アジュカさんとの会談も終わって家に戻ると早速レイヴェルがフェニックス家のライザーに通信を繋いだ。とはいえ盗聴とかも考慮すれば機密事項の事を匂わせる程度の発言も出来ないので、本当に挨拶程度で無事を伝えて終わりだったけどな
まぁ立体映像付きの通信先のライザーは相変わらずふてぶてしい様子だったので大丈夫だろう
「レイヴェル。なんだったら一度実家に戻ってみても良いんだぞ?それとも付いて行こうか?」
別に手間でも無いし直接出会ってみたらと提案してみるもレイヴェルは首を横に振る
「いいえ、お兄様がご無事な様子はちゃんと確認出来ましたし、それに通信でやりとりした後に直ぐに家に戻ったりするのは何だか気恥ずかしいですわ」
あ~、確かにそれはお兄ちゃん大好きっ娘的に周囲から温かい視線を送られそうだな
「うにゃ~。それで?魔王とは結局どんな話をしてきたのにゃ~?」
万一に備えて家で留守番して貰ってた黒歌に一応追加で部屋に結界を張ってからアジュカさんが話した事を説明していく
「ふ~ん。レーティングゲームの不正行為ねぇ・・・まぁ腐った貴族がそれなりに蔓延ってる中でゲームだけが例外なんて事もないでしょうねぇ」
黒歌としては割と如何でも良いようだ。まぁ今の黒歌はゲームのプレイヤーではないから関心が薄いだけなのかも知れないがな。強い正義感とか持ってる訳でもないし
―――さて、報告も終わった訳だが如何やらクリフォトが攻めてきたなんて事も無かったようだが原作ではヴァーリ達がこの辺りでアグレアスの情報を持ち帰っていた
ただこの世界ではもう少し発見は遅れるかもな。クリフォト襲撃の転移の痕跡でアグレアス発見に繋がったならね
結局その日は思った通りヴァーリ達が此方に来ることもなく就寝する事となった
▽
翌日、今日も今日とてクロウ・クルワッハとの模擬戦だ
俺はクロウ・クルワッハが殴りかかって来る
頬を掠った拳で血が飛ぶが今までよりミリ単位で怪我が浅くなった
「ムっ?」
時間にして刹那とも云えるような、普通なら誰も気付かない変化だが戦いを司るとまで謳われた邪龍は違和感を覚えたようだ
クロスレンジで繰り出される連続攻撃に徐々に体が傷ついていくのは変わらないが前までの模擬戦と比べて微かに、しかし確実に怪我が浅い
俺の使う『抜き足』の技術はクロウ・クルワッハのように勘で対処するとかって例外は除いて弱点は存在する。一つは今クロウ・クルワッハがやってるような近距離での猛攻であり、もう一つは俺が一瞬で詰められる間合いの外側で戦うロングレンジ戦だ。『抜き足』はミドルレンジで相手が慎重に様子見しながら戦ってくれる時が一番効果を発揮する
目の前の邪龍さんに『抜き足』がほぼ効かないならまた別の技術が必要になる
最初に考えたのは俺の使う秘剣シリーズや抜き足などでお世話になっている落第騎士の主人公の相手の思考を掌握して未来視ばりの先読みを可能とする『
勿論言うまでもなく秒で却下した
なに?相手の
自分を把握するなら兎も角、相手を完璧に把握するとか難易度に天と地じゃ到底済まない隔たりが有る。そんなの元々読心系の能力が無いと真似出来んわ!
だがしかし観察するという方向性そのものは悪く無いはずだ
俺は今まで思考加速などの力を用いて相手の動きを見切ってからそれに対応する動きで戦ってきた。そこから更にもう一歩踏み込めるのではないかと思ったのだ
具体的には相手が動き出す直前の筋肉の弛緩や膨脹、オーラの揺れなどの実際に動き出す前の
普通ならオーラの揺らぎとも言い難い波から次の動作を読むのは難しいだろうが、こちとら生まれてこの方自分自身の筋肉・血流・電気信号からオーラまで感知し続けてきた身だ。その経験則から相手が例えばパンチを繰り出す寸前の気配を感じ取り相手が実際に動き出す前に次の手を読む
例えるなら赤ん坊の家庭教師がヒットマンしてるとこの主人公の持つ『超直感』や某忍ばない忍者のサスケェ!君が終末の谷で主人公と初めて戦った時の先読み動体視力に近いだろう
名付けるとしたら相手の兆候・前兆・予兆を読むものとして『
まぁ格好付けたところで『
それにまだ完全じゃない。まだまだクロウ・クルワッハの動きをサインを見逃す事が多いし予兆を感じ取れても次の動きがイメージ出来ない事も多い
だからよく見ろ。貪欲に観察しろ!仙術使いがパワーに囚われるな。仙術使いとしての俺の原点は感知タイプなんだって事を認識しろ!
