐斗が強化された聖水ひっ被った
そこへイリナさんが聖水が掛かった箇所から煙を上げて悶絶する祐斗を助ける為に背後からクリスタルディさんの首目掛けて横一閃を繰り出す
その一撃でクリスタルディさんの首が宙を飛び、避けられるか防がれるかと思っていたイリナさんが一瞬硬直してしまう
「甘いな。戦士イリナ」
自分が殺される幻術を解いて背後から現れた彼が『破壊』の特性を籠めた振り下ろしを繰り出し、声を掛けられた事でギリギリ反応したイリナさんを防御の上から叩き潰す
追撃を防ぐ為にデュリオさんが炎や雷、氷の属性攻撃を放つ事で後退はさせられたが『支配』で攻撃を逸らされてダメージを与える事は出来なかったようだ
「っく!ここまでのものか!天性のエクスカリバー使いと云うのはっ!」
「ハハハ、だから言ったでしょ?目の前に居るのは教会でも二大巨頭と言われた一角。教会の長い歴史の中でも恐らく最上位クラスの力の持ち主だ。ちょっと悪魔や天使に転生した程度で容易にひっくり返るような実力じゃぁ無いのさ」
「
祐斗はクリスタルディさんがなんらかの身体能力強化系の神器でも併用してるのかと疑っているようだけどデュリオさんはそれを否定する
「ああ、クリスタルディ先生もストラーダ猊下も
「それは・・・『邪人モード』が無くなる分弱くはなるんでしょうけど、少なくとも今の僕は勝てる気はしませんね。イッキ君の神器って
≪一番重要な神器の能力が各勢力満場一致で封印指定ですからね。現状、全神器の中で有間君の神器が一番能力の振れ幅が少ない代物と化していると言って良いでしょう≫
「キミたちナチュラルに俺の神器の事ディスってくるけど、俺の事嫌いですか!?」
デュリオさんの質問は神器が無くても人間でも強いヤツは居るって言いたかったと取れるけど祐斗とソーナ先輩は半分悪口だよ!自覚有る!?
そりゃあ俺の『邪人モード』でオーラの出力2倍とかありふれた神器である『
ジークフリートの出力16倍なんて知らない。知らないったら知らない!・・・あれ?素でほぼ魔王級の俺が使えば二天龍超えられるんじゃね?とか思ってはいけない!
因みにだが後日アザゼル先生に訊くところによるとそう上手い話は無いようで、神器に封印されたドラゴン以上の出力は出せないんだそうだ
概念的な意味で出力が2倍になるんじゃなくてあくまでも力の根源は封印されたドラゴンの力に依存するという事らしい・・・良かった。俺の神器はギリギリポンコツの誹りを免れたぞ
でもそうだよな。そんなポンポンと出力数倍を叩き出せるならアザゼル先生とか態々ファーブニルと契約しなくても下級ドラゴン数体と契約して人工の
サーゼクスさんが扱ったなら全盛期の二天龍を同時に相手取っても勝てるかも知れない
・・・各勢力の代表たちが使えば絶対トライヘキサを倒すのに一万年も要らないよな
ユーグリットが魔王級が赤龍帝の鎧を纏ってた割に大した事無かったのもこの辺りが原因かな?
