転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第六話 決戦、準備です!

緊急招集が掛けられてから程なくしてイッセーの家に今集まれるだけのメンバーが集まった。話し合いの内容は分かっている為か皆の表情が緊張で固い感じだ

 

「トライヘキサと邪龍共が現れた」

 

アザゼル先生がこの場に集った皆を見渡しながら言った

 

「一体どこに出現したと言うの!?直ぐに私達も救援に向かうべきだわ!」

 

リアス先輩の言葉に皆も頷いている。戦いになる可能性が高い事など前々から分かっていたので動けるだけの戦力は直ぐにでも動くべきという思いからだろう

 

しかし事はそう簡単な問題では無かったようだ

 

「―――トライヘキサが出現した場所は北欧神話の領域」

 

そこまでアザゼル先生が口にしたところで皆の視線が一瞬ロスヴァイセさんに集まる。北欧は彼女の故郷だからだ

 

だが誰かが声を上げる前にアザゼル先生の説明は続く

 

「そしてギリシャのオリュンポス。更にはケルト、インドの神話世界に冥界、最後に人間界のヨーロッパにこの日本の近海に出現した」

 

「『!!?』」

 

その説明を聴いた皆は驚愕と共に訳が分からないといった面持ちとなる

 

マジか。まさか初手で分裂してくるなんてな。でも確かにこれは対処がし難い

 

「せ、先生!それって一体どういう事ですか!?トライヘキサが七か所に同時に出たって意味ですか!?―――あ、それともアジ・ダハーカの連続転移魔法で既にそれだけの移動を繰り返してるって意味ですか?」

 

「非常に残念な事に前者だ。どうやら(やっこ)さんは七つの首の分だけ体を分裂させられるみたいでな。既に開幕を告げる狼煙代わりにトライヘキサは近場の地形を丸ごと消し飛ばすブレスを放ってから大量の邪龍と偽の赤龍帝を引き連れて徐々に移動を開始している。日本は最初のブレスで既に島が一つ消え去った・・・トライヘキサは日本の場合だが態々近海に現れたように最初は被害の少ないところに現れてからそれぞれ近場の首都を目指してゆっくりと移動している―――大方アジ・ダハーカやアポプスが本気の俺達と戦えるように少しだけ時間を掛けてるんだろうよ。いきなりトライヘキサが首都にでも現れてお偉いさんがトライヘキサのブレスで消えちまったら真面に戦うことすら危うくなるからな」

 

裏の世界だとお偉いさん=実力者の場合が多いからな

 

「それはつまり分裂したトライヘキサだろうと不意打ちをかませば神クラスたちでも消滅するって事ですね」

 

「ああ、そう言う事になる。実際トライヘキサが放った攻撃は真面に受ければ戦神、主神クラスだろうと無事では済まない威力のようだ・・・最初は被害の出にくいところを狙ってくれたようだが、規模が余りにも大きすぎる為、気休めよりはマシって程度だよ」

 

今まではもしもトライヘキサが復活したとしてもその場に各勢力から戦力を集中的に派遣するつもりだったのが、その前提が崩されたのだ

 

これでは何処に赴いて防衛に当たれば良いのか判らない・・・いや、正解なんて無いのだろう

 

「そこでお前ら『D×D』の分担だが二手に分かれて人間界に現れたトライヘキサの迎撃に当たって貰う。人間界は各勢力、各神話を支える信仰の基盤だ。神々は例え消滅しても長い時間を掛けて信仰が集まればまた復活出来る可能性も有るが、その土台が無くなったら話にならん。その上人間界は俺達異形の存在が大っぴらに動けない分、どうしても守りが薄いからな。精鋭であるお前らには人間界を守ってもらうって訳だ」

 

そこでアザゼル先生はリアス先輩にソーナ先輩、そして映像越しのサイラオーグさんとシーグヴァイラさんそしてレイヴェルに向き直る

 

トライヘキサに襲われてる場所の中には冥界も含まれている

 

冥界出身の悪魔としては気が気でないだろう

 

「それとリアスたちにサーゼクスたち魔王から伝言だ。『冥界の事は心配するな』ってな」

 

