転生特典が自爆技ばかりなんだが?   作:風馬

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第五話 救出、そして洗脳です?

俺たちは教会には結界が張ってあるため直接中には転移出来ないので近くの林の中に転移した

 

転移魔法陣で運べるのはグレモリー眷属の皆だけって話があったから大丈夫なのかと思ったけど(ダメなら走ってた)リアス部長が時間経過で消滅するグレモリーの紋章を付けてくれて一緒に転移出来た

 

それにしても様子を見に来て良かった

 

戦いの気配から恐らくフリードと戦ったのだとは思ったから順当に行けば確か決戦は明日の夜だったはずだ

 

既に原作から色々とずれているから一応とばかりに部室に顔を出したら決戦のタイミングだったとは・・・何が変化してるか判らないものだ

 

「皆、準備はいいわね?それとイッセー、貴方に一つ伝えておく事があるわ。『兵士』の駒の特性についてよ」

 

「特性?」

 

「ええ、『兵士』の最大の特性はプロモーションよ。『兵士』の駒は『王』である私が敵地の重要拠点と見定めた場所に侵入した際に『王』以外のすべての駒に変化出来るの」

 

「マジですか!?なら俺も朱乃さんと同じ『女王』に・・・!」

 

イッセーが意気込んだ所でリアス部長からストップがかかる

 

「今回は『女王』になるのは止めておきなさい」

 

「な・・・何でですか!?」

 

「あなたの最大の武器である赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は際限無く力を加算させていくことが出来る。でもそれは、それだけ貴方の肉体に負荷を掛けてるって事よ。そしてそれはプロモーションにも同じことが言えるの、短期決戦ならば『女王』でも構わないけど、貴方の赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)とプロモーションの組み合わせをどれだけ持続できるか分からないわ―――途中で動けなくなるなんて嫌でしょう?だから今回は『戦車』までにしておきなさい」

 

あ~、予想はしてたけどやっぱりそんな感じなんだな。実際のチェスだと『兵士』の駒をプロモーションさせる時は『女王』か特殊な動きを出来る『騎士』の二択だけど駒によって体力の消耗具合が変わるなら『女王』の駒以外に為る意味が生まれて来るな・・・実際のチェスだと『戦車』や『僧侶』へのプロモーションとか先ずされない死に設定だからね

 

「・・・はい」

 

「大丈夫よ。貴方はまだまだ悪魔になったばかり、今の自分を弱いと思うならこれから強くなればいいわ」

 

「はい!」

 

 

 

 

そうして全員で教会の敷地の中に侵入する

 

「小猫、イッキ、堕天使とはぐれエクソシストの気配はどう?」

 

「基本は事前に探知した通りです。堕天使は4名、ただはぐれエクソシストは30名はいますね―――俺は会った事が無いのでアーシアって子の気配までは分かりませんが・・・」

 

「あのシスターの気配は私が覚えてます・・・どうやら教会の地下に居るみたいです」

 

「分かったわ。敵の配置は?」

 

「結界で侵入を察知したんだと思います。大部分が礼拝堂に集まってます」

 

戦力が集まってると聞いたリアス部長は凛とした顔に僅かに笑みを浮かべて活を入れる

 

「なら、小細工無しのぶつかり合いね。行くわよ!」

 

 

 

 

 

小猫ちゃんが教会の扉を蹴破って自分たちもそれに続く

 

中に居た皆さんは殺気と得物を手に歓迎ムードのようだ

 

「あらあら、野蛮な悪魔さん達はどうやらノックの仕方も知らないのかしら?」

 

「無理もあるまい。所詮、薄汚れた蝙蝠どもよ」

 

「ドーナシークのおっさんも辛辣っすね。まぁでも確かにこの人数の敵地に正面から入ってくるとか馬鹿なんじゃねぇっすか?」

 

「ミッテルト、当たり前の事をあんまり口に出してると貴方にまで馬鹿が移るわよ?」

 

「うげっ!カーラワーナ、そりゃぁ勘弁願うっすよぉ!」

 

堕天使四人を最奥にしてはぐれエクソシスト達が俺たちの周囲を取り囲む

 

その中から一人の青年が前に出てきた

 

「おやおや~?まさかこんなに早く皆さんと再会出来るなんて!僕ちん感激!なんか人間も混じってるみたいだけど悪魔と一緒にいるなら同罪だよね☆特にそこの俺様をぶん殴ってくれたイッセー君!キミは指先から少しずつみじん切りにしてあげるから、後でゆ~っくりと楽しもうね☆」

 

「フリード!!」

 

イッセーが怒りの声を上げ、後はぶつかるだけという時、何か相手のはぐれエクソシストの一部がこっちを見ながらひそひそと会話している。と言うか俺をを見てるし、指さしている?なんだ?

