魔王アジュカ・ベルゼブブさんの下へ訪問する時がやって来た
今は例の如くイッセーの家の地下の転移部屋に集まっているところだ
集ったメンバーはアザゼル先生にオカ研メンバーとシトリー眷属にグリゼルダさんでそれ以外のメンバーはそれぞれの仕事で都合が付かなかったようだ
原作ではアジュカさんとの会合の最中にイッセーの御両親がクリフォトの邪龍に連れ去られるという流れだったのは流石にハッキリと覚えているが、天界でファーブニルの逆鱗の呪いを受けなかったリゼヴィムが同じようにちょっかいを出して来るだろうか?
可能性は低くなってるだろうが天界にも『ついで』で攻め込む輩だから絶対に襲撃が無いとは言えないんだよなぁ
原作でも駒王町のメンバーが偶々軒並み居なくなった瞬間にこの町に侵入してくるとかな
流石に仮に駒王町にクリフォトのスパイが忍び込んでいてもアジュカさんとアザゼル先生の会合が秒でバレたとは考えにくい。要は原作リゼヴィムがファーブニルの呪いの不眠症を解消する為に焦って邪龍を派遣したら奇跡のようなタイミングで駒王町の主要戦力が居なくなった瞬間に転移してきたという訳だ・・・アーシアさんばりの幸運値発揮してんじゃねぇよと言いたい
一応アザゼル先生に主要戦力全抜けするのは如何なものか?と進言して万一に備えて黒歌に待機してもらう流れには出来た。ルフェイとフェンリルはヴァーリチームの方に呼ばれて居ないし、黒歌なら最悪俺を口寄せが可能だからな。それに少し前にイッセーの御両親が出掛ける気配がしたからコッソリとイヅナの本体を護衛に付けてたし、大丈夫だろう
リゼヴィムも無駄にコチラに仕掛けてきたら転移の痕跡などからアグレアスの場所がバレるリスクも有るはずなので多分仕掛けては来ないと思うしな
憂いを断ち切っていざ時間となったので俺達は転移魔法陣でアジュカ・ベルゼブブさんの待つ場所へ転移して行くのだった
転移の光が止んで俺達の目に飛び込んで来た光景は夜の砂浜だった。浜に寄せる波の音が静かに響いている。そんな中で皆の視線を集めるモノが二つ在った。一つは砂浜に椅子とテーブルを置いて優雅にティータイムをしている魔王のアジュカさん。もう一つは夜空に浮かぶ『二つの月』だ
人間界とも冥界とも云えない未知の世界に皆の関心が向いたのを見てアジュカさんはティーカップを置いて立ち上がり、此方に歩いてきながら説明してくれる
「此処は例の『異世界』の風景の一部を再現した空間だよ」
俺達の前で立ち止まったアジュカさんはミステリアス風な笑みを浮かべる
「こうして直接出会うのは久しぶりだね。『D×D』の諸君」
今は『D×D』として一纏めにしたけど『D×D』結成後に出会うのは初めてだよな
この場に居るメンバーで初対面なのはイリナさんとグリゼルダさんにルガールさんとベンニーアの四人だけだろう
それにしてもサラッと言ったけど何処に在るかも分からないはずのイッセーにちょっと一回接触してきただけの異世界の景観を再現とか、大分頭の可笑しい事をやってらっしゃいますよね!