それを聞いたリアス先輩は一瞬笑みを浮かべる

 

「全く、お兄様ったら・・・」

 

如何考えても尋常じゃない被害が出るだろう状況でもそんな事をトップから告げられてしまったら心配よりも信じる方に意識を切り変えなくてはならない。難しい事だろうが幸いここに居るメンバーはそれが出来る人達だ

 

「まっ、冥界に住んでんのは俺達堕天使も同じだ。神の子を見張る者(グリゴリ)からも既に軍を派遣している―――トライヘキサが7か所に同時に現れたのは確かに想定外だったが、伊達に俺達だって準備を整えてた訳じゃねぇよ」

 

「今、天界からの全体連絡も入りました。天界はガブリエル様と一部のセラフメンバー以外の大部分の戦力を各地のトライヘキサにそれぞれ派遣するそうです」

 

グリゼルダさんからの追加の情報も入る

 

トライヘキサが各勢力圏内にいきなり現れた以上は天界を含めてまだ襲われてないところも他勢力への増援は難しいだろうに、ミカエルさんも結構大盤振る舞いしてくれたな。てかミカエルさんも何処かの前線に立つのか

 

とはいえアザゼル先生に『超の付くお人好し』と言われる天界以外だとそこまでの増援は見込めないか―――そう思っているとアザゼル先生が吉報を届けてくれた

 

「おう、こっちにも報告が一つ届いたぞ。冥府の神のハーデスの奴も死神(グリム・リッパー)を各地に派遣してるらしい・・・ったく、オリュンポスだって襲われてる最中だってのに無理しやがるぜ」

 

あ~、今のハーデスは世界平和を愛するお人好しの神ですからね、そりゃあ世界の危機には立ち上がるでしょうよ

 

それらの報告を聞いてリアス先輩たちの瞳の奥に在った微かな迷いの光が消えたような感じがした

 

今、急速に世界が纏まり始めている

 

共通の敵を前に団結するのは敗者の習性とかそんなもんは知らん!勝てば良かろうなのだ!

 

「次に聖杯についてだ。実は人間界に現れたトライヘキサにはそれぞれアポプスとアジ・ダハーカが同行しているのが確認されている。という事は聖杯はそのどちらかが所持していると見て良いだろう。そこで聖杯の奪取の為に今回は彼女にも戦地に赴いて貰う事になる」

 

アザゼル先生が控室の方に「入ってくれ」と声を掛けると扉が開いてヴァレリーさんが現れた

 

「え!?ヴァレリーさんが直接戦場に行くのか!?」

 

イッセーが思わず立ち上がって驚きの声を上げる

 

ヴァレリーさんは性格も能力も戦闘タイプじゃないからな。俺達の中で例えるならアーシアさんに前線に出ろと言うようなものだろう

 

「ああ、実はエルメンヒルデの協力でマリウス・ツェペシュが残した隠された聖杯の制御方法が見つかってな。ある程度まで奪われた聖杯に近づく事さえ出来れば聖杯の制御を奪い返す事が出来るはずだ―――この事は既にヴァレリーとギャスパーに了承を得ている」

 

「ヴァレリーの事は、僕が必ず守り通します!聖杯を取り戻して全てを終わらせるんです!」

 

何時ものオドオドした様子から一変して強い意思と眼差しでギャスパーが宣言する

 

いやぁ~、こんな時だけど後輩の成長が見られて嬉しいもんだわ

 

「ヴァレリーの首に十字架のネックレスが下げてあるのが見えるだろう?そいつは神滅具(ロンギヌス)紫炎祭主による磔台(インシネレート・アンセム)を一時的に加工したもんでな。どうにも聖遺物の力は他の聖遺物を用いる事である程度制御が可能らしい―――昔マリウスが聖杯の力を暴走させかけた時にツェペシュ派が隠し持ってた聖釘(せいてい)の欠片で場を凌いだようだ」

 

「・・・よくマリウスの野郎はそんな情報知ってましたね?リゼヴィムにいいように出し抜かれてたようにしか見えなかったんですけど」

 

