転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第九話 罠と、死神と、ミルキーです!

さて、このフィールドに侵入してきた死神と邪龍達だけどこちらの初手はロスヴァイセさんの実証実験からスタートだ

 

「ロスヴァイセさん。お願いします」

 

「ええ、如何あれクリフォトならば大量の邪龍を引き連れて来る事は予測済みです」

 

ロスヴァイセさんが指を鳴らすとフィールド全体が銀色に発光し始める。そして少しすると空中を飛んでいた邪龍の群れが一匹残らず力を失ったかのように地面に墜落した

 

≪これは如何いう事だ!?≫

 

流石にこの光景には驚いたのか死神が騒めくがロスヴァイセさんは心なしかドヤ顔で語り出す

 

「このフィールドには予め私の合図一つで起動する邪龍の力を封じる効果を付与しておきました。量産型の邪龍は一匹一匹の波長がとてもよく似ています。アーシアさんが手懐けた邪龍達を研究させて貰えれば弱体化の魔法は思いのほか早く完成しましたよ」

 

さも簡単そうに言ってるけど多分普通の魔法使いならロスヴァイセさんの数倍以上の時間を掛けて2ランクは性能が下回る魔法を創るのが精一杯なのだと思う

 

ロスヴァイセさんはやっぱり直接戦闘よりこういった裏方関係などで真価を発揮するタイプだよな

 

≪ふん!成程な。クリフォトの奴らめ。「便利だから持っていけ」とトカゲを押し付けておきながらこの体たらくとは―――まぁ良い。元より我らだけで殺しに来たのだ。このフィールドに入る手引きだけでお役御免だからな。寧ろ鬱陶しいトカゲ共が居ない方が清々するわ≫

 

クリフォトと合流したとは聴いてたけどあの様子では加入した訳では無いみたいだな

 

いや、禍の団(カオス・ブリゲード)時代から派閥が違えば仲間意識ゼロだったっけ

 

ともあれ邪龍達は原作通りに片付いたので残るは死神達だ

 

死神達の構成は感じるオーラからザックリと分けると下級死神が7割に中級死神が3割、それと上級死神3人ってところだな

 

死神の力は悪魔基準で大体ワンランク上で換算出来るから中級7割、上級3割に最上級から魔王級くらいが3人って感じだ

 

死神の最上級は神クラスだしね

 

誰がどの死神達を担当するべきかと思っていると3人の上級死神の中でも魔王級のオーラを持つ死神(他二人は最上級悪魔クラス)が此方に危険な色を灯した眼光を向ける

 

≪有間一輝。ハーデス様を貶めた大罪人。やはり先ずはアイツを始末せねばな≫

 

わぁお!その言葉に反応したのか残りの死神の皆さんの視線も俺一人に集中してきて殺気が肌に痛い。てか提案したのは俺だけど他の勢力の代表たちだって似たようなもんじゃん!

 

しかし俺の前に仲間が狙われたなら真っ先に立ち上がる気質を持ったイッセー達が立ち塞がる

 

「イッキは俺達の仲間だ!やるってんなら俺達が纏めて相手になるぜ!」

 

≪ファファファファ!コウモリ共は相変わらず何処に居ても五月蠅い羽音を響かせるものよ。無論、冥府とハーデス様に歯向かう愚か者はコウモリもカラスもハトも、種から滅ぼしてくれるわ≫

 

死神達が一斉に命を刈り取る死神の代名詞とも云える大鎌(デスサイズ)を構え、それを見たリアス先輩からの指示が飛ぶ

 

「敵の主力あの三体の死神で間違いないでしょう。狙われてるイッキはまだ大半が動けない戦士達が巻き込まれないように少し離れた場所で戦って頂戴。イッキの側にイッセーと白音と祐斗が付いて・・・アーサー、出来れば貴方にも一体受け持って欲しいのだけど?」

 

「ええ、良いでしょう。先程の戦いは消化不良でしたので、この憤りをぶつけられる相手が居るなら是非もありません」

 

