転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第三話 ドライグ、そしてはぐれ悪魔です!

入部届を貰った次の日の放課後

 

「なぁにぃ~!?イッセー!イッキ!貴様らこの学園の二大お姉様に加えて無敵のロリフェイスのマスコットキャラまでいる美少女集団、オカルト研究部に入部するだと~!!」

 

「何故だ!黒歌さんがいるイッキは元々裏切り者だったがイッセーまでもが俺たちを裏切ると言うのか!?何があったというのだ!?」

 

松田と元浜が涙ながらに詰め寄ってくるのに対しイッセーは「フッ!お前らおっぱいに埋もれた事はあるか?」と無駄にキメ顔を晒して二人に問いかける

 

「「なっ!!」」

 

そのまま二人は石化してしまったようだ

 

「ほらイッセー、リアス先輩に呼ばれてるんだしさっさと行くぞ」

 

「おう!」

 

そうして二人で教室を出ていく―――途中クラスの女子から『カップリングが別れた』『イッセー×イッキ』『イッキ×イッセー』『松田×元浜』『元浜×松田』などと聞こえてきた気がするが気のせいである。気のせいと言ったら気のせいなのである

 

旧校舎に歩いていく途中でイッセーが「松田と元浜、本当に夕麻ちゃんの事覚えていなかったな」と複雑そうな顔で小さく呟いた

 

「言ったろ?悪魔にしろ堕天使にしろ人外は事が済んだら自分の活動の痕跡を消すものだって」

 

「そりゃ昨日の帰り際にお前に言われた時は信じられなかったけど、ああして綺麗さっぱり忘れてる所を実際に目にするとな・・・」

 

「慣れろよ、今はお前も悪魔なんだから」

 

「・・・分かってるよ」

 

二人で話している内に部室の前にたどり着きそのまま中に入る

 

「失礼しま~す」

 

「入部届持ってきました」

 

既に全員揃ってるみたいだな

 

「ええ、ならこっちに渡して頂戴」

 

そして入部届をリアス先輩の座っていた机に提出し、リアス先輩がサインを書き込む

 

「これで晴れて二人ともオカルト研究部の部員よ、歓迎するわね」

 

ついにこれでオカルト研究部か・・・昨日の夜は黒歌に『ふ~ん、白音と同じ部活に入るんだ』と言われながらほっぺを抓られてしまったけど―――姉としてか女性としてか、アレはどっちの意味での嫉妬だったんだろう?個人的には後者であって欲しいものだ

 

リアス先輩の言葉を皮切りに朱乃先輩達に入部祝いの挨拶をされた後、イッセーが「実は皆に紹介したい奴がいるんです」と言ってきた・・・なに?

 

「紹介?一体誰の事かしら?」

 

リアス先輩も心底不思議そうにしている。そしてイッセーが左腕を突き出しながら「『ドライグ』、頼むぜ!」と言いながら手の甲に緑色の宝玉を浮かび上がらせ、そこから音声が発せられた

 

『ハァ、仲間に自己紹介しろなどと言う宿主はお前が初めてだ。俺の名は赤龍帝ドライグ、相棒共々宜しく頼む』

 

「「「「「!!!!!」」」」」

 

流石にコレは驚いたな、昨日の今日でもうドライグと会話出来ているのか

 

「・・・ええ宜しく、私がイッセーの主であるリアス・グレモリーよ。まさかかの赤龍帝とこんな風に挨拶を交わすなんてね・・・でも、そうして喋れるなら何故昨日はイッセーの問いかけに黙っていたの?」

 

『黙っていた訳では無い。相棒が神器を発現させた時点で俺の意識は目覚めていた。だが、相棒が弱すぎたために俺の声が届かなかっただけの事だ』

 

「では、今こうして話せているのは悪魔に転生したからかしら?」

 

『ああ、その通りだ。元々人間の時でも神器は目覚めかけていたからな』

 

成程、だがドライグの意識が目覚めるというのも重要な意味があるしな

 

「良かったじゃないかイッセー。昨日聞こうとしてた譲渡の力については聞けたのか?」

 