イッセーが腑に落ちないといった感じだ。自称聖杯研究の第一人者(笑)だったからな

 

「吸血鬼にとって最大の天敵は十字教だからな。敵について識る為に王族の間で長年密かに研究を続けてたようだ。要はマリウスの手柄とかじゃねぇって訳だ」

 

ああ、やはりマリウスはどこまでも小物を脱却できない奴なんだな・・・俺と黒歌は出会ってすらいねぇんだけどさ

 

「聖釘の欠片はヴァチカンに渡しといたが大喜びだったぜ。まぁ聖遺物は過去の大戦から世界中に散らばって行方知れずだったからな。寧ろ欠片だけでもよく残ってたくらいだ―――案外吸血鬼達みたいに意外な奴らがコッソリ持ってたりするのかも知れないな」

 

欠片で大喜びなら俺の渡した知恵の実とか実は天界で天使たちが狂喜乱舞してたりしたのかもな。信心深い訳じゃないから、いまいちピンと来ないけど

 

「私達はどのように戦力を分けるべきかしら?心情的にはやはりこの国を守りたいのだけれど」

 

リアス先輩が希望を述べるとほぼ同時に会議室の扉が開いてヴァーリ達が入って来た

 

「それならば、ヨーロッパ方面は俺達が担当しよう」

 

開口一番そう言ったヴァーリにアザゼル先生もニヤリと笑みを向ける

 

「やっと来たか、ヴァーリ。会議の通信はそっちにも開いていたから状況は理解しているな?」

 

「ああ、俺は別にこの国自体にはそれほど思い入れがある訳ではないからな。リアス・グレモリーたちには気合の入る方を担当して貰ったら良いだろう」

 

確かにね。特に神器使いなんかは気合の入り具合でもろに影響が出るしな・・・俺以外

 

「まっ、そうだな。だがヴァーリチームだけだと流石につり合いが取れん。ヨーロッパ方面には俺と刃狗(スラッシュ・ドッグ)のチームも同行しよう・・・悪いな、鳶雄」

 

「いえ、それがサポートの役割ですからね。それに今回は俺も暴れさせてもらいますから」

 

アザゼル先生が俺達と同じ日本出身の鳶雄さんを戦力の観点から祖国の防衛に振り分けられなかった事に小さく謝るが鳶雄さんは特に気にしてないようだ

 

これは祖国への思い入れが薄いとかじゃなくて、単純に自分のやるべき事をしっかり見据えている大人の対応って感じだな

 

「フッ、久々にアンタの本気が見られるのか・・・出来ればアンタと再戦する時にこそアレを見たかったものだがな」

 

ヴァーリはそんな鳶雄さんが何時もの裏方ではなくて前線で暴れると聴いて嬉しそうに戦意を高めている・・・会議の場で戦意を高めんなよ

 

「ははっ、ヴァーリも格好つけのバトルマニアっぷりは何時治るのかな?―――実はそんなキミに逢いたいという人を連れてきている。キミの手綱は彼女に握って貰うとしようか」

 

「! まさか!?連れて来てるのか!!?」

 

鳶雄さんの言動からその『彼女』の正体に勘づいたらしいヴァーリが驚愕の表情を浮かべる

 

そしてさっきヴァレリーさんが出てきた控室の扉から今度は魔法使いの格好をした金髪のおっとり系美人が現れた

 

「ヴァーくん。また我が儘を言っているのですね?」

 

「ラ、ラヴィニア・・・ッ!どうして此処に!?」

 

ヴァーリの奴、彼女にヴァーくんなんて呼ばれてるのか

 

更には完全に(ども)った上で狼狽してるし、何時ものクールキャラが見る影もない

 

そんなヴァーリの様子にアザゼル先生とヴァーリチームに刃狗(スラッシュ・ドッグ)のチームの人々はニヤニヤしながら様子を窺っている

 

「メフィスト会長とアザゼル元総督から表に出て良いとお許しが出たのです。また昔みたいに一緒に戦えるのですよ、ヴァーくん」

 

「い、いや・・・しかしだな・・・」

 