アーサー手加減の必要無く暴れられる相手を前にして凶悪な笑みを浮かべて聖王剣を引き抜いた

 

その様子を見たリアス先輩は続けて指示を出す

 

「残りのメンバーで戦士達を守りつつ周囲の死神達を殲滅するわよ!ギャスパーは最終防衛ラインとして闇の魔物を召喚して専守防衛に努めて。アーシアもファーブニルを召喚して頂戴!」

 

「『はい!』」

 

≪ふむ。もしやトカゲを封じた事で希望でも持ってしまったのかな?仕方ない。本来ならば消耗品であるトカゲの数が減ってから喚ぼうと思っておったのだが、ここで喚ぶとしようか≫

 

死神達が地面に手を翳すと魔法陣が無数に現れ、炎が立ち昇る

 

そしてその魔法陣一つ一つからまるで地の底から這い出て来るように鋭い牙と爪、そして三つの頭を持った巨大な犬が現れた

 

「な!?ケルベロスかよ!しかもあんなに沢山!」

 

≪ファファファ!死神たる我らが地獄の番犬を使い魔に持つ事がそんなに不思議か?穢れた赤いトカゲを宿す小僧よ。成程、コウモリもトカゲも何方も低能であったな≫

 

とことん此方を見下した死神は話はこれで終わりとばかりにデスサイズの調子を確かめるように槍術のようにブンブンと振り回してから担ぐような構えでピタリと止まる

 

≪さぁ、天罰の時だ!全ての命を刈り取ってくれる。有間一輝、人間である貴様の魂は冥府に連れ帰ってタップリともてなしてやろう!≫

 

そのセリフを合図にして死神達とケルベロス達が一斉に飛び掛かってきた

 

『おもてなし=拷問』ですね。分かります

 

勿論そんなのはイヤなので通信先に確認を取る

 

「黒歌、そっちの準備は?」

 

≪バッチリにゃ♪≫

 

「ではロスヴァイセさん。もう一度お願いします」

 

「はい。再設定は完了です」

 

死神達が迫る中でロスヴァイセさんがまた指を鳴らすと敵側の全員が青白い光に全身を包まれた

 

≪なんだこれは!?≫

 

驚く彼らに再度ロスヴァイセさんの説明が入る

 

「それはレーティングゲームのリタイア転送の光です。この決闘の場はそもそもレーティングゲームのフィールドを参考に作り上げたもの。ゲームのルールを差し込む事は難しくありませんでした。自分達に害の有る能力ならば貴方方も対抗手段も持っていたかも知れませんが、安全装置のリタイアシステムの術式の対策は組んでいましたか?」

 

レーティングゲームのシステムを構築したのはこの世のありとあらゆる数式を操る超越者であるアジュカ・ベルゼブブさんが開発したものだ。その上このリタイア転送システムは本来対策を施す類のものじゃない。ましてや悪魔に否定的な死神の彼らが対抗術式なんて持ってるはずがないのだ

 

「転送先は当然医務室なんかじゃなくて今回裏方で動いてる黒歌の毒霧やルフェイの設置型の魔法、鳶雄さんの神滅具(ロンギヌス)とか可能な限りキミたちを一方的に磨り潰せる環境に整えた頑丈な別部屋だからさ。戦う相手も居ない中、早く諦める事をお勧めするよ」

 

≪き、き、き、貴様ァァァァァ!!直ぐに殺す!殺してやる!!≫

 

死神が仮面を被ってても口角に泡吹いてるのが分かるような奇声を上げながら突進してくるけどロスヴァイセさんが最後に"パンッ"と手の平を打ち鳴らしたのを最後に死神達とケルベロス達はリタイアの光の中に消えて行った

 

「・・・・・有間一輝。このような策が有るなら私を引き留める必要も無かったのでは?」

 

なんとなく俺が引き留めた理由を察したのか襟を引っ掴んだ時以上のジト目を向けられた

 

「いやいや、策が一つだけとか有り得んだろう?もしかしたらリタイアシステムもなんらかの方法で無効化されてたかも知れないし、その時は力尽くって事になってたしな」

 

どこぞの死神兼駄菓子屋の店主みたいに『千の備えで一使えたら上等』なんてのは真似出来ないけど、策や保険を複数用意するのは常識の範疇だと思うんだけどな?