「旧魔王派のテロの時に軽く顔を会わせて以来か」
アザゼル先生が差し出した手をアジュカさんも握り返す
「寧ろ他のVIP抜きでは初めてになりますね―――我々の会合は他の勢力のお偉方には警戒の対象でしょうから・・・例え間に『D×D』を挟んだとしてもね」
胡散臭い科学者とミステリアス科学者(悪魔と堕天使の長)の夢の会合ですね。分かります
・・・冗談はさておき、和平を結んだと言っても悪魔も堕天使も悪いイメージの筆頭格だからな。まだまだ他の勢力から信用されるには積み上げるものが少なすぎるんだろう。まぁ和平を結んで半年ちょっとだから仕方ないのだろうが、こればっかりはコツコツと積み上げていくしかない
代表者同士の挨拶が済んだところでさっきから辺りを気にしていたレイヴェルがアジュカさんに質問をする
「あの、アジュカさま。ライザーお兄様は此方には居らっしゃらないのでしょうか?」
てっきりこの場でライザーと出会えると思っていたレイヴェルとしては第一に確認したい事だろう
それに対してアジュカさんも頷いて返答する
「レイヴェル嬢。心配は要らない。キミの兄の身柄は一足先にフェニックス本家に移送済みだ。感動の再会を演出してやれなかったのは申し訳ないが、これからキミたちには色々機密事項を話さなくてはならなくてね。『D×D』所属でない彼には外れて貰ったのだよ」
この異世界を模した空間もその一つかもな。少なくともおっぴろげにして良い情報では無いだろう
「実はライザー・フェニックスについては今、
アジュカさんに続いてアザゼル先生の保証も付いた事でレイヴェルもライザーと直接会えないのは残念そうにしながらも納得して引き下がってくれた
それを確認したアジュカさんが懐から一つのチェスの駒を取り出して本題を切り出す
「これが何かは解るかな?
『女王』でも『戦車』でも『僧侶』でも『騎士』でも『兵士』でもない。誰も見た事が無い形の
「これは―――『
『―――!!?』
その答えに全員が絶句と共に目を見開いてその駒を凝視する
・・・流石はミステリアス魔王様。間の取り方が絶妙である
俺だけ温度差の有る感想を抱いている中でリアス先輩が震えた声で未だに信じられないといった面持ちで問いかける
「『王』の・・・駒?そんな、だって『王』の駒は未だに製作の為の技術が確立されておらず、その為に『王』の登録には石碑を用いているのだと聞いていたのですが・・・」
「そう。『王』の駒は本来在り得ない。だがそれは決して作成出来なかったからではないのだ。『王』という制度を駒ではなく石碑に登録するというシステムにした理由は二つ。一つは転生悪魔が『王』に昇格した時に体の中にある駒との重複が危険だと判断したため。そしてもう一つの理由はこの『王』の駒の存在を誰にも知らないようにするためだ」
一つ目は兎も角二つ目の理由に皆の頭の上に疑問符が浮かぶ
その様子を見て『王』の駒を手の中でクルクルと遊ばせつつ、アジュカの説明は続いていく
「この駒の能力は単純な強化だ。能力が全体的に底上げされる・・・そういう意味では『女王』の駒と一緒だが、問題はその強化率にあった」
手の中でクルクル弄んでいたその駒を"パシッ"と掴み直し『王』の駒の性能を語る
「『王』の駒を使用した者はその力が最低10倍から駒との相性が良ければ100倍にまで増える―――文字通りに力が跳ねあがる訳だ。これ程の強化を施すアイテムが流通すれば強大な力を突然手にした者達は自制心を置き去りにしてその仮初の力を振るうだろう―――駒の取り合い、独占の為に利権に囚われた悪魔たちが派閥同士で潰し合う・・・強大な暴力でもってね。そうなれば悪魔の種族の危機なんて話では終わらずに各神話世界を巻き込んだ世界大戦。三大勢力風に言えばハルマゲドンの来襲だ」
