冥界の騒動もある程度治まって俺達は学業しつつも特訓に励んでいた
だが実を云えば俺達の生活のリズムはここのところ崩れ勝ちでもある。と云うのもトライヘキサと直接相対したアザゼル先生にトライヘキサが復活したとして、俺達が後一ヵ月学園やら仕事やらの合間にちょくちょく修行したとして足しになるのかと尋ねたのだ
勿論俺個人はそんな訳ない事は知っていたので、これは皆の危機感を煽る為の質問だ
俺の考えた策もアザゼル先生たちが秘密裡に用意してるはずの隔離結界も実行するには聖杯と邪龍を殲滅する必要が在るからね。それに量産型邪龍相手なら兎も角、トライヘキサが戦場に居れば下手すればブレス一発で消し炭になる。皆の地力を引き上げたいってのはそういう流れ弾を回避できるようにって感じだ
しかし元々『D×D』に所属するメンバーは上昇志向が強いから多少焚き付けただけでは意味が無い。今の俺達に一番必要なのは時間だ
俺の策も一番大変なのは下準備だからな・・・てか何で
突然拉致られて椅子に括りつけられて関係者一同の講習会が開かれるとか何の罰ゲームだ!
ともあれ術式やアイテムも揃ったので後は決戦までコツコツと積み上げていくしかない訳だ。もうイイよ!分かったよ!突っ走ってやるよ畜生!!・・・とまぁそんな愚痴は置いといて具体的に俺達が強くなる為に如何するべきかと考えたらなにが有用なのか?―――答えはドラグ・ソボールにも登場する『精神と時の部屋』だ!
アグレアスが奪われたアウロス学園防衛戦の時にアジ・ダハーカが現実世界の一分を結界内では一時間経過するように術式を施していた。倍率にして60倍だ・・・まぁ広大な空間の60倍の時間加速なんてのはアジ・ダハーカの禁術有ってこそだろうから実際はもっと小規模になる訳だが、改めて考えると一日が一年になる倍率365倍の『精神と時の部屋』が凄いのが分かる・・・漫画の設定を真剣に考えられる時点で俺達も十分可笑しいんだろうが、細かい事は気にしたら負けだ
アザゼル先生に提案したら渋い顔をされたがな
時間を加速させて修行するなんてのは確かに健全とは言い難い。『生き急ぐ』って言葉をこの上なく物理で実行してしまうようなもんだからな
だけど俺としてもこれは退けない提案だ。最終決戦を前に出し渋りたくはないし、ギリギリの状況下でもなければ秒で却下される案も、アザゼル先生がトライヘキサをその目で見た今だからこそ通ると思ったのだ
そんな訳で如何にか特別修行スペースを確保する事には成功した
場所は俺にとって馴染みの京都にお邪魔させて貰っている。と云うのも特別製修行スペースを創るのにレーティングゲームのフィールドやロスヴァイセさんやルフェイなどの魔法使い組などの協力も有ったのだが、肝心かなめの時間を操れる術者として
最も『D×D』のメンバーが全員京都に行く訳にもいかないし、加速術式を起動出来るのも現実世界で一日数時間程度だ。エネルギーが足りないならオーフィスの蛇で強化されて捕まってるシャルバ・ベルゼブブとディオドラ・アスタロトを秘密裡に電池代わりに使えないかと訊いたらまた頭に拳骨落とされたけどな
何はともあれ決戦までに夏休みの特訓2~3回分程度の修行時間は確保出来たから
そうして決戦の日までちょっと常人の数倍の時間を過ごす事になった俺達だった・・・時折曜日の感覚が狂うのはご愛敬だ
どれだけ強くなれるかは後はもう皆に任せるしかないし、俺自身もちょっとサマエルとでも話を付けてこようかね?