 

なぁ、アイツってやっぱり・・・

 

ぷぷっ!間違いねぇと思うぞ!

 

そうして十人(・・)程が微妙に体を震わせながら腹を押さえている・・・何か嫌な予感がする

 

そう思っているとその中の一人が俺に語り掛けてきた

 

「お~い!そこのお前!あの後猫耳ゴスロリクリーチャーと添い寝した時の感想を聞かせてくれよ~!新しい扉でも開けたか~?」

 

・・・ああ、そうか、お前ら前回堕天使と戦った時にいたあのはぐれエクソシスト共か!

 

「・・・部長・・・皆・・・俺はあの神父共に個人的な・・・非常に個人的な恨みがあるので、アイツらは俺が受け持ちます」

 

いかんな・・・全身から闘気が漏れ出てしまっているようだ

 

「イ・・・イッキ?貴方どうしたの?」

 

「部長、イッキ君、僕もやるよ」

 

何時もより幾分声のトーンの下がった祐斗が追従する

 

「祐斗!貴方まで!・・・まぁいいわ二人で問題ないのね?」

 

「「はい!」」

 

絶対に許さん!地獄を見せてやらねばな!

 

「なら、私と朱乃で奥の堕天使を相手にするわ。イッセーは地下に向かいなさい―――小猫はイッセーのサポートに回ってあげて・・・朱乃!戦いが始まったら礼拝堂の前後を結界で区切っておいて!堕天使とはぐれエクソシストを分断するわ!」

 

「はい部長!」

 

「はい」

 

「了解です部長!」

 

そして各々が自分の標的に向かって駆けだしてく、俺と祐斗がスピードを生かしてはぐれエクソシスト共の背後に回り彼らが堕天使の方に近づけないように立ち回り、部長たちが小猫ちゃんを先頭に人垣を突破して礼拝堂の奥に進んでいく

 

「はっ!」

 

朱乃先輩の掛け声と共に礼拝堂が結界で二分された―――確かにこれなら役割がハッキリ別れてて分かりやすくていい

 

レイナーレ(暫定)達がイッセー達を祭壇の近くに見えていた地下に向かわせないように光の槍を投げるが、小猫ちゃんの拳で粉砕されそのまま二人は地下に降りて行った。

 

「っち!ドーナシーク!カーラワーナ!ミッテルト!私はあのシスターを確保しに行くわ!連れ出される訳にはいかない。此処は任せたわよ!」

 

転移魔法陣を展開しそのまま転移していった。そうか俺たちは教会の結界で転移出来ないけどあいつ等が出来るのは当たり前だよな!

 

こっちは既に雑魚のはぐれエクソシストは半数以上は倒した。

 

例のはぐれエクソシスト共は拳でぶん殴ってやりたかったため基本徒手で戦っている。

 

フリードの方は祐斗が相手をしているが、まだ残ってるはぐれエクソシストが邪魔で決め手に欠けているようだ

 

「ひゃっはははは!どうしたの?イケメン君?さっきから戦い方に思い切りの良さってのが感じられないぜ☆俺ってばさっさとあのクソ悪魔君を追っかけて、悪魔に魅入られたクソシスターの前で解体ショーを披露してやらなきゃならないからよ!そろそろ死んでちょ~だい☆」

 

「・・・教会を追放されるのも納得の下劣さだね。いいだろう、もう他のはぐれエクソシスト達は片付いたようだしね。決着を付けようか」

 

「マジですか!?」

 

フリードが驚いて辺りを見渡すが先ほどのフリードの長ったらしいセリフの間に残りも倒させてもらった―――後は祐斗がフリードを倒せば此方は片付くという時

 

 

“ドォォォン!”