元々はその為に声掛けしたんだしよ

 

「いや、昨日は夜も遅かったしな。ドライグともう一匹が大昔に暴れまくって最後には封印されたって話くらいしか聞いてないな」

 

贈り物(ギフト)の力か、相棒のスペックは足りているから少しの切っ掛けさえあれば発現すると思うぞ?もっと俺を使いこなしてみせる事だ』

 

「使いこなすって、いきなり言われてもな・・・」

 

困ってるようだし、少しアドバイスするか・・・

 

「イッセー、神器を使いこなすのに重要な要素は三つあるんだ」

 

「何だいきなり?それに三つ?」

 

「ああ、一つ目は想いの強さ、二つ目は宿主のスペック、そして三つめは神器との対話だ」

 

「神器との対話?」

 

「ああ、親和性と言い換えてもいいのかもしれないな。それらが高い程、神器はより高い力を発揮するんだ」

 

だからドライグとは仲良くしろよ?例えドライグが『かわいそう』になろうとも!!

 

「ふ~ん、アレ?でもよ!龍の手(トゥワイス・クリティカル)って力を2倍にする神器だったよな?それ以上の力なんて発動できるものなのか?」

 

おお!そこに気づくか!

 

「勿論だ。俺も仙術を教えてくれた方に同じ質問をぶつけた事があってな。その場合確かに2倍以上の力は出せないけど、能力発動までの時間や持続性、肉体にかかる負荷の軽減とか細かい所ではかなり違いが出るらしいぞ」

 

流石年の功、参曲(まがり)様は中々に詳しかったよ

 

俺が色々と知っていても可笑しく無いように参曲(まがり)様の授業でもこれ幸いとばかりに突っ込んだ質問をしたからな―――答えられない質問をしたら次回の修行の時までに調べてくれたりしたしな・・・マジであの方には頭が上がらないかもしれない

 

俺の【偽り写し記す万象(ヴェルグ・アヴェスター)】も瞑想の一環として神器を持ったままとか膝の上に置いて座禅したりして少しずつだが右歯噛咬(ザリチェ)左歯噛咬(タルウィ)に気を巡らせ易くなったり【神性:E】が【神性:E+】になったりといった変化が起きている・・・微妙な変化だが俺は堕天使式の鉄球など受けたくは無い!そういうのは匙君にどうぞ!

 

まぁだが神器に親しみを感じるためには会話ができるというのはそれだけ大きいのだ。勿論神器に封じられている奴とそりが合わないと悲惨な事になるだろうが・・・

 

「へぇ~、まぁいいさ!改めて宜しくな!ドライグ!」

 

『ああ、偶にはこういう関係もいいのかもしれん。宜しく頼むぞ相棒!』

 

 

 

 

 

 

あれから十日ほどたった。イッセーはリアス先輩に『上級悪魔になれば自分のハーレムも作れる』と言う悪魔の囁きの元、今日も元気にチャリでチラシ配りに励んでいる

 

オカルト研究部としては一度池袋に赴き『首無しのデュラハン』にインタビューしに行った―――最近のデュラハンってバイクに乗ってるんだね。その後直ぐに無点灯運転で警察に追い回されてたけど・・・

 

後リアス先輩の呼び方はリアス部長に変更になった―――なにやら拘りがあるようだ

 

「兵藤一誠、ただいま帰りました~」

 

「ご苦労様一誠、早速だけどそろそろ貴方にも契約を取ってきて欲しいのよ」

 

おお!ついにか!