『王』の駒が流通した場合に齎される被害が最悪ガチで星を終わらせるレベルに発展すると聴いて皆の顔色が青ざめる
『王』の駒の作成に具体的にどれだけの時間・労力・材料などの制約が掛かるかは知らないけど仮に全悪魔に一斉に『王』の駒を与える事が出来たなら悪魔陣営以外は全て駆逐されてたはずだ
マジでヤバ過ぎる発明品である
皆の驚きが冷めやらぬ中、アジュカさんは手元に魔法陣を展開すると次の瞬間空中に無数のディスプレイが表示される。数十人程の悪魔の顔を映したそれにはリアス先輩やソーナ先輩には見覚えのある人物たちだったようだ
「これは・・・レーティングゲームの有名なプレイヤーの一覧?」
「そうだ。そしてここに映し出した者達の共通点、それは『王』の駒を使用した者達という事だ―――つまり彼らはレーティングゲームの定めたルールの外側にある力でもって虚構の栄光を手にした者達なのだよ」
「『―――ッ!!!?』」
その情報は先程『王』の駒の存在を識らされた時以上の衝撃を皆に与えた
しかしアジュカさんの暴露はまだ終わっていない
『王』の駒がこれ程までに使用されているその背景が存在するのだ
「彼らに『王』の駒を与えたのは冥界の上役たちでね。知っての通りレーティングゲームは莫大な利権・利益が絡む。もしもそこに古き悪魔たちの息の掛かった数十倍以上の力を持たせたプレイヤーを送り込む事が出来ればゲームの勝敗を思いのままに動かす事が出来ると思わないかい?実際、ゲームを取り仕切る上役連中は真っ黒でね。八百長、貴族としての圧力、ランダムで決まるはずの対戦表やバトル内容の操作。『王』の駒以外にもやりたい放題しているのが現状だ」
「では・・・実力が有れば相応のモノが得られるという謳い文句は?」
そんな混沌とも云えるドス黒いゲームの裏側を聴かされて冥界の子供たちの夢の為にレーティングゲームの学校を建てようとしているソーナ先輩が既に青白くなった顔で問う
「それは確かに嘘ではない。しかし今のレーティングゲームの環境で上役たちの思惑をも正面から叩き潰して上に昇れる者はキミたちのような突出した例外中の例外でも無ければ不可能に近い。無論、中にはそういった者も居る。元龍王のタンニーンやリュディガー・ローゼンクロイツなど、主に転生悪魔に見られる傾向だ・・・逆に言えば最上級クラスの力が無ければ高い確率で敗れ去ってしまう。それ程に今のレーティングゲームは不誠実な代物と化しているのだよ」
「―――なんてこと」
思わずソーナ先輩が砂浜に膝をつく。貴族社会で日の当たらない子供たちに夢や希望を与える手段として実力で結果を出すレーティングゲームの為の学校を建てたのに、そのレーティングゲーム自体が不正が横行する環境だとは思わなかったのだろう
「現在。レーティングゲームは表向きは上手く回っているように見えている為にこれを切り崩すのは難しくてね。強引に事を進めて民衆に『王』の駒の存在が知れ渡れば暴動が起きてしまう。元々種の存続が危ぶまれていた中で旧魔王派に属する者達も逮捕又は討伐したし、その上で民衆と古き悪魔の間で争いが始まれば如何なるか・・・まぁ決して愉快な事にはならないだろうね」
先の大戦で72柱の上級悪魔の大半の家が断絶したけど旧魔王派と古き悪魔も消え去れば更に半分となって20柱を切るような状態になるかもな。悪魔の社会では血筋による基礎スペックの遺伝は絶対では無いものの決して無視できる程小さい要素でもない。種の根絶とまでには至らないだろうけど、後の世に悪魔が『少数民族』と記されるくらいには規模が縮小するかもね
「しかし、何故この情報を私達に?これは本来、魔王様クラスの立場の方々にしか知り得ない情報でしょうに・・・」