 

 

眩い光と共に轟音が響き渡り、思わずそっちを見ると3人の堕天使が煙を上げつつ地に落ちようとしていたが

 

「消し飛びなさい!!」

 

それよりも早くリアス部長の消滅の魔力で数枚の羽根を残して消滅してしまった。

 

どうやら、此方よりも少しだけ早く向こうの決着が付いたようだ―――そう思い視線を祐斗とフリードの方に戻すがそこには佑斗しか居なかった

 

「あれっ!?フリードは?」

 

「ゴメン、イッキ君。あのはぐれ神父は朱乃さんが堕天使を攻撃した時に一目散に逃げて行ってしまったよ・・・」

 

「はぁ!?マジで!?あの時点では一応まだ決着じゃ無かったし、それなのに助けようという素振りすら無し!?」

 

「うん、あんまりにもアッサリと仲間を見捨てるものだから僕も虚を突かれちゃってね。逃げられちゃったよ」

 

うわ~!流石フリード、状況判断が早くて的確と言えばいいのか、薄情と言えばいいのか・・・

 

決着がついたからか朱乃先輩の張っていた結界が解除され、二人が此方に歩いてくる

 

「そちらも終わったようね」

 

「すみません部長。敵の一人を取り逃がしてしまいました・・・」

 

祐斗がリアス部長に頭を下げて謝罪する

 

「一人くらいなら問題ないわ。それにあの神父は明らかに別格だったしね―――逃げに徹されれば追うのも難しいでしょう」

 

「あらあら、それでは残るは地下の方ですわね」

 

「そうね。小猫が付いてるから問題ないと思うけど様子を見に行きましょうか」

 

朱乃先輩の言葉にリアス部長が続くがその必要は無い

 

「いえ、どうやら丁度今決着が付いたみたいです・・・」

 

レイナーレ(暫定)の気が小さくなっていく、どうやら戦いはこれで終わりのようだ。

 

 

 

 

 

―――少し時間を遡り、地下通路

 

[イッセー side]

 

小猫ちゃんと一緒に祭壇の奥にあった階段で地下に潜りアーシアの気配を追える小猫ちゃんを先頭に走ってついていく

 

途中何度か「死ねぇ!悪魔!」とか「此処は通さん!」とか言って襲ってくる奴らがチラホラ居たけど、俺が身構える前に全員小猫ちゃんの拳一発で吹き飛んでいった

 

小猫ちゃんを怒らせるのだけは止めとこう。壁という額縁に飾られた愉快なオブジェになっちまう

 

「もうすぐ・・・あの奥の扉の向こうです。」

 

「よっしゃ!」

 

「ッツ!堕天使の一人が転移してきました」

 

何?成程・・・どういう理由か知らねぇが、よっぽどアーシアを渡したく無いみたいだな!

 

小猫ちゃんの「えい!」という掛け声と共に大きな扉が粉砕され二人で中に入る

 

扉が壊れる時、一瞬魔法陣のようなものが展開されたみたいだが関係ないとばかりに壊してしまった、アレは何だったんだろう?

 

兎も角そこは結構大きな部屋で、一番奥に巨大な十字架が在るのだが到底普通の十字架には見えない。人ひとりを磔にできそうな大きさで各所に手足を固定するような手枷や鎖が巻かれていた

 

その十字架の前にアーシアと堕天使の夕麻ちゃんが立っている

 

「アーシア!無事か!?」

 

「イッセーさん!?何で此処に!?」

 

「っく!もう追い付いて来るなんてね!扉には結界を張っていたはずなのに!」

 

成程、さっき小猫ちゃんが扉と一緒に破壊したのは結界だったのか・・・多分だけど俺たちの侵入に対してアーシアは結界の張ってあるこの部屋に隠されたって所か?