「ヴァーくん。神の子を見張る者(グリゴリ)を裏切って勝手におじいさんを探しに行った挙句、いろんな人に迷惑を掛けたのです。そういうのは良くないのです。メッ!なのですよ。今回はきちんと皆と一緒に戦うのです―――いいですね?」

 

ヴァーリは近づいて来た彼女になす術なく頭を胸に抱き寄せられた

 

あのヴァーリがメッ!とかされているのはちょっと面白い

 

「ルシファードラゴンのルシドラ先生は格好つけが未だに治らないんだな」

 

「でもこれがヴァーくんっぽくて良いわね♪」

 

刃狗(スラッシュ・ドッグ)のチームのお二人にもそんな事を言われている始末だ

 

色々テロったりしてたヴァーリだけど、昔馴染みの人達からしたら本当に『やんちゃ』の一言で大体納得してしまう感じだったんだな

 

原作に鳶雄さん達を中心に描いた番外編が有るってのは知ってたけど、読んだ事は無いんだよなぁ・・・まぁこの人達の様子からしてヴァーリは子供の頃から今と然程変わらない感じに格好つけてたってのは分かったけどな

 

「カッカッカ♪ヴァーリは『氷姫』の気配を感じると逃げてばっかだったからな。だけど今回は油断に加えて完全に気配を殺されてたって訳だ」

 

「彼女はラヴィニア・レーニと言ってね。灰色の魔術師(グラウ・ツアオベラー)のメフィスト会長の秘蔵っ子なんだよ。昔から世話になってて俺もヴァーリも頭が上がらないのさ。ヴァーリの姉役と言った方が伝わり易いかな?」

 

うん。当のヴァーリはラヴィニアさんに慈愛の表情の下、全力で構いたおされているな―――雰囲気としてはアーシアさんに近いものを感じるけど、俺の直感があの人はアーシアさんより数段上の天然系だと示している

 

成程、あれではヴァーリがどれだけクールぶったところでラヴィニアさんのポアポアとした雰囲気に全て押し流されてしまうのだろう

 

そして灰色の魔術師(グラウ・ツアオベラー)の『氷姫』と言えば神滅具(ロンギヌス)の一つである『永遠の氷姫(アブソリュート・ディマイズ)』の所持者だ

 

神滅具(ロンギヌス)の力だけではなく、魔法使いとしても一流の実力者らしい

 

「さて、最後に聖杯がアポプスとアジ・ダハーカの何方が持っているかだが、それは調査中だ。最悪ギャスパーとヴァレリーには日本とヨーロッパの両方に出向いてもらう事になるかも知れん・・・が、まぁ最初は日本の方で後方待機しておけ。如何しても特定出来ない時には運が悪けりゃ2体のトライヘキサの下へ邪龍の群れを突破して近づいて貰う事になる」

 

「大丈夫です。邪龍なんかにヴァレリーには指一本触れさせません!」

 

ギャスパーはヴァレリーさんが絡むとマジで途端に漢になるな

 

ただ女装をして見た目美少女なのとヴァレリーさんに「ふふふ♪ギャスパー格好良いわ」と言われつつ頭を"よしよし"と撫でられてるのが締まらないけど

 

て云うかもしかしなくともヴァレリーさんとラヴィニアさんって似た者同士なんじゃ?あんな風に頭を撫でてる光景をついさっき見たばかりな気がするぞ

 

「既に先行している部隊がトライヘキサと邪龍達を相手に遅滞戦術で時間を稼いでいる。とはいえあまり時間もないからな。一時間で全ての準備を整えてくれ。その後は転移の間からトライヘキサの進路上に展開される奴らを迎え撃つ為の大部隊の居る場所に送る事になる」

 

時間が無いって云うのは先行してる部隊が力尽きるという意味なのか『命』が尽きるという意味なのかは訊かない方が良いのかもな。なにしろ相手が相手だし

 