 

「・・・俺、ちょっと今死神達に同情してるわ」

 

「戦うことすらさせて貰えないとかさっきまでクリスタルディ先生やストラーダ猊下たちと真っ向から打ち合いしてた身としてはギャップが酷いと言うか・・・」

 

イッセーもイリナさんもそこは切り替えていこうか

 

回避できる戦いを回避しない理由は無いんだし

 

一から十までこっちが用意したフィールドに敵が高確率で現れるのに罠を仕込まない理由が有るなら誰か教えて欲しいくらいだ

 

ロスヴァイセさんだって邪龍に何もさせずに無力化してるんだから一緒一緒!

 

「それで、今も蹂躙中・・・いや、既に終わってるかも知れんな。その死神達はどうなるんだ?そのまま消滅させるのか?」

 

ゼノヴィアが顎に手をやって死神が如何なるのかを考えてるようだ

 

だけどそれについては既に処遇は決まっていたりする

 

「いいや?一応出来るだけ生かして捕らえたらハーデス様の下に送り返す予定だな。アザゼル先生の話だとなんでもハーデス様が今回反旗を翻した彼らに愛と平和を語って更生させたいって打診が在ったみたいだからな」

 

善良なる神と化した冥府の神様は先ずは対話を試みたいらしい

 

「それは・・・大丈夫なのかしら?あの死神達がその程度で更生するとは思えないのだけど」

 

「問題無いと思いますよ?如何しても説得に失敗するようならハーデス様も厳罰を下すしかないって事らしいですし、俺の方から助っ人も推薦しておきましたので」

 

「助っ人?説得の?誰の事かしら?」

 

「・・・・・・・ミルたんさんです」

 

「『え゛っ』」

 

リアス先輩の質問に少し躊躇したものの答えると全員の顔が果てしなく渋い顔になった

 

だって愛で説得するなんて聴いたら真っ先に思い浮かんだのはミルたんさんなんだから

 

それに消滅させるよりはミルたんさんの説得(せんのう)でハーデス様の忠実な部下が増えた方がハーデス様の反対派に対する抑止力として凄く機能しそうだと思ったのだ

 

戦士達には殺されたって従わないような奴らは多く居るだろうが、つい先日まで殺意満々で意気込んでた同僚がミルキー死神になって職場復帰してきたら今回日和見してた死神達もこっちに手だししようとは思わないようになるだろう

 

「ああ・・・そう言えばイッキは次からはもっと容赦なく不穏分子ごと磨り潰すとか言ってたんだっけ?」

 

そうそう。殺して終わりなんて勿体ない(・・・・)。彼らには生きたまま『俺達に手を出すとこうなりますよ』という広告塔として存分に宣伝(ミルキー)して貰う方が効果的だろう

 

後日、ハーデス様とミルたん(+その仲間たち)の説得の下、死神の皆さんはヒラヒラのレースをふんだんに使用したピンクのミルキーマントを着た一団へと変貌したらしい

 

加えて襲ってきた中の上級死神はミルキー魔法(物理)の鍛錬により数年後には最上級死神クラスの力を獲得。タナトスとプルートの抜けた穴を十二分に補ったようだ

 

・・・あと何故か知らんが直接出会わなかったようだが(誰に?)ジークフリートの鍛錬の密度が倍増したらしい

 

 

 

 

 

戦いが終わって教会の戦士達も武器を捨てて投降し、デュリオさんやクリスタルディさん達も此方に合流した

 

異空間に送られた死神達は予定通りに蹂躙されたようだ。今頃冥府のベッドの上で治療と拘束を受けながらミルキーシリーズをミルたん解説の下、初代の第一話から視聴している事だろう