五感も第六感も総動員して目の前の相手だけを観つめて動け!
観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、
観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、
観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、
観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ、観ろ!!!
「クハハハハ!先日より気迫が充足しているな。心配事でも有ったのか?まぁ良い、ならば此方も本気に近づけていこう。最後まで付いてくるがいい!」
目の前のクロウ・クルワッハが何か言ってるけど重要なものじゃないとして切り捨てる。どこぞの落第騎士様なら相手の声音も計算に入れるのだろうが、俺には無理だ。俺が感じ取るべきは呼吸のリズムや筋肉の収縮や膨脹、戦意などだ―――兎に角観ろ!観て捌け!
そのまま俺とクロウ・クルワッハは暫くの間乱打戦を繰り広げていったのだった
▽
次に意識が段々と覚醒してきた時、自分の体が仰向けになって後頭部に柔らかい感触と良い匂いが漂ってきているのを感じた。これはアレだな。膝枕だ
クロウ・クルワッハとの模擬戦をしていたのは分かるのだが途中から色々感覚や意識が曖昧になっているようだからどっかで倒されたのだろう
戦闘後の膝枕なら一瞬レイヴェルかと思ったけど如何やら違うようでこの感覚は黒歌だな
ただ可笑しいのはさっきから直ぐ上でガチャガチャと音が鳴ってるし時折黒歌の腕が俺の額や顎辺りにガシガシぶつかって来ている事だ。ボンヤリしていた意識も流石にここまでされたら急速に目覚めていく
「―――黒歌さん?膝枕は大変に嬉しいんですけど、なにそのままアクションゲームで盛り上がってんの?」
「あ~、後にしてイッキ。もう少しで尻尾が切れそうだからにゃ」
コイツ!横目でテレビ画面を見てみればモ〇ハンで一狩り行ってやがる!そりゃ顔の上でゲームのコントローラー弄ってたら顔にガンガン当たるわ!
仕方ないので黒歌のプレイの邪魔にならないように体を起こしてソファーで隣に座り直す
・・・なんだろう?この釈然としない気持ちは?
最後に黒歌が抜刀術で華麗にフィニッシュを決めて倒したモンスターから素材を剥ぎ取りながらやっと状況を教えてくれた
「あの邪龍との模擬戦で二人ともどんどん動きにキレが増していっててね。それでもクロウ・クルワッハの攻撃で全身に浅い傷が無数に出来て最後に出血多量で糸が切れたように空中から落下したのにゃ。あの邪龍がイッキの首根っこ引っ掴んで助けてはくれたんだけどね。まぁそうでなければ見学してた誰かが間に合ったとは思うけどにゃ」
あ~、決定打を貰ったんじゃなくてリミット超えでぶっ倒れたのか
脳みそフル回転し過ぎていてスタミナとかダメージとか頭から消えてたな。逆にそれぐらいしないと相手の動きを繊細に掴み取るのは無理だった訳だが
「それでレイヴェルの涙で回復はさせたんだけど血が足りて無かったし修行の時間も終わりだったから魔力で浄化して着替えさせた後で此処まで連れてきたのよ。今日は休日だし、輸血に頼らなくていい時はしない方が良いって事で最初は白音とレイヴェルがイッキの看病もしてたんだけど、もう直ぐお昼だから二人は今昼食作りの手伝いに向かってるわ。それで私がイッキの様子を見るのと同時にそろそろ起きて貰おうと思ってにゃん♪」
「・・・それでアクションゲームに走った訳か」
他の選択肢は幾らでも在ったはずだよな!?
「だぁってぇ、ただ普通に起こすのも味気ないじゃにゃい?イッキが起きるまでに何匹狩れるかってのもあったけどね♪」
尻尾握ったろかコイツ!気絶してる恋人をゲームの縛り要素に組み込むんじゃねぇ!