意識は戦場に戻って見てみると祐斗が亜空間を開いてグラムを取り出そうとしているようだ
「僕がグラムを解放して全霊の一撃を放ちます。倒す事は出来なくとも隙は作れるはずです。そこから一気に畳み掛ければ戦いの流れをまた此方に引き戻せるでしょう」
そう語る祐斗の目にはグラムを解放する事に迷いが見える
この世界のグラムや他の魔剣は何故かは知らないが祐斗に協力的だ。原作のように全霊の一撃で命が削れるような事は無いだろう。しかし祐斗にとってエクスカリバーは且つての同志たちの想いの結晶である聖魔剣でこそ打倒したい相手でも有るはずだ
最強のエクスカリバー使いを前に
祐斗の抱える複雑な感情を察したのかデュリオさんが祐斗の肩を叩いてそのまま前に出る
「木場きゅん。これはスッキリする為のケンカだ。そんな顔しながら剣を振るう作戦は容認出来ないな。ここは一つ、俺に任せてくれよ―――木場きゅん。いや、祐斗」
デュリオさんは呼び方を変えつつ祐斗に振り返る
「キミは教会の施設出身なんだろう?俺も元は施設の出でね。どこの施設も共通だと思うけどあそこで育った子供たちってのは皆が兄弟姉妹だ。なら、祐斗も俺にとっちゃ弟みたいなもんだよ。ここは一つ、兄貴面をさせてくれってね」
ウィンクしながら祐斗の頭を撫でるデュリオさん。彼の優しさは正しく天使に相応しいと云えるだろう・・・でも祐斗が弟ならその理屈で言えばアーシアさんとゼノヴィアも施設出身だから妹になるし、グリゼルダさんはお姉さんになるのか
イリナさんだけハブられてるとか思っちゃいけない
デュリオさんは再び振り向いてクリスタルディさんの方を向くと10枚の翼を広げてオーラを高めながら両手を合わせて円の形にし、口元に持ってくるとそこに息を吹きかける
シャボン玉を作るのと同じように息を吹きかけられた箇所から無数の虹色の玉が溢れ出し、クリスタルディさんの張った結界も素通りして戦場全体に広がっていった
「これが
そのシャボン玉が弾けてゆくと戦士達は感動するように涙を流し、武器を取り落として戦意を失っていく
「このシャボン玉に触れた者はその人にとって最も大切な記憶を思い出すんだ。元々は辛い想いをして塞ぎ込んでしまったガキンチョ共にまた前を向いて欲しいと思って創り出した力なんだよね」
おそらくはデュリオさんが亜種の
天候を操る神器で思い出を想起させる能力・・・本当に亜種になると何でも有りだな
祐斗も涙を流している。きっと
教会の戦士達の殆どが戦意を失う中でクリスタルディさんだけは涙を流しつつもその手に握ったエクスカリバーをより一層強く握り締めた
「ああ、我らが戦いを望んだのはこの儚き情景を守りたいが為だった―――だが!一応の決着を見せなければ我らの決起は無駄になるのだよ!!」
もはや戦えるのは彼一人となり、決着を付ける為の最後の
グリゼルダさんは今までの光力の攻撃以外にも手元に創り出したハートの『Q』だけが持つ特性である味方の天使の力を引き上げる光の弓を構え、それに合わせて祐斗とイリナさんが飛び出す
祐斗の持つ聖魔剣は祐斗が完全に吹っ切れた影響か今まで以上に完全に混じり合った
その聖魔剣とエクスカリバーがぶつかった瞬間、聖魔剣の魔剣の力でエクスカリバーの聖なる波動を吸収し、吸収した力を自らの聖魔剣に加算させる
以前までの聖魔剣であれば片方の力が大きくなり過ぎれば聖魔剣としての体裁を保てずに崩壊してしまっていただろうが、その制限を乗り越えたのだ
その様子を確認して思わず俺も口元に笑みが零れる
欠けたピースは全て揃った。最終決戦も近い中、自重する必要は無い
この戦いが終わったらちょっくら祐斗を魔改造する事にしよう。強くなってその分沢山働いてくれ
“ビクッ!!”