「今回の作戦では聖杯奪取の為、私とアザゼル先生たちで練り上げたトライヘキサ専用の捕縛陣を全てのトライヘキサに向かって同時に展開させる予定です。制限時間付きですがほぼ確実にあの獣の動きを止められるでしょう。本命は聖杯を持っていると思われる日本とヨーロッパ・・・アポプスとアジ・ダハーカのいるトライヘキサですが、下手に一部だけ止めると他のトライヘキサがどう動くか判らない為、全てを同時に止めます」

 

ロスヴァイセさんが聖杯を取り戻す為の作戦を伝えてくれた

 

トライヘキサを止めて完全即死広範囲攻撃(ブレス)を使えなくしてからギャスパー達が突っ込む訳だ

 

「ただ、その捕縛結界は一回こっきりの使い捨て方式だ。一度使えばトライヘキサに術に対する耐性が付与されるはずだからな。その上、その術はトライヘキサ専用だから量産型邪龍や偽赤龍帝には効果が無い。だが喜べ、トライヘキサを止める為の捕縛結界は違う種類の物をなんとか二つ用意出来た・・・お陰で最近寝不足で目がシパシパするぜ」

 

「―――私も少し肌荒れが気になってます」

 

へぇ!捕縛結界は二つ用意出来たのは余裕が有って良い事だな。二人・・・と云うか研究者の人達は後一ヵ月で復活するって納期がハッキリしてる分ここ最近は締め切りに追われてたんだろうな―――それとロスヴァイセさんはまだ十代なんだからそれくらいじゃ肌にダメージ残りませんよ

 

「有間君。女性の肌ケアを舐めないで下さい!テストに出しますよ!」

 

「はい!すみませんでした!!」

 

思わず席から立ちあがって謝ってしまった

 

だからなんでこの世界の住人は表も裏も関係なく読心術師がちらほら紛れてるんだよ?

 

そんなコントをしているとアーサーが手を挙げて質問をする

 

「では、停止させたトライヘキサはその後どうするのです?捕縛結界に関しては制限時間付きだと言っていましたが、倒しきれるまで止めたままに出来るはずも無いのでしょう?」

 

まともにやったら神々がボコボコにしまくっても一万年は掛かるみたいだからな

 

主に耐性を上げる事に特化しているらしい聖杯による能力上昇に加え、食べたら不死身になるとさえ言われる『生命の実』で今のトライヘキサは恐らくだが全盛期のオーフィスやグレートレッドよりも総合的な能力値は上だろう

 

「そこは俺達にとっておきの作戦が有る。それも二つな―――その為の二種類の捕縛結界だ。まだトップ陣やその他一部の者にしか知らされてない作戦だ。まっ、安心しろ。なにせ作戦の片方の立案はイッキだからな」

 

その言葉に皆の視線が俺に集まる

 

「イッキが!?・・・そっか、それなら大丈夫だな」

 

「うん。イッキ君が考えた事なら問題ないだろうね」

 

「寧ろ今からトライヘキサが可哀そうになる未来しか見えないですぅぅぅ!」

 

「―――お前らの信頼にちょっと俺泣きそうだぞ?悪い意味でな!」

 

戦いの前に緊張が解れるのは良い事かも知れんが、なにか釈然としないんだが?

 

「まぁ私達もここ一ヵ月は合間を縫って下準備を手伝いまくったからにゃ~♪」

 

「・・・私達が必要有ったのかと問われると微妙ですけどね」

 

「いえ!やはりお二人の仙術は必須だったと思いますわ!」

 

確かに下準備に追われる毎日だったよ。その辺はアザゼル先生たちと一緒だな

 

勝負なんてのは布石を置きまくって実際に鼻先付き合わせた時には終わってるなんて言うくらいだし、裏で準備してる俺達は眠気覚ましの栄養ドリンクを一気飲みしながら頑張ってましたよ

 

・・・俺、この戦いが終わったら慰安旅行に行くんだ・・・多分・・・

 

 

 

会議が終わってから解散して各々最低限の準備を整える事になり、トレーニングルームでストレッチしたり、ソファーでお茶を飲んだり本を読んだりと思い思いに過ごした

 