だが実行に移す前に部屋にレイヴェルが入って来てしまった
「黒歌さん。イッキ様はお目覚めになられまして?ランチの用意がもう整うところですわ」
「にゃん♪見ての通りもう起きたわよ。それで、お昼はなんなのかにゃ?」
報告もそこそこにお昼のメニューが気になる黒歌の様子にレイヴェルも苦笑しているな
「イッキ様の血が足りないならお肉をとハンバーグがメインですわ。それとイッキ様。修行に集中するのは良いですが今日は無理をし過ぎですわよ?出来ればこれっきりにして下さいな」
「・・・はい。以後気を付けます」
珍しくレイヴェルに叱られてしまったので素直に反省する。思い返せばクロウ・クルワッハも言っていたように心配事(ライザー)が無くなって無意識の内にハイになっていたのかも知れん
そうして昼食を食べる為に食卓に向かって行ったのだが、途中で目の前を歩いてた黒歌の尻尾を衝動的に掴んだら怒られた―――うるせぇ!さっきの仕返しだ!
そんな一種のじゃれ合いをしながらも昼食を食べ終えて一息着いたら俺は駒王町のとある場所に在る地下空間へ向かう
タンニーンさんの依頼で俺達で見守っている
そこには先客が居て部屋の中央に安置されているタマゴを抱き抱えるようにして座っているオーフィスの姿が見えた。オーフィスはタマゴに興味が有るようで最近はよく此処に顔を出しているそうだ・・・先日イッセーが見に来た時はタマゴに向かって「ひっひっふ~!」とラマーズ法を唱えていたようだがイッセーはツッコまなかったらしい
まぁ龍神様が親身になって接しているだけでも加護が付きそうだし、態々ケチを付けるような事を言う必要は無いわな
それとこの空間にはオーフィスに興味を持ってらっしゃるクロウ・クルワッハも居る
流石に訓練の時以外で俺やイッセーの家に彼が来る事は無いけど、この地下空間にオーフィスがやってくると如何やって察知してるのか高い確率で現れるのだ・・・オーフィスがよく此処に来てるから当てずっぽうで来てるだけかも知れんがな
そんな二人(匹)のドラゴン達は今・・・バナナ食ってるな
クロウ・クルワッハが持ってるのは先日アーシアさんが渡したらしいバナナだろう
オーフィスは餌付けの内の一つだろう。タマゴ抱えながらもバナナ貪ってらっしゃいます
うわ~、シュールな光景
クロウ・クルワッハは・・・放って置いても良いな。オーフィス(幼女)をガン見する事に夢中な黒コートを相手にするのも悪い
因みにだがこのタマゴ。仙術で気を探ってみたところ生命の気が二つ感じ取れたので如何やら双子のようだ。希少なドラゴンが二匹も生まれると聴いてタンニーンさんも喜んでたな
それと今回はタマゴの様子を見に来たのもそうだが、この場に居るであろうオーフィスにちょっとした思い付きを試してみたかったりもするのだ
「オーフィス。そのままで良いから少し頼みたい事があるんだよ」
「ん・・・なに?」
小首を傾げて聞き返して来る龍神様の前で俺は異空間収納から色々取り出して準備する
「リゼヴィム一派との戦いに役立ちそうなアイテムを作ろうと思ってさ。な~に、ちょっとアドバイスが貰えたらそれで十分だ」
そうして俺はオーフィスから沢山の意見を頂いたのだった
▽
アジュカさんとの会談から一週間ほど過ぎた
途中で新生徒会長になったゼノヴィアが本校生徒の一人の弟のロードバイクが近一の不良校である
なお、問題にならないようにアザゼル先生が手を回してくれたそうだ―――と云うかゼノヴィアの背中を押したのがアザゼル先生らしい。先生ェ・・・
そんなちょっとした(?)トラブルと日常が交差していく中でイッセーの家に緊急招集された
如何やらヴァーリ達がリゼヴィム達の拠点であるアグレアスの場所を特定したらしい
イッセーの家の上層階に在る会議室に『D×D』の駒王町組が集まっていた。サイラオーグさんやシーグヴァイラさんなんかも通信で会議に参加だ
こういった時に場を仕切るのは例によってアザゼル先生だ
「よ~し、呼んだ奴は全員揃ったな?それじゃルフェイに美猴、報告を頼む」
「はい!」
「はいよっと」
ヴァーリ・チームからリゼヴィムの居場所を掴んだ事を報せに来たのはこの二人だ。ルフェイと一緒なのがアーサーやフェンリルではなく美猴なのは仙術使いの気配遮断などのスキルを駆使してリゼヴィム側に万が一にでもヴァーリ達が近くに居ると気付かせない為の配慮だろう