 

「え!?ついに俺もチラシ配りから卒業ですか!?」

 

「ええ、元々こういう仕事があるという事を知ってもらうためにやってる事だからね。もういいでしょう」

 

「やった!ついに俺にも契約が!」

 

「丁度今小猫の召喚が2件重なってしまってね。1件を貴方にお願いしたいの―――召喚時のマニュアルは頭に入ってるわね?」

 

「はい!大丈夫です!」

 

「よろしい、朱乃!」

 

「はい部長」

 

朱乃先輩が答えると同時に床に転移用の魔法陣が現れ、イッセーが魔法陣の真ん中に立つ

 

「では部長!行ってきます!」

 

その掛け声と同時に魔法陣が光を増し・・・何も起こらなかった

 

マジか・・・『兵士』の駒の封印は原作よりも緩いからいけると思ったんだが、どれだけ魔力の才能がないんだよ

 

するとリアス部長が困ったように苦笑しながら言う

 

「どうやらあなたの魔力が低すぎて転移出来ないようね。でも依頼人を待たせる訳にもいかないわ。前代未聞だけど依頼人の所までは足で行ってちょうだい」

 

「・・・無様」

 

辛辣だな。小猫ちゃん

 

「そ・・・そんな・・・追い返されませんか?俺なら悪魔がチャイム鳴らしてきたら『帰れ!』って言うかもしれませんよ!?」

 

まぁ確かに、でも依頼人を待たせちゃいけないのも確かだろう

 

「リアス部長、ちょっといいですか?これってイッセーが赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使えば魔力の不足を補えるんじゃないですか?」

 

チャリで召喚されるイッセーも見てみたいが、正直誰も得しない案件だしな

 

「そうね、それは盲点だったわ。ではイッセー、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)で力を高めて改めて魔法陣で転移しなさい」

 

「はい!来い!ドライグ!」

 

『Boost!』

 

「朱乃!」

 

「はい部長!」

 

朱乃先輩が再度魔法陣を展開し、無事イッセーは依頼人のもとに転移していった

 

・・・契約は取れなかったようだが

 

 

 

 

 

 

[イッセー side]

 

 

ハァ、先日はまずったな。召喚してくれた森沢さんに見た瞬間「チェンジ!」と言われたのは仕方ないにしても、その後夜遅くまで只管ドラグ・ソボールについて語って結局契約は取れずじまい

 

・・・森沢さんとは意気投合したけど成功と言うには程遠いからな

 

森沢さんにも「何か特技は?」と聞かれて何も答えられなかったし、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使えば力持ちにはなれるだろうけどそれだけじゃな

 

そんな事を考えながらも今日は休日、マニアックな物まで揃えている隠れた名店で『紳士の円盤』の予約を入れたりしながらも町を散策していく、すると

 

「あう!いたたー!何で私は何も無い所で転んでしまうんでしょうか?」

 

そんな声が聞こえてきてそちら目を向けると輝く純白のパンツが見えた。

 

そして倒れている女の子がこちら側に向き直る。

 

おお!金髪美少女シスター!それに足の間からまだまだパンツがよく見える!閃光と聖光の協奏曲《ブレイザー・シャイニング・オア・ホーリーライト・コンチェルト》とでも名付けようか!っく!悪魔の俺にはきつ過ぎて目が焼かれそうだぜ!

 

『何を言ってるのだ相棒』

 

ドライグのツッコミが入るが、目の前には女の子が倒れているのだという事を思い出し、近づきながら声をかける

 

「あの!大丈夫っすか?」

 

そう言いつつ声をかけると「はい、有難うございます」と俺の差し伸べた手を握ってくれた。こんな美少女と手を握ることができるなんて、今日はいい日だ!

 

すると強い風が吹いてその子のベールが飛ばされてしまい、咄嗟にキャッチする

 

ベールの下から現れたのはブロンドでエメラルドグリーンの瞳の美少女!改めて見るがやはり可愛い!理想的だと言っていいだろう!