 

此方も量産型邪龍を改めて拘束して冥界に送ったりとかしている中でストラーダさんがアーシアさんに声を掛ける

 

「聖女アーシア。私を覚えているだろうか?」

 

「は、はい。一度だけご挨拶を・・・」

 

「うむ。そなたはまことに敬虔な信徒であった―――これを受け取りなさい」

 

懐から取り出されたのは封筒の束だ。それを受け取ったアーシアさんは中身が思い当たらず困惑している

 

「あの・・・これは?」

 

「その手紙は貴殿が治療した者達から宛てられた感謝の手紙だ。貴殿が教会を追放された後でもその手紙はずっと届いていた」

 

「ッ!?」

 

それを聞いたアーシアさんは声も出せない程驚いている

 

「良かったらその手紙を読んで返信してやって欲しい。中には貴殿が教会から追放された事を後から知って心配している者も多くいる。教会には話は通してあるのでどうか彼らに応えてやってくれないだろうか?」

 

「―――っはい!」

 

「・・・貴殿が追放されたと聞いた時、秘密裡に保護しようと隠遁先を探したのだが、間に合わなんだ。すまなかった」

 

アーシアさんの手を取って頭を下げるストラーダさんにアーシアさんも遂には溜まっていた涙を堪え切れなくなったのか手渡された手紙を抱いて地面に幾つもの雫を落とす

 

最後にアーシアさんの頭をその大きな手で優しく撫でた後、彼は次にフィールドに入って来たアザゼル先生に話し掛けた

 

「堕天使の元総督殿。その様子なら我らに付いた背信の徒はいぶり出せたようですな」

 

「如何いう事ですか?」

 

会話の内容が分からなかったのかイッセーが如何いう事かと問うとアザゼル先生が答えてくれた

 

「クーデター組を扇動したのはリゼヴィムって言ったろ?それはつまり教会側に手引きしてる奴が居たって事だ。案の定、この特性フィールドにクリフォトの奴らが現れた。この空間に入る為の術式を売った奴らがいるのさ。分かってさえいれば網を張って捕まえる事も出来るってこった」

 

「イッキは網どころか罠を張ってましたよね?」

 

「何時もの事だろ?」

 

「確かに・・・」

 

そこで速攻で納得しないでくれませんかねぇ!

 

「元総督殿、それとこちらもお渡ししたい。今回の騒動に対するお詫びという形になりますな」

 

イッセーの信頼に泣きそうになってるとストラーダさんは新たに懐から一つの小瓶を取り出した。中身は陶器の欠片のようだがかなり密度の濃い聖なる気が練り込まれてる

 

それを見たアザゼル先生も目を見開いて凝視していた

 

「そうか、やはり・・・コレなんだな?」

 

アザゼル先生の確認に彼もコクリと頷いて返す

 

「万が一を考えれば、コレがあなた方に必要になるかと思いまして」

 

「先生、なんですかソレは?」

 

「これは聖杯の欠片だ。本物のな」

 

「『!!?』」

 

話を聴いていた皆が驚愕と共に先程の先生と同じように小瓶の中の聖杯の欠片を凝視する

 

伝説に謳われる聖杯の一欠片。研究職でなくともその価値が計り知れないという事くらいは容易に察する事が出来るというものだ

 

アザゼル先生が聖杯の欠片を仕舞ったのを見届けたストラーダさんは最後に祐斗に語り掛ける

 

「リアス・グレモリーの『騎士』よ。教会の施設に居た時はイザイヤと呼ばれていたそうだね?」

 

「―――ッ!?どうして・・・それを・・・?」

 

「施設の過酷な実験の中で途中から姿を見せなくなった者も居たのだろう?だが何も全員が死んでしまった訳ではない。一人だけ生き残りが居たのだよ。トスカ、という名前に覚えは有るかね?」

 

実際にその名前に憶えが在ったのか祐斗はブンブンと頭を縦に振る

 