俺も一旦は自分の家に戻って少し気になったのでリビングのテレビを点けるとどのチャンネルも緊急の特報が流れている・・・冥界とかの裏のチャンネルじゃなくて人間界のチャンネルでだ

 

どこぞの勇気なのか蛮勇なのか判らないテレビ局のカメラを積んだヘリが撮影したのか、海の上を飛んでいるトライヘキサと大量の邪龍の姿を遠目に映している

 

先行してるという部隊との戦闘で幾つも爆発が起きているから流石に近づくような真似はしなかったようだけど、思いっきり表の電波に乗っちゃってるな

 

ライブ映像ではないようだから流石に今は人避けの結界とかが張られているのだろうが、初期の映像はバッチリ残ったようだ

 

ぶっちゃけ量産型の邪龍が空を埋め尽くしている為、遠くからの映像越しだと大量の蠅がブンブンと飛び回りまくっているようにも見えて気持ち悪い

 

他のチャンネルに切り替えると丁度会見中だ

 

≪官房長官!日本とヨーロッパに現れたあの謎の生物の正体は一体なんなのですか!?≫

 

≪目下調査中です≫

 

≪判らないで済ませて良い問題ではないでしょう!既に我が国の島が一つ無くなり、余波の高波で沿岸部にも被害が出ているのですよ!あれは他国の開発した生物兵器なのではないですか!?≫

 

≪それも調査中です。あの正体不明(アンノウン)の進路上の市民たちへの避難誘導を既に開始しています≫

 

≪あの場では幾度も爆発と戦闘の様子が映し出されていました。アレは我が国の秘密の軍隊ではないのですか!これは国際条約違反ですよ!どう責任を取るお積りですか!『戦争をしない国』というのは偽りだったのですか!―――それに今自衛隊は何をしているのですか!我が国が攻撃されているのですよ!ミサイルでもなんでも打ち込むべきでしょう!!≫

 

≪自衛隊は沿岸部に集中して展開させています。正体不明(アンノウン)を本土に上げる事を阻止する為に全力を尽くす所存です≫

 

うわっはぁ~・・・官房長官の人可哀そう

 

流石は政府の広報担当とも言われる役職だわ。官房長官クラスなら裏との繋がりとかも有るかも知れないけど、事情を知ってても知らなくても公表出来る訳ないじゃん

 

マスコミの最後の人とか戦争を批難したいのか推奨したいのかどっちなんだよ?

 

まぁでもこの状態でも自衛隊が戦闘機で緊急出動(スクランブル)とかしてない以上はそっちには手が回ってるみたいだな

 

仮にも味方から背後からミサイルをブッパされるって事は無さそうだ

 

次に冥界の方にチャンネルを合わせてみるとそこにはサーゼクスさんが映っているところだった

 

≪冥界の皆さん。現在、冥界全土、堕天使領も含めてこの世界に未曽有の危機が訪れています≫

 

テレビの向こうのサーゼクスさんはリゼヴィムと邪龍、そしてトライヘキサの情報を順序だてて分かり易く国民に伝えている

 

≪ご覧頂いているのは黙示録に記されし伝説の怪物、トライヘキサであり・・・≫

 

サーゼクスさんの居るスタジオの後ろにトライヘキサの映像が流れ、あらゆる種族や神々ですらも壮絶な戦いを繰り広げている様子が放映される

 

人間界よりも寧ろ神話世界の方が戦力を展開しやすい為か既に文字通りに神話規模の戦闘が繰り広げられているようで、地上は一面焦土と化している

 

神々の一撃で量産型の邪龍程度なら数千単位で灰になろうともアポプスとアジ・ダハーカたちもこの日の為にせっせと邪龍を増やしてたのか一向に減った感じがしない

 

ロスヴァイセさんの編み出した量産型邪龍の弱体化結界も有るはずだが、広く分布している邪龍達を一挙に閉じ込めようとすればトライヘキサも一緒に捕らえる事になってしまうから使いづらいのだろう―――トライヘキサに結界を掛けたら一瞬で破られるし、逆に小規模な結界を展開しても意味が無いからね

 