崩れ落ちた親友であるソーナ先輩の肩をサジと左右で別々に手を置いて気遣っていたリアス先輩の疑問の声が飛ぶ。『D×D』と云えども悪魔ですらない種族の者達も居る中で態々悪魔の汚点を話すリスクは普通はない。可能なら秘密裡に解決して何食わぬ顔をしたい案件のはずだ
「敢えて知らせなかった者。知り得てはいけない者にこの情報が渡ってしまったからだよ―――皇帝、ディハウザー・ベリアルが真実に到達してしまったのだ」
「では、皇帝は生粋の?」
リアス先輩の問いにアジュカさんは頷く
「その通り。彼は純粋な才能・努力・実力でもってレーティングゲームのトップに上り詰めた『本物』だ。それ故に先日の騒動を起こしてしまった。リゼヴィムに協力し、アグレアス強奪に手を貸す見返りとしてレーティングゲームの裏側と『王』の駒の情報を識ったのだよ」
既に何度目かの驚愕か。冥界で絶大な人気を博するレーティングゲームのトップがクリフォトのテロに協力していたのだと聴いて絶句以上に皆は混乱している様子だった。そんな中で皆の気持ちをレイヴェルが代弁する
「―――しかし解せませんわ。王者は誠実な事でも有名なお方です。幾ら真実を識る為でもクリフォトのテロに手を貸すなど、余りにも彼らしくありません」
アジュカさんは苦虫を噛んだように眉間に皺を寄せる
「それについては彼にも事情が有る。突き詰めれば、古き悪魔たちの所為だと言える。あの老人たちの欲望は少しずつ冥界の各所を腐らせていたのだよ。今回は偶々そこに楔を打ち込んだのが王者だったと云うだけだ・・・全く、無能な味方ほど厄介なものは無い」
アジュカさんの吐き捨てるようなセリフに流石の皆の表情も引き攣り気味だ。この場に居る大半が悪魔だからなんともコメントに困るだろう
「ん゛ん゛っ!―――ですが、それだとディハウザーさんは如何してライザーとの試合で事を起こしたんですか?リゼヴィムから訊きたい事は既に訊いた後なんですよね?」
イッセーがディハウザーさんが再び動いた理由を問う。質問前にワンクッション入れたのはご愛敬だろう
「俺を呼ぶ為に、俺と直接話をする為にだ。ディハウザーもテロリストであるリゼヴィムの言う事をそのまま鵜呑みにする訳にもいかないだろうしね。レーティングゲームと
「そこで王者から話を聞いたんだな?」
「ええ、『王』の駒とリゼヴィムに協力している事を話してくれました。そして、彼の目的も」
アザゼル先生の言葉に頷いてからアジュカさんが俺達を見渡す
「彼の目的は『王』の駒の存在を冥界、そして各勢力に至るまで全てに開示する事です」
「『ッ!!?』」
一拍置いてから語られた皇帝の目的にイッセーが悲鳴に近い声を上げる
「そんな事をすれば、どれだけの犠牲が出るかッ!」
「王者がそれを話したのは冥界の被害が最小限になるように私に手を打って欲しいからだろうね。古き悪魔への復讐は止められないが、だからといって民衆への被害を無視出来るような男じゃないさ。無論、私も冥界の民を守る魔王の一人として可能な限り打てる手は打っておく―――暴動が起きた時に最低でも死者が出ない為の各種措置、ヘイトコントロール、告発を利用したレーティングゲームの清涼化。やる事は多い」
万が一ディハウザーさんがレーティングゲームの闇の情報を白日の下に晒しても最低限如何にかする為の手立ては立てているようだ
「王者は今は何処に?王者の告発は可能ならば取り消して裏から少しずつ切り崩すのが理想のはずですよね?幾ら対策を施すとしても暴動を完全に制御する事など出来ないと思われますが・・・」
「私と話している途中に外部からの強制転移で去っていってしまったよ。恐らく、アジ・ダハーカの仕業だろう。私と王者の密談をリゼヴィムが危険視したのだと思う」
リアス先輩は『王』の駒を秘密裡に処分するのが良いと考えているようだし、実際今までもそうだった訳だが俺はアジュカさんが対策取ってるならバラしちゃった方が良いと思うんだよな