「今までヴァーリ様達とアグレアスの微かな痕跡を辿り、アグレアスが隠れるのに条件の良い場所におおよその山を張って監視してゆく中でアタリを引きました。高度な隠蔽もかの島程の巨大な質量を転移させる時には微かに揺らぎが生じるようです。かの島の座標については先程アザゼル様にお渡ししました」
「ヴァーリの奴は今は他のメンバーと一緒にアグレアス付近で待機中だぜぃ。作戦開始のタイミングだけはこっちに合わせるってよ。自分の手で爺さんをぶっ殺したいってのと同じくらいに、もう逃がしたくないって事だろうな」
ヴァーリの獲物を横取りしても難癖付けられる可能性は低いって事だな。まぁヴァーリは元々そんなキャラじゃないから心配はしてないけど
「アグレアスが転移したばかりなら次の転移までに猶予は有るはずだ。とはいえチンタラ準備してまたアグレアスを見失うなんて事は避けたい。今回の奇襲作戦の詳細決め及び準備は5~6時間以内に全部済ませて突撃するから、そのつもりで各自頭を捻ってくれ」
確かにそうだな。アグレアス程の物体の隠密転移とかアジ・ダハーカでも大変だと思うけど向こうには聖杯も偽の赤龍帝の鎧も有るんだし今日は偶々半日で再度転移で拠点を移す可能性も有るのだ。逃走中のクリフォトが毎日キッチリ同じ時間に転移を使って移動とかする訳もない。そういうのはある程度ランダム性を持たせないと効果も半減だろう
そうして詳細を詰めた結果としてアグレアスへ直接乗り込む手段はアジュカさんがアグレアスの結界を突破できる禁呪クラスの転移魔法で突入する事となった。なおこの禁呪は一度にメンバー全員は運べないそうなので何回かに小分けして転移するそうだ
第一陣はデュリオさん、イリナさん、グリゼルダさんと他数名の
第二陣で黒歌やレイヴェルにイッセー達やアザゼル先生に鳶雄さんが入る
サイラオーグさんやシーグヴァイラさん達は最初は自陣で待機してクリフォトが何らかのカウンターを仕掛けて来ないか警戒し、問題無いと判断出来たなら第三陣として増援に駆けつける
第一陣の俺達の最初の一手で戦況が大分左右されるんだよな
会議が終わってルフェイと美猴は作戦内容をヴァーリ達に伝える為に去っていき、俺達は作戦開始の下準備等が整うまで数時間程各々のやり方でリラックスしたりウォームアップしたりして過ごし、作戦決行の時がやってきた
何時ものようにイッセーの家の地下の転移の間に集まる
床に敷いてある転移魔法陣はアジュカさんが遠隔操作しているようで何時もの魔法陣よりも複雑な紋様を描いている
「これから始まるのは奇襲作戦だ。迅速に敵戦力を殲滅しろ。ヴァーリ達の執念とも云える捜索のお陰で掴めたこのチャンスでリゼヴィムの野郎を打倒す。ハッキリ言ってアグレアスにどれだけの仕掛けが施してあるか分からん上に奴は今もその血筋で絶大な支持を受けている『ルシファー』だ。生かして捕らえても下手すれば裏から手を回されて逃げられるかも知れん。『はぐれ』と同じように
「『はい!』」
皆もアザゼル先生の許可の下、殺る気に満ちた元気の良い返事を返す
突入前に皆に
アザゼル先生が最終確認に入る
「さて、サジ。ラインの調子はどうだ?」
「はい!太くて固いのが出来上がってます!何時でもイケます!!」
もしも今サジのセリフで少しでも邪念が頭を過ぎった奴は焼き土下座な・・・俺はしないけど
「よぉしサジ!その黒くて固くて太゛っとくて長いのであいつ等を繋げ!」
如何やらアザゼル先生は焼き土下座候補のようだ
馬鹿な事を考えてる間にサジが事前に用意した強靭なラインでイッセーと
「ドライグいくぞ!―――
『Transfer!!』
イッセーが右手でラインを掴み、左手で俺単体に手を置いて2種類の力を強化する
ここまで来れば大体お分かりかも知れないが、作戦タイムで俺はライザー戦の初手ブッパを再現しようと提案したのだ・・・二番煎じ?あの試合はグレモリー家とフェニックス家の当主や家族、それからアザゼル先生くらいしか視聴していないのだからリゼヴィム達は知らんだろう。『同じ手は二度通じない』なんてのは同じ相手に使う時に言うべき言葉だ
俺は使えるならバンバン使っていくよ?イッセーの強化が終わってサジのラインは役目を終えて消え去り第一陣が魔法陣の上に乗る
シトリー眷属は俺と
イッセーがラインを通してシステムの『祝福』を、俺に直接『神性』を強化した状態でいざ行かんアグレアス!素敵な
天使の奏でるハーモニー・・・なお一部邪神が混ざってる模様