この間のアグレアスのロスヴァイセさんのように個人で戦術に盛り込むなら良いけど、基本はトライヘキサをどうにかした後の掃討戦くらいにしか使えないって訳だ

 

≪この映像のように私達悪魔だけが戦っているのではありません。同盟関係にある堕天使、天使、各神話の神々や伝説の戦士たちが各地で立ち上がっております。トライヘキサと邪龍たちの戦力は膨大です。これは数か月前の魔獣騒動どころか過去の三大勢力の戦争すらも上回る規模となるでしょう。しかしながら皆さん。ご心配なく。我々には希望の星がある≫

 

そう言ってトライヘキサの映っていた画面が今度はイッセーやリアス先輩たちを始めとしたメンバーを映していく。最後の方には俺やデュリオさんみたいな悪魔じゃ無い者も表示されたな

 

≪そう、テロ対策組織『D×D』をはじめ、我が悪魔世界が誇る勇猛な戦士達も冥界とそこに住む民を守る為、そして世界を守る為に命を賭して戦いに応じるでしょう≫

 

するとサーゼクスさんの居るスタジオの映像の脇からセラフォルーさんが横チェキを決めながら現れた

 

≪そうよ、皆!私も前線に立っちゃうんだから心配しないでね☆≫

 

・・・この状況下で横チェキ出来るその精神力には驚嘆するわ

 

サーゼクスさんもそれを見てフッと笑ってから力強い眼差しでカメラを・・・いや、それを通して国民に視線を向けてその覚悟を口にする

 

≪セラフォルーと同じく、私も前線に立ちます。この私の命を賭して、必ず冥界と国民の皆さんを守ってみせる!≫

 

う~ん。流石に超常の存在を知ってるか知らないかで報道の内容が変わるもんだな

 

表と裏の情報が切り離されてるとこういう時に困るよな・・・まぁガチの世界滅亡レベルの事態が早々起きても困るんだけどさ

 

「冥界などは兎も角、人間界はどこもかしこも大混乱ですわね。流石にこれほどの規模で超常の存在が一般の方々に知れ渡ってしまったなら記憶の改ざんにも無理が生じてしまいますわ」

 

「―――それでも、今は隠すしかないと思う」

 

「白音の言う通りで、暫くは世界規模の記憶改ざん部隊みたいなのを組織する必要が有るかもな・・・表と裏が交わる事が絶対にダメだとは言わないけど、今回のようなバレ方はアウトだろう。神々とかが本当に居るっていきなり世界に知れ渡ったら宗教戦争が勝手に勃発するぞ」

 

我が国の神様サイコー!異教徒は死ね!って当の神様ほっぽり出して人間たちがミサイルと鉛玉を撃ち合う姿が見える見える

 

何時の日にか裏の事をバラす時が仮に来るとしても、少なくともそれは今じゃない

 

「まっ、どっちにしろそれは私達の関与するところじゃないのにゃ~」

 

「全く!幾ら何でも適当過ぎますわよ、黒歌さん!」

 

レイヴェルがプリプリと怒っているけど今は黒歌に同意かな?俺達は基本戦闘職だから実際に動く訳じゃないし、精々戦後に裏方で奔走する人達に労いの品でも届けに行く程度だろう

 

「まぁまぁレイヴェルも戦いの直前で気が張るのも解るけど、今はトライヘキサに集中しようか。こんな時の為に沢山準備もしてきたんだし」

 

そう言って俺は懐からビー玉くらいの丸い玉を取り出した

 

アザゼル先生に頼んで作って貰った神の子を見張る者(グリゴリ)謹製の秘密兵器だ。これの効果を高める為に今日まで裏でゴソゴソしてたんだしな

 

そうしていると映像付きの通信用魔法陣が展開された。両親に裏の事がバレたので家の中ではこういった通信も普通に繋がるようになっている―――通信先はライザーだ

 

≪よぉ有間一輝。そちらはまだ出立してないと聴いてな。連絡を入れさせて貰ったぞ≫

 

「お兄様!?まさかお兄様も前線へ赴くのですか!?」

 