鍔ぜり合っていた祐斗の肩が『何故か』一瞬震えたけど戦いは終わってない
イリナさんがエクスカリバーの力が失われている隙にグリゼルダさんの能力上昇の矢を受けて強大化させたオートクレールの浄化の力をクリスタルディさんに撃ち放つ
殺傷力こそ無いもののデュリオさんのシャボン玉の直後に戦意を消し去る攻撃を受けて直ぐには立ち直れない彼の頭上に雷雲が集まる
「祐斗、イリナちゃん、避けてくれ―――先生、これで終わりです!」
デュリオさんの放った雷撃が周囲を囲んでいた結界ごと彼らの師を貫いて決着となったのだった
それから結界越しとはいえ雷に打たれて地面に横たわるクリスタルディさんが自身の命と引き換えにこの場に集った戦士達の助命を願うがデュリオさんはそれを否定した
「やりませんよ。そんな事したらどう考えても皆の恨みを買うだけっしょ―――それに、生きてりゃそれだけで美味いもん沢山食えます。世の中たったそれだけの事がどれだけ幸運な事なのか知らない奴らが多すぎるんスよ」
「・・・甘いな。お前は本当に甘い」
手で顔を覆って涙を流す彼の隣に腰かけたデュリオさんは俺達に次の戦場に向かうよう告げる
「俺はもう少し此処で先生と話してるからさ。祐斗、イリナちゃん、イッキ君。三人は向こうの戦場に行ってあげてくれ。多分まだ決着は付いてないと思うからさ」
その言葉を受けて俺達は互いの顔を見て頷き合いその場を後にした
▽
俺と祐斗、イリナさんがイッセー達の戦ってる場所に辿り着いた時には既に相手側の教会の戦士達は未だ戦場に舞っているシャボン玉で戦意を喪失したのか戦闘音は一切聞こえて来なかった
「これはこれは、綺麗なシャボン玉ではないか」
ただ一人、ヴァスコ・ストラーダさんだけはデュリオさんの優しさが生み出したシャボン玉が舞う光景を嬉しそうに眺めている
リアス先輩が「このシャボン玉は此方の陣営のものかしら?」と呟いた辺りで俺達も戦場の中心に到着し、祐斗がリアス先輩に後ろから声を掛ける
「はい。このシャボン玉はジョーカーの生み出したもので対象の心の最も大切な思い出を想起させるもののようです」
「祐斗!それにイッキにイリナも!そう、これはジョーカーの能力なのね。彼らしい力だわ」
此方の戦力が整ったと見たのか奥に居たストラーダさんが上半身の祭服を脱ぎ捨てた
少なくとも今の彼の分厚過ぎる筋肉を見て彼の事を聖職者と初見で見抜ける奴は居ないだろう
幅広のデュランダルの刀身よりも筋肉に覆われた腕の方が太いくらいだ
俺も小さい頃から修行はしてたし、体質によってはあんな感じのモリモリマッチョマンになってたかもと思えば流石にちょっと遠慮したい
彼はその巨大な体を揺らしながら一歩一歩近づいてくる
そして途中で立ち止まって両腕を広げると皺くちゃな顔に笑みを浮かべる
「さぁ教義の時間だ―――子供らよ、学んでいきなさい」
「僕から行かせて貰うよ!」
先ず飛び出したのは祐斗だ。進化した聖魔剣で調子づいているのだろう
だがその一撃はデュランダルも使わない素手でアッサリと止められてしまう
「ふむ。良い太刀筋だ。人間が相手でも迷いが無く、また先日少し見た時よりオーラが数段洗練されている」
褒められてはいるが刀身を鷲掴みにされている祐斗としてはそんな言葉は頭に入ってこないだろう
そのままデュランダルを持っている方の柄を握る拳で聖魔剣を側面から殴りつける事で真ん中辺りからへし折ってしまった