 

「・・・夕麻ちゃん」

 

「あら?貴方は・・・最悪ね。まさかあの後悪魔に転生していたなんて―――それと言っておくけど私の名前は夕麻じゃないわよ。アレは一時的に適当に考えた仮の名、私の名前はレイナーレよ」

 

そっか・・・そりゃ悪魔の管理地で本名名乗って調査活動とかしないよな

 

「ならレイナーレ、この地で何を企んでやがる!それにアーシアをどうする気だ!この時期に彼女を呼び寄せて、こんな部屋に隠しておきながら今更それらが無関係なんて言わないよな!」

 

そうだ!戦力を分断してまで彼女を確保に動いたのはこいつ等の企てにアーシアが必要と考える方が普通だろう

 

「下級悪魔風情が気安く私の名を呼ぶな!・・・別に悪い事じゃ無いわよ?この子、アーシアの持つ神器、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)を私が貰って上げるだけ・・・」

 

「なに?」

 

「えっ!?」

 

あの様子だとアーシアもその事は知らなかったみたいだな・・・

 

「この子はね、神の祝福を受けられないはずの堕天使や悪魔なんかにも治癒の力を及ぼせられるの・・・でも異端とされる神器のせいで教会から追放されてしまった。そんなの可哀そうだと思わないかしら?」

 

アーシアを抱きしめながら此方に嘲笑とも取れる笑みを浮かべながら夕麻ちゃん・・・レイナーレは続ける

 

「だから私が貰って上げようと思ったのよ。この子は神器から解放される。私はその神器を使って堕天使として確固たる地位を築き上げる・・・貴方はアーシアを助けに来たのでしょう?ならさっさと帰りなさい。私が用があるのはこの子の神器だけ、事が済んだらこの子は無傷でそっちに引き渡してもいいのよ?」

 

話を聞く分にはそう悪い話では無いように思える。

 

アーシアの力を目の前の堕天使が使うというのは業腹だが、アーシアが神器から解放されるというのは悪い事では無いだろう

 

『ふん!甘言に惑わされるな相棒。あの堕天使は重要な事を喋っていないぞ』

 

ドライグの声が頭に響いて来た。かなり不機嫌な声音だ

 

『なんだよ?重要な事って?』

 

『なに単純な話だ。神器は宿主の魂と一体化している物だ。それを取り出すという事は魂を引き裂く行為に等しい・・・つまりは死ぬという事だ』

 

「なっ!?」

 

つい現実に声が漏れてしまった―――死ぬ?死ぬだって!?咄嗟にレイナーレに問い詰める

 

「おいレイナーレ!神器を抜き取ったら宿主は死んじまうんだろう!?アーシアを解放して無傷で引き渡すってのは嘘なのか!?」

 

「っち!悪魔に転生したての割にはよく知ってるのね―――別に嘘はついていないわよ。この子は神器から解放されるし、神器を抜き取る儀式は肉体には傷はつかないから無傷の死体を引き渡してあげたわ」

 

レイナーレの腕の中に居たアーシアも今の話を聞いて絶句している。

 

ああそうかよ!レイナーレ!例え嘘でも俺の初めての彼女だったから、少しくらい手加減をとか頭の隅で考えてた自分が心底バカだったようだな!!

 

「・・・小猫ちゃん。ゴメン、此処は俺に行かせてくれないか?」

 

小猫ちゃんが戦えば多分直ぐに終わるんだろうけど、それじゃあ俺が納得できない!

 

「・・・分かりました。でも、危なくなったら助けます―――イッセー先輩が一人で終わらせたいなら・・・」

 

「大丈夫、有難う小猫ちゃん」

 

そう言ってレイナーレの所に歩み寄る

 

どうやら彼女も交戦は避けられないと悟ったようで、アーシアを後ろにあった十字架の手枷に彼女の片腕を繋ぎ此方に向き直る

 

「転生したばかりの下級悪魔、それに魔力も殆ど感じない―――貴方のようなクズが堕天使として至高の頂に昇り詰める私と一人で戦おうと言うの?貴方もそれを許す貴方のお仲間も愚かとしか言いようがないわね」

 

「御託はそれでいいか?それじゃあ、とっとと始めようぜ堕天使さんよ!プロモーション『戦車』!来い、赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!!」

 

『Boost!!』

 

そこで初めてレイナーレの顔が驚愕に彩られた

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)!?神や魔王すらも滅ぼすとされる忌まわしき神器がお前のような小僧に!?」

 

「どうした?堕天使様よ?転生したての下級悪魔相手に狼狽しちまってよ。アーシアを置いて二度とこの町に来ないってんなら見逃してやってもいいんだぜ?」

 

「下級ごときが!」

 

俺の挑発にレイナーレは顔を憤怒に染めて光の槍を投げてきた

 

何とか避けるが槍が爆発して吹き飛ばされてしまう

 

それに爆風自体にも光の力が混ざってたのか全身がビリビリする

 

あのフリードって奴の使ってた光の武器より光の密度が濃いのか!?今はまだ直撃するのは拙い!