悪魔社会だけなら兎も角、今は国際レーティングゲームの話がチラホラ周囲で囁かれている時期だ。仮に原作のように直ぐには開催しなくとも各勢力の戦士達の間で噂されているなら数年か遅くとも十数年以内には国際レーティングゲームが開催されるのはほぼ確定とさえ云える。強大な権能を操る神々や異能を操る魔物などが参戦する試合には悪魔発祥のレーティングゲームの代表としてトップランカーも出場するはずだ。『王』の駒を使用してるランキング2位のロイガン・ベルフェゴールや3位のディビゼ・アバドンは当然出場するだろう
他にも何個だったか忘れたけど『王』の駒を使用しているランカーは居る。そんなあらゆる分野の神々が注目する試合の中で『王』の駒なんて『内蔵型強化装置』を使って戦闘を行っていけば自然とバレる可能性は十二分に有るんじゃないか?独自の価値観を持つ神々の集まる国際大会でバレたらそれは詰まり冥界が全勢力に対してケンカを売ってるにも等しい行為となる
今はまだ良いとしても国際レーティングゲームが決定したなら隠して事を進める際に被るリスクが天井知らずに跳ね上がるだろう・・・もしも王者の告発が不発に終わったら懸念はリアス先輩経由でサーゼクスさん辺りにでも伝えておいた方が良いかもな
「実はレーティングゲームのフィールドには観客用のカメラだけではなく監視用のカメラも各所に設置されていてね。王者があの場で私と話した以上、上役たちはその場に居たライザー・フェニックスの関与も疑うだろう。そしてレーティングゲームの裏を聴いた可能性が有る以上は処分の為に動きだす・・・私が彼の身柄をここ数日隠していたのは、彼の安全を確保する為の段取りを進める為だったのだよ」
「しょ・・・処分って・・・」
「するさ。あの老人たちは自分の利益の為なら『かもしれない』という理由で手を汚すのなんて日常茶飯事だ。実際、過去に『王』の駒の正体に近づいた者達は裏で消されていたからね」
うん。やっぱり『王』の駒はバラしたら良いと思うぞ!安全確保と言っても最低限だろうし、バラされたなら古き悪魔たちがライザーを狙う理由は無くなるしな!
可能なら古き悪魔たちの息の根を止められたらと心情的には思うけどそれをやると悪魔社会が弱体化し過ぎて他の勢力が欲を出すからなぁ
殺すのも難しいし、人間のように寿命も待てない・・・ミルたんさんどっかでぶち込めないかな?
セラフォルーさんなら古き悪魔たちが新しい道に目覚めても上手く纏めてくれそうだし、何処かで魔王主催のパーティとかって名目で上役たちを集めてイベントと称してミルたんさんとその仲間たち、更に特別ゲストでハーデス様の冥府の一派も呼んで改心するまで物理的に会場を封じた上でレッツ・パーリィする・・・おお?意外とイケそうじゃないか?
※古き悪魔たちの明るい未来が決定した
そんな事を考えているとふいにアジュカさんの視線が此方を向いた
「ふむ、有間一輝。ここまで色々と驚愕の事実と云えるだけのものを開示してきたつもりだが、キミだけは静かだね。まるで最初から識っていたかのようだ」
顎先に軽く握った手を当てて妖艶な笑みを向けて来る魔王様
しまったアアアアアアアアアア!!実際その通りで他に思考廻してたら全く笑えない魔王ジョークが飛んで来た!アジュカさんとしては流石に本気で言ってる訳じゃないのだろうけど心臓に悪すぎるんですけど!?・・・え、冗談なんですよね?ミステリアスキャラ相手だから自信が持てねぇ!
よし。ここは適当にそれっぽい事言っとこう。今まで俺が得た情報を繋ぎ合わせて回答を示せ!
俺は努めて営業スマイルで返答する。さぁ!原作知識を下敷きにした俺の名推理を披露してご覧に入れようじゃないか!カンニングとかぬかす奴には邪気パンチな!