折角ストラーダさんが『教義の時間』と言ったのだ。俺もここは祐斗魔改造計画第一弾のアドバイスをするとしよう
聖魔剣を折られた事で後ろに下がって再度聖魔剣を創り出した祐斗に声を掛ける
「祐斗。聖魔剣を新たに解放したお前が今までと同じように剣を振るうな。宝の持ち腐れだぞ」
「? どういう意味だい?」
「いいか?お前が聖魔剣を初めて解放した時、体の中に取り込んであった聖剣の因子の結晶は一つだけだった。だけど今の祐斗はその身の内に四つの因子を宿している―――今までの聖魔剣では因子の力を解放し過ぎてしまえば聖魔剣が崩壊してたはずだから無意識に因子の出力にブレーキを掛けてたんだろうけど、今の祐斗ならさっきエクスカリバーの聖なる波動を吸収した時と同じ強化状態に自力で持っていけるはずだ」
祐斗にとって三つ分の聖剣の因子は後付けの力だ。聖魔剣がその力を受け止め切れなかったとしても可笑しい事は無い
俺の言葉を聴いた祐斗は目を閉じて自分の中に意識を集中させているようだ
そしてその手に握る聖魔剣にどんどんと聖なる波動が注ぎ込まれて行く
「僕の身に宿る同志たちの魂よ。待たせてゴメン。今こそ、僕らは一つの剣となろう!」
掲げた聖魔剣から莫大な聖なる波動が溢れ出す。この世界の祐斗だからこその聖魔剣だ
「ほお、美しく、更には力強い剣となったものだ。流石にこれは素手では怪我をしそうだ」
感心したように頷いてから最強のデュランダル使いは漸くその剣を構えた
それから始まるオカルト研究部怒涛の攻撃を彼は次々と捌いてゆく
祐斗やイリナさんの剣は純粋な剣技と体術で受け流し、レイヴェルとロスヴァイセさんの魔法は指一本で魔法の術式の僅かな隙間を狙って計算式を乱す事で無効化し、ギャスパーの闇の衣を拳圧で吹き飛ばし、朱乃先輩の雷光で創られた龍達は瞬く間に細切れにし、白音やイッセーの肉弾戦を敢えて正面から受け止めて押し返す
「おいおいおいおい、これが87の爺さんの力かよ!?もうコレ詐欺じゃねぇか!?」
イッセーが皆の気持ちを代弁してる。今まで散々強敵と戦い、打倒して来たという自負も有る中でほぼ全員の攻撃をレプリカの聖剣一本で無傷で凌がれた事が少なからずショックなのだろう
だが皆が戦慄している中でゼノヴィアは一人エクス・デュランダルを手に突貫していく
その様子を見たストラーダさんも笑みを深める
「そうだ、戦士ゼノヴィアよ。例えエクスカリバーと同化していようともデュランダルの本質は破壊でしかない!それこそがデュランダルを扱う者の持つべき気概だ!」
ゼノヴィアのエクス・デュランダルを受け止めた彼は更に続ける
「だが、パワーの表現とは一つでは無い。戦士ゼノヴィアよ、このデュランダルは本当にキミの望むパワーの在り方なのかな?」
「―――ッツ!」
自分でも気になっていたところを指摘された為か咄嗟に言い返せずにいるゼノヴィアを腕力で押し返したストラーダさんに今まで皆が戦っていた間にずっと魔力をチャージしていたリアス先輩の必殺技が完成する
「
最低限の忠告の下、邪龍最硬の鱗を持つグレンデルすらも一撃で牙一本以外の全てを消し飛ばしたと云う魔の星が放たれた
「これはこれは、老体にはちと厳しい代物だ」
その真面に喰らえば魔王級であろうと消滅する一撃を前に彼はレプリカのデュランダルに爆発的なオーラを纏わせる。輝く聖剣の光で殆ど目も開けてられない程だ
“キンッ!”