[イリナ side]
私の名前は紫藤イリナ。元プロテスタント所属のエージェントで今はミカエル様の『
『
そんな私は今、長年の相棒であるゼノヴィアと一緒に天界に来ているの
ゼノヴィアは元ヴァチカン所属だったんだけど、複雑な事情が有って今は悪魔に転生しているの。そのせいでちょっとギクシャクした時も有ったけど、今でも変わらない私の相棒よ
本来天界には天使しか立ち入れないからゼノヴィアは天使以外の者が天界に居ても極力悪影響が出ないようにする特別製の天使の輪っかを頭の上に浮かばせているわ。私?私は勿論自前の輪っかよ!初めて天使に転生した時は天使の白い翼や輪っかに舞い上がっちゃったものだわ
「なぁイリナ。今日は聖剣を強化出来るとしか私は聴いてないのだが、具体的になにをやるか知っているか?」
天界に来て第五天を目指して歩いているとゼノヴィアが訊いて来たわ。でも、私も詳しい内容までは知らされてないのよね
因みに天界は全部で七階層に分かれていて、最初に踏み入れる場所が第一天。私達が目指している第五天は主に研究施設が揃っている場所ね
「う~ん。私もシスター・グリゼルダに言われただけで詳細までは教えてくれなかったのよね」
私はミカエル様の『
「そうか・・・しかし気になるね。私は先日デュランダルの真の力を解放したばかりだ。ストラーダ猊下の言うように完成された聖剣であるデュランダルとエクスカリバーを如何やって強化すると云うのだろう?下手をすれば力を損ねてしまう結果にしかならないぞ?」
確かにゼノヴィアの言う通りよね。ゼノヴィアは少し前に起きた教会の戦士達のクーデターでデュランダルの前任者のストラーダ猊下との闘いの中でデュランダルとエクスカリバーの力を解放するまでは二本の聖剣を合体させたエクス・デュランダルで戦っていたわ
デュランダルに振り回されていた未熟なゼノヴィアならそれで良かったけど、あの戦いで一皮剥けた今のゼノヴィアだと逆に聖剣の力を制限してしまうのよね
ゼノヴィアの扱うデュランダルとエクスカリバーも私のオートクレールも完成された伝説の聖剣
一体如何するつもりなのかしら?
▽
二人で頭を捻りながらも私達は一つずつ階層を昇って、漸く目的地である第五天に辿り着いたわ
そうして指定された建物の中に入ると意外な人物がそこに居たの
「やぁイリナちゃん。授業参観以来だねぇ」
「パパ!」
なんでパパがここに居るの?パパは別に聖剣の研究者って訳では無いのに
「私が呼んだのですよ」
「ミカエル様!」
部屋の奥から黄金の光を纏った翼を生やしたミカエル様が現れた―――でも、ミカエル様がパパを呼んだの?聖剣の事となにか関りが有るのかしら?
「イリナ、そしてゼノヴィア。先日はアグレアスの奪還任務、ご苦労様でした。あなた達のこれからの活躍にも期待していますよ」
「「勿体なきお言葉でございます」」
その言葉に私もゼノヴィアも揃って信徒としての礼を取る。ゼノヴィアは悪魔だけど信仰心を無くした訳ではないものね―――ああ♪それにしても天界に来て早々にミカエル様から直接お褒めの言葉を頂けるなんて今日は良い日だわ♪
「では3人とも、こちらに来てください」
そうしてミカエル様に案内された部屋に入ると中央に在る台座の上に二つの青紫に輝く三角錐にも似た形の結晶が浮かんでいたわ
「ミカエル様!アレはまさか聖剣の因子の結晶ですか!?」
つい確認してしまったが見間違えるはずも無い。なにせ私はゼノヴィアのような天然の聖剣使いではなくあの因子を祝福と共に受け入れて聖剣使いになったのだし、加えてオカルト研究部の仲間の木場くんの且つての同士の人達の因子の結晶を彼に届けたのも私だからだ
「成程、聖剣の強化とは聖剣そのものではなく、私達自身の強化を指していたのだな」
「ええ、その通りですよゼノヴィア。聖剣の因子を複数取り込んだ事例は二つ有ります。一つは聖魔剣使いの木場祐斗くん。もう一つはフリード・セルゼンです。それらのデータとあなた達自身の成長、相性の良い聖剣の因子の選定によってこの二つの因子ならばあなた達に適合すると結論付けられました」
よく見るとそれぞれの因子の下に私とゼノヴィアの名前のプレートが置いてあるようだけど、自分と合わない因子を取り込んだらどうなるのかしら?そもそも取り込めなかったり?
