転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第20章 進路指導のベリアル
第一話 宇宙へと、羽ばたきません?


生徒会の新メンバーが発表された日の夜。ゼノヴィアが生徒会長に当選された事を祝って打ち上げパーティーが行われた

 

例の如く皆の悪魔の仕事の後なので夜も遅めの時間帯となったし他にも用事が有ったとの事でゼノヴィアの選挙活動にかなり貢献した桐生さんは残念ながら不参加となった

 

まぁパーティーが終わってから深夜に家に送り返す訳にも親御さんへの説明無しでいきなりお泊り会をする訳にもいかないだろうし、そもそも用事有りなら仕方ない

 

そしてパーティーの一つの〆として『皇帝ベリアル十番勝負』でライザーと王者・ディハウザー・ベリアルの試合を視る為に皆が冥界のチャンネルと合わせたテレビに注目していた時に一人の人物が部屋に入って来た

 

「よぉ、お前ら。ちゃんとハメ外してっか?」

 

「先生!こんな時間になんの用ですか?ってか仮にも教師の第一声がソレって不味いでしょ!」

 

アザゼル先生の不謹慎極まりない言動にイッセーからのツッコミが入る

 

「なんだなんだ?お行儀よくジュースとお菓子だけか?ったく、こういう時は教師に隠れてアルコール入りのジュースや煙の出るシガレットで盛り上がるのが学生の愉しみだぜ?」

 

いやいや、健全でも普通に楽しめますし、第一この場にはもう一人教師が居るでしょうに

 

すると予想通りと言うべきかロスヴァイセさんが恐い顔で立ち上がった

 

「アザゼル先生!生徒を不良の道へ堕とすような発言は慎んで下さい!」

 

「お堅いねぇ。これも一つの教育だぜ?ガキってのは穢れを一つ識るごとに、渋い大人に成長していくのさ」

 

「変に格好つけないで下さい!識ることと自ら首を突っ込むことは違います!」

 

言い争う・・・と云うよりはロスヴァイセさんが一方的に突っかかってるだけだが俺達としては見慣れた光景だ

 

「それでアザゼル。今日は何の用で来たのかしら?これからライザーの試合が始まるのだけど」

 

「ああ、実は先日ストラーダから譲られた聖杯の欠片を使ってとあるアイテムを作ってな。ついさっき完成したところなんだ」

 

「アイテム?」

 

聖杯の欠片を使ったアイテムと聴いて皆の興味の視線が一段高まる

 

「そうだ。理論上、それを使えばギャスパーのお姫様であるヴァレリー・ツェペシュを目覚めさせる事が出来るはずだ。だからこそ、こんな遅い時間でも態々来てやったんだぜ?」

 

アザゼル先生がニヤリとキメ顔をキメながら語られた内容に全員が驚き、中でもギャスパーが勢いよく先生に詰め寄った

 

「ヴァレリーが!?ほ、ほ、ほ、本当なんですか先生!?」

 

「慌てるな。なにせ相手は神滅具(ロンギヌス)と聖杯だ。100%の保証はせん・・・が、現状俺の持てる技術は全部ぶち込んでは有る。それで、見に来るか?」

 

「はいっ!」

 

アザゼル先生は100%じゃないと言ってるけど基本は慎重派でこと研究に関しては妥協しない彼の事だから万が一の時のセーフティなども含めて本当に『全部』を注ぎ込んだのだろう

 

そして見学するか如何かだがギャスパーの答えは当然Yesだ

 

リアス先輩はそれを聞いて皆に神の子を見張る者(グリゴリ)へ行くよう促す

 

「そう言う事なら早速準備を・・・あっ!」

 

しかし途中まで言い掛けたところでレイヴェルの方を振り向いた

 

確かにヴァレリーさんが目覚めるかも知れないと云うのは直ぐに足を運びたい案件では有るが、レイヴェルにとっては実の兄であるライザーの復帰戦の応援も決して蔑ろにして良いものではない

 

「レイヴェル・・・貴女はライザーの戦う様を応援して上げるべきじゃないかしら?」

 

「い、いえ!リアス様。お気になさらずともお兄様の試合の様子は後で録画したものを視る事も出来ますし・・・そ、それに結果は分かってる試合ですしね・・・」

 