 

そうして思わず見惚れていると「あ・・・あの」と声をかけてきた。しまったな、ベールを握ったままだった。

 

「ああ、御免!はいコレ!」

 

「いえ、有難うございますぅ」

 

そう言ってベールを被り直す―――それにしてもデカい荷物だな

 

「かなりの荷物だけど旅行?それとも引っ越し?」

 

「はい、実は私今日この町の教会に赴任してきまして―――ただ道に迷ってしまい道を聞こうにもまだ日本語に不慣れなもので・・・こうしてちゃんと会話できる方がいて少しホッとしました。」

 

そうか・・・俺には彼女は日本語で話してるように聞こえるけどそうじゃないんだよな

 

悪魔になれば様々な人間と契約する関係上、言語限定とはいえ世界中の言葉を話せるようになるんだよな―――悪魔に転生して素直に素晴らしいと思った力だよ

 

「良かったら俺が教会まで案内しようか?今は暇だし、この町の教会は一つのはずだから多分あそこだと思うし・・・」

 

「本当ですか?ああ!こうして優しい方にお会いできたのも主のお導きなんですね」

 

そう言って彼女は祈りを捧げる―――う~ん、悪魔と出会ったのは主のお陰では無いと思うんだけど・・・まぁいいか

 

そうして協会に向かう途中でとある公園に差し掛かった時、小さな男の子が泣いてるのが見えた。

 

どうやら転んで膝を擦りむいてしまったらしく、血が流れている

 

するとシスターさんがその子のもとに駆け寄って「大丈夫ですか?男の子がこれくらいで泣いてはいけませんよ?」そう言いながら掌からどこか優しい感じのする緑の光を発し、怪我に当てる

 

するとみるみる内に怪我が治ってしまった。

 

『ドライグ、今のって・・・』

 

心の中でドライグに語り掛ける

 

『ああ、神器だな。回復系の神器は珍しい部類に入るが、シスターが持つにはピッタリともいえる神器だな』

 

『確かに、まだ少し話しただけだがこの子が優しくて信心深いのは伝わってくるしな』

 

「ありがとう!お姉ちゃん!」

 

そう言って男の子は走り去って行ってしまった。日本語が苦手とは言っていたが「ありがとう」は分かったみたいで嬉しそうにその子に手を振っていた

 

そしてその公園を後にして再び教会に向けて歩く

 

「やっぱり、驚きましたよね?」

 

彼女が問いかけてきた

 

「確かに驚いたけど、でも優しい力なんだなって思ったよ」

 

「はい、神様が下さった素晴らしい力なんです」

 

俺はこの時彼女が何処か寂しげな表情をしていた理由を聞くことができなかった。

 

 

 

 

 

少し町から離れたところに教会が見えてきたがソコを見た途端体に悪寒が走った。

 

「あの、どうかしましたか?」

 

彼女に問われて「ハッ!」となり慌てて取り繕う

 

「ゴメン、何でもないよ、それよりあそこに見えるのがこの町の教会だよ」

 

小さいときは近所の男の子と一緒に何度か行ったりしたっけ、その子が引っ越してから行かなくなったけど・・・悪魔となった今じゃますます行けないな

 

「わぁ!良かったですぅ。本当に助かりました。あの、宜しければお礼がしたいので一緒に教会に来ていただけませんか?と言ってもお茶くらいしか出せませんが・・・」

 

ブロンド美少女からのお茶のお誘い!これはもう行くしか・・・

 

『やめておいた方がいい』

 

『なんでだよドライグ!美少女からのお誘いなんだぞ!』

 

『お前・・・先ほど感じた悪寒をもう忘れたのか?あそこは教会、悪魔のお前にとっては敵地だ。不用意に踏み込めば殺されても文句は言えんぞ』

 

そうだった!畜生、諦めるしかないのか!?

 

「ゴメン、実はさっき一つ用を思い出してさ。お礼はまた今度って事でいいかな?」

 

「そうですか・・・分かりました。あの!私、アーシア・アルジェントと言います。アーシアと呼んでください!」

 

内心泣きながらお茶のお誘いを断ると少し残念そうな顔をしながらも直ぐに笑顔に変わって自己紹介してくれた

 

「そっか、俺は兵藤一誠、イッセーって呼んでくれ。じゃあ今日は帰るけどまた今度な」

 

「はい!イッセーさん!またお会いしましょう!」

 

そうしてアーシアは俺の姿が見えなくなるまで手を振ってくれた・・・本当にいい子なんだな

 

悪魔とかそういうのは抜きにしてお近づきになりたいもんだぜ・・・

 

 

 

 

[イッセー side out]

 