一人だけの生き残り、そして出された名前。ここまで揃えば察する事は容易過ぎる

 

ストラーダさんが部下の一角に目線を移すと彼らの後ろから12~13歳くらいで白い髪をおさげにした女の子が現れ、祐斗の事を凝視する

 

そして震えた声で在りし日の名でもって祐斗を呼ぶ

 

「・・・イザイヤ?」

 

「ッ!―――トスカ・・・なのかい?」

 

名前を呼ばれた祐斗も全身を震わせてカラカラに乾いた喉で確認を取る

 

目の前に在る現実(きせき)をまだ上手く飲み込めないのだ

 

「彼女の持つ神器は結界系のようでね。過酷な実験で生命の危機を感じたのか神器が覚醒し、そのまま暴走して自分自身に堅牢な封印を施したようなのだよ。バルパー達も封印を解く事も処分する事も出来ずに研究施設の奥で眠ったままになっていた。三大勢力の和平によって手に入れた堕天使の持つ神器の研究データを元に先日漸く封印を解く事に成功したのだ。ずっと仮死状態だった為にその間の成長は止まったままだったようだがね」

 

ストラーダさんの説明が聞こえているのかいないのか、祐斗はフラフラとした足取りでトスカという少女に近づいていく。そして祐斗が彼女の前に辿り着いた時、彼女は背伸びをしながら祐斗の片方の頬に手を這わせて優しく声を掛ける

 

「イザイヤ、こんなに大きくなったんだね。私は昔のまんまなのに」

 

触れた頬から伝わる確かな熱を感じて祐斗は遂に大粒の涙を流して彼女を抱き締める

 

「良いんだ・・・良いんだよ。そんな事は・・・トスカが生きていてくれた・・・それが・・・それだけの事が・・・大切な事なんだ・・・」

 

「うん。私もイザイヤが生きていてくれて嬉しいよ」

 

彼女も目尻に涙を溜めてその抱擁を受け止める。さっきのアーシアさんの時もそうだったが今も皆がこの光景を見て貰い泣き状態だ

 

俺?俺も勿論泣いてますよ

 

感動系の映画とか観ると普通にジワるタイプだからな

 

「彼女を連れて行くと良い。今回の件で教会はだいぶ揺れ動いた。クリフォトと繋がる糸は断ち切ったがまだ悪魔や堕天使に否定的な人間も多い。彼女を教会に置いておけば彼女を研究したり、キミに対する人質とするような輩が出て来るかも知れんからな」

 

確かにそうだ。人質もそうだけど彼女の神器で疑似的なコールドスリープが可能なら欲しがる奴は沢山出てきそうだな

 

「あの!僕はっ・・・!」

 

大切な仲間を取り戻してくれた恩人ともなった彼に祐斗が礼を言おうとするがその行為をストラーダさんは手で制した

 

「私を―――教会を決して許すなよ。若き『騎士』よ。さすればそなたの剣の輝きは鈍る。光と闇の狭間こそ貴殿の力の根源となろう」

 

ストラーダさんは転移魔法陣の上に立つと右手を振り上げる

 

「さらばだ。未来有る若人達よ」

 

その言葉を最後に彼は光の向こうへ消えていったのだった

 

 

 

 

教会のクーデター組との戦いも終わって二日ほど経った頃。今日は放課後の部室では部屋の隅の方で祐斗イリナさんが何やら真剣な表情で話し合っている―――と云うのも先日出会ったトスカさんがこの町・・・より正確には祐斗とギャスパーが一緒に住んでいる部屋に彼女も住むようになったので教会側とも色々遣り取りしているのだ

 

トスカさんは教会育ちの信者だし、この町で住むにしても教会での拝礼や信者の集会(ミサ)などをいきなり切り離せというのも無茶な話だ

 

他にも彼女がまだこの町どころか日本語も覚束ない段階だったり教会時代の常識との差異だったり兎に角今はフォローと調整が必要な時期なのだ

 