レイヴェルはチラチラとテレビの方に視線を送って少々後ろ髪を引かれるような感じではあるものの、同じ一年で友人のギャスパーの方を優先しようとしたが当のギャスパーがレイヴェルの手を取ってゆっくりと首を横に振る。ライザーの試合は後で録画で見たら良いとレイヴェルは言ったがそれを言うならヴァレリーの方も似たようなものだ

 

「有難う。レイヴェルさん。でもこっちは大丈夫だからレイヴェルさんはライザーさんの事を直接応援して上げて。こういう時のアザゼル先生は信用も信頼も出来るから」

 

ギャスパーはギャスパーの『家族』を、レイヴェルはレイヴェルの『家族』を、今は優先するのが一番良いと判断したのだろう

 

「おいギャスパー。お前サラッと普段は信用も信頼も出来ないとか抜かしやがったな?」

 

アザゼル先生の独り言(ざれごと)は聞こえないものとして俺もギャスパーの言に乗っかる

 

「なら俺と、あと黒歌もレイヴェルと一緒に残ろうか。吸血鬼の城では俺と黒歌だけは挨拶もした事ないし、ヴァレリーさんが起きた後で紹介してくれれば良いよ。それに俺も一応ライザーの将来の義弟だしな―――黒歌もそれで良いか?」

 

「まっ、構わないにゃん」

 

俺と黒歌は最初に城に行った時にギャスパー達がお話してる後ろにちょろっと居ただけだし、レイヴェルに関してはヴァレリーさんからしてみれば完全に初対面だからな

 

他のメンバーは俺と黒歌が裏で工作してる時にギャスパーとヴァレリーさんの歓談にお呼ばれもしたみたいだから良いけど、目覚めた直後に俺らがその場に居ても多分『誰?』となるからな。自己紹介は後で構わないだろう

 

黒歌には事後承諾みたいな形で言ってしまったが彼女も特に異論は無いようだ

 

「我も・・・残る?」

 

「ああ~、行くのは神の子を見張る者(グリゴリ)の施設だからな。オーフィスは今回は遠慮してくれ」

 

オーフィスの存在は各勢力のトップ陣の中でも一部しか知らされてない事だからアザゼル先生の根城と云えど連れて行くのは無理か。まぁトップ陣で知らされてない奴らも(インドラとか)勝手に情報掴んでるんだろうけどな

 

そんな訳で皆は最低限外行の格好となってから地下の転移の間で神の子を見張る者(グリゴリ)へと転移して行った(ライザーの試合は既に始まってたので見送りは不要と言われた)

 

ライザーとディハウザー・ベリアルの試合もエキシビションマッチで例えばスポーツ形式で制限時間一杯まで戦うような内容は組まれずに多少王者側に制限は入ってるものの基本は正面からぶつかり合うようなルールとなったので試合内容は割とサクサク進んでいる

 

今はディハウザー・ベリアルの下へ向かおうとしたライザーと『女王』のユーベルーナさんに皇帝の眷属が戦いを仕掛けてユーベルーナさんが囮となってライザーをディハウザー・ベリアルの待つ洞窟の奥へと向かわせたところだ

 

≪ライザー・フェニックス選手の『女王』、リタイア!≫

 

ライザーが炎の翼を広げて高速で奥へと進む道半ば辺りでユーベルーナさんのリタイアアナウンスが鳴り響いた。これで眷属は全員撃破された事になる

 

ライザーは後ろを振り返って誰も追って来るような気配が無い事を確認する

 

≪よくやったユーベルーナ。追撃者が居ないのは王者の計らいなのだろうが、半年前の俺達では手加減された上でも皇帝の膝元まで辿り着く事すら出来なかったのだろうな≫

 

ライザーは振り向いていた顔を正面に向け、まだ見えぬ位置に居る皇帝の気配のする方へと鋭い視線を向ける

 

≪俺の眷属たちよ。お前たちの献身に俺は皇帝に喰らい付く意地でもって応えるとしよう≫

 

そうしてライザーはそこからはゆっくりとディハウザー・ベリアルの下へ歩き出していく

 

―――ヤバい。ライザーが超主人公してる

 

となりに座ってるレイヴェルも目元に涙を溜めて「成長なさいましたね。お兄さま」と妹目線というよりは保護者目線で感じ入ってるようだ

 

しかし問題はこの先だ。俺はライザーの試合が高確率でご破算になるのを識っている。だからせめて試合を視るレイヴェルの傍に居てあげたいと思ったのだが、そもそも『多分大丈夫』という理由で行動に移さなかった俺にそんな気遣いとかする資格が在るのかとか思考が泥沼に嵌りそうだ