 

「二度と教会に近づいてはダメよ」

 

イッセーがリアス部長に説教をされている。という事はアーシアが来たのか堕天使が4名この町に居るのは気配で分かってるけど流石に会った事も無い上に神器以外は基本は普通の彼女の事までは分からなかったからな

 

「悪魔にとって教会は敵地、何時光の槍が飛んできても可笑しくなかったのよ?」

 

「はい・・・ドライグにも同じ事を言われました」

 

「そう・・・不用意に教会に踏み込めば悪魔側と神側の問題に発展しかねなかったのだからね」

 

リアス部長はそう言うが今ならそれは違うと言える

 

「リアス部長、どうして神側との問題になるんですか?あの教会に居るのって堕天使ですよね?」

 

「教会に堕天使ですって!?それはどういう事!?」

 

「仙術で探知したんです。教会そのものは結界が張ってあるせいで内部の様子は分かりませんが、教会の結界を出入りしている堕天使が4人、その他に人間の気配が正確には分かりませんが最低でも20人ほどは感じられます―――結界の中に引きこもってる奴がいれば流石にそこまでは分かりませんが・・・」

 

そう言うとリアス部長は途端に険しい表情で顎に手をやって思案する

 

「教会に堕天使?状況からみてその人間たちははぐれエクソシストの類でしょうね・・・そんな所に神器もちのシスターが赴任?きな臭いわね。いいわ、私の方で詳しく調べてみるわね」

 

それを聞いたイッセーは当然黙っていられなかったようでリアス部長に詰め寄った

 

「そんな!じゃああの子が危ないんじゃ!?部長!俺今スグにでも助けに行ってきます!」

 

「それはダメよイッセー!まだその子が危ないとも、堕天使の陣営では無いとも決まってないんだから―――前に説明したでしょう?今、三大勢力は危うい均衡を保っているの。下手に突いたら戦争にだって繋がるかもしれないのよ?」

 

「それは・・・」

 

悔しそうな表情で拳を握りしめている

 

流石に戦争と言われたらイッセーとしても思うところが有るのだろう・・・とは云え今まで平和な日本の一般人として過ごしてきたイッセーにどれだけ抑制効果が有るかと聞かれたら微妙なところだがな

 

「出来るだけ早く調査をしてあげるから、今日の所はそれで納得してちょうだい」

 

なだめるように声をかけてイッセーも「・・・はい」と小さく返事をする

 

「あらあら、お話は終わりましたかしら?」

 

今まで席を外していた朱乃先輩がやってきて表情を真剣なものに変え、「大公からはぐれ悪魔討伐の任が下りました」と告げた

 

 

 

 

 

所変わってとある廃墟。最初はオカルト研究部員ではあっても眷属悪魔では無い自分は帰った方がいいとも言われたが、やはり今現在のグレモリー眷属の力を直接見ておきたかったので「実戦経験はあります」と何とか説得してついて来た。

 

実戦経験と言っても堕天使と土蜘蛛の二つだけなんだけどな・・・あとは全て模擬戦だし

 

廃墟の中に入りつつリアス部長が説明を始める

 

「イッセー、あなた、チェスは分かるかしら?」

 

「はい、少しならプレイした事もあります」

 

知ってて損はないだろうと何度か学校の放課後とかに対戦したからな・・・家でやれって?こいつらの家に行ったら『そんな事よりおっぱいだ!』になるに決まってる

 

「なら私があなたを悪魔の駒(イーヴィルピース)で転生した時に使った駒とそれ以外の駒は?」

 

「『兵士(ポーン)』ですよね、それ以外だと『(キング)』、『女王(クイーン)』、『戦車(ルーク)』、『騎士(ナイト)』、『僧侶(ビショップ)』です」

 

「よろしい、上級悪魔は自分を『王』に見立てて眷属にそれぞれに駒に見合った特性を持たせて転生させているの。そしてチェスのルールを下地に置いた『レーティングゲーム』という貴族悪魔の遊戯が冥界では流行っているのよ」

 

「え!?悪魔同士で戦うんですか!?」

 