アーシアさんやゼノヴィアの時は言ってはアレだが教会から追放されてたので教会関連の事は考えなくても良かったし、悪魔に転生した事で日本語を話す分には問題無かったからな

 

少なくとも今のトスカさんよりはハードルは低かっただろう

 

そんな事を現実逃避(かんがえて)いると向かいのソファーに座った何時もより少し目線が高い(・・・・・)イッセーが堪らなくなったのか遂に立ち上がって俺に指を突きつけてきた

 

「なんでだよ?―――なんでイッキが小っちゃくなってんだよオオオ!!?」

 

突きつけられた指の先で黒歌の膝の上に座っている(・・・・・・・・・)俺にツッコミをぶつけたいようだ

 

「まぁまぁ、落ち着けイッセー」

 

「落ち着けるかよ!?ていうか何で木場とイリナはこの状況で普通に事務的な話を続けてられるんだよ!?イッキがミニマムになってんだぞ!?可笑しいだろ!?」

 

祐斗とイリナさんが反応が鈍いのは先日のクーデター戦で俺がこの変化の術を使ってる姿を一度見たからだな。流石に二度目で大仰に驚いたりはしないだろう

 

大声を出すイッセーに俺を膝の上に乗せている黒歌と左右に座って俺の頬っぺやら頭やらを撫でたり突いたりしていた白音とレイヴェルが苦言を呈す

 

「ちょっと、子供の前であんまり大きな声を出さにゃいでよね」

 

「イッセー先輩。他人を指さす行為は褒められたものではありません。教育に悪いので自重して下さい」

 

「白音の言う通りです。イッキ様が真似しだしたらどうしますの」

 

「畜生!誰か俺に味方してくれる奴は居ないのかよ!?」

 

すまないがイッセー。今の俺じゃフォローできん

 

授業が終わってからイッセーが松田と元浜と紳士の円盤や雑誌(俺の指導でカバーは付けさせることに成功した)の交換会をしてたのでイッセー以外は一足先に部室に来ていたのだ

 

そしたら部室に偶に遊びに来る黒歌が転移して来て開口一番「イッキ。子供になるにゃ!」と思わず仰け反る勢いで迫って来た―――なんでも訊くところによると家に居る時にアザゼル先生から「イッキとクリスタルディとの戦いの記録はもう見たか?面白い事になってやがるぞ」と連絡が有ったようで目を通したところ俺が妖怪変化で子供(小学一年くらい)になったシーンを目撃したという事らしいのだ

 

「―――って!アザゼル先生が原因じゃねぇかよオオオオ!!?」

 

ここまでのザックリと説明した辺りで再びイッセーの叫びが響く

 

全くもってその通りである

 

その後直ぐに現れた一年生組の白音とレイヴェルにもその件がバレて三人に詰め寄られて押し切られた形で今に繋がる

 

お陰で黒歌達のお人形さんと化してしまったのだ―――ハッキリ言って恥ずかしい

 

さっきから努めて平静を保とうとしているが黒歌に文字通り子ども扱いされている現状では焼け石に水だ。もう全方位が柔らかくていい匂いがする

 

なによりもなけなしの男のプライド的なものが砕け散っていくのを感じるのだ

 

うぅぅ・・・やるならせめて等身大の抱擁がしたい

 

だが今回の件で一つの事実がハッキリとした。それは・・・

 

 

 

 

 

俺におねショタ属性やバブみ属性は無いという事だ!!

 

 

 

・・・いや、別に前々から解ってた事だけどさ

 

だからイッセーはそんなに羨ましそうな瞳を向けるな!「小さくなれば俺も無邪気さを装ってお姉さん方のおっぱいタッチしまくれるんじゃね?」とかもう口に出てるんだよ!

 

言っとくけどこの状態そんなに良いもんじゃねぇかんな!正直今も黒歌達にワチャワチャ触られて真面に身動き取れねぇし、かなり特殊な紳士属性の方じゃないと振り回されるのがオチだ・・・待てよ?ならいっその事実際に体験(・・)して貰えば良いんじゃないか?