 

これが原作知識持ちの葛藤ってやつか

 

今まで大して気にして無かったってのにな・・・

 

ったく、身内が絡むと途端に気になるとか人間味が有ると言えば良いのか薄情と言えば良いのか。気持ちを切り替える為にも一つ静かに深呼吸をする

 

そうだ。『話さない』を決めたのは俺なのだからレイヴェルや皆がこの先持つであろう不安や心配を前に俺自身の気持ちなど二の次だろう・・・それ位は飲み込まないとな

 

そうしてライザーは皇帝の待つ洞窟の中のカメラの届かない奥まった場所に入って行き・・・皇帝と共にゲームフィールドからその姿を消したのだった

 

 

 

 

試合中の二人の『王』が突如として居なくなった事に実況役の人の動揺から徐々に観客、視聴者にも不測の事態が起こった事が伝わっていった

 

そして試合の放送は慌ただしく中断されて冥界のニュースにも速報のテロップが流れる程だ。ライザーは兎も角として絶対王者たるディハウザー・ベリアルは冥界屈指の実力者であり、スターという名の娯楽提供者でもある

 

貴族と縁の薄い民衆からしてみれば四大魔王と同等かそれ以上の人気が有っても可笑しくない程だ。そんな人気者が行方不明となれば情報の拡散は一瞬だった

 

神の子を見張る者(グリゴリ)へと出向いていた皆も直ぐに戻って来てギャスパーの大切な人が目覚めたと報告してくれたがその表情は硬い。ヴァレリーさんとライザーの良いニュースと悪いニュースが同時に来たものだから仕方ないのだろうがな

 

今は皆で映像が切り抜かれた問題のシーンを改めて見たりアザゼル先生が悪魔政権の方に色々確認を取っているところだ

 

そうは言っても洞窟の奥の入り口付近に有ったカメラの映像なのでライザーが入って行ってから中の様子は見えず、少ししたら蒼い光が僅かに中から漏れ出たくらいのものなのだが―――ともあれ今はアザゼル先生の連絡が終わるのを今か今かと待っている状態だ

 

だがやはり一番落ち着きがないのはレイヴェルだ。今は左手で俺の袖を握り締めてるし、反対の手は白音が繋いでいる

 

何時俺の袖を握ったのかレイヴェル自身は無意識だったようなので出来る限り優しく袖を握る手を解いてから白音と同じように手と手で繋ぎ直しておく

 

やはり不安な時は人肌の温度の方が落ち着くだろう

 

そして先程より少しはレイヴェルが落ち着いた辺りでアザゼル先生が帰って来た

 

「先生!ライザーと皇帝はっ!?」

 

「今、ハッキリしているのは二人が消える少し前にゲームの緊急用プログラムが作動したという事だけだ。緊急用プログラムってのは例えばフィールドが崩壊しかけた時にフィールドを修復したりイカサマ防止だったりと内容は様々なんだが、今回発動したプログラムの識別コードではあの場所で何かしらの不正行為が有ったらしいと云う事だけだ」

 

「そんな!あり得ませんわ!お兄様はゲーム馬鹿ですが、だからこそ不正行為などするはずもありません!!」

 

「ではベリアル氏が・・・?」

 

「一応クリフォト辺りが外部から介入した可能性も視野に入れてはいるんだが、今の時点では外からの工作の痕跡は見つかってないそうだ。第一不正行為をしたところで何処へと知れない場所に跳ばされて行方不明になるなんて訳の分からん設定は当然組まれていない」

 

要約すれば『意味不明』という先生の言葉に皆の表情に影が落ちる

 

普通に考えてライザーも皇帝もゲームで不正をする必要が無いからだ

 

皇帝がゲームに勝つ為ならごく普通に戦えば確定で勝てるし、逆にライザーだって彼我の実力差が有り過ぎて不正行為の一つや二つで勝てるなんて思わないだろうし、そんな事をすれば当然レーティングゲームからの追放とフェニックス家の没落だ。それ以前にレイヴェルの言ったようにライザーが楽しみにしていた試合を穢すような真似はしないと云うのが満場一致の意見となる

 

何かしら手掛かりの一つでも在れば悪魔政府の捜索隊などにも希望が持てるのだが、今の話では手あたり次第に探すという最も非効率な動きになると分かってしまうからだろう

 

「・・・アザゼル先生は何か思い当たる事が有るんじゃありませんか?」

 