≪・・・レイヴェルもそこに居たのか。というかお前は俺の事をなんだと思ってるんだ?冥界の危機に立ち上がらなくては我らフェニックス家の名折。幾ら伝説の魔獣が相手と云えども不死鳥が死を恐れて巣に引きこもるなど滑稽だろう≫

 

格好良い事言うように為っちゃって

 

このまま成長して行けばツンデレ系ちょい悪小僧みたいなどこか憎めないキャラとして大成する日も近いかもな

 

≪おいちょっと待て有間一輝。何故お前が最近兄達が俺に向けて来るような目つきで見るんだ?≫

 

大丈夫。馬鹿にしてる訳じゃないし、寧ろその逆だから気にすんな

 

≪ッチ、時間もないから追及は後で良い―――いいか、これだけは言っておくぞ!レイヴェルを泣かすよう真似だけはするんじゃないぞ!そうなれば俺は冥府まで赴いて貴様の魂を燃やし尽くしに行くからな!≫

 

おお!ライザーが本当に良いお兄ちゃんしてるな・・・いや、わりと出会った時から兄としての姿は問題無かったか

 

それにしてもレイヴェルを泣かすなって言われてもな

 

「それって嬉し涙も禁止か?」

 

涙が全部ダメって言われると困るんだけど・・・

 

≪揚げ足を取るな!・・・それならば許してやる。兎に角レイヴェルに悲しみの涙だけは流させるなよ!分かったな!≫

 

最後に俺に指を突きつけてからライザーの通信は切れた

 

それを見たレイヴェルは困ったように笑う

 

「全く、お兄様ったら・・・」

 

その呟きを聞いた白音がクスクスと笑う

 

「レイヴェル、リアス元部長と同じ事言ってる」

 

「呆れたようでいて嬉しそうな反応もそっくりだったわね。今度あのスイッチと兄トークでもしたら盛り上がるんじゃないかにゃ?」

 

「もう!白音も黒歌さんも揶揄わないで下さいまし!ライザーお兄様と魔王たるサーゼクス様を一緒の議題に乗せて話してたら後半になるにつれて惨めになりますわよ」

 

そうかな?サーゼクスさんってキャラが濃いからリアス先輩も愚痴トークの話題は尽きないとも思うんだがな。これが『お兄様の自慢大会(レイヴェルはライザー限定)』とかだとレイヴェルがフルボッコにされる未来しか見えないけどな!

 

それからイッセーの家の集合時間となるまでに3人とイチャついて過ごし、出かける前には帰って来た両親にも軽く手を振って告げる

 

「じゃあちょっと世界を救ってくる」

 

無駄にキザなセリフを吐いておく

 

そうだ。折角なんの因果かこの世界に来たんだし、世界の一つくらいは救わないとな

 

なんて格好つけたところでメタい事も言えば各勢力のトップ陣がトライヘキサと一万年隔離結界で閉じこもったら残される俺達の仕事量がヤバそうって理由も有るんだけど・・・どっかの外伝であったけどイッセーは200年先まで過密スケジュールだしイリナさんは疲れたOLのような生活をしてるらしい

 

普通に嫌だよ?そんなのは―――だから今後の日常も含めて守るにはここで完全勝利を決め込まないとな!

 

「・・・イッキ先輩が変なやる気を出してる気がします」

 

「・・・ええ、どこか庶民的な匂いがしますわ」

 

「にゃはは~、イッキはどうしても勇者には為れない人材よねぇ」

 

別にいいじゃん!平穏な日常の為に戦うとか勇者っぽいじゃん!

 

そんな馬鹿話をしながらイッセーの家に向かう

 

地下の転移魔法陣の部屋でアザゼル先生が追加の連絡事項を告げる

 

「聖杯の反応を特定した。聖杯は日本側・・・アポプスが所持している」

 

聖杯の情報に皆の表情が引き締まる

 

「俺達は予定通り、二手に別れる。なぁに、この業界は死ななきゃ安いもんだ。だから死ぬんじゃねぇぞ、お前たち。それでは各自持ち場についてくれ!」

 

「『了解!』」

 

そうして俺達は転移の光に包まれていった

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