 

俺は思いつくままにイッセーに一つの提案をする

 

「イッセー、小さくなってみたいなら協力してやる。ちょっとイヅナを憑依させろ」

 

「え゛っ!?い・・・いやぁ、別に小さくなりたいなんて言ってないし?」

 

おっ、なんだ?本当に小さくなるかもって思ったら尻込みしやがったか?

 

だがお前の意思など関係ないのだよ。その可能性を示唆してやった時点で退路は断たれているのだ

 

先ずイッセーの隣に座っていたアーシアさんが勢いよく立ち上がった。基本はお淑やかな彼女には珍しく鼻息を荒くしている

 

「イ、イッセーさん!是非小さい頃のお姿になってみて下さい!」

 

「アーシア!お、落ち着けって・・・な?」

 

何とかイッセーが諫めようとするがアーシアさんは鼻と鼻がくっ付きそうな距離に顔を近づけて迫っている・・・少し前に見た光景だ

 

「私は落ち着いてます!イッセーさんが小さくなって抱っこさせて頂けたならもっともっと落ち着けますぅぅぅ!!」

 

絶対に落ち着く訳が無いと確信出来るアーシアさんにタジタジになっているイッセーだがそこに祐斗との話が一段落したのかイリナさんが後ろから首に腕を回す形で抱き着いた

 

「ねぇダーリン。将来二人の間に子供が出来た時の為に予行演習しておきたいんだけど協力してくれない?具体的には子供を抱っこしたりしてみたいな~ってね♪」

 

赤ん坊なら兎も角小学一年くらいの子供相手に抱っこの練習とか必要無いと思うんだがな

 

「イリナ!お前もか!」

 

新たな敵(イリナさん)の登場に更にタジタジになるイッセー。しかし俺はこの程度で手を緩めたりしないぞ

 

すると廊下の方から誰かが全力ダッシュするような音が聞こえてきて部室の扉が開かれる

 

「話は聞かせて貰ったわ!」

 

「あらあら、うふふ♪あのアルバムの中のイッセー君をこの目で見られると聞いたら最速で来るしかありませんわ」

 

「リアス!?朱乃先輩まで!?なんで此処に?ていうかなんで知ってんの!?」

 

イッセーの疑問に誰かがなにか言う前に開け放たれたドアから更に別の二人が入って来た

 

「イッセーはもう子供化したのか!」

 

「あらら~?兵藤が面白可笑しい事になるって聞いて来たんだけど、何だか先に有間君が子供になってない?」

 

入って来たのはゼノヴィアと桐生さんだ。生徒会選挙はもう目前なので最後の確認やスピーチの練習を近くの教室で行っていたのだ。イッセーに気付かれないようにこっそりとイヅナを解き放って思念通話でイッセー子供化イベントの告知をしたら全力で集合してくれたという訳である

 

黒歌達と違ってリアス先輩達は常にイヅナを持ってる訳ではないけど、この学園の敷地内に居る彼女達の下に上級悪魔クラスの力を持つイヅナが秒で辿り着くなんて簡単な事だからな

 

そうしてイッセーは女性陣のパワーに押し切られてイヅナを憑依させる事を了承

 

俺が遠隔で変化を発動させてイッセーを子供の姿に変えると荒い息遣いとだらしない口元に変わった女性陣に抱っこの為に四方から引っ張られる状態となった

 

「いででででで!!皆放して!俺の腕と足が全部取れちゃう!ゼノヴィアは俺の頭を持つなって!首までもげるぅぅぅ!!」

 

なんか昔国語の教科書で似たような光景を見た気がする・・・確か『大岡裁き』だっけ?

 

子供の母親を主張する二人がその子供を引っ張り合って子供が痛がる様を見て手放した方こそが母親と認められたっていう創作だったはずだ

 

 

 

”ギチギチギチギチッ!!  ギリギリギリギリッ!!”

 

 

なんかもう人体から出てはいけないかなりヤバい音が鳴り始めてる気がするんだけど大丈夫かな?