朱乃先輩は腕を組んで難しい顔をしているアザゼル先生に訊ねる

 

その一言に皆の視線が先生に集中した。様々な情報を手広く収集し、柔軟な思考力を持つアザゼル先生ならば自分達では解らないようなか細い糸も見逃さないのではないかと云う期待だ

 

「・・・悪いが今はまだ何とも言えん。だが、俺の予想が正しければライザー・フェニックスの行方はそう悪いものではないはずだ。俺の事を信じてくれるなら、今は無事だけ祈っててやってくれないか?」

 

アザゼル先生の言葉に皆は何かを言いたそうにしながらも口を閉ざす。推測でも良いから聴きたい気持ちは有れど、こういう時に無理に訊くのは良くないとの判断からだ

 

皆、苦い顔をしながらもその日は解散となり、その日家に戻って寝る時は自然とレイヴェルを抱き締める形で眠りにつくのだった

 

 

 

 

 

あれから数日、皆は訓練場に集まって訓練をしている。ニュースの内容は代わり映えしないし、なにより俺達の立場ならニュースよりも先に情報が届くからニュースを見る意味が薄いのだ。ライザーの安否が気になっていたとしても結局前線で働く俺達は地力を底上げして何かあった時に素早く確実に対処できるようにするのが一番良いのだと態々口にしなくとも全員が理解している。そして俺も兼ねてより約束していた特訓をしているところだ―――そう、クロウ・クルワッハと云う名の最強邪龍様との模擬戦である

 

 

 

「ぐぁっ!!」

 

―――お陰で今もこうして蹴り飛ばされているところだ

 

直前で腕をクロスして闘気を集中させたのだがクロウ・クルワッハの攻撃が素早くて闘気のガードが完璧ではなかった為、ビリビリと蹴られた部分が痺れている

 

もうね。マジでこの邪龍がヤバい。以前天界で戦った時は戦闘経験からくる勘をすり抜ける為に相手の無意識に入る抜き足を使ったのだが二度目の今日は既にその抜き足も対処されてたった今カウンターで吹き飛ばされているのだ―――多分方法を訊いてもやはり勘と答えるだろうから意味が無いのだが・・・

 

飛ばされた先には地形の一つである大岩が転がっているようで地面を手で弾いて体の姿勢を整えて大岩の側面に横向きに着地する。その際、俺を蹴り飛ばしてから追撃で迫って来ていたクロウ・クルワッハの眼前に手を着いた瞬間に発動させた仙術で土壁を何重にも張り巡らせた

 

「甘い」

 

だが当のクロウ・クルワッハは一切速度を落とさずに土壁に突っ込みそのまま俺に近づいて来るのが気配で分かる

 

だけどそれは予想通りだ。かの邪龍を土壁で止めようとするなら大陸プレートでもひっくり返して壁としなければ安心出来ないだろう

 

一瞬の目晦ましの間に『第四秘剣・蜃気楼』の分身をばら撒き、目前の土壁が破壊されたのと同時に本体の俺もその場から離脱する。しかしクロウ・クルワッハは瞬時に本体の俺を(どうせ勘で)見つけ出して距離を詰めてきた

 

「ッチ!『第五秘剣・断空』、乱っ!」

 

バックステップで逃げる俺とそれを追うクロウという形なので目の前の空間に無数の斬撃を置く(・・)がやはりそれも彼は無視して突っ込んで来た。『断空』は威力に主眼を置いた技ではないからか連続ヒットしても精々カッターナイフで切りつけた程度の傷しか出来ない。この邪龍の戦いはシンプルだ。近づいて殴るかブレスを吐くかだ

 

抜き足も勘で対処できないものを勘で対処するとか言う以前にこんな感じに猛攻されるとほぼ使えなくなる技術だからな。やり難いったらない

 

「苦し紛れに振るう剣で俺を倒せると思うな」

 

剣の間合いに入ったクロウ・クルワッハを両手に持った大剣の右歯噛咬(ザリチェ)左歯噛咬(タルウィ)で斬り付けるが瞬時に背中から生やしたドラゴンの翼で剣の腹の部分を弾く事で拳の間合いにまで詰められてしまう。そしてその拳が俺の額にぶつかった

 

“グバンッ!!”