「命の危険が無い訳じゃないけど安全策は色々と考慮されているわ―――人間界でいうなら剣道とかボクシングとかの試合を団体戦や集団戦でやるって感じかしら」

 

「な・・・なるほど」

 

「今日は悪魔として新人のイッセーに悪魔の戦い方というのをその目で見てもらう、いい機会とも言えるわね」

 

すると建物の奥の方から声が響いて来た

 

「旨そうな匂いがするぞ?不味そうな匂いもするぞ?甘いのかしら?苦いのかしら?」

 

ケタケタと笑いながら姿を現したのは怪物だった。蛇の頭部が尻尾として生えた巨人の頭部の部分に女性の上半身がくっ付いているような正しく異形の化け物だ―――まぁ九重に会いにちょくちょく京都に行ってるから妖怪は見慣れてるので異形な姿とかは今更だが・・・

 

「はぐれ悪魔バイザー。主を裏切り、己の欲を満たすために暴れまわるその罪万死に値するわ。グレモリー公爵の名においてあなたを消し飛ばしてあげる!」

 

リアス部長がそう言うとバイザーは一層笑いながら自分の胸を揉み始めた・・・こいつは何がしたいんだ?

 

するとバイザーの両胸の乳首に魔法陣が展開され始め魔力が高まっていき、そこから溶解液が発射された!!

 

「ち・・・ちくビーム!」

 

つい声が漏れてしまった。気のせいか小猫ちゃんからの目線が痛い。しかし、まさかアレは伝説の『ちくビーム』だと!効果は違うようだが(未来の)リアス部長以外に使い手がいたなんて!!内心戦慄しながらも全員が攻撃を避ける。イッセーは部長に庇われた形だが・・・

 

「では始めましょうか、祐斗!」

 

「はい!」

 

リアス部長の命令で祐斗がその場から飛び出しバイザーの攻撃を避けながら縦横無尽に駆け回りバイザーを翻弄する―――一撃で首を落とせるだろうにそれをしないのはイッセーの勉強のためだな

 

「イッセー、良く見ておきなさい。祐斗の駒は『騎士』。騎士になった悪魔は速度が増すの。そして祐斗の最大の武器は剣」

 

素早く跳躍した佑斗は抜刀した剣でバイザーの下半身・・・と云うか巨人っぽい体の方の太い両腕を瞬時に切り落とした

 

「ギャアアアアア!!」

 

バイザーの悲鳴が工場内に木霊する―――そこで祐斗は一旦後ろに下がり次に小猫ちゃんがバイザーに普通に歩いて近づいて行く

 

バイザーはそれを見て巨大な足を振り上げ踏みつぶそうとする

 

「小猫ちゃん危ない!!」

 

「問題ないわ。小猫の駒は『戦車』その特性はバカげた力と耐久力」

 

"ズシンッ!!"

 

轟音が響くがその踏み付けを微動だにせず片手で受け止めそのままアッパー気味に殴り飛ばした。

 

バイザーが天井付近まで飛ばされてから重力に従い落ちてくる―――本気なら天井を突き破ってただろうけどな

 

「あらあら、最後は私ですわね。どう甚振って差し上げましょうかしら?」

 

「朱乃の駒は『女王』よ。『王』を除いた全ての駒の特性を合わせ持った最強の駒よ」

 

そして朱乃先輩はバイザーに魔力で構築した雷を落とす。死なないように調節した雷を浴びせ、バイザーの絶叫が響き渡る中で朱乃先輩が軽くこちらを振り返る

 

「ですが部長?情けない話ですが私は『最強の駒』ではありますが『最強の眷属』ではありませんのよ?」

 

するとリアス部長も少し困った顔をしながら「それはあなただけでなく主である私にも言える事だわ」と返す

 

「あの・・・部長?朱乃さんもそれはどういう意味ですか?」

 

イッセーが困惑しながら二人に尋ねると今度は祐斗がそれに答える

 

「部長の眷属で部長も含めて最強なのは実は小猫ちゃんなんだよ」

 