「自分の結晶でない方は触れないで下さいね。万が一そのまま肉体に取り込まれたら"パーン"となりますよ」
「ひぅっ!!」
思わず部屋の端まで後ずさってしまったわ
と云うかミカエル様!にこやかに仰ってますが"パーン"ってなんですか?"パーン"って!?擬音じゃなくてもう少し具体的に教えて頂きたいんですけど!?・・・あ、やっぱりいいです
そうして恐々としながらもゼノヴィアの隣に戻ったけど心臓に悪いわね
「イリナちゃん。このイリナちゃんの分の結晶はね、元は八重垣君の因子なのだよ」
それを聴いた私はビックリよ。八重垣正臣さんはパパの昔の部下の一人で去年のクリスマスの直前に天界で戦ったばかりなんだもん。驚く私にパパは事の詳細を話してくれたわ
「私は可能な限り八重垣君とは面会をしていてね。外の話もするんだよ―――そう、八重垣君の恋人のクレーリアさんの
それはそうかも。幾ら八重垣さんが収容施設に居ると言っても冥界全土を震撼させたあの事件は噂をするなと言う方が難しいでしょうね
「それと・・・イリナちゃんは八重垣君との戦いで最後にオートクレールの浄化の力を放った時に八重垣君を包み込む女性の姿が見えたのを覚えているかい?」
「ええ、勿論よパパ。ゼノヴィアたちにも見えてたって言うし、間違いなくあれはクレーリアさんの魂よね!」
・・・あれ?でも改めて冷静になって考えてみれば純血の悪魔であるクレーリアさんの魂が何故天界に居たのかしら?幾らそのクレーリアさんが良い人(悪魔)だったとしても死後の魂が天国に召されたなんて事は無いはずよね?
「うん。実はそのクレーリアさんの魂は今も八重垣君と一緒に居るんだよ。八重垣君が聖杯で復活した時に一緒に居たであろう彼女の魂も活性化して八重垣君と一緒に天界に来たんじゃないかと思われるんだ。今の彼女は八重垣君の守護霊みたいな感じに憑いているよ」
「ええ!八重垣さんとクレーリアさんが今は同じ檻の中で同棲してるですって!?」
「・・・イリナ。檻の中で一緒に居るのは同棲とは言わないぞ」
もう!ゼノヴィアは時々変なところに拘るんだから!それにしても二人は死後の魂の状態でも寄り添っていたからこそ、今一緒に居られるのね!とってもロマンチックだわ♪
「それで出来ればその三人を一度はひき合わせたいんだけど、八重垣君もディハウザー氏も今は自由に動ける状態じゃないだろう?」
う~ん。確かに難しいかも―――天界と冥界それぞれの檻の中だもんね
「そこで聖剣の因子の研究も進んでいる事も知っていた私が提案したんだ。因子の提供という形で天界に貢献すれば条件付きの釈放程度なら認めて貰えるんじゃないかとね」
「ええ、今の彼が冥界に赴いたとして、レーティングゲームで不正を働いていたという古き悪魔たちも今更彼に手を出す事に旨味は有りません。勿論無用な混乱を避ける為にもお忍びでという形にはなるでしょうが、面会程度の時間は取れるでしょう」
ミカエル様も承諾して下さっている事なのね!ムムムッ、そうなると責任重大ね。私が八重垣さんの力も使って大きな戦果を挙げればそれだけ八重垣さんへの当たりが弱くなって自由に動きやすくなるって事よね?