 

拳と頭蓋骨が衝突したとは思えない音を奏でて俺の上半身が勢いよく(・・・・)倒れる

 

「むっ!」

 

その勢いの反動で振り上げられた蹴り技がクロウ・クルワッハの顎を蹴り上げた

 

「『第三秘剣・円』―――ムーンサルト版ってね」

 

漸く真面に一発攻撃が入ったな・・・大して効いてないだろうけど口元から血は流れている

 

彼は口の中をモゴモゴとさせると血と一緒に歯(牙)を地面に吐き出した。まぁ牙くらいドラゴンなら直ぐ生えて来るだろう(適当)

 

「ククク、成程。この俺の膂力を利用したカウンター技か。苦し紛れの攻撃に見せたのは俺が遠慮なく拳を打ち込む為の布石だな?しかし、その右足はもう使い物にならんのではないか?」

 

痛い所突いてくるな。確かにコイツの言う通り、蹴った右足の骨が折れてしまっている。頭蓋骨をガードする為にオーラを集中させて次の瞬間右足にオーラを集めたのだが完全には間に合わなかったのだ。コイツとの接近戦ではまだ俺のオーラを瞬時に移動する技術が追い付いてないのだ

 

基礎能力で相手が上回ってる以上、今までと同じようなカウンター戦法では一歩遅れてしまう

 

そのまま再度クロウ・クルワッハが接近戦で嵐のような攻撃を仕掛けてくるが右足が折れた今の自分では10秒と経たない間に劣勢に追い込まれて行く。幾ら痛覚遮断しても怪我をしているという事実に変わりはないのだから100%のパフォーマンスは発揮出来ないのは当たり前だ

 

そんな中、左歯噛咬(タルウィ)を放たれたオーラで弾かれてしまい、しかしその反動で僅かに距離が開く。クロウ・クルワッハがそのまま右手で殴りかかって来るのを見てすかさず右歯噛咬(ザリチェ)を右薙ぎに振るってその拳・・・いや、指を斬り落とそうとするがその右手がドラゴンの巨大な手に変わって刀身そのものをガッシリと掴まれてしまった

 

そのままクロウ・クルワッハの左手の掌底が神器を掴まれた右腕を叩き折る為に迫る

 

神器が掴まれたなら神器を放棄すれば良いのだが、一瞬硬直した俺と始めから連撃を叩き込むつもりだったクロウ・クルワッハの攻撃では奴の方が疾い。よしんば腕を回避できたとしても掌底が胴体に当たればそっちの方が大ダメージだ

 

だから俺は右歯噛咬(ザリチェ)を握ったまま禁手化(バランス・ブレイク)を『解除』した

 

禁手化(バランス・ブレイク)前の俺の神器は奇形の短剣。その刃は腕の方までカバーしている。その刃をクロウ・クルワッハの掌底と俺の腕の間に差し込んだのだ!!・・・まぁ結果は予想付くと思うけど関係無しとばかりに放たれた攻撃で俺の右腕は折れました。今は彼が左の手のひらに折れて喰い込んだ刃を抜き取って投げ捨てているところだ

 

人型に戻した右手も右歯噛咬(ザリチェ)を掴んだ際に手のひらに深めに切り裂いたみたいだけど相手はタフネスお化けの邪龍さん。「こぶしを握っておけば直ぐ治るだろう?」とか言い出しそうである

 

さて、これ以上はどうやっても無理そうなので最後の仕上げといきますか

 

「【一刀餓鬼】!!」

 

折角なのでクロウ・クルワッハを相手にこの強化状態で数秒間だけ思いっきり斬り付けるのだ。戦いの中でもちゃんと力の制御が出来るようにするという事とクロウ・クルワッハ自身が数秒とは云え歯ごたえのある相手と戦えるという理由からだ・・・初日は全身の切り傷に加えて片腕斬り落としたのに今では初日に比べて怪我も半分くらいになってるという冗談みたいな適応力を魅せているけどな!たった数秒。されど濃密な数秒の戦闘を無駄にしないように突貫していくのだった

 

 

 

 

「大丈夫ですか。イッキ様?」

 

はい。右手右足が骨折して全身裂傷に加えてエネルギー枯渇して戦場から離脱した俺です

 

「大丈夫。毎度すまんな」

 

「そこは『有難う』が欲しいですわね」

 

「ああ、有難う」

 

そんな感じにイチャつきながら今はレイヴェルの膝枕を受けながら涙の回復を行っています―――本当なら膝枕の必要はないのだが本人が膝枕をご所望だったのでそれに従ってる感じだ。クロウ・クルワッハとの模擬戦では最後に【一刀餓鬼】を使う関係上アーシアさんではなくレイヴェルの回復が必須となる。なんだか彼女を便利な回復アイテム扱いしてるかのようで気が引けるのだが最初にその事で詫びを入れると「なら、膝枕で!」となったのだ