両手持ちで大上段から振り下ろされたその斬撃が何かを断ち切ったような音を響かせると彼に迫っていた漆黒の球体は真っ二つに割れて逆に消滅してしまった
この結果に流石のリアス先輩も目を見開いて口元がヒクついている
「・・・こういう時って笑うしかないのかしらね?」
「ハァ・・・ハァ・・・いいかね?デュランダルは『全て』を斬れるのだよ。例えそれがバアルの滅びであろうとも、例外は無い」
今の一撃でストラーダさんもかなり消耗したようだけど、五分の一以下の性能のデュランダルで断ち切れるなら本物のデュランダルを使えば低く見積もっても連続で
当然実際はもっと多いだろうし、そう言えば超越者モードのサーゼクスさんが複数操るという消滅の魔力の球体の一つ一つがリアス先輩の必殺技に匹敵するなんて設定をどこかで聞いた事があるけど、要するに本物のデュランダルを操る全盛期の彼ならば超越者なサーゼクスさん相手でも真正面から勝負を挑めるって事だよな
エクスカリバーと並ぶ聖剣とされるデュランダルだけど七つの力を有し、その内の一つにデュランダルと被る『破壊』の特性を持ってるエクスカリバーと比べてそんなに優れているのかと疑問に思った事も有るけど本当に攻撃力という一点が突き抜けた性能を持ってるらしい
内心呆れにも似た感情を抱いていると同じく観戦していたアーサーが話しかけてきた
「有間一輝。貴方は参戦しないのですか?」
「俺は以前一度一応は戦ったし、さっきは最強のエクスカリバー使いとも試合ったから良しとするよ。最初に祐斗に口出しした分だけで十分だ」
一応この後クリフォトが攻めて来る事も視野に入れて力は温存しておきたいしな
「成程、傑物と謳われたそのどちらとも戦えたとは羨ましい限りです。では、彼らも全員一度は一当てしたようですし、私もかの老人に御指南頂くとしましょう」
腰に差していた聖王剣を抜きながら何時もの冷静で澄ましたその横顔に僅かに口角を上げる笑みを滲ませてアーサーが参戦する
「ほう・・・まさかこの歳となってからソレを目にする事が叶うとは」
同じく教会の誇る怪物はアーサーの手に握られた最強の聖剣を見て嬉し気に目を細める
「その剣が本物で無くて残念ですが、貴方の剣技だけでもこの身に受けたいと思いましてね」
「良かろう―――構えなさい」
お互いに聖剣を正眼に構え、次の瞬間にはその姿が掻き消えた
“ガギンッ!!”
二人のファースト・コンタクトは空中で行われ、落下しながらも剣を振るう手を止める事はしない
そのまま地面に足が付いた瞬間から超高速で戦場を縦横無尽に駆け回りながらただの一時もその剣戟の音が鳴りやまない
「・・・凄い」
「悔しいけど、今の僕たちではまだ届かないね」
ゼノヴィアの呟きに祐斗も歯痒そうな面持ちだ。剣の性能は追いついたけどまだ剣士としての純粋な技量で下回ってるのを今まさに見せつけられてるからだろう
安心しろ祐斗。祐斗魔改造計画はまだ次のステップが残ってるから
「なんて言うか、今戦ってる二人もそうだけど、さっきは先生と有間君が似たような剣戟を繰り広げてたし、この戦場のトップ陣って人間が多すぎない?」
「―――正確なランク付けは分かりませんがトップ5の内四人は先程イリナ先輩が上げた人達でしょうね。残る一人のジョーカーは天使ですけど、そもそも彼は天使になる前から教会最強のエクソシストだったそうですし・・・なんだか私達人外の立つ瀬が無いような気がします」
白音はそう言うけどイッセーならクリスタルディさん相手でも勝機は十分有ると思うけどな・・・握ってるのがレプリカならだけど
皆が感想を口にしていく中でアーサーはロキ戦で見せた技も織り交ぜ始めた
アーサーが
そしてお互いにクリーンヒットしないまでも体中に無数の浅い切り傷を滲ませた辺りでアーサーが突如として構えていた剣を下ろす
「素晴らしい・・・が、止めにしましょう。これ以上は・・・虚しくなるのでね」