「分かりました!ミカエル様、パパ。三人がちゃんと出会えるように、八重垣さんの想いの詰まった結晶は私が戦場に持っていきます!!」
「有難うイリナちゃん。そう言ってくれると思ってたよ。流石は我がマイエンジェルだ!」
もうパパったら私が天使だなんて当たり前な事を♪
「八重垣氏の聖剣の因子は聖杯の力によって高められています。きっと貴女の力となるでしょう」
ミカエル様はそう言って私の分の結晶を持って近寄って来られたので且つて教会で聖剣の因子を受け入れた時のように両膝を付いて祈りを捧げ、その力を受け入れたの
因子の結晶が私の中に全部入った瞬間に私の二対四枚だった翼が三対の六枚羽に変わったわ!?
「如何やら因子の力に後押しされる形で天使の格が上がったようですね。ですが今の貴女は新しい力を受け入れたばかりです。良くも悪くも邪龍達との戦いが間近に迫ってもいますし、その戦いまでに力の制御を身に付けて下さい。その時、改めて貴女に上級天使としての位を授けましょう。今の貴女ならばきっと大きな戦果を挙げられるでしょうからね」
「はい!主とミカエル様の為、より一層精進致します」
「ああ!娘が天使として立派に成長する瞬間をこの目に出来るとは、私はなんて幸せなんだ」
パパったら何時の間にか袖が涙でビショビショじゃない。一応今の私はまだ中級天使なのよ?
・・・それにしても何だか私イッセー君以上にスピード出世してない?天使は人員不足っていう背景も有るんだろうけど、私が天使に転生したのって日本で云えばまだ夏休みの頃よ?・・・まぁその頃は私はまだバチカンに居たんだけどね
「では次に戦士ゼノヴィア」
「はい!」
私の祝福が終わって次にミカエル様はゼノヴィアの結晶を手に取られたわ―――ひょっとしてあの結晶もなにか曰くの有るモノなのかしら?
「この因子の持ち主とはあなた達は先日戦ったばかりでしたね。優れた戦士でしたが、クーデターを引き起こした罰として引退したあの子が再び剣を取るのは難しい。それならば後進に力だけでも残せるならと承諾してくれたのですよ」
「―――ッそうですか。ストラーダ猊下は何時かちゃんとした手合わせの下、先達を超える姿を見せたかったのだがな」
少し寂しそうに呟くゼノヴィア。そう・・・あれはストラーダ猊下の因子の結晶なのね。ストラーダ猊下は今はイタリアの某所の元々猊下の持ち物だった農園に半径数キロの結界を張ってその中に軟禁されていると聴くわ。仮にも特大のクーデターの首謀者の一人という立場なら極刑でも可笑しく無かったんだけど、猊下の今までの功績、信仰、クーデターの真の目的、そして多くの戦士達の嘆願によって軟禁と呼ぶのも微妙な罰に収まったのよね。かく言う私とゼノヴィアも嘆願書を出したのよね・・・と云うか教会の戦士出身で嘆願書を出してない人って居るのか疑わしいくらいだったみたいよ
一応猊下は結界の外に出られないみたいだけど、私達が会いに行く事は出来るみたいだしね
するとミカエル様はどこか困ったような笑みを浮かべているわね、如何したのかしら?
「・・・戦士ゼノヴィア。これはヴァスコの因子ではなく、エヴァルドの因子なのですよ」
あら、ストラーダ猊下じゃなくてクリスタルディ先生の因子だったのね。私も同じデュランダルの担い手としててっきりストラーダ猊下の因子だとばかり思ってたわ
でも、如何してストラーダ猊下の因子じゃないのかしら?因子の相性はきっと良いはずよね?