 

ライザーの安否が知れない中でレイヴェルの我が儘と云うのも本心も有るのだろうが不安を紛らわす意味も有るのだろう。断る理由も無かったのだ(周囲の視線が恥ずかしいけど)

 

黒歌と白音は文句こそ無いようだが普段の密着度が少し増した気はするがな

 

役得と割り切ってレイヴェルの膝枕を堪能していると今日の朝練に参加していたデュリオさんが近づいてきた

 

「いやぁ、イッセーどんもそうだけどイッキ君も可愛いお嫁さん達に愛されてるようで羨ましいっスねぇ」

 

まぁ自覚は有りますよ。ただ一夫多妻的な俺に天界のジョーカーがその発言は宗教的に大丈夫なのかとは思うけどな

 

そして彼は遠くの方で行われている模擬戦の方に目を向けた

 

「イッキ君もそうだけどヴァーリどんもよくあの邪龍君を相手に一人で闘う気になるよね」

 

そう。今クロウ・クルワッハと模擬戦しているのはヴァーリだ

 

訓練には時折参加するヴァーリは今日偶々顔を出した時にクロウ・クルワッハを見つけて試合を申し込んだのだ。当然クロウ・クルワッハは快諾して今に至る

 

今も空中で派手にドンパチやってる最中だ。ヴァーリも最初から白銀の鎧で遠目に見ていても『半減』の力で空間が歪みまくって変な事になっている

 

「デュリオさんも如何ですか?『D×D』のリーダーとして一つ」

 

「ハハ、遠慮させて貰おうかな?彼のパンチを真面に喰らったら宇宙まで吹き飛ばされそうだよ」

 

冗談のようで冗談に聞こえない話だよな・・・それにしても宇宙か

 

ふと思いついた事を尋ねてみる

 

「デュリオさんの煌天雷獄(ゼニス・テンペスト)で大気を操ればワンチャンデュリオさんが『スペース☆エンジェル』に為れたりしませんか?」

 

「うえ゛っ!?」

 

宇宙線とかの対策の術式とかは別に必要だろうけど最悪オーラのゴリ押しで身を守ればすぐにでもデュリオさんは宇宙まで飛んでいけるのではないだろうか?

 

「確かに、空も飛べて莫大な光力も持ち、天候を自在に操るデュリオ様なら可能か不可能かで言えば・・・可能なのではないでしょうか?」

 

「ええ~、レイヴェルちゃんまでそんな真剣な顔して考察しないでよぉ。それにそれならイッキ君だって自然を操る仙術使いなんだから『スペース★ヒューマン』に為れるって事にならない?」

 

デュリオさん。なんで間に挟まる星マークが黒く染まってるんですか?

 

「それは難しいと思いますよ?地上の空気を持っていけても結局は操ってるだけなのでその内酸素が無くなります。デュリオさんのは神器の力だから物理法則をある程度無視してますが、仙術だとその辺りの融通が利かないでしょう」

 

「う~ん。そっか~・・・うん?でもそれって短時間なら生身で宇宙へ行けるって言ってるようなものなんじゃ?」

 

変なところに着目しないで下さいよ。真面目に考えたら確かにやれそうだとなるとなんかまた皆に人間扱いされなくなる気がするんだから!

 

「食料とか用意しておけば下手したら生身で月まで行けそうなデュリオさんには負けますよ」

 

寝る時とかは球体の強めのバリア張って中を空気で満たせば問題無いだろうし、割とガチでイケる気がする。それを聴いたデュリオさんも明るい声で笑い声を上げた

 

「それもそっか!」

 

「「あっはっはっはっはっは!!」」

 

そうして俺も釣られて(やけくそ気味に)笑ったところで一気に静まり返る

 

「・・・・・・この話は精神衛生上良くないみたいだから止めにしないっスか?」

 

「・・・同感です」

 

「・・・どっちもどっちだと思いますわ」

 

こうして俺とデュリオさんの宇宙談義は幕を閉ざしたのだった




短時間とは云えイッキの力を考えたら宇宙まで行けそうだなと思ったので。無論、イッキが大丈夫なら『スペース☆キャット』もイケます

以前九重と海に行った時に海中遊泳とかしてたのを思い出したのでww
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