「まさか、そんな事ありません。最初に『王』の駒の事を聴いた時も普通は『王』が石碑への登録制だなんて(この世界で)初めて聞いたので驚くに驚けなかっただけですし、ディハウザー・ベリアル氏がゲームの不正に関わっていた事は記録映像からも推察出来ましたからね」
「ほぅ。キミたちが手にした記録映像では洞窟の入り口しか映っていなかったはずだがね?」
そう。何も映っていないのが最大に可笑しいんですよ
「だからです。ディハウザー・ベリアル氏はレーティングゲームの絶対王者でファンサービス精神も高い選手だと云う事は分かります」
彼のゲームの映像は俺も観た事は有る。近くにリアス先輩というファンが居るしね。普通に見ていて参考になる資料でもあるし寧ろ俺達前線組にとって見ないという選択肢の方が在り得ないだろう
「そんな彼がライザーを態々『観客のカメラの届かない場所』で待ち構えるなんて不自然ですからね。まるでこれから見られたらいけない事をしようとしてるかのようじゃないですか」
「『―――!?』」
そう答えるとまたまた皆が驚愕した。盲点だったのだろう―――なんかもう皆、今日だけで向こう十年分くらいの驚愕を先取りしてない?
「それと、同じ映像を見ていたアザゼル先生は『恐らく大丈夫』と言っていました。あの映像の中で唯一明確に不審な点として映ったのは洞窟の入り口が一瞬蒼い光で照らされた事です。先生がそれを見て『大丈夫』と言ったのだとすればライザーに利するなにかが起こったという事です。最初はあの光がアジュカ様の転移魔法の光かもと思ったんですけど、以前拝見したアジュカ様の魔法は黄緑色です―――ひょっとしてあの場にはアジュカ様と王者とライザーの他にもう一人、アザゼル先生も知っている『誰か』が居たんじゃないですか?」
ふっふっふ!どうよ?一応あの洞窟の入り口の映像と本来俺が知り得ているだけの情報を組み合わせてもこれくらいにはでっち上げられるんだよ!確か蒼い光で転移して来たのはレーティングゲームの裏の審判者の一人で五大龍王最強の紅一点。
すると目の前のアジュカさんはゆっくりと拍手をしてくれた
「素晴らしい。もしも私が『D×D』を狙う敵なら最初に狙うのはアザゼル元総督殿だが、次点では間違いなくキミを標的にするだろう」
わぁ、全く嬉しくない誉め言葉だなぁ
「ふふふ、フェニックス家が襲われないようにもう一つか二つ防衛を強化した方が良いかも知れないね。老人たちがキミやキミの身内にちょっかいを出した後の未来が恐ろしいよ」
あ、大丈夫です。それについてはさっき結論出ましたので―――セラフォルーさんのパーティだけじゃ全員引っ張り出せないだろうけど、最悪レーティングゲームの国際大会で優勝出来れば優勝賞品の願い事として古き悪魔たちも全員ミルキれると思うしね☆
「何故だか、今すぐイッキ先輩の頭を殴って記憶消去した方が良い気がしてきました」
「―――同意しますわ」
白音とレイヴェルはなに物騒な事呟いてんの!?
「アジュカ。一つだけ確認しておきたい。現存する『王』の駒は全部で何個だ?」
「生産ラインは初期スロットで停止させています。駒の製造法は私しか知らない上に私の能力が無ければ作成出来ない為、これ以上増える事はありません―――『王』の駒は全部で9つ。王者に渡された駒を合わせて私の手元に有るのは4つです」
「残る5つは上役共の手の内って訳か・・・いざとなったら十分に戦況をひっくり返せる数だ」
老害共が持ってるのが5つ。少し前までは6つか・・・あれ?そうなると
「アジュカ様。先程『王』の駒を使用しているランカーたち
「如何いう意味だよイッキ?」
「いや、可笑しいだろ?『王』の駒の数とランカーの数が合わないんだから」
6と数十は流石に誤差ってレベルじゃないぞ