 

「ヘルプッ!?ヘェェェェルプ!!俺が五等分になっちまうぅぅぅ!!」

 

五等分の花婿(物理)ですね。そんなイッセーの助けを求めるそのSOSを聴いた桐生さんは呆れたように肩を竦める

 

「バカねぇ、兵藤。両手両足と頭が取れたら胴体が残るでしょうが。でも安心なさい。余った体の方は後でロスヴァイセちゃんが回収してくれると思うわよ?」

 

六等分の花婿(物理)だったか・・・

 

「ねぇ待って!体が千切れるの前提で話を進めるの止めてくれません!?悪魔でも首が取れたら普通に死ぬんですよ!」

 

フェニックス家みたいな例外は在るけど普通は首無くなったら死ぬよな

 

その後、職員会議が終わって俺が子供化して弄られてると思ったアザゼル先生と何も知らないロスヴァイセさんがやって来てアザゼル先生は爆笑。ロスヴァイセさんはリアス先輩達を吹き飛ばして長々と説教する事になった

 

帰り際にイッセーは「俺・・・もう子供になりたくねぇわ」と心身ともにボロボロになって帰路についたのだった

 

 

 

 

後日、駒王学園の新生徒会役員を決める生徒会選挙が開始された

 

事前の広報活動は全て終わり、最後に体育館で立候補者のスピーチを聴いてから投票箱に票を入れる事になる

 

会計、書記、副会長と順にスピーチでそれぞれの意気込みを語っていった

 

まぁ全身超絶厚着でゴーグル付けて光を遮断してる吸血鬼のミラーカ・ヴォルデンベルグさんが一番(見た目で)インパクトは有ったかな?

 

副会長に立候補したサジの基本に忠実で少し笑いを交えたスピーチが終わったら次はいよいよ生徒会長候補のスピーチの番だ

 

先鋒として壇上に上がった花戒さんは自分がどれだけ生徒会が好きなのか、そして生徒会を通して駒王学園をより良くしていきたいという旨の内容を語った

 

スピーチの終わりには生徒たちから大きな拍手が贈られる

 

花戒さんが壇上から降りると次はゼノヴィアのスピーチの番だ

 

手に持ったスピーチ原稿を読むために一度口を開きかけた彼女は少し逡巡してから原稿を伏せて顔を上げて語り出す

 

その内容は学園を変えていく上での分かり易い目標でもなく、守りたい事柄でもなく、今まで教会の施設で育った自分が初めて通った学園という場所で見聞きした事が如何に新鮮で楽しいものだったのかという感想だった

 

続けてゼノヴィアはそんな自分に新しい様々な『楽しい』を与えてくれた学園をもっと楽しいものに変えていきたいと言う

 

自分が感じたように―――自分が感じた以上に―――『楽しい』を創りたいのだと

 

「―――私はこの駒王学園を誰からも愛される学園にしたい。皆、楽しい駒王学園にしよう。いや、私がしようと思う。だから、こんな私をどうかよろしくお願いします」

 

演説を終えたゼノヴィアが最後にお辞儀をするのと同時に生徒たちから歓声が上がった

 

 

 

後日、票の集計結果が張り出され、新生徒会のメンバーが決定した

 

 

◎生徒会長/ゼノヴィア・クァルタ(二年生)

 

〇副会長/匙元士郎(二年生)

 

〇書記/巡巴柄(二年生)、加茂(かも)忠美(ただみ)(二年生)、百鬼(なきり)黄龍(おうりゅう)(一年生)

 

〇会計/草下憐耶(二年生)、仁村留流子(一年生)、ミラーカ・ヴォルデンベルグ(一年生)




一体何時から死神とのガチバトルが始まると錯覚していた?

ちょっと冥府の戦力強化されちゃいましたねww

取り敢えずこの章はここまでで次から進路相談のベリアルになります。19巻の最後を20冒頭に持って来ても変わりないと思ったので新生徒会で〆にしましたww

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