 

赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)は力が溜まるまでに時間が掛かる!―――貴方の力が私の力を上回る前に殺して上げるわ!!」

 

今度は質より量とばかりに十数本の光の槍を作り出し一斉に投げてきた!

 

「今の俺ならこの程度!」

 

避けられそうには無かったが『戦車』の防御力と溜まった倍化の力も相まって防ぐ事が出来た!俺に当たらなかった分の光の槍の爆発で周囲に粉塵が舞い、視界が鈍る―――直後に両足に野太い光の槍が突き刺さった

 

「ぐぁぁぁぁ!!?」

 

「イッセーさん!?」

 

痛てぇ!痛てぇ!!痛てぇ!!!マジでフリードの銃弾とはモノが違う!素のまま受けてたら今ので意識が飛んでたかもな!

 

それにアーシアにも心配掛けちまったか・・・ゴメンな今すぐコイツぶっ飛ばすからよぉ!

 

「痛いかしら?いくら力が上昇しようとももう動けないでしょう?それにしても戦い方がなってないわ。相手の虚を突くのは戦術の基本よ?」

 

「・・・舐めんなよ!この程度何でもねぇよ!」

 

「そんなに脂汗を滲ませながら言っても説得力ないわよ?でも確かに光によるダメージはもう殆ど緩和しているようね・・・本当に忌まわしい力だこと・・・ならご褒美にその刺さってる槍を消して上げましょう」

 

レイナーレがそう言いながら指を鳴らすと次の瞬間本当に足に刺さっていた槍が消えた

 

“ブシュゥゥゥ!!”

 

槍の傷口から大量の血が噴き出て来やがった!これは!?

 

「刃物が刺さったりした大きな怪我はね、適切な処置が出来ない所じゃ抜かない方がいいのよ。そんな風に血が流れて失血死してしまうからね」

 

クソッ!痛みで頭が焼けそうだったけど、それに加えて今は血と一緒にドンドン体力・気力も流れていくみたいだ!

 

「もうまともに歩けもしないでしょう?確実に死ぬように頭を貫いてあげるわ」

 

レイナーレが今までで一番の力を込めた槍を顔面に投擲してくる―――それを俺は前のめりに倒れ込む形で避ける

 

「はっ!一度倒れたら起き上がる事すら容易じゃ無いわよ!」

 

レイナーレの俺を小馬鹿にした声が聞こえる。ああその通りだ!倒れたら終わりなんだろう―――だから倒れない!!

 

“ガギッ!!”

 

倒れる寸前、左腕で地面を掴む―――腕と足では数倍の力の差があるとされているけど、『戦車』の膂力を倍化で高めた今の俺なら、腕一本で数メートルの距離を跳ぶ位出来るんだよ!!

 

頭からロケットのようにまっすぐレイナーレに突っ込んでいく

 

「馬鹿な!!?」

 

慣れないと云うか生まれて初めての片腕跳びは幾ら膂力がブーストされていると言っても驚くほどの速度が出ている訳じゃない。それでもレイナーレは驚愕から防御も回避も中途半端な状態となってしまっている。確か相手の虚を突くのが戦術の基本だったよな?ご教授有難うよレイナーレ!―――今なら決まる!!

 

「グッバイ俺の初恋!吹き飛びやがれ!」

 

硬く握り締めた拳が彼女の顔面を捉え、部屋の奥の壁にめり込ませた

 

「イッセーさん!大丈夫ですか!?」

 

やり切ったという感情に浸っていると繋がれてたはずのアーシアが駆け寄ってきた

 

手枷はどうやら小猫ちゃんが(力任せに)外したみたいだ・・・そういえば知恵の輪ならぬ力の輪と言うのがあって、小猫ちゃんなら知恵の輪もパワーで解決・・・

 

“ゴチッ!!”