「いい着眼点だ。実際その通りでね。レーティングゲームのプレイヤーは何も年がら年中ゲームに明け暮れている訳ではない。名声を得てゲームを半ば引退し、時折思い出したようにゲームプレイする者達も居る。その辺りの調整は老人たちの得意分野だ。必要な時に必要な者に『王』の駒で強化して試合に出てもらい、終わったならまた抜き取れば良い。2位のロイガン・ベルフェゴールや3位のディビゼ・アバドンのようにメディアへの露出も多く、現役プレイヤーとして試合の予定を常に組んでいる者達などは逆に入れっぱなしだったりするようだがね」
アザゼル先生がそれを聴いて腕を組んで唸る
「それ程簡単に抜き差し出来るとなると厄介だな。下手に追い詰めても駒だけ上役の下へ転送!なんて事もあり得るのか」
「お陰で苦労していますが俺は例え数千年掛けてでも全ての駒を回収するつもりですよ。俺の見通しの甘さが招いた事態ですからね。製造した手前、その位はしなくては」
アジュカさんなら超絶強化する駒の特性を識ってたら造った次の瞬間にも隠すか破棄してただろうし、多分何人かのテスターに駒を使用して、その効果をちゃんと確かめる前にそのまま持ち逃げされたりしたんだろうな
「あの、その駒を例えばリゼヴィムなんかが使って無いのは何故なんですか?」
イッセーが疑問を呈す。確かに超越者の能力が百倍とかになったら笑えないから当然の懸念だな
「『王』の駒は特異な能力を持つ者や強大な力を持つ者が使用するとオーバーフローを起こしてしまうんだよ。言ってしまえば才能の無い者にしか使えない代物なんだ。仮に強者が使用した場合は死ぬか・・・生き残ったとしても重大な障害が残るだろうね」
それを聴いた皆はホッとした表情だ。元気百倍なリゼヴィム王子と相対しなくて済んだからだろう
「まっ駒やゲームなんかについての話はこんなもんか。次に移っても良いか?」
「ええ、どうぞ。何を御聞きしたいのですか?」
アジュカさんの質問にアザゼル先生はこの月が二つ夜空に浮かぶ砂浜を見渡した
「この空間についてだ。異世界を再現したと言っていたが、向こうに勘づかれる恐れはないのか?何しろ邪神なんてのが存在してる事は分かってるんだからな」
下手に気付かれたら逆探知で一気にこの世界の座標などが邪神側にバレるかも知れないからな
と云うかマジでどうやって異世界の風景なんて手にしたんだよ?
「問題在りません。この空間は
「成程な。自分の思い描いた閉じた世界を創り出す『
ふぁっ!?なにそのエゲツナイ組み合わせ!?
猫をピアノの鍵盤の上に乗せて『偶然』にもベートーベンの『運命』とか弾いちゃいましたみたいな無茶苦茶具合だな!?
「あの二つの
「そうかい。神器マニアとして何時かその二つも調べ尽くしてやるからな」
アザゼル先生は残念そうな顔をした後で神器マニアとして中途半端で引き下がれないと情熱をその瞳に灯す。子供みたいにワクワクした顔してますね
「ククク、元総督殿ならばきっと可能でしょうね」
アジュカさんはアザゼル先生の様子を可笑しそうに見た後は俺達に改めて向き直る
「『D×D』の諸君。今回の件ではキミたち、特に若手悪魔の諸君にはかなりの負担を掛けてしまう事だろうが、どうか乗り切って欲しい。レーティングゲームの舞台裏などの小難しい話は私達の方で対処する。キミたちは与えられた場で存分にその力を振るってくれ。それが、正しきレーティングゲームにも繋がっていく事だからね」
「『はい!』」
レーティングゲームの闇を聴いて一時は酷く狼狽していたソーナ先輩も立ち直ったようだ。『今』のレーティングゲームがダメでも『これから』のレーティングゲームを少しずつ良い方向に変えていけるならば、彼女の夢はまだ繋がっているのだから
俺達は最後にアジュカさんにライザーを保護してくれた事へのお礼と別れの挨拶を終えて転移魔法陣でイッセーの家に転移していった
ニーズヘッグとかクリフォトが襲ってくるシチュも考えたんですが原作知識とイヅナの感覚共有を合わせるとどう考えてもイッキが瞬時に対処する未来しか見えなかったので止めましたwwクソ!イヅナの感覚共有さえ無ければイッキの家をロボットにしてイッセーの両親をロボットアームで家の中にぶち込んで月まで飛ばす事だって出来たのに!!(こんらん)