「小猫ちゃんが!?」

 

「ええ、小猫は元々猫魈(ねこしょう)と呼ばれる猫又の上位種族でね。イッキが扱うのと同じ仙術という力に長けているの」

 

「今から一年ほど前から小猫ちゃんの才能が一気に開花しましてね。半年も経つ頃には私も部長も追い抜かれてしまいましたの」

 

リアス部長の言葉にバイザーに浴びせる電撃に緩急を付けつつ朱乃先輩が補足する・・・何気にバイザーの絶叫が五月蠅いんだが・・・

 

「私も朱乃も、このままじゃいけないと修行に身を入れてるんだけど中々追いつけなくてね」

 

「はははっ、実は僕もなんだよ」

 

「ま・・・マジですか」

 

イッセーが驚いているが確かに小猫ちゃんは強くなった。今は出してないが猫耳としっぽを出しているときは『常時二又』なのだ。姉の黒歌も参曲(まがり)様の修行で時間を操る術を覚えて『常時三又』となっているし、依頼で呼び出すときだけだからガッツリと修行できている訳ではないが十分強くなっている。

 

原作の『猫又モードレベル2』で一時的に能力を底上げする技も使えるし、低めに見積もっても『吸血鬼騒動』の時よりは強いんじゃないか?

 

・・・『猫又モードレベル2』を初めて発動させた時は鏡の前で自分の胸を掴みながら静かに涙を流していたのは印象的だったな

 

“バガンッ!”

 

「ぐぁ!!」

 

小猫ちゃんが近くに落ちてたブロック片を投げてきた!これ普通の人間相手なら下手したら死んでるぞ!

 

「変なことを考えた気がしたので・・・」

 

そしてリアス部長に「イッキ、変なことを考えたの?」と問われ咄嗟の答えに窮していると「なら、仕方ないわね」と言われてしまった。ジーザス

 

「朱乃、そろそろ止めておきなさい」

 

リアス部長がそう言って絶叫を上げ続けてたバイザーに向き直る

 

「あらあら、もう少し楽しみたかったのですが、仕方ありませんわね」

 

ようやく雷から解放されたバイザーに部長が声をかける

 

「何か言い残すことはあるかしら?」

 

「こ・・・殺してください」

 

「そう、なら消し飛びなさい」

 

その言葉を最後に部長の『消滅の魔力』でバイザーは塵も残さず消滅した

 

「「・・・・・・・・・・・・・・・」」

 

「・・・言い忘れていたけれど、朱乃は究極のSよ」

 

「「はい、解ってます!」」

 

今の時点で戦って負けるとは思えないけど、朱乃先輩のSっ気が発揮されるとしたらそういう状況ではないだろうしな・・・勝てる気がしない

 

「それとイッセー、明日から朝の5時前にはあなたの家に迎えに行くから」

 

「へ!?何でですか!?それに5時前!?」

 

「悪魔の世界は力がものを言う世界よ。はっきり言ってあなたには魔力の才能が無い。あなたの最大の武器である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)を使いこなすためには体を鍛えるのが一番だからよ」

 

おや?朝練が始まるのはレイナーレ(暫定)編が終わってからだと思ってたけど、むしろ赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)の方が重要な要素だったか・・・

 

「う゛っ!やっぱ俺魔力の才能が無いですか・・・」

 

「それに今はこの町で堕天使が不穏な動きを見せている。力を持つことは大切よ」

 

「そうか!アーシアを助けるためにも!」

 

「私はその子と会った事が無いからなんとも言えないけど、教会の信徒と悪魔は相容れないわ。でも、もしもその子が酷い目に合ってるなら、堕天使たちを倒した時に偶然にもその子が助かる結果になる分には何も言わないわ」

 

「はい!有難うございます!頑張ります!」

 

「なら、今日は解散しましょうか。朱乃、祐斗、小猫、ご苦労様」

 

そうしてその日は解散となった。




ぶっちゃけ何もしてない主人公と黒歌、しょうがないんです。堕天使編で下手に出張らせる要素がほぼ無いんです。

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