 

小猫ちゃんが外した手錠の残骸を投げつけてきた!痛てぇ!こっちは怪我人なんだしもう少し優しくしてくれても・・・

 

「イ・・・イッセーさんを虐めないでください!」

 

足の怪我を治してくれていたアーシアがそんな事を言う

 

「大丈夫だからアーシア!今のは余計な事を考えた俺の方が悪かっただけだから!」

 

「そ・・・そうなんですか?でも、イッセーさんが無事で良かったです。私のためにこんな大怪我までして・・・何で此処までしてくれたんですか?」

 

なんでってそりゃあ・・・

 

「泣いてたからだよ」

 

「え!?」

 

「最後の別れ際にさ、アーシア泣いてただろ?理由ならそれで十分だ」

 

「イッセーさん・・・有難うございますぅ」

 

そう言ってアーシアが俺を胸に抱き寄せてくれた

 

部長・・・皆・・・俺は勝ったよ・・・

 

 

 

 

 

 

 

・・・部長のような大きさは無いけどアーシアのおっぱいも柔らかくて最高だ!

 

「・・・イヤらしい顔」

 

ゴメンね、小猫ちゃん、俺がスケベで・・・

 

[イッセー side out]

 

 

 

 

地下での戦いの気配が収まったので、はぐれエクソシスト達を武装を解除させつつ朱乃さんが魔力で拘束していく

 

堕天使は消し飛ばしたのにこいつ等はどうするのかとリアス部長に聞いてみたらどうやら冥界の専門機関に送られて死ぬか服従するかの二択を迫られるのだそうだ

 

どうせ一部の悪魔が処刑を選んだ奴をすっぱ抜いて違法研究の材料にでもしているんだろうけどな

 

全員を拘束し終わった辺りで数名のはぐれエクソシストと堕天使を担いだ小猫ちゃんとイッセー、それに俺は初めて出会うがアーシアが現れる

 

「部長!ただいま戻りました!」

 

イッセーの挨拶と共に小猫ちゃんも担いでいた奴らを床に放り投げる・・・うわっ!顔面から落ちたぞ!

 

朱乃先輩が素早くはぐれエクソシスト達を拘束していき部長は気絶しているレイナーレ(暫定)の顔面に魔力で作った水をぶっかける

 

「ゴボボッ!?ガバッ!?」

 

「さて、お目覚めの気分はいかがかしら?堕ちた天使さん。こうして会うのは二度目ね、私はグレモリー公爵次期当主のリアス・グレモリーよ。短いお付き合いでしょうけど貴女の名前を聞いておきましょうか」

 

「っく!グレモリーの縁者だとは思っていたが、まさか次期当主だったとはね!・・・私はレイナーレよ・・・」

 

おお!やっと俺の中でレイナーレ(暫定)の(暫定)が取れた!このまま名前も分からないまま消滅するのかと思ったぜ!

 

「ではレイナーレ、貴方がこの町で何をしようと企んでいたのかを話してもらいましょうか・・・別に話さなくてもいいけど、その場合は冥府の専門機関に送るからとっても痛い死に方をすると思うわよ?」

 

「・・・・・」

 

おお恐い!昔ながらの貴族社会だし拷問くらい普通にあるのか・・・

 

「部長、そいつはどうやらアーシアから神器を抜き出そうとしていたみたいです」

 

「・・・そう、成程ね、回復系の神器は珍しいけどそこまで希少と言う程でもない。でも彼女の神器のような悪魔でさえも癒す事ができるものなんて聞いた事も無い・・・でも神器を抜き出すというのは・・・」

 

「はい、アーシアを殺して抜き出そうとしていたみたいです・・・」

 

「そう・・・残念だけど堕天使レイナーレ、聞きたいことは全部聞けたから貴女にもう用は無いわ―――最後の慈悲よ、せめて一瞬で消し飛びなさい!」

 

「ま・・・待っ!!」

 

“バシュン!!”