「ヴァスコの因子はエヴァルドと比べてもかなり強いのですよ。計測の結果、もしもゼノヴィアがヴァスコの因子を取り込んだ場合・・・"パーン"となります」
ミカエル様・・・もしかして"パーン"がプチブームになってない?
「そこでエヴァルドの因子なのですよ。ゼノヴィアはエクスカリバーの使い手ではあるものの、因子の力で強引に振るってる状態です。エヴァルドの因子を取り込めばエクスカリバーの各種能力も制御し易くなるでしょう―――そこからは貴女次第ですが、折角デュランダルの真の後継となったのです。ついでにエクスカリバーも使いこなしてみせなさい」
つ、ついでって軽くおっしゃいますね、ミカエル様。でも確かにゼノヴィアはエクスカリバーの各種特性は全く使いこなせてないのよね。特に『祝福』の能力は発動も覚束ないって愚痴ってたし、このままでは勿体ないわ―――ああ!戦力アップと一緒にゼノヴィアの心配事まで解消さなるなんてミカエル様の深慮遠謀は留まるところを知らないわ!アーメン!!(ただの偶然)
▽
あれからゼノヴィアも聖剣の因子をミカエル様から賜り、当初の用事は済ませた私達はミカエル様と別れて天界の第二天に来ているの
第二天は基本夜のようになっていて星の動きを観る事が出来るのと収容施設も兼ね備えている場所で主にバベルの塔に関係した者達が収容されているの・・・と云うのも主が居なくなって奇跡を司る『システム』が不安定になっている状態で背信者や異教徒を受け入れる事に不安が有ったのと、そもそも人間界の牢屋で事足りたって理由ね。それでも特殊な事情を抱えた極少数の人達がこの第二天に収容される事はあり得る事なのよね
そうしてとある収容施設で面会の手続きをすると少ししてガラス(と結界)で隔てられた向こう側に八重垣さんが入って来たの
「やぁ紫藤局長、それに娘さんとそちらは確かデュランダル使いのゼノヴィア・・・だったかな?エデンで戦って以来だね」
以前戦った時の怒りと憎しみに囚われた顔とは違って柔和な笑みを浮かべる八重垣さんだけど、理由はやっぱり今も八重垣さんの隣に漂ってる半透明の女性よね
≪一応初めましてかしら?クレーリア・ベリアルよ。正臣を解放してくれて有難う♪≫
そう挨拶してくれたのは八重垣さんの殺された恋人のクレーリアさんの霊魂。以前は遠目で一瞬だったけど、この前出会ったディハウザーさんと同じ白っぽい灰色の髪を腰のあたりまでストレートに伸ばしたとっても綺麗で可愛らしい女性よ!
「本来であれば死者の魂とは軽々に話す事は出来ないんだけどね。彼女は八重垣くんにくっ付いてるから『あの世』である天界から出る事も出来るし、聖杯の影響を受けたからか意識もハッキリしているんだよ」
≪その代わりに正臣からあんまり離れられないんだけどね♪≫
「ハハハハッ、僕はまさしく悪魔に魂に憑りつかれた元信徒という訳さ♪最も、彼女になら僕の魂くらい全部売り渡しても良いと思ってるんだけどね」
≪もう、正臣ったら♡それなら正臣の魂がまた誰かに買いたたかれる前に私が言い値で買い取ってあげるわ♪≫
「勿論、クレーリア相手なら本望だよ」
な、なんだかとっても仲が良いのね。二人の背景がピンクに輝いて見えるわ
「・・・大体何時もこんな感じでね。監禁されていると言っても八重垣君に心配は要らないよ」
「僕が居るのも別に冷たい牢獄みたいな感じではないからね。何時かクレーリアと一緒に外を見て回れるように少しでも天界に貢献しなくちゃいけないんだ・・・『天界に』という処に思う処が無い訳じゃないけど、クレーリアの為なら安いものさ」
恋人の為に頑張ろうとしている八重垣さんは以前と違ってとっても生き生きして見えるわね。やっぱり愛の力は偉大なのですね―――ああ!主よ!