闘争の終了の意思を受け取ったのかストラーダさんもレプリカのデュランダルを下げる
「すまないな。若い剣士よ」
ストラーダさんも苦笑しつつも何処か寂しげなようだ
アーサーは聖王剣を鞘に仕舞うと戦場に背を向けて歩き出す
「後20年・・・いや、30年早く出会っていれば最高の戦いも出来たでしょう。全くもって悲しくなって“ガシィッ!!”―――ッグェ!!?」
哀愁醸し出しながらも俺の横を通り過ぎて行ったアーサーを後ろから襟を引っ掴んで止める
「な、何をするのですか?有間一輝、私は今かなり傷心中なのですが・・・」
何時も紳士然としたアーサーにジト目を向けられてしまったけどお前の傷心なんて知らんわ
「まぁまぁ、祐斗はこの戦いの始まる前と比べて強くなった。まだ、もう一波乱くらいは有るかも知れんぞ?剣士としての傷心を癒やしたいなら、新しい才能の開花を目にするのも良いだろう」
多分だけどこの後クリフォトが来るのだ。適当に引き留めつつ存分にそいつ等で鬱憤を晴らして貰うとしよう
紫炎の魔女が居ない事で相手側の戦力がどんな感じに変動してるのかハッキリとは分からないので俺はアーサーを見送ってやったりなんかしない。ただでさえヴァーリチームは『D×D』と云うには仕事しないのだから機会の有る時はちゃんと配置してやるべきだろう
・・・まぁヴァーリはクリフォトの拠点を探す為に躍起になってるんだから本当に仕事してない訳じゃないんだけどね
要請しても動かないか、音信不通で頼んでも無い(ただし重要)仕事を勝手にやってる奴らだ
組織としては非常に扱いに困るグループだろう
兎も角そうしてアーサーを引き留めてから改めて戦場に視線を移す。そこではゼノヴィアがエクス・デュランダルを分割して右手にデュランダル、左手にエクスカリバーを握った二刀流の構えで立つ姿が在った。元々エクス・デュランダルが造られた切っ掛けはゼノヴィアがデュランダルの攻撃的なオーラを押さえつける術を持っていなかったが為のもの―――それが今、解き放たれたのだ
自分の中で答えが見つかったのかゼノヴィアが握るデュランダルの放つオーラは前よりも強く、されど安定したものとなっていた
「そうだ!それで良い!デュランダルの元々の持ち主だった私にとってはエクス・デュランダルは疑問の塊だった。デュランダルもエクスカリバーもそれ単体で完成された聖剣だ。何故それを組み合わせる必要が在る?それは貴殿がデュランダルに振り回されてエクスカリバーに『補助』などという愚行を課せたからに他ならない!それではデュランダルもエクスカリバーも真の力を解放する事など出来はしないのだ―――戦士ゼノヴィアよ、パワーを否定してはならない。デュランダルの担い手はパワーを信じた先にしか、その道は開かれないのだ」
真のデュランダルを前にして途端に饒舌になるストラーダさん
長年の相棒との再会が本当に嬉しいのだろう
彼はゼノヴィアの持つ二振りの聖剣のオーラがどんどんと高まって溢れんばかりの輝きを宿す姿を見て感嘆に溜息を溢す
「漸く、再会出来たな。デュランダルよ―――さぁ、我が後継者たる戦士ゼノヴィアよ。何も考えずにただ来るがいい。最後の教義を授けよう」
「―――はいッ!!」
真のデュランダルを解放したゼノヴィアはこの瞬間に本当の意味で後継としての舞台に立ったのだ
そこから先の戦いはパワーとパワーのぶつかり合いだった
相手を倒す為に剣を振るうと云うよりは相手の剣に自分の剣を叩き付ける戦い
子供ケンカの延長線上にある殴り合いであり、意地の張り合いだ
「―――少し、羨ましくも感じますね」
戦場を眺めていたアーサーが二人の戦う姿を見て目を細める
「私は戦う時は常に最善の一手を探して剣を振るいます。先ほどのストラーダ氏との戦いもそうでしたし、それ自体は勿論最高に愉しかった。しかし私にはあんな風に我武者羅に、無邪気に戦うのは難しい」