 

そうしてリアス部長の滅びの魔力でレイナーレはあっさりと消滅した

 

「さて後は、はぐれエクソシスト達を冥界送りにして彼女・・・アーシアの今後も考えないとね」

 

「あの部長・・・アーシアはどうなるんでしょうか?」

 

「そうね・・・彼女が教会から追放されている以上、教会に戻るのは却下。堕天使の組織も今回の一件がある以上はそちらに送り返す訳にもいかないわね。私の所で保護してもいいけど、その場合シスターとしての活動は謹んで貰わなければいけないわ」

 

悪魔が保護した者が教会としての活動をする訳にもいかないか・・・

 

「アーシアはどうしたいんだ?」

 

「イ・・・イッセーさんと・・・その・・・い・・・一緒に居たいですぅ

 

最後は消え入りそうな声だったが全員にちゃんと聞こえたようだ

 

「お・・・俺と!?」

 

イッセーが驚いている・・・本当にハーレム目指してる割には鈍いからなコイツは・・・

 

「ふふふっ、そういう事ね・・・ねぇアーシアさん、人間と悪魔では寿命が違うわ。一緒に居られると言っても悪魔の時間からしたら一瞬の事、そこで貴女さえ良ければ私の眷属として悪魔になってみない?貴方自身の人格も、神器の力も両方魅力的だしね」

 

「部長!?」

 

「悪魔に・・・ですか?」

 

「ええ、ただし分かってるとは思うけど悪魔になれば聖書を読む事も神に祈る事も出来なくなる・・・それでも貴女は悪魔になる?」

 

「・・・・・・はい!」

 

少し迷っていたようだが、強い眼差しで返事をする

 

「アーシア!?」

 

「私は今まで教会で沢山の方々と接してきました。中には私の事を本当に大切にして下さる方々もいました。でも、私個人が一緒に居たいと心から思える人はイッセーさんが初めてなんです!離れたくありません!」

 

何かもう愛の告白みたいになってるな、イッセーも顔を赤らめて目が泳いでるし・・・

 

「最後にもう一度だけ確認するわ・・・悪魔になってもいいのね?」

 

「はい!」

 

そうしてアーシアさんはその場でリアス部長の『僧侶』として転生した

 

そしてオカルト研究部の皆と自己紹介を交わして晴れて彼女はグレモリー眷属の一員となった

 

「ではイッセー、アーシアの面倒は貴方が見るのよ?少しとはいえ先輩なんだからね」

 

「はい!部長!」

 

「後はそこのはぐれエクソシスト達を冥界に送れば終了ね。朱乃!」

 

「ちょっと待ってください!」

 

咄嗟に待ったをかける

 

「イッキ?どうしたのかしら?」

 

「すみません。このエクソシスト達の処遇は俺に任せていただけませんか?」

 

そう言いながらあの時の十人(・・・・・・)を引っ張り出す

 

「そう言えば個人的な恨みとか言ってたわね・・・どうするつもりなの?」

 

「そうですね・・・多分口で言っても中々伝わらないと思うので一緒に確認しますか?問題があるようならその場で冥界送りにしてもらって構わないので・・・」

 

リアス部長が少し考える仕草をした後「はぐれエクソシスト達を殆ど倒したのはイッキだものね。多少の我が儘は許しましょう」と了承してくれた

 

そうと決まれば早速連絡を取らなくては!少し遅い時間だがしょうがない

 

そして直ぐに連絡を入れてみた所問題なく受け入れてくれるそうだ。今は友達を四人招いていたらしく、その人達も事情を聴き、快く協力を願い出てくれたみたいだ。重畳、重畳!

 

そして十人を除いたはぐれエクソシスト達は朱乃先輩が冥界に送り、俺たちは丁度目的地が俺の家の近くだったので朱乃先輩の転移でそちらに移動した

 

辺りを見渡し、とあるアパートが視界に入って暴れるはぐれエクソシスト達を朱乃先輩の作った魔力の縄で引っ張って行く

 

「嫌だぁ!」とか「殺せぇ!」とか「おお!神よ!」とか追放された身で神に祈る奴もいたがそのままそのアパートの206号室の前に着く、するとイッセーが「おいイッキ・・・本当にここで合ってんのか?」と聞いて来た。

 

「何だ、知ってんのか?」

 

「ああ、ちょっと前に召喚されたばっかだからな―――召喚された瞬間、思わず外まで逃げちまったからこの扉には覚えがあるぜ・・・」

 

そうか、既に彼とは遭遇済みか。そしてそのままチャイムを押す

 

“ピンポーン!”