≪有難う正臣。私としてもこの間ディハウザーお兄様が起こした事件を聴いて、如何にか一度話をしたいと思ってたの。お兄様が私の為にも事件を起こしてくれたのは嬉しくも思うんだけど、真面目なお兄様はきっと罪を赦されても責任感からゲームを引退してしまうと思うの―――レーティングゲームが大好きなお兄様が自分を押し殺してゲームを眺めているだけなんて、お兄様の
「クレーリアさんはお兄さんの事も本当に大好きなんですね」
クレーリアさんとディハウザーさんは本当に仲の良い兄妹のように育ったと聴いてるわ
私は一人っ子だったから兄弟姉妹の関係に憧れるのよね・・・将来ダーリンと子供を作る時は最低でも三人は欲しいところだわ♪
でも私がそう言ったところでクレーリアさんが結界ギリギリまで近づいて鼻息を荒らくする
≪そう!そうなのよ!ディハウザーお兄様は強くて格好良いんだから!外に出てお兄様となんとか面会してゲームに復帰するように説得したら私が死んだ後のお兄様の試合ビデオを全部視聴しなくちゃいけないわ!他にもお兄様の事が掲載された雑誌や新聞まで切り抜きを作らないといけないわね!お兄様はメディアへの露出も多いからテレビ番組も全部網羅出来るかしら?いえ、やるのよクレーリア・ベリアル!ああ!そう言えば私が死んだなら家に溜め込んだコレクションって廃棄されてたりするのかしら?最悪過去の記録まで洗って集め直さないといけないわね!それにしてもやっぱり『王』の駒だなんてね。第二位と第三位はお兄様と同格みたいに雑誌にも書かれてたけどやっぱりお兄様だけが突き抜けた頂点だったのよ!そうそう!あなた達はお兄様の試合映像は見た事あるでしょうけど、映画は見た事ある?無いんだったら今日家に帰ったら絶対見るべきよ!アクション映画とかじゃお兄様だからこその格好いい魅せプレイでありながら実際の試合でも有用な立ち回りとかも勉強出来るんだもの!単に格好良ければいいってものじゃないの!合理性を求める悪魔ならそこに在る機能美に惹かれるファンも多いわ!つまり!何が言いたいかと云うとディハウザーお兄様はとっても強くてとってもカッコイイって事よ!!≫
途切れる事なく紡がれるマシンガントーク。幽霊って息継ぎ無しでも喋れるのね
「ソ、ソウデスカ。スゴイワネ、ゼノヴィア?」
「マッタクダナ、ソレデハ、ソロソロオイトマシヨウ」
気圧された私は席を立つ。隣のゼノヴィアも同時だったわね
でも外への扉へ向かう私達のそれぞれの肩にパパが後ろから手を掛けたわ
「イリナちゃん。ゼノヴィアくん。面会時間はまだ残ってるよ?」
パパ!?瞳に生気が宿ってないわよ!?なんで死者のクレーリアさんが活き活きしていて、生者のパパが死にそうになってるの!?もしかして面会の度にこんな感じなの!?
「・・・これは、私に与えられた天からの試練なのだ」
絶対に違うと思うんですけど!?・・・結局その後、私とゼノヴィアは何時家に帰ったのか記憶が曖昧になったわ。イッセー君の家のディハウザーさんの試合映像をテレビにセッティングした辺りで意識が覚醒したんだけど、短い面会時間の間になにが在ったのかしら?
ただ一つ教訓を得られたとしたら『狂信者と熱烈なファンは紙一重』って事ね
「・・・なぁイリナ」
「・・・なぁに、ゼノヴィア?」
「次からは私抜きで頼む」
全部私に押し付ける気ね!その時は絶対に巻き込んでやるんだから!
[イリナ side out]
初登場させてみたクレーリアをインパクトを大事にしようとキャラを掘り下げたらこんなんになりましたww