生粋のテクニックタイプのアーサーは相手の隙を突き、無駄に攻撃を受けないように立ち回る事が心身に染み付いているのだろう。しかしアーサーは「ですが」と続ける
「子供のように剣を振るう・・・剣士としての高みを目指す上で一度くらい体験してみるのも良いのかも知れませんね」
そう言うアーサーは何処か楽し気な様子だった
アーサーが自らの新しい糧に想いを馳せている間にデュランダル使い同士の戦いも終盤だ
剣と剣のぶつかり合いでクレーターどころか空間にも所々に穴が開いて次元の狭間が見え隠れする中、その暴力の中心で暴れていたゼノヴィアの渾身のクロス斬りとストラーダさんの唐竹割りが交差し、レプリカのデュランダルの刀身に罅が入り、ストラーダさん自身も肩で息をしながら片膝を付いてしまった
「スタミナ切れですね。如何に鍛え抜かれているとしても、老人である事に変わりは有りません」
「普通の87歳の老人ならあのスタミナの1000分の1だって有りはしないけどな」
このまま決着かと思われた中でゼノヴィアとストラーダさんの間に少年枢機卿であるテオドロ・レグレンツィが涙を流しながら両手を広げて立ち塞がった
「もういい!全ては私が悪いのだ!ストラーダ猊下たちを許してやってくれ!!」
「テオドロ猊下、御下がりください。この老骨めが全てを決めますゆえ」
立ち上がろうとするストラーダさんをテオドロ・レグレンツィは制する
「元々これは私の我が儘から始まったのだ―――私の両親は悪魔に殺された。だから、悪魔を許す事は出来ないのだと!・・・だがこれは未来を繋ぐ考えでは無い。それでも、そんな私の幼稚な想いを聴いて剣を取ってくれた戦士達が居た。この町まで来て、直接その想いを告げた時点で退けば良かったのだ―――それでも、それでも私は悪魔の事を・・・」
偶然であろうと与えられた枢機卿という立場から来る理性と、それを押しのけて行動するに至った両親を殺した悪魔との共存への不満の板挟みにあった二律背反の想いで声を震わせていく
そんな少年を後ろから抱き留めてストラーダさんは語る
「良いのですよ、テオドロ猊下。子供が不満を訴えるのは何時の時代も在る事です。貴方の想いは誰よりも幼いが故に純粋だった。だからこそ、我らは剣を取ったのです。そして何よりも貴方に見て欲しかった。我々の想いを撥ね退けてまで形作られた彼らの姿を―――彼らが我々を力で押さえつけ、処罰する機会は幾らでも在った。しかし彼らは我らの想いを如何すれば受け止められるか、如何すれば踏みにじらずに済むのかを考えた上で今日、この場で戦ってくれた・・・その時点で、我らは敗北していたのです」
「―――ッ」
その言葉を聴き、涙を流しながら俯く少年の頭を撫でながらストラーダさんは頭を上げる
「テオドロ猊下の宣言の下、戦いは終わった。私とクリスタルディ猊下の首をもって、天に許しを請おう―――その場にいる戦士達はその多くがまだ若い。彼らは今日、この日の出来事を糧に新たな道を歩んで行けるだろう」
その告白を聴いて戦士達は色めき立つ
「猊下!そのような事をおっしゃらないで下さい!」
「猊下は我らの意思を汲んで下さっただけ!罰ならば我らが受けよう!」
「煉獄に焼かれる覚悟は出来ております!」
少し前にクリスタルディさんを倒した時と同じ光景が広がっていた
教会を今日まで引っ張って来た二大巨頭がどれほど慕われた存在なのかが解るというものだ
≪ならばその命、我らが刈り取ってやろう≫
しかしその光景に水を差す声が響いて来た
転移型魔法陣が空中に現れ、そこから100人規模の死神達と数百の邪龍が転移して来たのだ
・・・本っ当こいつ等空気読めよな
教会のクーデター組との決闘の最後に飾るには無粋な華だが仕方ない。その命を根こそぎ刈り取らせて貰うとしよう
アザゼル先生たちにこうなった場合の