 

「開いてますにょ~」

 

アパートの薄い扉の向こうから野太い声が聞こえてくる

 

「今・・・「にょ」って言ったのかしら?」

 

リアス部長も困惑しているようだ。はぐれエクソシスト達はもはや体がちぎれる勢いで拘束から逃れようとしている

 

「お邪魔しま~す」

 

そうして扉を開けた先にはミルたんが、そしてミルたんの後ろに四人のミルたんの魔法少女の夢を共に志す友達たちがいた・・・当然ミルたん仕様である

 

全員タッパ2mを超える逆三角形のゴスロリ集団・・・ミルたんの友達は初めて見たけど色々な意味で纏ってるオーラがヤバい

 

俺と同じく仙術を使える小猫ちゃんなんか仕舞ってたはずの猫耳としっぽが飛び出て一瞬で総毛だっているし・・・

 

「こんばんはだにょ!アレ?先日の悪魔さんも居るのだにょ?」

 

「ど・・・どうも、こんばんは・・・」

 

「イ・・・イッセー・・・ひょっとして此方の方は依頼主の一人なのかしら?」

 

「はい、部長・・・先日のアンケートにもあったミルたんさんです・・・」

 

「ああ、あの・・・」

 

「ゆっくり挨拶をしたい所だけど今日はあの時の悪いお兄さん達が改心しきれず、また悪さをしてるって聞いたにょ!修行中の身とはいえミルキーの素晴らしさを伝えきれなかったなんてショックだったにょ!でももう大丈夫にょ!友達の助けも借りて今度は心の底からミルキーの愛を知るまで―――絶対逃がさないに゛ょぉぉぉぉ!!

 

うん!どうやらミルたんのやる気はバッチリのようだ。部屋の奥に見える漢の娘たちもしきりに頷いている―――これなら安心だな

 

「ではミルたんさん。今度こそ彼らに夢と希望と愛を教えてあげてください」

 

「任せてだにょ!」

 

“バタンッ!!”

 

これで彼らもきっと二度と悪さをしようとは思わないだろう

 

「う~ん!スッキリしたなぁ~!」

 

積年の『報復』という悲願を果たせた俺は思わず伸びをするが皆の無言の視線が突き刺さる

 

「「「「「・・・・・・・」」」」」

 

「イッキ・・・お前は悪魔か?」

 

は?何を馬鹿な事を言ってるんだこいつは?

 

「何言ってんだ?悪魔はお前だろう?」

 

「イッキ先輩は時々頭のネジが外れるんです・・・」

 

小猫ちゃんも何言ってんだ?『報復』するのなんて当たり前だろう?

 

「リアス部長、普通に引き渡しちゃいましたけど問題無かったですか?」

 

「・・・え・・・ええ、それじゃあ皆、今日は解散しましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

堕天使の一件は幕を閉じたが、家に帰った時黒歌にまたボディーブローを入れられた

 

「グレモリー眷属とか他にも知らない気配がいきなり家の前に現れたから討伐隊でも来たのかと思ったにゃ!!」

 

・・・次の休日に俺のお小遣いの限界まで黒歌に奢ることが決定した

 

 

 

例のはぐれエクソシスト達は数日にも及ぶ洗脳、愛の語らいの末、全員が真実の愛(ミルキー)に目覚めたようだ

 

後日、オカルト研究部にアポをとって来校し、誠心誠意の謝罪をし愛(ミルキー)を語り帰って行った

 

アーシアさんは「愛の力は偉大ですね!ああ、主よ!」と祈っていた・・・直後に頭痛のダメージを受けていたが

 

・・・あいつらを恐怖(ミルキー)に落とし入れるためにミルたんに引き渡したんだけど、どうやらミルキーに目覚めさせてしまったようだ。十五人にも及ぶミルキー軍団(漢女)がここに結成した・・・どうしてこうなった?




はぐれエクソシスト達はこれからどんどんミルキー魔法(物理)の練習をしてマッチョになっていく予定です。

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